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111 敗北
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人間の姿をしたイ=ルグ=ルの断片に襲いかかる、昆虫人の群れ。人間ならば首を飛ばされるその攻撃も、強靱な外骨格の鎧には通じない。手足をつかみ、取り付き、食いつき、そして噛みちぎり、引きちぎる。
バラバラにされたイ=ルグ=ルの断片は爆発する。いかな外骨格と言えど、耐え切れない威力で。手足を吹き飛ばされ、臓物を撒き散らし、山を築く屍。それでも昆虫人は止まらない。哀しみも恐怖もなく、ただそれが生存本能であるかの如く、攻撃を続けた。
獣人たちはそこまでシンプルではない。イ=ルグ=ルの断片を捕まえるスピード重視の攻撃隊と、敵をバラバラにするパワーに爆発を耐え得る巨体の決死隊とに分かれ、彼らの背後には救護隊が準備している。
彼らには明らかに哀しみも恐怖も存在した。だがそれを乗り越えて、邪神に対峙しているのだ。ただ獣王ガルアムへの信頼と忠誠を支えにして。
「エリア・トルファンの第三シェルターから、目標攻略の通信が入りました」
ナーギニーの声が踊る。次々と戦果は上がった。世界各地のシェルターから世界政府に、イ=ルグ=ル撃破の報告が届く。だがそれを受けて、3Jはいつも以上に沈黙の度を深めていた。そしてジュピトル・ジュピトリスも。双子のナーガは不安げにたずねた。
「どうかされたのですか」
ジュピトルは言いにくそうに答える。
「うん……どうにも簡単すぎるように思うんだ」
「ですが、こちらにもかなりの被害が出ています」
「それはそうなんだけどね」
ジュピトルは3Jに目をやった。うつむいていたその顔が上がる。
「イ=ルグ=ルは逃げる」
感情のこもらぬ、抑揚のない声がつぶやいた。言葉の意味が理解出来ないのか、ナーガの眉が寄る。
「イ=ルグ=ルが、逃げる?」
3Jは静かに続けた。
「魔人に蛹を打ち砕かれたとき、クリアの氷と炎を受けたとき、イ=ルグ=ルは逃げ出した。人間が考える誇りやプライドとヤツは無縁だ。自分が不利になれば、逃げる事を厭わない。なのに、今回はどうして逃げ出さない」
ようやくナーガは理解した。確かに、弱点が露呈しているにも関わらず、イ=ルグ=ルは逃げようとしていない。何故だ。
「そんなもの、決まっておろうが」
部屋の隅から聞こえる、呆れたようなムサシの声。
「逃げない理由など、『逃げる理由がない』以外にはない」
「そんな言葉遊びをしている場合では」
たしなめるようなナーギニーの声を、ジュピトルが遮った。
「いや。そうか、目的だ。イ=ルグ=ルには何か目的があった。そしてそれは達成されている。だからあの体はもう必要ないんだ」
「行きがけの駄賃か」
そう口にすると、3Jは小さくため息をついた。
「……思念結晶だな」
暗くて広い、何もない部屋。その真ん中に、何の特徴もない服装と、何の特徴もない背格好で、何の特徴もない顔の人物が立っている。周囲は闇に覆われているが、そこには無数の殺気が潜み、取り囲んでいた。
「ようこそ、神様。言葉が通じれば良いのですけど」
小さなスポットライトの下に立つ、マヤウェル・マルソ。隣には小さな影が見える。しばしの沈黙の後、イ=ルグ=ルの断片の一つは口を開いた。
「仔細ない。聞こえているし、理解している」
恐ろしく低い声。例えではなく、本当に恐怖を呼び起こす声だった。だがマヤウェルには毛の先程の動揺も見えない。
「前置きは必要ないでしょう、神様ですものね。単刀直入に申し上げます。我々にご協力いただけませんでしょうか」
「協力」
「ええ、この世界を混乱で満たす事、それが我々の目的。ご協力いただければ、身の安全は保証致します」
「混乱」
「あなたの弱点は承知しております。ですが我らを味方につければ、それを気にする必要もなくなるでしょう」
しばらく沈黙していたイ=ルグ=ルの断片だったが、不意に口元を緩めた。
「そなたは利口な人間のようだ」
「光栄です」
「だが賢明ではない」
その言葉に、マヤウェルの目が細くなる。
「どういう意味でしょうか」
イ=ルグ=ルの断片は、微笑み両手を広げた。
「神は秩序をもたらす者。神に混乱を持ちかけるのは愚昧であると言える」
「アルフレード!」
マヤウェルの決断は早かった。背後の闇からアルフレードが飛び出した。イ=ルグ=ルの断片の髪が、蛇のように蠢く。アルフレードの首が撥ねられた。しかし胴体から首が生え、首からは胴体が生える。アルフレードは二人になった。と、思いきや。
二人のアルフレードの体は突然砂となり、崩れ落ちた。マヤウェルは目をみはり、カルロがかばうように前に立つ。
「利口なれど愚昧」
邪神は言う。
「そなたの目的など、最初から聞こえていた。だから、この体を敢えて預けた。何故なら、この体こそがイ=ルグ=ルの本体であるから」
「撃ちなさい!」
マヤウェルの号令一下、無数の銃声が響いた。しかし。銃弾は相手には届かず、その周囲に壁を作っただけ。点描の壁を。
「この姿となった目的は、我が滋養たる人間の血を集める事。これがなくては、思考も巡らず体も動かない。だが、それも思念結晶が十分に集めた。よって、もはや他の断片は必要ない。そなたたちも必要ない」
点描の壁が歪んだ。まるで巨大な顔が微笑むように。次の瞬間、点描の微笑みは煙のように消え去った。
無言の闇の中で、肉塊が叩きつけられるような音が、幾つも響く。マヤウェルはその意味を理解した。
「うそ……撃ちなさい、何してるの、早く撃ちなさい! 撃って!」
だが銃声は聞こえない。闇の中からはすべての殺気が消え失せていた。特別警備部隊ヨナルデパズトリは、自らの放った銃弾を受けて全滅したのだ。
「マヤウェル、逃げて!」
カルロが叫ぶ。けれどマヤウェルは逃げない。自ら拳銃を抜き構えた。
「その通り」
イ=ルグ=ルはうなずいた。
「もはや逃げる事など叶わない」
マヤウェルの食いしばった歯の隙間から、震える声が絞り出される。
「つまり、ギャンブルに負けたって事よね」
「いいや、博打が成立すると思ってしまった時点で、そなたは敗北していたのだ」
イ=ルグ=ルは嗤う。マヤウェルは銃口を自らの頭に当てた。
「アンタが吠え面かくのを見られないのは残念だけど」
そして、ニッと笑った。
「また地獄で会いましょう、邪神さん」
指がトリガーを引く、事は出来なかった。拳銃を持つ手首から先が、斬り飛ばされたからだ。イ=ルグ=ルの髪が、蛇のように蠢く。
「己の意思で決めた死など、神の前で選べるはずもなかろう」
愕然と目を見開くマヤウェル・マルソの首が、飛んだ。
「死はあらゆる命に平等で、唐突かつ理不尽なものだ。自分だけが、その頸木から逃れようなどと浅ましい」
イ=ルグ=ルは呆れたような口調でそう言うと、人差し指を立て、クルリと回した。倒れたマヤウェルの体から流れ出す血が、宙に浮き上がった。それだけではない。周囲を取り囲む闇の中から、大量の血が沸いて出て来た。死んだヨナルデパズトリの隊員たちの物だろう。
宙を舞う血は渦を巻き、竜巻のようにその先端を細くした。イ=ルグ=ルの口が開かれ、血の渦は導かれるように中へと入って行く。そしてすべての血を飲み干した邪神は、ニンマリと笑うと、一人立つカルロを見つめた。
「何故殺さない」
静かな目で問うカルロに、イ=ルグ=ルは答えた。
「すでに死んでいる者を、二度殺しても意味はない」
「ボクに心臓がないからか」
「おまえには役目を与えよう。ここから立ち去れ。人の世界へ行け。そしてイ=ルグ=ルの恐怖を、伝え広めるのだ」
カルロはしばらく見つめ返していたが、やがて背を向け去って行った。
目標はすべて攻略された。世界に広がったイ=ルグ=ルの断片は、すべて消し去られた。すべて。知り得る限りは全部。しかし3Jとジュピトル・ジュピトリスの顔に喜びはない。
「困った事になったのう」
ムサシの暗い言葉にナーギニーが振り返る。
「困った事?」
いつもの皮肉めいた表情は隠れ、ただ真剣に深刻な顔がそこにあった。
「第一に、全部潰したという事は、手がかりを失ったという事じゃ。第二に、この情報が広がるのは避けられん。イ=ルグ=ルを打ち倒した、という情報がな。世界中が歓喜に沸くじゃろうて」
勝利の喜びを感じさせた後に、そうではないと事実を告げれば、その衝撃の大きさは想像するに余りある。
「でも、他に選択肢はなかったんじゃ」
ナーギニーは反論する。確かに、ここまでの展開で他に取るべき道などなかったはずだ。だが。
「唯一の選択肢を手にせざるを得ない状況に追い込まれた」
3Jはつぶやいた。
「それはつまり、踊らされたという事だ」
ナーギニーは言葉を失い、思わず不安げな顔でジュピトルを見る。その視線に優しい笑顔が返された。
「問題は、イ=ルグ=ルが次にどう動くかだよね」
「しばし刻を置いて体力を回復させ、時期を待つ。定石通りならば、そう来るじゃろうが」
自分の言葉に納得行かないのか、ムサシは首をひねった。ナーガの目は3Jを見つめる。
「定石通りには行きませんか」
「神には神の理屈がある」
3Jは言った。
「ヤツに人間の理屈は通じない。人の理解出来る定石など期待するな」
そのとき3Jの耳に、パンドラからベルの声が。
「大変!」
「どうした」
「空に穴が空いてるの!」
「どこだ」
「エリア・エージャン、グレート・オリンポスの真上!」
それは、悲鳴にも似て。
バラバラにされたイ=ルグ=ルの断片は爆発する。いかな外骨格と言えど、耐え切れない威力で。手足を吹き飛ばされ、臓物を撒き散らし、山を築く屍。それでも昆虫人は止まらない。哀しみも恐怖もなく、ただそれが生存本能であるかの如く、攻撃を続けた。
獣人たちはそこまでシンプルではない。イ=ルグ=ルの断片を捕まえるスピード重視の攻撃隊と、敵をバラバラにするパワーに爆発を耐え得る巨体の決死隊とに分かれ、彼らの背後には救護隊が準備している。
彼らには明らかに哀しみも恐怖も存在した。だがそれを乗り越えて、邪神に対峙しているのだ。ただ獣王ガルアムへの信頼と忠誠を支えにして。
「エリア・トルファンの第三シェルターから、目標攻略の通信が入りました」
ナーギニーの声が踊る。次々と戦果は上がった。世界各地のシェルターから世界政府に、イ=ルグ=ル撃破の報告が届く。だがそれを受けて、3Jはいつも以上に沈黙の度を深めていた。そしてジュピトル・ジュピトリスも。双子のナーガは不安げにたずねた。
「どうかされたのですか」
ジュピトルは言いにくそうに答える。
「うん……どうにも簡単すぎるように思うんだ」
「ですが、こちらにもかなりの被害が出ています」
「それはそうなんだけどね」
ジュピトルは3Jに目をやった。うつむいていたその顔が上がる。
「イ=ルグ=ルは逃げる」
感情のこもらぬ、抑揚のない声がつぶやいた。言葉の意味が理解出来ないのか、ナーガの眉が寄る。
「イ=ルグ=ルが、逃げる?」
3Jは静かに続けた。
「魔人に蛹を打ち砕かれたとき、クリアの氷と炎を受けたとき、イ=ルグ=ルは逃げ出した。人間が考える誇りやプライドとヤツは無縁だ。自分が不利になれば、逃げる事を厭わない。なのに、今回はどうして逃げ出さない」
ようやくナーガは理解した。確かに、弱点が露呈しているにも関わらず、イ=ルグ=ルは逃げようとしていない。何故だ。
「そんなもの、決まっておろうが」
部屋の隅から聞こえる、呆れたようなムサシの声。
「逃げない理由など、『逃げる理由がない』以外にはない」
「そんな言葉遊びをしている場合では」
たしなめるようなナーギニーの声を、ジュピトルが遮った。
「いや。そうか、目的だ。イ=ルグ=ルには何か目的があった。そしてそれは達成されている。だからあの体はもう必要ないんだ」
「行きがけの駄賃か」
そう口にすると、3Jは小さくため息をついた。
「……思念結晶だな」
暗くて広い、何もない部屋。その真ん中に、何の特徴もない服装と、何の特徴もない背格好で、何の特徴もない顔の人物が立っている。周囲は闇に覆われているが、そこには無数の殺気が潜み、取り囲んでいた。
「ようこそ、神様。言葉が通じれば良いのですけど」
小さなスポットライトの下に立つ、マヤウェル・マルソ。隣には小さな影が見える。しばしの沈黙の後、イ=ルグ=ルの断片の一つは口を開いた。
「仔細ない。聞こえているし、理解している」
恐ろしく低い声。例えではなく、本当に恐怖を呼び起こす声だった。だがマヤウェルには毛の先程の動揺も見えない。
「前置きは必要ないでしょう、神様ですものね。単刀直入に申し上げます。我々にご協力いただけませんでしょうか」
「協力」
「ええ、この世界を混乱で満たす事、それが我々の目的。ご協力いただければ、身の安全は保証致します」
「混乱」
「あなたの弱点は承知しております。ですが我らを味方につければ、それを気にする必要もなくなるでしょう」
しばらく沈黙していたイ=ルグ=ルの断片だったが、不意に口元を緩めた。
「そなたは利口な人間のようだ」
「光栄です」
「だが賢明ではない」
その言葉に、マヤウェルの目が細くなる。
「どういう意味でしょうか」
イ=ルグ=ルの断片は、微笑み両手を広げた。
「神は秩序をもたらす者。神に混乱を持ちかけるのは愚昧であると言える」
「アルフレード!」
マヤウェルの決断は早かった。背後の闇からアルフレードが飛び出した。イ=ルグ=ルの断片の髪が、蛇のように蠢く。アルフレードの首が撥ねられた。しかし胴体から首が生え、首からは胴体が生える。アルフレードは二人になった。と、思いきや。
二人のアルフレードの体は突然砂となり、崩れ落ちた。マヤウェルは目をみはり、カルロがかばうように前に立つ。
「利口なれど愚昧」
邪神は言う。
「そなたの目的など、最初から聞こえていた。だから、この体を敢えて預けた。何故なら、この体こそがイ=ルグ=ルの本体であるから」
「撃ちなさい!」
マヤウェルの号令一下、無数の銃声が響いた。しかし。銃弾は相手には届かず、その周囲に壁を作っただけ。点描の壁を。
「この姿となった目的は、我が滋養たる人間の血を集める事。これがなくては、思考も巡らず体も動かない。だが、それも思念結晶が十分に集めた。よって、もはや他の断片は必要ない。そなたたちも必要ない」
点描の壁が歪んだ。まるで巨大な顔が微笑むように。次の瞬間、点描の微笑みは煙のように消え去った。
無言の闇の中で、肉塊が叩きつけられるような音が、幾つも響く。マヤウェルはその意味を理解した。
「うそ……撃ちなさい、何してるの、早く撃ちなさい! 撃って!」
だが銃声は聞こえない。闇の中からはすべての殺気が消え失せていた。特別警備部隊ヨナルデパズトリは、自らの放った銃弾を受けて全滅したのだ。
「マヤウェル、逃げて!」
カルロが叫ぶ。けれどマヤウェルは逃げない。自ら拳銃を抜き構えた。
「その通り」
イ=ルグ=ルはうなずいた。
「もはや逃げる事など叶わない」
マヤウェルの食いしばった歯の隙間から、震える声が絞り出される。
「つまり、ギャンブルに負けたって事よね」
「いいや、博打が成立すると思ってしまった時点で、そなたは敗北していたのだ」
イ=ルグ=ルは嗤う。マヤウェルは銃口を自らの頭に当てた。
「アンタが吠え面かくのを見られないのは残念だけど」
そして、ニッと笑った。
「また地獄で会いましょう、邪神さん」
指がトリガーを引く、事は出来なかった。拳銃を持つ手首から先が、斬り飛ばされたからだ。イ=ルグ=ルの髪が、蛇のように蠢く。
「己の意思で決めた死など、神の前で選べるはずもなかろう」
愕然と目を見開くマヤウェル・マルソの首が、飛んだ。
「死はあらゆる命に平等で、唐突かつ理不尽なものだ。自分だけが、その頸木から逃れようなどと浅ましい」
イ=ルグ=ルは呆れたような口調でそう言うと、人差し指を立て、クルリと回した。倒れたマヤウェルの体から流れ出す血が、宙に浮き上がった。それだけではない。周囲を取り囲む闇の中から、大量の血が沸いて出て来た。死んだヨナルデパズトリの隊員たちの物だろう。
宙を舞う血は渦を巻き、竜巻のようにその先端を細くした。イ=ルグ=ルの口が開かれ、血の渦は導かれるように中へと入って行く。そしてすべての血を飲み干した邪神は、ニンマリと笑うと、一人立つカルロを見つめた。
「何故殺さない」
静かな目で問うカルロに、イ=ルグ=ルは答えた。
「すでに死んでいる者を、二度殺しても意味はない」
「ボクに心臓がないからか」
「おまえには役目を与えよう。ここから立ち去れ。人の世界へ行け。そしてイ=ルグ=ルの恐怖を、伝え広めるのだ」
カルロはしばらく見つめ返していたが、やがて背を向け去って行った。
目標はすべて攻略された。世界に広がったイ=ルグ=ルの断片は、すべて消し去られた。すべて。知り得る限りは全部。しかし3Jとジュピトル・ジュピトリスの顔に喜びはない。
「困った事になったのう」
ムサシの暗い言葉にナーギニーが振り返る。
「困った事?」
いつもの皮肉めいた表情は隠れ、ただ真剣に深刻な顔がそこにあった。
「第一に、全部潰したという事は、手がかりを失ったという事じゃ。第二に、この情報が広がるのは避けられん。イ=ルグ=ルを打ち倒した、という情報がな。世界中が歓喜に沸くじゃろうて」
勝利の喜びを感じさせた後に、そうではないと事実を告げれば、その衝撃の大きさは想像するに余りある。
「でも、他に選択肢はなかったんじゃ」
ナーギニーは反論する。確かに、ここまでの展開で他に取るべき道などなかったはずだ。だが。
「唯一の選択肢を手にせざるを得ない状況に追い込まれた」
3Jはつぶやいた。
「それはつまり、踊らされたという事だ」
ナーギニーは言葉を失い、思わず不安げな顔でジュピトルを見る。その視線に優しい笑顔が返された。
「問題は、イ=ルグ=ルが次にどう動くかだよね」
「しばし刻を置いて体力を回復させ、時期を待つ。定石通りならば、そう来るじゃろうが」
自分の言葉に納得行かないのか、ムサシは首をひねった。ナーガの目は3Jを見つめる。
「定石通りには行きませんか」
「神には神の理屈がある」
3Jは言った。
「ヤツに人間の理屈は通じない。人の理解出来る定石など期待するな」
そのとき3Jの耳に、パンドラからベルの声が。
「大変!」
「どうした」
「空に穴が空いてるの!」
「どこだ」
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それは、悲鳴にも似て。
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