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第1章 堕ちる

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白神はくしん様。あの」

今ユラは、白神はくしんラティアの居室のソファに座っていた。

「構わない。ゆっくりしてほしい。足を見せてくれるかい?」

日焼けもしていない素足を恐る恐る見せる。
治療の為だと長い裾のシャツとひざまでのズボンを履いているので簡単に足を晒すことが出来る。

だが上位神である方の前でこの服装でいいのかとユラは戸惑ったままだ。
片方だけ足が首腫れているのだが、痛み止めだとラティアが触れていたのでひどい痛みはない。

「痛かったね。痛みは誤魔化しているが骨が砕けているから、後遺症が残らないように丁寧に戻したかったんだよ。服も気にしなくていい。それに、邪魔だがリンも部屋にいるから
痛ければしがみ付いて構わないからね」

不安そうなユラに優しくラティア声をかけた。
少しホッとした顔をしたユラが笑う。

「はい。お願いします」

ソファの前に膝をつきユラの足首に触れると、ユラが少し顔を歪める。

猫族は劣等種と呼ばれるためにあまり姿を現さないと言われている。


興味本位だった。

青神から聞いたのだ。
我が月華領と青藍領の境目辺りに美しい猫族が隠れて住んでいる。
青い髪のお転婆の猫が可愛くて連れてきたがようやく懐いたのだと言っていた。
自身の色を好むとは言え顔を気に入れば揉め事になりかねない。だから気にいった相手の顔は見せないのが暗黙のルールだ。

後姿だけ見せられたが、その髪色がとても美しかったのだ。
深い深い青色の髪の毛。

もし、白い子がいたら見てみたい。どれほど綺麗だろうか?

神の盟約上、絶滅危惧種の場合は本人が望み種族の長が認めた場合に1人だけ神使として迎え入れる事が出来るのだ。
劣等種と言われてしまうが、獣神も神も美しさに能力が比例するのだ。

つい探しに行ってしまった。どうせ伴侶にするなら、白獣の猫なら他の3神の反応も面白いだろう。
永く生きていれば時間をもてあましてしまう。

だが、隠れてしまい姿が見れない。小賢しいな。

ならばと、イタズラな気持ちが沸いてしまった。たいした能力はないが魔獣を見せれば驚き助けを求めて姿を見せるかと思ったのだ。
予想外に本物の仔猫が襲われかけてしまったのだ。その時に飛び出してきたのがユラだった。

仔猫を庇ったユラに怪我を負わせてしまった。
ユラは想像以上に美しい白獣だった。一目惚れと言うのかも知れない。

魔獣を消し去り、治癒をしようとした時におさから止められた。

「魔獣に襲われた者は、ここにはいられません。
匂いがついて、また襲われてしまいかねません。他の者に迷惑がかかります。
ですから、治療の必要はないのです。この後ユラは、処分しますから。怪我を治すだけ残酷です。親兄弟もいない子ですから」 


処分すると、長が言った。


「なら、私がもらっても構わないだろう?私の伴侶にし、生きている間大切にする。
あなた方はこの子を捨てたのだから、この子を頼って私の領内に入ろうだと思わないでほしい」

「まさか……白神様でしょうか?そんな、ならば魔獣の臭いをすべて消して頂けれたら、また魔獣に襲われたりはしません。使なのでぜひ治療をお願いします」

「治療を拒み、この子を捨てたのはあなた方だ。連れ戻らないと丁寧に治療が出来ない。ユラだったね。ああ、せめて痛みを先にとってあげればよかった」

足首に触れて痛みの感覚を消すと、ユラが驚いたような顔をしてこちらを見つめてきた。
痛みを誤魔化しただけで治したわけではない。

ユラを連れ出すには治療する訳にはいかない。


ユラは襲われ怪我した時から熱が出ていたようで、私たちの会話はあまり理解ができていないようでボーっとしたままだ。

「猫族の皆に別れの挨拶しておきなさい。魔獣により怪我をしたのだからここにはいられないそうだ。皆に迷惑をかけたくないだろう?他に挨拶したいものはいるのか?」

ふるふると首を横に振った。
「1人なので大丈夫です」
そう言って、長をみて困ったように笑った。
「あの。ご迷惑をおかけしました。今までありがとうございました」

長が、怒りで震えている。

「白神様の所に行くなど正気か?お前が迷惑をかければ、我らに被害が及ぶのだぞ!全く、どれだけ迷惑ををかけたら済むんだ。一族に迷惑をかけるな。

怒鳴られたとユラは、緊張と怪我の為か気を失ってしまった。

「私に言ったらどうだ?この子は、私の物になったのだ。この先の責任は、。連れて行くが構わないな?お前達とは縁が切れたから、一切関わることはない。安心しなさい」


抱きかかえてこの場を後にする。
多分ユラは、あまりいい扱いを受けてはいないのだろう。
それどころか利用する気だったのだろう。

少し脅かすだけだったが、こんな形で手に入れるとはな。

ならば、大切にするだけだ。
触れているだけでわかる。美しい魂の持ち主だ。

心地がいい。

穢れもなく、見目も美しいなんてな。私は、お前を手放したりしないよ。

この先、ずっとね。








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