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1.嫌われ悪役令息でした
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それぞれの家格や爵位に合わせた寮の中、学園生徒には個室が振り分けられていた。
金銭的援助が必要な男爵家や平民には、特待生枠の寮もある。能力がある者に、王立学園は平等に門が開かれている。
ただし伯爵家以上の高位貴族のみ、専属の従者一人と共に入寮してもいいことになっている。隣接する部屋に従者用の個室があり、警護以外に身の回りの世話ができるようになっていた。
ジェラルドは迷わず、メイナードを連れてきた。教科書や制服を確認している横で、クローゼットの中の私服や小物を、メイナードはチェックしてくれている。
ようやく片付けの目処がたち、休憩することになった。紅茶をいれてくれたので、二人でソファに腰掛けた。ジェラルドは、疲れて脱力気味でソファの背に身を委ねた。
メイナードは座ることを拒んだが、他に誰も見ていないのと、寮生活の間は友人のようにして欲しいと半ば強制的に座らせた。
「メイが、一緒に来てくれてよかった」
「──はい」
メイナードの所作は洗練されているので、貴族の落とし胤ではないかとジェラルド思っている。ヴィオレット侯爵家に彼が連れてこられてから、侯爵の彼に対する態度が違うことも知っている。
ただ彼が言えないことを、聞く訳にもいかない。それに誰よりも誠実なメイナードだけには、嫌われたくなかった。
「メイ……あのさ。部屋にいる時だけでも、言葉をくずしてて欲しいんだ。きっとクラス分けしたら、殿下と同じクラスだと思うんだよね。ほんとしんどい。自分の部屋にいる時くらい気を張りたくないんだ」
「はい」
メイナードも表情筋が死んでる方だが、わずかに目元が優しくなったのが、ジェラルドにはわかる。
顔を半分隠してるけど、ほんと美形だなど、つい見惚れてしまうくらいには気に入っている。
「だから……ま、おいおいかな。友人ぽく、軽口言ったりできたらいいな」
「なら……歌は、聞きたい、です」
「メイは僕の歌声……ほんと好きだよね。いいよ。昔は庭でよく歌ってたってみたいだよね。邸の皆は覚えてるのかな? 小さいころは下手だったろうから、忘れて欲しいけど」
無意識に鼻歌だったり、お風呂で歌ったり……メイには聞こえてるはずだ。ジェラルドは、気恥ずかしくなって口元を片手で隠した。改めて言われるとむずがゆい。
「──歌声好きです」
「ああ、もう。恥ずかしいって。褒められるの慣れないから、ほんと照れるからやめて」
不思議と耳に残っている歌があって、それを自然と口ずさんでしまう。人付き合いを諦めていて、上手く話せないからか歌うのは好きだ。ジェラルドが伝えきれない想いを、歌詞に乗せることができるから。
殿下のせいで、同年代の友人ができなかった。悪い噂のせいで距離をとられてしまう。クラス分けをしたところで、きっとジェラルドは孤立させられる気がする。
「侯爵家から婚約解消を言うのは難しいけど……恋人の中の一人を、相手として薦めていけば丸く収まるんじゃないかな」
婚約者からは解放されたい。学園で本当の親友……までは行かなくても、同年代の友人をジェラルドも作りたいと思っている。
「信用できる友人も欲しいし……こい……」
恋人も欲しい。浮気せず誠実で、傍に居てくれる人がいい。
──バカだな。そんな人いる訳ない。
あんなに好きだって言ってくれた人から、お前は裏切られていただろう?
ジェラルドの脳裏に何かが浮かび消える。
「ジェラルド様?」
「──い、や。なんでもない」
「顔色が……悪いかと」
「なんだろう。何か……忘れてる気がする」
だいたい、婚約者のクリス殿下に好きだとか言われことも、大切にされたこともない。
メイナードを見ると、なぜか彼の方が顔色が変わったように見えた。
「メイ?」
「ジェラルド様──何か、心配事が?」
「う、うん。なんか、もやもやしただけだよ。はは、きっと……クリス殿下に会いたくないだけだから。なるべく、メイは傍にいて」
「わかりました」
「わかった、って言えばいいんだよ」
(メイナードは、信じていいよね? 裏切ったりしないよね?)
「──歌ってもいい?」
メイナードが頷いて、僅かだけど嬉しそうに笑ったようにみえた。
金銭的援助が必要な男爵家や平民には、特待生枠の寮もある。能力がある者に、王立学園は平等に門が開かれている。
ただし伯爵家以上の高位貴族のみ、専属の従者一人と共に入寮してもいいことになっている。隣接する部屋に従者用の個室があり、警護以外に身の回りの世話ができるようになっていた。
ジェラルドは迷わず、メイナードを連れてきた。教科書や制服を確認している横で、クローゼットの中の私服や小物を、メイナードはチェックしてくれている。
ようやく片付けの目処がたち、休憩することになった。紅茶をいれてくれたので、二人でソファに腰掛けた。ジェラルドは、疲れて脱力気味でソファの背に身を委ねた。
メイナードは座ることを拒んだが、他に誰も見ていないのと、寮生活の間は友人のようにして欲しいと半ば強制的に座らせた。
「メイが、一緒に来てくれてよかった」
「──はい」
メイナードの所作は洗練されているので、貴族の落とし胤ではないかとジェラルド思っている。ヴィオレット侯爵家に彼が連れてこられてから、侯爵の彼に対する態度が違うことも知っている。
ただ彼が言えないことを、聞く訳にもいかない。それに誰よりも誠実なメイナードだけには、嫌われたくなかった。
「メイ……あのさ。部屋にいる時だけでも、言葉をくずしてて欲しいんだ。きっとクラス分けしたら、殿下と同じクラスだと思うんだよね。ほんとしんどい。自分の部屋にいる時くらい気を張りたくないんだ」
「はい」
メイナードも表情筋が死んでる方だが、わずかに目元が優しくなったのが、ジェラルドにはわかる。
顔を半分隠してるけど、ほんと美形だなど、つい見惚れてしまうくらいには気に入っている。
「だから……ま、おいおいかな。友人ぽく、軽口言ったりできたらいいな」
「なら……歌は、聞きたい、です」
「メイは僕の歌声……ほんと好きだよね。いいよ。昔は庭でよく歌ってたってみたいだよね。邸の皆は覚えてるのかな? 小さいころは下手だったろうから、忘れて欲しいけど」
無意識に鼻歌だったり、お風呂で歌ったり……メイには聞こえてるはずだ。ジェラルドは、気恥ずかしくなって口元を片手で隠した。改めて言われるとむずがゆい。
「──歌声好きです」
「ああ、もう。恥ずかしいって。褒められるの慣れないから、ほんと照れるからやめて」
不思議と耳に残っている歌があって、それを自然と口ずさんでしまう。人付き合いを諦めていて、上手く話せないからか歌うのは好きだ。ジェラルドが伝えきれない想いを、歌詞に乗せることができるから。
殿下のせいで、同年代の友人ができなかった。悪い噂のせいで距離をとられてしまう。クラス分けをしたところで、きっとジェラルドは孤立させられる気がする。
「侯爵家から婚約解消を言うのは難しいけど……恋人の中の一人を、相手として薦めていけば丸く収まるんじゃないかな」
婚約者からは解放されたい。学園で本当の親友……までは行かなくても、同年代の友人をジェラルドも作りたいと思っている。
「信用できる友人も欲しいし……こい……」
恋人も欲しい。浮気せず誠実で、傍に居てくれる人がいい。
──バカだな。そんな人いる訳ない。
あんなに好きだって言ってくれた人から、お前は裏切られていただろう?
ジェラルドの脳裏に何かが浮かび消える。
「ジェラルド様?」
「──い、や。なんでもない」
「顔色が……悪いかと」
「なんだろう。何か……忘れてる気がする」
だいたい、婚約者のクリス殿下に好きだとか言われことも、大切にされたこともない。
メイナードを見ると、なぜか彼の方が顔色が変わったように見えた。
「メイ?」
「ジェラルド様──何か、心配事が?」
「う、うん。なんか、もやもやしただけだよ。はは、きっと……クリス殿下に会いたくないだけだから。なるべく、メイは傍にいて」
「わかりました」
「わかった、って言えばいいんだよ」
(メイナードは、信じていいよね? 裏切ったりしないよね?)
「──歌ってもいい?」
メイナードが頷いて、僅かだけど嬉しそうに笑ったようにみえた。
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