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第1章
16 発情④
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むせ返るような甘い匂い。
ライラの両の手が、俺の顔へと伸ばされて引き寄せられる。
唇が重なる。
甘い、この上なく甘美な口付け。
何度も口を吸われて、少し隙間を開ければ舌が中へと入り込んできた。
「ライラ!」
ピタリと、動きが止まった。声の方へと振り返る。
「に、いさん?」
「本当に、本当にソイツがライラの相手なのか?運命って分かるのか?単に、アルファだから……だろ?他のアルファが来ても同じ反応するんだ。王子とか、そんなのきっとライラが辛い思いをするだけだ。俺達と、この国を出て行こう?なっ、そうしょう!」
「──出ていく?」
皆がライラに注目をする。
トロンとした顔のまま。また、ギュッと抱きついてくる。
「嫌」
「ライラ!」
「見つけたんだ……俺の半身」
「ライ……」
トン……と、ロイドの肩にマリナが手を置いた。
ロイドは、強く唇を噛んでいる。
「ロイド、本当に運命なら……例え誓約をしたとしても……惹かれ合う。ただのアルファならともかく……運命の番に出会うなんて0に近いのよ。出逢えたとしてもお互いが番える年齢で出会うことだって難しいのよ。それだけ奇跡的な事よね、運命的な2人なのかもね」
マリナの手を軽く払い退けて、こちらを見て怒りを口にする。
「王子とか、そんなのライラが苦労するのが目に見えてるじゃないか。触手魔獣の影響だって否定出来ない。とにかく、今すぐに番になるなんて認めない!」
黙って見ていた、ベルグが口を挟んで来た。
「ロイド。陛下と王妃を見たら信じられるよ。2人は、引き剥がすことなんて出来なかったんだ」
まるで見てきたようにそう言った。
「まるで、見ていた様な言い方ですね」
レンドルも同じように思ったんだな。
「つまり。かつて無敗と言われた双剣の騎士は、ベルグさん貴方の事ですよね?」
ピクリと、ベルグの眉が動いた。
「その名を知っているんだな」
「まぁ。王子付きですから、ね」
騎士団にいたのか?一体彼らは何者なんだ。
「ああもう。いい?今は許可できないわ。分かるでしょう?宰相閣下が娘を王子様に押し付けたいなら、何かしてくる可能性が大きいし。触手魔獣の影響による酩酊状態なら、番うのは駄目よ。ロイド、ネックガードをライラにつけて」
「このまま、引き剥がされたら精神的な影響が起きてしまう!」
ヒート状態が続いて興奮状態のままにするのか?抑えるには……
「ヒートは、抑えてあげて。もう薬はこれ以上は身体に影響が出るから使えないわ。ただ、今回の発情期にうなじを噛まないで。お願いだから、ヒート後に冷静なライラと話し合いをしましょう。その為に付けるの」
良かった。俺にも限界が来てしまう所だった。
「私が使用している別邸にライラを連れて行きます。今回うなじは絶対に噛みません。ネックガード付けてあげて下さい」
ロイドが忌々しそうに、部屋を出て行く。つまり、用意をしてくれるのだろう。
擦り寄っては、甘噛みをしてくる。可愛くて仕方がない。恐ろしく長く感じてしまう。早く、してくれ。
「では、言の葉蝶で陛下に連絡しますね。私は警護を固めます。他に漏れないように徹底しますので、ベルグさん達も協力して下さい」
「───ライラに酷いことをしたら、絶対に許さないからな」
手には、とても綺麗な青い布のようなネックガードを持っている。多分、布では無いな。きっと魔術で何重にも強化されているのだろう。それでも、ライラが痛がらない様に柔らかくしているのだろうな。
どれだけ、彼らがライラを想っているのか分かってしまう。
ロイドが、近づいて来てライラの首に装着した。マリナが手を当てて何かを呟く。
「宰相の娘をまず片付けて。そしてライラが、本当に貴方を選んだ時に解除するわ。ふふ。貴方がいる時は、目立つようにしとくわね。簡単に番わせないから。
お店にいる時は、目立たない様にしなきゃ狙われちゃうわねぇ。ロイドしっかり、ガードするのよ」
焦燥感さえ漂っていたのに……今は不敵に笑う。
「俺が納得出来なきゃ、ライラは渡さない」
「分かった、約束する」
そうして、俺とライラとレンドルは転移する。
ロイドの言の葉蝶も連れて行くことになった。
ライラの両の手が、俺の顔へと伸ばされて引き寄せられる。
唇が重なる。
甘い、この上なく甘美な口付け。
何度も口を吸われて、少し隙間を開ければ舌が中へと入り込んできた。
「ライラ!」
ピタリと、動きが止まった。声の方へと振り返る。
「に、いさん?」
「本当に、本当にソイツがライラの相手なのか?運命って分かるのか?単に、アルファだから……だろ?他のアルファが来ても同じ反応するんだ。王子とか、そんなのきっとライラが辛い思いをするだけだ。俺達と、この国を出て行こう?なっ、そうしょう!」
「──出ていく?」
皆がライラに注目をする。
トロンとした顔のまま。また、ギュッと抱きついてくる。
「嫌」
「ライラ!」
「見つけたんだ……俺の半身」
「ライ……」
トン……と、ロイドの肩にマリナが手を置いた。
ロイドは、強く唇を噛んでいる。
「ロイド、本当に運命なら……例え誓約をしたとしても……惹かれ合う。ただのアルファならともかく……運命の番に出会うなんて0に近いのよ。出逢えたとしてもお互いが番える年齢で出会うことだって難しいのよ。それだけ奇跡的な事よね、運命的な2人なのかもね」
マリナの手を軽く払い退けて、こちらを見て怒りを口にする。
「王子とか、そんなのライラが苦労するのが目に見えてるじゃないか。触手魔獣の影響だって否定出来ない。とにかく、今すぐに番になるなんて認めない!」
黙って見ていた、ベルグが口を挟んで来た。
「ロイド。陛下と王妃を見たら信じられるよ。2人は、引き剥がすことなんて出来なかったんだ」
まるで見てきたようにそう言った。
「まるで、見ていた様な言い方ですね」
レンドルも同じように思ったんだな。
「つまり。かつて無敗と言われた双剣の騎士は、ベルグさん貴方の事ですよね?」
ピクリと、ベルグの眉が動いた。
「その名を知っているんだな」
「まぁ。王子付きですから、ね」
騎士団にいたのか?一体彼らは何者なんだ。
「ああもう。いい?今は許可できないわ。分かるでしょう?宰相閣下が娘を王子様に押し付けたいなら、何かしてくる可能性が大きいし。触手魔獣の影響による酩酊状態なら、番うのは駄目よ。ロイド、ネックガードをライラにつけて」
「このまま、引き剥がされたら精神的な影響が起きてしまう!」
ヒート状態が続いて興奮状態のままにするのか?抑えるには……
「ヒートは、抑えてあげて。もう薬はこれ以上は身体に影響が出るから使えないわ。ただ、今回の発情期にうなじを噛まないで。お願いだから、ヒート後に冷静なライラと話し合いをしましょう。その為に付けるの」
良かった。俺にも限界が来てしまう所だった。
「私が使用している別邸にライラを連れて行きます。今回うなじは絶対に噛みません。ネックガード付けてあげて下さい」
ロイドが忌々しそうに、部屋を出て行く。つまり、用意をしてくれるのだろう。
擦り寄っては、甘噛みをしてくる。可愛くて仕方がない。恐ろしく長く感じてしまう。早く、してくれ。
「では、言の葉蝶で陛下に連絡しますね。私は警護を固めます。他に漏れないように徹底しますので、ベルグさん達も協力して下さい」
「───ライラに酷いことをしたら、絶対に許さないからな」
手には、とても綺麗な青い布のようなネックガードを持っている。多分、布では無いな。きっと魔術で何重にも強化されているのだろう。それでも、ライラが痛がらない様に柔らかくしているのだろうな。
どれだけ、彼らがライラを想っているのか分かってしまう。
ロイドが、近づいて来てライラの首に装着した。マリナが手を当てて何かを呟く。
「宰相の娘をまず片付けて。そしてライラが、本当に貴方を選んだ時に解除するわ。ふふ。貴方がいる時は、目立つようにしとくわね。簡単に番わせないから。
お店にいる時は、目立たない様にしなきゃ狙われちゃうわねぇ。ロイドしっかり、ガードするのよ」
焦燥感さえ漂っていたのに……今は不敵に笑う。
「俺が納得出来なきゃ、ライラは渡さない」
「分かった、約束する」
そうして、俺とライラとレンドルは転移する。
ロイドの言の葉蝶も連れて行くことになった。
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