令和百物語 ~妖怪小話~

はの

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漆拾弐 猪口暮露

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 誕生日。
 一年に一度訪れる、自分の生まれた日。
 
 人々は、友達に祝われたり、親に祝われたり、誕生日プレゼントをもらったり、ケーキを食べたり、誕生日を楽しんで過ごす。
 
 
 
 とある一軒家にて、少年の誕生会が開催されていた。
 学校の友達がたくさん集まってくれて、少年は照れくさそうな嬉しそうな表情を浮かべる。
 
「誕生日おめでとー!」
 
「おめでとー!」
 
 四方八方から祝いの言葉と共に、誕生日プレゼントが渡される。
 目の前に積み上げられた箱を、少年は嬉しそうに開封していく。
 
「わー、ぼくの好きなチョコレートがこんなに!」
 
「へっへっへ。前に好きだって聞いてたからな」
 
「このペン、かっこいいー!」
 
「でしょ! 絶対気に入ってくれると思って!」
 
 箱の中には、祝福が詰まっている。
 そして時には。
 
「うわっ!?」
 
「びっくり箱でしたー」
 
「やーめーろーよー」
 
 驚きが詰まっている。
 
 しかし、驚きでさえも、この場を盛り上げる祝福。
 少年は、口では起こりながらも、表情は緩んだままだ。
 
 少年は次の箱を開封する。
 
 瞬間、小人のように小さな何かが、箱から無数に飛び出した。
 飛び出した何かが、ぐんぐんと大きくなっていき、人間と同じ大きさになる。
 
 三角形のお猪口を帽子のように被った無数の虚無僧が部屋中に立っていた。
 猪口暮露が辺りを見回す。
 お猪口は顔全体をすっぽりと覆っているので、見渡しても何も見えないことに気づいた猪口暮露は、次々とお猪口をとっていく。
 
 お猪口の中からは、涎をだらだらと垂らした鬼が現れた。
 餌である人間を見つけた瞬間、涎の量は滝のように増えていった。
 
「「「ぎゃあああああ!?」」」
 
 猪口暮露は、人々を捕まえる。
 捕まえたら食う。
 人々は、猪口暮露から逃げる。
 捕まったら食われる。
 
 
 
 箱の中には、絶望が詰まっている。
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