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6 終章
1伴侶
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ラティア様とリン様が、訪ねて来たと連絡が入った。
緊張してしまうのは、仕方がない。苦しくて、気持ちは深く深く沈んでいく。私が禁忌の泉に堕ちてしまえばいいのだろうか?
何度となく、罰を受けるべきだという思考がよぎる。いや、非を認めれば一族に迷惑がかかってしまう。やはり口を閉ざすべきなのだ。
少し痩せた身体を支えようと、大きなカイの手が差し伸べられた。
「すまない」
「いいえ。本当にお会いになるのですか?」
心配そうにカイが、こちらを伺う。
「大丈夫だ。ラティア様が会ってくださるのだから......アキがいてくれたら。
あの子が一番私を思ってくれていた。他の者では、あのように綺麗に髪を結ってくれない。いつも髪を綺麗にしてくれてた。ああ今の私は、みっともないだろうか?」
「いいえ。少しお痩せになったので儚げに見えてしまいますが……美しいままです」
「カイ、ありがとう」
微笑んで見せたが、カイの眉間に皺が一瞬寄った。
カイ、そんなに心配しなくていい。お前まで失いたくない。しっかりしなければならない。キュッと唇をかみ締めて、背筋を伸ばした。
「行こうか」
ラティア様が待っている部屋へと移動する。外から差し込む陽の光に、軽く目眩がする。
「──大変、お待たせいたしました。少し体調を崩していましたので......みっともなくて申し訳ありません」
「───どうした?そんなに痩せてしまうなど」
立上りこちらへとラティア様がやって来る。どうしたのだろう?
私のことを心配してくれるのだろうか?ずっと、相手にされてなかったのに?余程醜くなってしまったのか?
こんな姿、見せなければ良かった。ずっと、貴方に相応しくありたいと願っていたのに。
「───申し訳ありません。こちらに居るようにと言われておりました。庭程度なら外に出る事を許されていました。ですが、外に出ることも気が滅入り部屋に閉じこもっていましたので、力が出ないのかも知れません。休めば元に戻ると思いますゆえ、どうか本日は、お許し下さい」
頭を下げる。
腕を捕まれたので、思わず見上げる
「伴侶は、お前にする。だが、花の印をつけるには、弱り過ぎている。今はまだつけられないな」
私が───伴侶?
「どう、言うこと……」
「裏切り者を処分した。ユラはもういない。伴侶のための花の印も消してきた。だが、今度神々の所へ伴侶となる者を連れていく予定だったのだ。お前が一番俺に尽してくれていた。労をねぎらってやるべきだったんだ……すまない」
何を言われた?私が伴侶?
アキは、生きているだろうか?もし生きていたら一緒に喜んでくれただろうか?
涙が流れ落ちる。
足にも力が入らない。崩れ落ちそうな身体を簡単に抱き抱えられてしまう。
「ラティアさま?」
私は……
「リン。しばらくアルルと過ごす。俺の部屋に連れていく」
「ご無理をさせる気ですか?」
リン様が呆れている。カイは、少しだけ怒っているように見えた。
「リンそれに、カイだったな──無理をさせるつもりはない。
神力を少し分けてから、休ませてやるだけだ。無体を強いるわけじゃない。アルル、嫌か?このまま弱ってしまったら、花の印がつけられない」
「いえ。いいえ。お傍にいてもいいのでしょうか?私でいいのですか?」
「──怒りに任せて従者に酷い事をした。ユラと共に消えた......者がいたな?アルルの身の回りを世話していただろう?堕天化の病かも知れないと言っていたな。それならば、探させて治癒の得意な神に頼んでみようか?戻って来たらアルルも元気になるだろう?」
「アキ……に?でも、何処にいるのか。すでに病で亡くなっているかも知れません」
ラティア様達が、アキに会っていないのなら無事なのかも知れない。でも病は、かかってないはず。大丈夫だろうか?
「リン。ユラがいた下界が怪しいな。探してくれ。決して傷つけるな」
「分かりました」
一度頭を下げた、リン様が姿を消した。
緊張してしまうのは、仕方がない。苦しくて、気持ちは深く深く沈んでいく。私が禁忌の泉に堕ちてしまえばいいのだろうか?
何度となく、罰を受けるべきだという思考がよぎる。いや、非を認めれば一族に迷惑がかかってしまう。やはり口を閉ざすべきなのだ。
少し痩せた身体を支えようと、大きなカイの手が差し伸べられた。
「すまない」
「いいえ。本当にお会いになるのですか?」
心配そうにカイが、こちらを伺う。
「大丈夫だ。ラティア様が会ってくださるのだから......アキがいてくれたら。
あの子が一番私を思ってくれていた。他の者では、あのように綺麗に髪を結ってくれない。いつも髪を綺麗にしてくれてた。ああ今の私は、みっともないだろうか?」
「いいえ。少しお痩せになったので儚げに見えてしまいますが……美しいままです」
「カイ、ありがとう」
微笑んで見せたが、カイの眉間に皺が一瞬寄った。
カイ、そんなに心配しなくていい。お前まで失いたくない。しっかりしなければならない。キュッと唇をかみ締めて、背筋を伸ばした。
「行こうか」
ラティア様が待っている部屋へと移動する。外から差し込む陽の光に、軽く目眩がする。
「──大変、お待たせいたしました。少し体調を崩していましたので......みっともなくて申し訳ありません」
「───どうした?そんなに痩せてしまうなど」
立上りこちらへとラティア様がやって来る。どうしたのだろう?
私のことを心配してくれるのだろうか?ずっと、相手にされてなかったのに?余程醜くなってしまったのか?
こんな姿、見せなければ良かった。ずっと、貴方に相応しくありたいと願っていたのに。
「───申し訳ありません。こちらに居るようにと言われておりました。庭程度なら外に出る事を許されていました。ですが、外に出ることも気が滅入り部屋に閉じこもっていましたので、力が出ないのかも知れません。休めば元に戻ると思いますゆえ、どうか本日は、お許し下さい」
頭を下げる。
腕を捕まれたので、思わず見上げる
「伴侶は、お前にする。だが、花の印をつけるには、弱り過ぎている。今はまだつけられないな」
私が───伴侶?
「どう、言うこと……」
「裏切り者を処分した。ユラはもういない。伴侶のための花の印も消してきた。だが、今度神々の所へ伴侶となる者を連れていく予定だったのだ。お前が一番俺に尽してくれていた。労をねぎらってやるべきだったんだ……すまない」
何を言われた?私が伴侶?
アキは、生きているだろうか?もし生きていたら一緒に喜んでくれただろうか?
涙が流れ落ちる。
足にも力が入らない。崩れ落ちそうな身体を簡単に抱き抱えられてしまう。
「ラティアさま?」
私は……
「リン。しばらくアルルと過ごす。俺の部屋に連れていく」
「ご無理をさせる気ですか?」
リン様が呆れている。カイは、少しだけ怒っているように見えた。
「リンそれに、カイだったな──無理をさせるつもりはない。
神力を少し分けてから、休ませてやるだけだ。無体を強いるわけじゃない。アルル、嫌か?このまま弱ってしまったら、花の印がつけられない」
「いえ。いいえ。お傍にいてもいいのでしょうか?私でいいのですか?」
「──怒りに任せて従者に酷い事をした。ユラと共に消えた......者がいたな?アルルの身の回りを世話していただろう?堕天化の病かも知れないと言っていたな。それならば、探させて治癒の得意な神に頼んでみようか?戻って来たらアルルも元気になるだろう?」
「アキ……に?でも、何処にいるのか。すでに病で亡くなっているかも知れません」
ラティア様達が、アキに会っていないのなら無事なのかも知れない。でも病は、かかってないはず。大丈夫だろうか?
「リン。ユラがいた下界が怪しいな。探してくれ。決して傷つけるな」
「分かりました」
一度頭を下げた、リン様が姿を消した。
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