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2.ループしました
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しばらく考えていたメイナードが、過呼吸になった時の話を始めた。
「ジェラルド様が、過呼吸になり不安定になった時に、話をしたこと覚えていますか?」
「僕が刺された時のことを覚えているって、言われて動揺したんだ」
本当にループの瞬間があの刺された時なら、ヴィオレット侯爵家や父上に危害は加わってはいないと思う。
だけど、もう少し先があったとしたら……ヴィオレット侯爵家は、王家からひどい目にあったりしてないだろうか?
従者として付き添ってきたメイナードにだって、酷い罰が与えられていた可能性がある。
「あの、でも公言できないことは言わないで。本当に言える時になった時に教えて欲しい。罰とかそんなの受けて欲しくないから」
「なら、言えることだけにします。見てしまったのは本当です。おいて行かれましたので、気がついてすぐに追いかけました」
「うん」
「俺には理解できない話をしていて、悪役令息とか……リセットボタンとか。それで対応が遅れました」
メイナードが悔しそうな、傷ついたような顔になっている。
「あいつが、ジェラルド様を刺してそのナイフを抜き取るまでが一瞬でした。本来なら精霊の加護を持つジェラルド様なら、あんな悪意から身を護ってもらえたんです」
「精霊の加護ってそんなにすごいの? 精霊の加護をもらった記憶がないけど」
ひどく後悔しているのか、メイナードは泣きそうな顔をしていた。そしてジェラルドの手を、強く握りしめる。
「昔、精霊召喚を失敗したんです。小さいころから記憶力も良くて、魔法もなんでもそつなくこなせて、自意識過剰で生意気だったんです」
今のメイナードからは、想像できないような幼少期の話だ。ただ黙ってその言葉を聞くことにした。
「ヴィオレット侯爵と俺の父は友人です。十歳の時、ここに遊びに連れて来てもらった。ジェラルド様に見せたくて……調子に乗って召喚の儀を試しました。その時に、呼び出した中級の炎の精霊が、俺の態度に腹を立てて……周辺を炎に包みました。精霊の炎は魔法では消せません。森が焼けてしまうのが恐ろしかった。それを、ジェラルド様が水の上位精霊に頼んで、炎を消してくれました」
メイナードが十歳頃なら、ジェラルドは八歳くらいだ。その頃に精霊を二人とも呼べたってことになる。
「中級の炎の精霊が、ジェラルド様に敵意を見せたため、水の精霊がジェラルド様を全力でかばったんです。炎の消火に力を使った後だったから、水の精霊が傷ついてしまった。炎の精霊王と水の精霊王まで出て来てしまい、俺を処分するような話になりました。その時、ジェラルド様の歌で、二人の王の怒りを鎮めてもらったんです。だからジェラルド様の水の精霊が回復していれば、怪我などしなかったんです」
そんなことがあったんだ。
「もしも消えてなかったら、加護で護ってくれたってこと?」
「そうです」
「その、全く──精霊王の話は、覚えてないけど、僕が歌で本当に?」
「水の精霊は、精霊たちの中でも穏やかです。特に水の精霊王は、ジェラルド様を大切にしていました。でも傷ついた精霊を連れて帰ってしまった」
「そうなんだ。いつか……僕とメイナードを助けてくれた水の精霊に、もう一度会えるといいね」
「精霊は、時間の感覚が違うので……いつ会えるかわかりません。その時の罰として瞳の色を奪われて、紅い瞳になったんです。それでも、ジェラルド様がいなければ、俺は死んでいました。だから、迷惑をかけないように、距離を置きながら、従者をしてました」
「──そうなんだ」
綺麗な色でも、本来の色じゃないのなら……隠したいんだ。それに以前のメイナードが、寡黙だった理由もわかった。
「過去に戻ってせっかく助かったジェラルド様が、この先に命を奪われてしまうことがないように、傍にいることを許してください」
「ね。メイナードは、今までの話で、罰を受けたりはしない? 嘘はつかないでね。その、刺された後は……どうなったの?」
「大丈夫です。刺されたジェラルド様に駆け寄った後に、光に包まれて、ライラックを見たら黒い靄に包まれてました。その後は、時を戻って今です」
それなら、ヴィオレット侯爵家が罰を与えられる前にこっちにきたのなら、少しは気持ちが救われる気がした。
ゲームの間、卒業するまでなら頼ってもいいのかな? 卒業すれば、強制力から逃れられるはずだから。
「学園を卒業するまで、従者でいてくれる?」
でも頼り過ぎてメイナードを、好きになったりしたらまずい。
つい優しくされると、勘違いしてしまうから。
絶対に勘違いしないようにしよう。
そうジェラルドは誓って、手を差し出した。
「ジェラルド様が、過呼吸になり不安定になった時に、話をしたこと覚えていますか?」
「僕が刺された時のことを覚えているって、言われて動揺したんだ」
本当にループの瞬間があの刺された時なら、ヴィオレット侯爵家や父上に危害は加わってはいないと思う。
だけど、もう少し先があったとしたら……ヴィオレット侯爵家は、王家からひどい目にあったりしてないだろうか?
従者として付き添ってきたメイナードにだって、酷い罰が与えられていた可能性がある。
「あの、でも公言できないことは言わないで。本当に言える時になった時に教えて欲しい。罰とかそんなの受けて欲しくないから」
「なら、言えることだけにします。見てしまったのは本当です。おいて行かれましたので、気がついてすぐに追いかけました」
「うん」
「俺には理解できない話をしていて、悪役令息とか……リセットボタンとか。それで対応が遅れました」
メイナードが悔しそうな、傷ついたような顔になっている。
「あいつが、ジェラルド様を刺してそのナイフを抜き取るまでが一瞬でした。本来なら精霊の加護を持つジェラルド様なら、あんな悪意から身を護ってもらえたんです」
「精霊の加護ってそんなにすごいの? 精霊の加護をもらった記憶がないけど」
ひどく後悔しているのか、メイナードは泣きそうな顔をしていた。そしてジェラルドの手を、強く握りしめる。
「昔、精霊召喚を失敗したんです。小さいころから記憶力も良くて、魔法もなんでもそつなくこなせて、自意識過剰で生意気だったんです」
今のメイナードからは、想像できないような幼少期の話だ。ただ黙ってその言葉を聞くことにした。
「ヴィオレット侯爵と俺の父は友人です。十歳の時、ここに遊びに連れて来てもらった。ジェラルド様に見せたくて……調子に乗って召喚の儀を試しました。その時に、呼び出した中級の炎の精霊が、俺の態度に腹を立てて……周辺を炎に包みました。精霊の炎は魔法では消せません。森が焼けてしまうのが恐ろしかった。それを、ジェラルド様が水の上位精霊に頼んで、炎を消してくれました」
メイナードが十歳頃なら、ジェラルドは八歳くらいだ。その頃に精霊を二人とも呼べたってことになる。
「中級の炎の精霊が、ジェラルド様に敵意を見せたため、水の精霊がジェラルド様を全力でかばったんです。炎の消火に力を使った後だったから、水の精霊が傷ついてしまった。炎の精霊王と水の精霊王まで出て来てしまい、俺を処分するような話になりました。その時、ジェラルド様の歌で、二人の王の怒りを鎮めてもらったんです。だからジェラルド様の水の精霊が回復していれば、怪我などしなかったんです」
そんなことがあったんだ。
「もしも消えてなかったら、加護で護ってくれたってこと?」
「そうです」
「その、全く──精霊王の話は、覚えてないけど、僕が歌で本当に?」
「水の精霊は、精霊たちの中でも穏やかです。特に水の精霊王は、ジェラルド様を大切にしていました。でも傷ついた精霊を連れて帰ってしまった」
「そうなんだ。いつか……僕とメイナードを助けてくれた水の精霊に、もう一度会えるといいね」
「精霊は、時間の感覚が違うので……いつ会えるかわかりません。その時の罰として瞳の色を奪われて、紅い瞳になったんです。それでも、ジェラルド様がいなければ、俺は死んでいました。だから、迷惑をかけないように、距離を置きながら、従者をしてました」
「──そうなんだ」
綺麗な色でも、本来の色じゃないのなら……隠したいんだ。それに以前のメイナードが、寡黙だった理由もわかった。
「過去に戻ってせっかく助かったジェラルド様が、この先に命を奪われてしまうことがないように、傍にいることを許してください」
「ね。メイナードは、今までの話で、罰を受けたりはしない? 嘘はつかないでね。その、刺された後は……どうなったの?」
「大丈夫です。刺されたジェラルド様に駆け寄った後に、光に包まれて、ライラックを見たら黒い靄に包まれてました。その後は、時を戻って今です」
それなら、ヴィオレット侯爵家が罰を与えられる前にこっちにきたのなら、少しは気持ちが救われる気がした。
ゲームの間、卒業するまでなら頼ってもいいのかな? 卒業すれば、強制力から逃れられるはずだから。
「学園を卒業するまで、従者でいてくれる?」
でも頼り過ぎてメイナードを、好きになったりしたらまずい。
つい優しくされると、勘違いしてしまうから。
絶対に勘違いしないようにしよう。
そうジェラルドは誓って、手を差し出した。
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