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しおりを挟む日を良く浴びて、水をたくさん浴びて、どれくらい経っただろう。
沢山の春夏秋冬の季節を何回も何十回繰り返し、私は見事な若木になった。私の葉を食べて成虫になった蝶もその他の虫達も、私の枝葉を利用した鳥達も、何度見送った事だろう。
幼い私を守る為作られた樹海もいつの間か丘の裾迄はなだらかな平原となり私は小高い丘の上で静かに佇んでいる。
そして、私が立つ丘の裾に広がる樹海の端には、村と言うにはまだ家は少ない、集落と言った方が良いだろう、人の住まう場所が出来た。
始まりは一組の商人夫婦の旅だった。
冬の終わりに、彼らはやって来た。
荷馬車に商品を積み、夫人の寝床に藁を敷き詰め、妊婦の負担にならない様に、ゆっくりと進んでいたが、野犬に追われ樹海へと迷いこんだようだ。さまよっている間は産気ついてしまった。その時偶々私に気が付き、一晩私の枝の下で一泊する事にしたのだ。
夫人は私の下で産みの苦しみに耐え、夫は、そんな夫人を励まし支え、子を取り上げた。子は小さな男女の双子であった。
私はそんな小さな双子に、ささやかなお祝いをした。精霊に頼んで、双子の口に、私の葉に溜まった雫を1滴ずつ入れてもらったのだ。
私は聖樹らしいので、私に溜まった雫でも多少の効果はあるらしいのだ。
双子は1人の出産に比べても、危険な事、月足らずで生まれて小さい事、それでも元気に生まれた事等々を、夫は泣きながら夫人に感謝を伝えいる。
それを静かに聞きながら、産まれるという事は素敵な事なんだ。と、私は夫婦を見守っていた。
出産直後の移動は、負担が大きいと、暫く私の枝葉の下で滞在をした。
何の加護も与えなくても、私の下に居るだけで商人家族には、恩恵があるらしい。勿論、私から離れるとそれは無くなり、何時もの日常に帰る。
精霊達が私に色々と教えてくれる。只、双子は、私の雫を1滴飲んだ為、暫くは病気にもならず、健康を保てるそうだ。
ならば、私のする事は何も無い。只、商人家族が、ここから旅立つのをひたすら待つ。
春の終わり、商人家族が、子を生んで3ヶ月が立つ夏の始まりの頃に、彼らは旅立った。
商人家族がここを去り、2回目の春の始まりに、再び商人家族がここに訪れた。3台の荷馬車に家族だけでは無く、何やら職人風の人達。
「以前、ここで子を産み、この木にはお世話になったと、思うんだ。だからこの木が見える所に家を建てようと思う。」
「そうね!でも、ここら辺は少し坂だから下の平らな所、樹海の入口ら辺にしない?」
「そうだなぁ、この木はもっと大きくなるだろうから、下でもいいかな?」
そう言うと、なだらかな丘の下の樹海の広がる裾へ行った。
私の周りには、私を守る様に精霊達が警戒して飛び回っている。
ねぇ、邪魔。
若様、追い払っても良い?
少し様子を見たい。人とはどんなものなのかを・・・・
わかった。でも、若様に悪さしたら、私達は許さない。
わかっているよ。その時はまかせる。
まかせられた!
そう言うと精霊達は嬉しそうに私の周りを、飛び回っている。
・・・・人には見えないのだろうか・・?
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