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父上はしばらく黙って、考えているようだった。
もしかしたら、ジェラルドがクリス殿下を好きだと、思い込んでいる可能性がある。ゲーム内の設定ではそうだったから。
「──なるほどね。交流会の報告と少し違うようだね」
「誰が……報告を?」
一緒についてきてたのは、伯爵家に紹介された従者見習いだ。王家に行く時は、この二人が交代で担当していた気がする。
「伯爵家から推薦されてきた、あの二人か。そっか……ジェラルド付きから外す」
「はい」
もしかして、この二人によって隠蔽されて、悪い噂も流されていたのかも。
「やっぱり僕は、嫌われたままなんですね」
ストーリーなのに苦しい。
「殿下は……いや、かばう必要もないな。ジェラルドが嫌がっているなら、交流会も控えていいよ」
ゲームだと、ジェラルドの方がクリス殿下との婚約を望んで、我がままを通していた。今の父上は、王家との繋がりを望んでいるように見えない。
「あの。クリス殿下との婚約しなくても、ヴィオレット侯爵家に影響はありませんか?」
「ないない。ヴィオレット領は隣国とも関係が良くて、逆に羨ましがられてるよ。精霊の加護が戻りそうだしね」
「精霊の加護が?」
「ルドはね……昔……ね。精霊の加護をもらってたんだ。王家もそれを知っていて、婚約の打診をされたことがある。今は加護を失っているから、そこまで強くは言われていない。
戻るかもしれないから、傍に置いておきたいのが、見え隠れしてる状況なんだよ。
加護はおいといて。ルドがクリス殿下を好きだって報告を信じてたんだ。なるほどね、嘘なのか……」
なんか、父上の顔が悪役っぽく見えるのは気のせいじゃないかも、少し室内の温度が下がった気がする。
前の世界で主人公のライラックは、精霊の加護を得ているとか噂があった。スペードニア王国には、魔法師はいても、精霊召喚士はいない。
優秀な精霊召喚士のほとんどが、隣国のブラックエース帝国に所属している。精霊の森があるからだと教えてもらった。
「僕は、精霊召喚士だったのですか?」
「違うよ」
「なら、どうして……加護があったんですか? 加護を失った理由は?一体なんで……」
「ジェラルド待って。今も混乱してるよね? 熱が高かったから、記憶障害の可能性があるって聞いている。仮にも溺れたんだ。精神的なショックが大きい。だからね、ルド。負担がかかるから、普段通り過ごして、自然に思い出した方がいいらしいんだ」
「もしも、思い出せなかったら……」
今回は転生した記憶も、ループの記憶もある。ただその中に加護の記憶はない。
断罪ルートを避けるためにも、情報はたくさん欲しい。
「必要なことなら、自然と思い出すし、要らないものなら覚えていなくていいんだ。私も自分の目で見たわけじゃないから。人伝に聞くと、解釈が間違ってたら困るよね? とにかくまずは休みなさい。それから、殿下との交流会は、行かなくていいから」
「交流会……」
「辛いのに行かせられない」
「いいのですか?」
「ああ。そんな悲しい顔をしてたんだね。将来のためにいいと思っていたが、違ったんだね。行かなくていい」
「──はい」
行かなくていい、それだけで胸がいっぱいになる。
父上の方を見ると、とても優しく微笑んでくれていた。
こんな風に笑えたら、『怖い。冷たい』なんて言われなくて済むのかもしれない。
涙があふれて落ちていく。
貴族として恥ずかしくないようにしてきたのに、ホッとして泣くなんて。
「ルド……」
「えっと……あの。メイ……メイナードは?」
慌てて涙を拭うと、父上の手が目元に触れて、魔法で冷やしてくれる。
「大事な人を護れなかったから、鍛え直すそうだ。私としてもメイナードには、責任と立場を自覚して欲しいからね」
知らなかった。メイナードに大事な人がいたんだ。十五歳のメイナードが、そんな相手をいつ見つけていたのかと不思議に思う。割とずっと一緒にすごしてきたからだ。
三年後の王立学園入学の際に、専属として連れて行くのは止めた方がいいのかもしれない。
メイナードは、『らぶそな』の攻略キャラじゃない。だから、今回も専属にするつもりだったのに。
「王立学園……」
「ルド、学園がどうかした?」
「三年後の王立学園に連れて行く、信用できる従者を、今のうちから育てられないかと思っています」
父上が驚いていたが、この時は本気でメイナードをおいて行こうと思ったのだ。
もしかしたら、ジェラルドがクリス殿下を好きだと、思い込んでいる可能性がある。ゲーム内の設定ではそうだったから。
「──なるほどね。交流会の報告と少し違うようだね」
「誰が……報告を?」
一緒についてきてたのは、伯爵家に紹介された従者見習いだ。王家に行く時は、この二人が交代で担当していた気がする。
「伯爵家から推薦されてきた、あの二人か。そっか……ジェラルド付きから外す」
「はい」
もしかして、この二人によって隠蔽されて、悪い噂も流されていたのかも。
「やっぱり僕は、嫌われたままなんですね」
ストーリーなのに苦しい。
「殿下は……いや、かばう必要もないな。ジェラルドが嫌がっているなら、交流会も控えていいよ」
ゲームだと、ジェラルドの方がクリス殿下との婚約を望んで、我がままを通していた。今の父上は、王家との繋がりを望んでいるように見えない。
「あの。クリス殿下との婚約しなくても、ヴィオレット侯爵家に影響はありませんか?」
「ないない。ヴィオレット領は隣国とも関係が良くて、逆に羨ましがられてるよ。精霊の加護が戻りそうだしね」
「精霊の加護が?」
「ルドはね……昔……ね。精霊の加護をもらってたんだ。王家もそれを知っていて、婚約の打診をされたことがある。今は加護を失っているから、そこまで強くは言われていない。
戻るかもしれないから、傍に置いておきたいのが、見え隠れしてる状況なんだよ。
加護はおいといて。ルドがクリス殿下を好きだって報告を信じてたんだ。なるほどね、嘘なのか……」
なんか、父上の顔が悪役っぽく見えるのは気のせいじゃないかも、少し室内の温度が下がった気がする。
前の世界で主人公のライラックは、精霊の加護を得ているとか噂があった。スペードニア王国には、魔法師はいても、精霊召喚士はいない。
優秀な精霊召喚士のほとんどが、隣国のブラックエース帝国に所属している。精霊の森があるからだと教えてもらった。
「僕は、精霊召喚士だったのですか?」
「違うよ」
「なら、どうして……加護があったんですか? 加護を失った理由は?一体なんで……」
「ジェラルド待って。今も混乱してるよね? 熱が高かったから、記憶障害の可能性があるって聞いている。仮にも溺れたんだ。精神的なショックが大きい。だからね、ルド。負担がかかるから、普段通り過ごして、自然に思い出した方がいいらしいんだ」
「もしも、思い出せなかったら……」
今回は転生した記憶も、ループの記憶もある。ただその中に加護の記憶はない。
断罪ルートを避けるためにも、情報はたくさん欲しい。
「必要なことなら、自然と思い出すし、要らないものなら覚えていなくていいんだ。私も自分の目で見たわけじゃないから。人伝に聞くと、解釈が間違ってたら困るよね? とにかくまずは休みなさい。それから、殿下との交流会は、行かなくていいから」
「交流会……」
「辛いのに行かせられない」
「いいのですか?」
「ああ。そんな悲しい顔をしてたんだね。将来のためにいいと思っていたが、違ったんだね。行かなくていい」
「──はい」
行かなくていい、それだけで胸がいっぱいになる。
父上の方を見ると、とても優しく微笑んでくれていた。
こんな風に笑えたら、『怖い。冷たい』なんて言われなくて済むのかもしれない。
涙があふれて落ちていく。
貴族として恥ずかしくないようにしてきたのに、ホッとして泣くなんて。
「ルド……」
「えっと……あの。メイ……メイナードは?」
慌てて涙を拭うと、父上の手が目元に触れて、魔法で冷やしてくれる。
「大事な人を護れなかったから、鍛え直すそうだ。私としてもメイナードには、責任と立場を自覚して欲しいからね」
知らなかった。メイナードに大事な人がいたんだ。十五歳のメイナードが、そんな相手をいつ見つけていたのかと不思議に思う。割とずっと一緒にすごしてきたからだ。
三年後の王立学園入学の際に、専属として連れて行くのは止めた方がいいのかもしれない。
メイナードは、『らぶそな』の攻略キャラじゃない。だから、今回も専属にするつもりだったのに。
「王立学園……」
「ルド、学園がどうかした?」
「三年後の王立学園に連れて行く、信用できる従者を、今のうちから育てられないかと思っています」
父上が驚いていたが、この時は本気でメイナードをおいて行こうと思ったのだ。
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