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第4章(終章)
番外編 巣作り①
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忙しいのは知っていたけど……深夜にベッドに来て早朝にはいなくなってしまう。国賓が滞在する為に、その機嫌を損ねないようにと準備を念入りにしてるそうだ。
嫌な予感がする。ヒートが、早まりそうなんだ。この宮は、完全防御と言っていいくらい防御がされている。
俺のフェロモンが漏れないようにする為だ。王妃様の所もそうらしい。
でも今は、陛下の仕事が少しづつジェイに引き継がれている。この先彼は、王になるのだから仕方がないことだ。
ただオメガの王子妃が居るために、ジェイの弟にも作業を振り分けているみたいだ。
発情期で滞りが出るから。もちろん子供を望まれているのも分かっている。
「今回……早まったら、不味い」
貿易交渉なのに、外交もまともに出来ない上に、挨拶さえ今回は難しいかもしれない。
「うさぎ亭に戻っておく方がいいのかな?」
晩餐会に出なかったら問題になる?魔王との約束があるから、側妃を迎える事はない。
だけど時々聞こえてくる側妃の仕事としての外交補助を貴族令嬢にさせてはどうかと言う話に胸が痛む。
元は平民だから、見た目だけの王子妃では、外交をこなせないという事だ。
「もう病気って事にしてもらう?」
侯爵家の令嬢が呼ばれても仕方ないよね。ずっと王子妃になる為に教育を受けて来たんだから。
ダンスも練習したけど、先生はため息ばかりついてた。そんなに、ひどいかな?
「──寂しくて、帰りたくなってる。馬鹿だな」
頑張ろう。せめてヒートがバレないように抑制剤を多めに飲んでおこう。外交が始まったらジェイは、ここにも戻って来れないはずだから。薬の事はきっとばれない。
月が綺麗だな。
薬を口に含んだ。まだ戻らない部屋主を待ちながら、窓の外をただずっと眺めていた。
どれくらい時間が経ったのか気がつけばベッドの中にいた。そして、部屋から出ていく後ろ姿。
ここに運んでくれたんだ。俺がいたらきっと休まらないな。
クローゼットの服をバッグに詰め込む。
ジェイのクローゼットからシャツを借りて行こう。
クローゼットを開けると、いい匂いがした。一枚だけ。そう言い聞かせて、手を伸ばす。
「一番いい匂いがするのあるかな?」
鼻を寄せて、匂いを確認すると……ドクンと心臓が反応する。
「ジェイ」
シャツを数枚抱きしめてその匂いに包まれる。ドクンドクンと脈打つ心臓に……
「やばい」
お腹の奥が疼きはじめた。多幸感と罪悪感。何やってるの俺?
逃げなきゃ……ここにいたら、迷惑なだけだ。外交の代わりなんていっぱいいるよ。シャツを詰め込み、下着も欲しくて押し込む。一週間したら戻るって手紙を残す。
息苦しい。うさぎ亭じゃ……すぐ回収されそう。魔王のとこに行ったらいいかな?
″父さん″
現れたその人は、優しく笑って抱きかかえてくれた。
◇◇◇
「ライリオラ様が反応されません。何かあったのかも知れません」
突然、護衛騎士からの伝言が入った。ずっと忙しさにかまけて、ほんの数時間の仮眠の際に抱きしめるだけだった。昨晩も出窓の所でうずくまって寝ていた。ずっと待っていたんだろう。
王子妃教育も頑張っていると聞いていた。ダンスも美し過ぎると講師もため息しか出ないと言っていた。
「倒れているのか?」
オメガのライラの室内にアルファの者は行かせる訳には行かない。能力的には護衛はどうしてもアルファになってしまうのがもどかしい。
嫌な予感しかしない。
第二王子にこの場を頼み急ぎ部屋へ向かう。室内に争った形跡はない。ドアや窓から出て行った様子もない。
少し、クローゼットの扉が開いていた。中にいるのか?
扉をゆっくり開けると、シャツなどが散乱している。
「何があった?──この匂い」
ヒートが起きかけた?まだ先だったんじゃ……しまった。気が付いてやれなかった。
巣作りをしようとしたんだ。
「何処に行ったんだ」
うさぎ亭では、ないな。なら、魔王か。
くそ。
連れ戻しに行かなければ、あんな姿を他のやつに見られたくない。
「返してくれ」
そう呟いた。
嫌な予感がする。ヒートが、早まりそうなんだ。この宮は、完全防御と言っていいくらい防御がされている。
俺のフェロモンが漏れないようにする為だ。王妃様の所もそうらしい。
でも今は、陛下の仕事が少しづつジェイに引き継がれている。この先彼は、王になるのだから仕方がないことだ。
ただオメガの王子妃が居るために、ジェイの弟にも作業を振り分けているみたいだ。
発情期で滞りが出るから。もちろん子供を望まれているのも分かっている。
「今回……早まったら、不味い」
貿易交渉なのに、外交もまともに出来ない上に、挨拶さえ今回は難しいかもしれない。
「うさぎ亭に戻っておく方がいいのかな?」
晩餐会に出なかったら問題になる?魔王との約束があるから、側妃を迎える事はない。
だけど時々聞こえてくる側妃の仕事としての外交補助を貴族令嬢にさせてはどうかと言う話に胸が痛む。
元は平民だから、見た目だけの王子妃では、外交をこなせないという事だ。
「もう病気って事にしてもらう?」
侯爵家の令嬢が呼ばれても仕方ないよね。ずっと王子妃になる為に教育を受けて来たんだから。
ダンスも練習したけど、先生はため息ばかりついてた。そんなに、ひどいかな?
「──寂しくて、帰りたくなってる。馬鹿だな」
頑張ろう。せめてヒートがバレないように抑制剤を多めに飲んでおこう。外交が始まったらジェイは、ここにも戻って来れないはずだから。薬の事はきっとばれない。
月が綺麗だな。
薬を口に含んだ。まだ戻らない部屋主を待ちながら、窓の外をただずっと眺めていた。
どれくらい時間が経ったのか気がつけばベッドの中にいた。そして、部屋から出ていく後ろ姿。
ここに運んでくれたんだ。俺がいたらきっと休まらないな。
クローゼットの服をバッグに詰め込む。
ジェイのクローゼットからシャツを借りて行こう。
クローゼットを開けると、いい匂いがした。一枚だけ。そう言い聞かせて、手を伸ばす。
「一番いい匂いがするのあるかな?」
鼻を寄せて、匂いを確認すると……ドクンと心臓が反応する。
「ジェイ」
シャツを数枚抱きしめてその匂いに包まれる。ドクンドクンと脈打つ心臓に……
「やばい」
お腹の奥が疼きはじめた。多幸感と罪悪感。何やってるの俺?
逃げなきゃ……ここにいたら、迷惑なだけだ。外交の代わりなんていっぱいいるよ。シャツを詰め込み、下着も欲しくて押し込む。一週間したら戻るって手紙を残す。
息苦しい。うさぎ亭じゃ……すぐ回収されそう。魔王のとこに行ったらいいかな?
″父さん″
現れたその人は、優しく笑って抱きかかえてくれた。
◇◇◇
「ライリオラ様が反応されません。何かあったのかも知れません」
突然、護衛騎士からの伝言が入った。ずっと忙しさにかまけて、ほんの数時間の仮眠の際に抱きしめるだけだった。昨晩も出窓の所でうずくまって寝ていた。ずっと待っていたんだろう。
王子妃教育も頑張っていると聞いていた。ダンスも美し過ぎると講師もため息しか出ないと言っていた。
「倒れているのか?」
オメガのライラの室内にアルファの者は行かせる訳には行かない。能力的には護衛はどうしてもアルファになってしまうのがもどかしい。
嫌な予感しかしない。
第二王子にこの場を頼み急ぎ部屋へ向かう。室内に争った形跡はない。ドアや窓から出て行った様子もない。
少し、クローゼットの扉が開いていた。中にいるのか?
扉をゆっくり開けると、シャツなどが散乱している。
「何があった?──この匂い」
ヒートが起きかけた?まだ先だったんじゃ……しまった。気が付いてやれなかった。
巣作りをしようとしたんだ。
「何処に行ったんだ」
うさぎ亭では、ないな。なら、魔王か。
くそ。
連れ戻しに行かなければ、あんな姿を他のやつに見られたくない。
「返してくれ」
そう呟いた。
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