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1.嫌われ悪役令息でした
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精霊召喚士は、この世界でほんのひと握りしかいないといわれている。とても特別な存在だ。特に上位の精霊と契約すると、加護を利用して災いを避けたり、恩恵をもらって人助けをしたりできる。
魔法のように、持ち前の魔力を対価として消費するのでない。
精霊に選ばれることが前提で、その関係性で力の作用が変わる。
対価が必要ないという力は、誰もが得ることができないから。その存在への尊敬度が違うのだ。
隣国の中でもっとも大きな国が、ブラックエース帝国だ。精霊召喚士を数名抱えている。その影響は大きく、自然災害も他国に比べて少ない。
加護の恩恵により豊かだと評判で、ジェラルドも可能なら帝国に留学したかった。
ライラック・ハートレン男爵令息が、精霊召喚士なら王家が、ほっとくはずがない。
「ハートレン男爵家の血筋から、精霊召喚士が出たなんて、聞いてないけど」
クリス殿下どころか、アレクシス第一王子殿下の婚約者候補に上がってもおかしくない。そんな情報を、ヴィオレット侯爵家が逃したりするはずがない。
「違います。ただ……」
「違う?」
「どうやら、歌で精霊を呼ぶことができると、噂になっています」
「──歌?」
きれいな声は、精霊を呼ぶとも聞いたことがある。本当に実在するとは思っていなかった。
まるでそれは、おとぎ話のようだから。
子供が夢を見ているような話だ。
「精霊はきれいなものが好きらしいもんね。そんなに魅力的な歌声なら、聞いてみたいね。僕に歌を聞かせてくれる人が、いるとは思えないよね」
ジェラルドは嫌われているのだから、ありえないシチュエーションである。
「ありえません」
「どうして? 顔は合わせたことないけど。クリス殿下が気に入ったのなら、外見もいいんじゃないのかな? 歌だって、聞いてみないと否定できないよ」
「歌で精霊を呼べるとしたら、ジェラルド様の方です」
真剣な顔をして、褒めてくれるので思わず頬が熱くなってしまった。
真っ赤になってないといいけれど、褒められ慣れてないから、恥ずかしくて死にそう。
「メイ……大袈裟だよ。もっと上手い人、王国にいるって」
「ジェラルド様の歌声は、届くと思います」
「メイは優しいね。でも、今までもそんなこと起きたことないから。きっとそんな噂をされるライラックは、すごいんじゃないのかな」
「本心です」
寡黙なメイナードが、褒めてくるから……信じてしまいそうになる。
勘違いして調子に乗ったら駄目だ。
期待し過ぎたら、駄目になった時のショックが大きくなる。
(誰かに、酷く裏切られた気がするけど。昔仲良かった子でもいたっけ?)
「メイ。もしも僕が召喚士までいかなくても、精霊の加護をもらってたりしたら……ますます王家から離してもらえなくなるよね? 歌は人前で歌うのやめとくよ。こんな評判の悪い僕が、気に入られるとも思えないけど」
もう関わりたくないのに、逃げられなくなるのは困る。
「──たしかに。厄介かもしれませんね」
でも、逆を言えば、ライラック・ハートレン 男爵令息を薦めるべきだ。クリス殿下とライラックとの交流を、邪魔しないように上手く立ち回っていこう。
(まあ、僕の方が邪魔だ、近寄るなって言われるだけか)
明日のクラス分けで、何かわかるかもしれないから。二人の様子を見てみよう。殿下以外の人には、これ以上嫌われないようにしたいのにな。
ジェラルドのため息の回数は、増えるばかりだ。
これ以上傷つくのも、振り回されるのも、もうたくさんだ。
魔法のように、持ち前の魔力を対価として消費するのでない。
精霊に選ばれることが前提で、その関係性で力の作用が変わる。
対価が必要ないという力は、誰もが得ることができないから。その存在への尊敬度が違うのだ。
隣国の中でもっとも大きな国が、ブラックエース帝国だ。精霊召喚士を数名抱えている。その影響は大きく、自然災害も他国に比べて少ない。
加護の恩恵により豊かだと評判で、ジェラルドも可能なら帝国に留学したかった。
ライラック・ハートレン男爵令息が、精霊召喚士なら王家が、ほっとくはずがない。
「ハートレン男爵家の血筋から、精霊召喚士が出たなんて、聞いてないけど」
クリス殿下どころか、アレクシス第一王子殿下の婚約者候補に上がってもおかしくない。そんな情報を、ヴィオレット侯爵家が逃したりするはずがない。
「違います。ただ……」
「違う?」
「どうやら、歌で精霊を呼ぶことができると、噂になっています」
「──歌?」
きれいな声は、精霊を呼ぶとも聞いたことがある。本当に実在するとは思っていなかった。
まるでそれは、おとぎ話のようだから。
子供が夢を見ているような話だ。
「精霊はきれいなものが好きらしいもんね。そんなに魅力的な歌声なら、聞いてみたいね。僕に歌を聞かせてくれる人が、いるとは思えないよね」
ジェラルドは嫌われているのだから、ありえないシチュエーションである。
「ありえません」
「どうして? 顔は合わせたことないけど。クリス殿下が気に入ったのなら、外見もいいんじゃないのかな? 歌だって、聞いてみないと否定できないよ」
「歌で精霊を呼べるとしたら、ジェラルド様の方です」
真剣な顔をして、褒めてくれるので思わず頬が熱くなってしまった。
真っ赤になってないといいけれど、褒められ慣れてないから、恥ずかしくて死にそう。
「メイ……大袈裟だよ。もっと上手い人、王国にいるって」
「ジェラルド様の歌声は、届くと思います」
「メイは優しいね。でも、今までもそんなこと起きたことないから。きっとそんな噂をされるライラックは、すごいんじゃないのかな」
「本心です」
寡黙なメイナードが、褒めてくるから……信じてしまいそうになる。
勘違いして調子に乗ったら駄目だ。
期待し過ぎたら、駄目になった時のショックが大きくなる。
(誰かに、酷く裏切られた気がするけど。昔仲良かった子でもいたっけ?)
「メイ。もしも僕が召喚士までいかなくても、精霊の加護をもらってたりしたら……ますます王家から離してもらえなくなるよね? 歌は人前で歌うのやめとくよ。こんな評判の悪い僕が、気に入られるとも思えないけど」
もう関わりたくないのに、逃げられなくなるのは困る。
「──たしかに。厄介かもしれませんね」
でも、逆を言えば、ライラック・ハートレン 男爵令息を薦めるべきだ。クリス殿下とライラックとの交流を、邪魔しないように上手く立ち回っていこう。
(まあ、僕の方が邪魔だ、近寄るなって言われるだけか)
明日のクラス分けで、何かわかるかもしれないから。二人の様子を見てみよう。殿下以外の人には、これ以上嫌われないようにしたいのにな。
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