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11.カイルとの再会
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この四年間は、あまり会うことがなかった。遠目に見える金髪が、カイル様だと分かった。
カイル様は、背が伸びて体も騎士様のように引き締まって見える。僕も従者のマーティス様に剣を習っているけど、筋肉は付きにくくて細いままだ。
「暗器を使ったりするなら小柄で素早いのはいい事よ。カイル様みたいになったら、影には、向かないわ。シェリルは、そのままで」
蹴りと同時にナイフの切っ先が、向かってくる。身体をひねり、蹴りを避ける。リリー様の手首を掴んだ所に、くるりと向きを変えられて逃げられた。
「残念でした」
髪の乱れとスカートの裾を直したあと、手を振って行ってしまった。
窓の外をもう一度見る。こちらに気が付いて視線が一瞬だけ交わった。誰かに声をかけて、邸内に入っていった。
書類の分類も終わって、自室に戻るところだった。リリー様は、不意打ちの訓練と言いながら楽しんでいるからタチが悪い。執事長に今後の予定を確認しに行こう。
僕が調子に乗って、あの時カイル様を怒らせたのだ。従者に選ばれない時は、ここを出て行く事も考えないと。ギルドで働いて、お世話になった分のお金を返すとかもありかな? そう考えていると足音が近付いて来た。
階段を誰かが、急ぎ駆け上がってくる。さっき、カイル様が耳打ちしていた人だった。
「シェリル、カイル様が部屋に来るようにって呼んでる。すぐに行ってくれ」
従者様からの伝言を聞いて、慌ててカイル様の部屋に向かう。小さい頃は、幾度となく呼び出された。一緒に勉強をした懐かしい場所でもある。
でも、四年間ここに入る事はなかった。緊張しながら、ドアをノックする。
「シェリルか?」
「はい」
「入れ」
そして、ドアを開けた。懐かしい雰囲気の中に、覚えていない家具やカーテンがある。それもそうか少年ではなく、青年になっているのだから。ここに戻ってきた彼に、合うように模様替えされている。
あの時に止まったままの、子供の頃の記憶。
「シェリル。ただいま」
「お帰りなさいませ。カイル様」
頭を深くさげた。
「マーティスに聞いた。ダンジョンに行っていたと」
「──はい」
「魔法のレベルをあげるためか?それとも、ここから出ていく算段でも立てているのか?」
「従者になるようにと、拾われた時に言われていました。マーティス様のようになる為に、訓練を受けています。ギルド会員になった事が問題なら、会員をやめます」
カイル様は、執務用の机に少し寄りかかって立っている。僕の顔を最初に見たきりで、何かの書類を片手に目を通している。
「止めろとは言ってない。目立つなって言っているだけだ……ランクは、何?」
「Aランクです。ですが、ギルドマスターにお願いしてBランク扱いにしてもらってます」
書類を机の上に伏せて置いた後、僕の前まで歩いて来て止まった。身長差は、開くばかりだ。マーティス様みたいに大きければ、護衛としても役に立ちそうなのに。何か僕は返せるだろうか?
一瞬上がった手が、元に戻される。そして軽く握りしめていた。
「明日、冒険者ギルドに行く。シェリルもついてこい」
「はい」
「瞳は焦げ茶色のままにしているか?」
「はい」
「他に、隠している事はないな?」
「はい」
「Aランク……か」
残念そうに聞こえた。Aでは駄目だったのだろうか?
「それを知っているのは、ギルドマスターとマーティス様とリリー様だけです」
ダンジョンに先に行ったことが、不味かったのかも知れない。
「まあいい」
「申し訳ありませんでした」
「いい。とにかく、俺の後ろに控えとけばいい。魔法も、剣もお前に頼ることはない。ギルドに行くのは明日だ。もう下がっていい」
学園で優秀だったと、伯爵様が言っていた。
「分かりました」
頭をもう一度さげて、懐かしいこの部屋を後にした。
カイル様は、背が伸びて体も騎士様のように引き締まって見える。僕も従者のマーティス様に剣を習っているけど、筋肉は付きにくくて細いままだ。
「暗器を使ったりするなら小柄で素早いのはいい事よ。カイル様みたいになったら、影には、向かないわ。シェリルは、そのままで」
蹴りと同時にナイフの切っ先が、向かってくる。身体をひねり、蹴りを避ける。リリー様の手首を掴んだ所に、くるりと向きを変えられて逃げられた。
「残念でした」
髪の乱れとスカートの裾を直したあと、手を振って行ってしまった。
窓の外をもう一度見る。こちらに気が付いて視線が一瞬だけ交わった。誰かに声をかけて、邸内に入っていった。
書類の分類も終わって、自室に戻るところだった。リリー様は、不意打ちの訓練と言いながら楽しんでいるからタチが悪い。執事長に今後の予定を確認しに行こう。
僕が調子に乗って、あの時カイル様を怒らせたのだ。従者に選ばれない時は、ここを出て行く事も考えないと。ギルドで働いて、お世話になった分のお金を返すとかもありかな? そう考えていると足音が近付いて来た。
階段を誰かが、急ぎ駆け上がってくる。さっき、カイル様が耳打ちしていた人だった。
「シェリル、カイル様が部屋に来るようにって呼んでる。すぐに行ってくれ」
従者様からの伝言を聞いて、慌ててカイル様の部屋に向かう。小さい頃は、幾度となく呼び出された。一緒に勉強をした懐かしい場所でもある。
でも、四年間ここに入る事はなかった。緊張しながら、ドアをノックする。
「シェリルか?」
「はい」
「入れ」
そして、ドアを開けた。懐かしい雰囲気の中に、覚えていない家具やカーテンがある。それもそうか少年ではなく、青年になっているのだから。ここに戻ってきた彼に、合うように模様替えされている。
あの時に止まったままの、子供の頃の記憶。
「シェリル。ただいま」
「お帰りなさいませ。カイル様」
頭を深くさげた。
「マーティスに聞いた。ダンジョンに行っていたと」
「──はい」
「魔法のレベルをあげるためか?それとも、ここから出ていく算段でも立てているのか?」
「従者になるようにと、拾われた時に言われていました。マーティス様のようになる為に、訓練を受けています。ギルド会員になった事が問題なら、会員をやめます」
カイル様は、執務用の机に少し寄りかかって立っている。僕の顔を最初に見たきりで、何かの書類を片手に目を通している。
「止めろとは言ってない。目立つなって言っているだけだ……ランクは、何?」
「Aランクです。ですが、ギルドマスターにお願いしてBランク扱いにしてもらってます」
書類を机の上に伏せて置いた後、僕の前まで歩いて来て止まった。身長差は、開くばかりだ。マーティス様みたいに大きければ、護衛としても役に立ちそうなのに。何か僕は返せるだろうか?
一瞬上がった手が、元に戻される。そして軽く握りしめていた。
「明日、冒険者ギルドに行く。シェリルもついてこい」
「はい」
「瞳は焦げ茶色のままにしているか?」
「はい」
「他に、隠している事はないな?」
「はい」
「Aランク……か」
残念そうに聞こえた。Aでは駄目だったのだろうか?
「それを知っているのは、ギルドマスターとマーティス様とリリー様だけです」
ダンジョンに先に行ったことが、不味かったのかも知れない。
「まあいい」
「申し訳ありませんでした」
「いい。とにかく、俺の後ろに控えとけばいい。魔法も、剣もお前に頼ることはない。ギルドに行くのは明日だ。もう下がっていい」
学園で優秀だったと、伯爵様が言っていた。
「分かりました」
頭をもう一度さげて、懐かしいこの部屋を後にした。
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