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陸 子泣き爺
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「おぎゃああああ! おぎゃああああ!!」
深夜一時。
人の気配さえない夜道に、赤ちゃんの泣き声だけが響く。
「もしかして……いや、そんなまさか……」
女は残業を終えたばかり。
疲労でふらふらではあったが、夜道で一人泣き叫ぶ赤ちゃんを放置しておくほど冷酷ではなかった。
最悪の想像をし、急いで女は泣き声のする方へと向かう。
「おぎゃああああ! おぎゃああああ!!」
声は、街灯の作る光の円に照らされるベビーカーの中から発せられていた。
まるで見つけてくれと言わんばかり、スポットライトのようである。
これは、本当に捨て子かもしれない。
もしも捨て子だった場合、どうすればいいのだろうか、どこに電話すればいいのか、そんなことを考えながら女はスマートフォンを握りしめる。
「おぎゃああああ! おぎゃああああ!!」
そして、怯えさせないように笑顔を作ってベビーカーを覗き込む。
そこには、ベビー服を着た老人が寝転んでいた。
体のサイズは赤ちゃんのそれだが、肌はシワシワ、髪は真っ白。
赤ちゃんとはとても言い難い。
「おぎゃああああ! おぎゃああああ!!」
女とベビー服を着た老人――子泣き爺の目が合う。
女の表情はすっと暗くなり、スマートフォンで通話を開始する。
「もしもし、お巡りさん? 赤ちゃんプレイ中の変質者がいます」
「思っとった反応と違うううう!?」
子泣き爺はベビーカーから飛び降りて、夜の闇へと走って消えていった。
深夜一時。
人の気配さえない夜道に、赤ちゃんの泣き声だけが響く。
「もしかして……いや、そんなまさか……」
女は残業を終えたばかり。
疲労でふらふらではあったが、夜道で一人泣き叫ぶ赤ちゃんを放置しておくほど冷酷ではなかった。
最悪の想像をし、急いで女は泣き声のする方へと向かう。
「おぎゃああああ! おぎゃああああ!!」
声は、街灯の作る光の円に照らされるベビーカーの中から発せられていた。
まるで見つけてくれと言わんばかり、スポットライトのようである。
これは、本当に捨て子かもしれない。
もしも捨て子だった場合、どうすればいいのだろうか、どこに電話すればいいのか、そんなことを考えながら女はスマートフォンを握りしめる。
「おぎゃああああ! おぎゃああああ!!」
そして、怯えさせないように笑顔を作ってベビーカーを覗き込む。
そこには、ベビー服を着た老人が寝転んでいた。
体のサイズは赤ちゃんのそれだが、肌はシワシワ、髪は真っ白。
赤ちゃんとはとても言い難い。
「おぎゃああああ! おぎゃああああ!!」
女とベビー服を着た老人――子泣き爺の目が合う。
女の表情はすっと暗くなり、スマートフォンで通話を開始する。
「もしもし、お巡りさん? 赤ちゃんプレイ中の変質者がいます」
「思っとった反応と違うううう!?」
子泣き爺はベビーカーから飛び降りて、夜の闇へと走って消えていった。
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