【本編完結】 美形魔王の弱点は、僕。

Shizukuru

文字の大きさ
14 / 98

12.ギルドへ

 ギルドに行く時の服を着てこい。そう言われて、慌ててカイル様の部屋に向かう。

 ワンショルダーの背中鞄に変えてからは、動きやすくなった。空間魔法付きなので、いざと言う時の野宿セットや野外料理にも対応出来る。薬剤やドライフード、水も入れてる。武器はタガーナイフの替えなどだ。

 指揮棒ワンドは、革製のベルトフォルダーに挿している。持ち手の所が見える形で、サファイアの魔石は隠れている。反対のフォルダーに黒のタガーナイフ。これ位は分かりやすく見せておかないと、ダンジョンに遊びに行く気か? と追い出されかねない。

 長袖、タイトながら伸びのいいズボンをブーツインして、フード付きの薄めのローブを身につけた。

 カイル様は、ラフなシャツにベストだ。細身の双剣を腰ベルト両サイドに帯剣している。

「いくぞ」
「あの、僕と二人だけですか?他に護衛とかは……」

 前を歩くカイル様は、伯爵家の裏口の方へ進んで行く。少し古めの馬車が用意されていた。

「ギルドに行くのに、護衛を連れていく奴はいないだろう? 伯爵家とバレるのも面倒だから。途中までコレで移動する」

「マーティス様は、呼ばなくて良いですか?」

「父上の従者だ。必要ない」

 移動中も視線を合わせる事もなく、ただ二人黙っていた。やたら時間がゆっくりと進み、この沈黙がつらい。喉が張り付いて、言葉を発せないそんな感じだった。
   途中で降ろされて、ギルドへ向かった。カイル様の後ろに付いて行く。なぜかギルドの看板のあるドアからではなく、二階へ上がる外階段を上がっていく。調べが付いているのか詳し過ぎる。

 ドアの前に立ち、カイル様が何事か呟くとゆっくりと扉が開いた。

 赤い髪の美女が、ソファで足を組んでこちらを見つめている。
「シェリル。クエスト受ける気になった?」

 ギルドマスターは、カイル様を無視して僕に話しかけてきた。答えていいのか迷ったが返事をしてみる。

「今日は、付き添いなので」
「そっか。シェリルと行くのは楽しいんだよね」

 カイル様は、表情を崩さない。アルト様に少しだけ近寄った。

「ギルドマスターのアルト、さんですよね?」

 足を組み直したギルマスが、長い髪に指をからませてカイル様の話を軽く流している。

「そうだよ~。が、ここに来る必要あるの? 単なる物好き?」

「学園のレベルでは、実力として足らないので鍛えてもらおうかと」

 指の動きが止まった。

「なら、守りたいものはある?」
「どうでしょうか……」

「ない? 私の所に来るのはね。家族を養うため、大切な人を守るため、皆必死な奴が来る。生きるために必死なのが。貴族で不自由してない奴が遊びで来るな。守るものがないなら、ただの死に急ぐバカだ。来なくていい」

 カイル様の表情が変わり、二人の空気が悪くなってきた。ギルマスに嫌われでもしたら、他の冒険者も敵にしてしまう。

「シェリルは、恩を返したい人のため役立とうとしてる。強くなりたいって分かるけど……お前は、なんなの?」

「シェリル、受付のところで待ってろ。目立つなよ」

「──はい」
 何も言えない。ただ黙ってこの部屋から出ていった。



 ◇◇◇

 確かに、カイル様は無理してダンジョンなんて行く必要がない。長兄様の補佐も充分出来る人だ。

「僕が、強さをひけらかしてる様に見えた?  やっぱり一緒にいると、怒らせてしまう」

 (伯爵家から出るべきかな)

 隅にあるテーブルに、邪魔にならないよう座っているつもりだった。ガラの悪い男が二人同じテーブルにつく。

 クエストの相談でもするのかな?なら、席を外れようと思った時肩を抱かれてしまった。

「──何ですか?」
「あ、お前男か? まあいいや。こんな所に子どもが、来たら危ないだろう?」

 太った男の汗臭さに気持ちが悪くなる。もう一人の髭のある人に、ジロジロと顔を見られて不快としか言いようがない。

「家まで送ってやるぜ。安くしとく」

「人を待ってるので、ここが邪魔なら席を譲ります」

「お前、俺達を知らないのか?ガキが!」
 本当に目立ちたくない。外で……対応したらいいかな。
 二階の階段の所。アルト様とカイル様だ。何かを話してる。

 カイル様に睨まれてる。外に……そう思っていた。
 目の前に移動してきたカイル様が、髭の男を吹き飛ばした。そして、僕の肩を抱いていた男の腕を取ると躊躇いなく折ったのだ。
 その音が部屋に響いた。







あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

「大人扱いしていい?」〜純情当主、執務室で策士な従兄の『相性確認』にハメられる〜

中山(ほ)
BL
「ルイン、少し口開けてみて」 仕事終わりの静かな執務室。 差し入れの食事と、ポーションの瓶。 信頼していた従兄のトロンに誘われるまま、 ルインは「大人の相性確認」を始めることになる。

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

クールな義兄の愛が重すぎる ~有能なおにいさまに次期当主の座を譲ったら、求婚されてしまいました~

槿 資紀
BL
イェント公爵令息のリエル・シャイデンは、生まれたときから虚弱体質を抱えていた。 公爵家の当主を継ぐ日まで生きていられるか分からないと、どの医師も口を揃えて言うほどだった。 そのため、リエルの代わりに当主を継ぐべく、分家筋から養子をとることになった。そうしてリエルの前に表れたのがアウレールだった。 アウレールはリエルに献身的に寄り添い、懸命の看病にあたった。 その甲斐あって、リエルは奇跡の回復を果たした。 そして、リエルは、誰よりも自分の生存を諦めなかった義兄の虜になった。 義兄は容姿も能力も完全無欠で、公爵家の次期当主として文句のつけようがない逸材だった。 そんな義兄に憧れ、その後を追って、難関の王立学院に合格を果たしたリエルだったが、入学直前のある日、現公爵の父に「跡継ぎをアウレールからお前に戻す」と告げられ――――。 完璧な義兄×虚弱受け すれ違いラブロマンス