世界樹の詩

茶々

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 ドリュアスの名を貰って季節が何回か巡り、春になった。幼生の樹木から、成長した私は初めて花を付けた。少し肌寒い春の気温の中、朝日を浴びて誇らしく咲き乱れる。

 「うわっー!初めて見たねぇ!!」
 「そうね!私達がここに住み始めて、本当に・・・」
 

 最初に住み始めた商人夫婦は、既に初老になって、双子らもそれぞれの番となる相手を見つけ数日後には結婚をする。

 「ねぇ、ここで結婚しても良いかな?」
 「うーん、この木にも聞いて見たら?」

 そんな冗談とも取れる会話を聞きながら私も“結婚式”というものを見てみたいと思った。

 「ねぇねぇ!ここで結婚しても良いかな?」

  アメリアが私に抱きつきスリスリと頬擦りをした。

良いよと、花を揺らして花弁を彼女に舞い散らした。

 「うわー!!凄い!花弁がひらひらと踊ってるみたい!」
 「どうやら、良いようだ!」
 「えー?本当に?」
 「だって、ほら!風も無いのに、ひらひら、キラキラと・・・!」
 「私達の特別な木だものね!」
 「それは違うぞ、この木が私達を受け入れてくれたから、今の私達があるんだ!」
 「そうね、この木が無かったら私達は、ここにいなかったわ。」
 「そうか!この木が特別なのね!」


 
 私の前に簡単な祭壇を作り、神父が厳かな表情で、誓いの言葉を促す。
  花弁が舞う中、 白いドレスの新婦、白いタキシードの新郎が、お互いに手を取り、見詰め合い、誓いの言葉を紡ぐ。

 新しい家庭を築く為の儀式。
 そういえば、6しか無かった家も今では30に増えて村のなった。随分と賑やかになった。
 人も20人だったのが、100人位になっただろうか?



  「ほんぎゃぁ、ほんぎゃぁ」

 結婚して、2回の季節が巡り、アメリアが小さい人を生んだ。難産?だったそうで、とても疲れているようだ。それでも生んで暫くして、私に見せに来た。

 「見て、赤ちゃんよ。リリーって名前をつけたの。小さいでしょ?でも、とても愛しいの。この子も見守ってね。」


 もちろん。


 私の声は人には聞こえない。けれど、私の思いがアメリアに届くと良いな・・・・
 そんな思いで、葉を揺らす。


 「あぁ!やっぱり不思議。私の言っている事がわかっているみたい。」


 わかっているよ・・・
 






 穏やかで、静かに季節が巡り、いったいどれくらいの、時が流れただろう。春が来る度に花を咲かせ、村が町になった。




 「ねぇ、私、幸せだった。生まれてから、ずっとここで暮らして、愛する人と結婚出来て、子供も生まれた。孫も出来た。あなた樹木が、優しく守ってくれている様な気がしてた。
 ありがとう・・・」


 その言葉を残してアメリアは動かなくなった。





 風のささやきに乗って、彼女の声が聞こえた。


  ────私、あなたとお話、したかったの───


 わかっていたよ。


 ────私ね、あなたが大好きで、大事なの───


 知っていたよ。


────そばに、いていい?───



 それは、無理だよ。また生まれ変わっておいで。


────そんなんじゃぁ、ダメよ!忘れてしまう────



 大丈夫、私が忘れない。



────私が、忘れちゃう────



 では、私の名前を覚えていて・・・



─────名前?─────



そう、名前。名前だけ覚えていて・・・



─────わかったわ・・・きっと忘れない───



 私は、ドリュアス・・・



────ドリュアス、ドリュアス・・・ドリ・・・────






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