悪役令嬢転生の作り方

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第29話 エイジ・ハラル6

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「行くぞ、夢美」
 
「セクハラです」
 
「名前呼んだだけだろうが」
 
 翔太たち楽々転生サービス株式会社に耐えられた業務は、時間停止の解除の阻止。
 数は、そのまま戦力となってしまう。
 もしも時間停止が解除されてしまえば、翔太たちの分が悪くなる。
 故に、決してユイットに魔法を使わせてはならなかった。
 
 翔太の操るドローンが飛び回り、装備された銃口がユイットを狙う。
 
「我らを創りたもうた偉大なる女神よ、どうかユイットをお守りください」 
 
 が、パャドの魔法がユイットの周りに結界を作り出し、ドローンの狙撃からユイットを守った。
 ダイヤの形をしたガラスが無数に組み合わさったようなドーム型の壁は、光を反射してキラキラと輝いている。
 すぐにでも割れてしまいそうな薄さとは裏腹に、銃弾が当たったところにはへこみ一つできていない。
 
「ありがとうございます、パャド様」
 
「ユイット、貴女は時間を動かすことに専念してください。周囲は、私が守ります」
 
 ユイットが時間停止を解除する魔法を再び唱え始めるのを見た翔太は、即座に銃を取り出して、ユイットを狙撃する。
 が、結果はドローンからの狙撃と同じ。
 銃弾は結界に防がれて、地面へと落ちた。
 翔太は、苦々しい表情で結界を見つめる。
 
「ちっ。面倒だな」
 
「問題ありません。それより、来ますよ先輩」
 
「エイジは、俺が守る!」
 
 銃弾のような勢いで、オシェムが翔太へと接近する。
 その素早く動く体から、素早く剣が突き出され、翔太の喉元を一線に捉える。
 
「ほら、一匹」
 
 が、その剣は、翔太に届かなかった。
 襟元から現れた爪サイズの小さなドローンが四つ、粘着性の高いジェルを長方形に広げて、オシェムの剣をからめとった。
 オシェムは即座に剣を引こうとするも、ジェルに引っ付いたまま動かない。
 
「なんだこれは!」
 
「はあ。これ、たけえんだよな」
 
 翔太が指を鳴らすと、四つのドローンは長方形を大きくするように広がり、獲物を一口で飲み込む獣のように、オシェムの全身をジェルで包み込もうと動く。
 
「ちっ!」
 
 剣を引っこ抜くことは不可能と判断したオシェムは、剣を手放し、後方へと跳んで避けた。
 
「我らを創りたもうた偉大なる女神よ、どうかオシェムをお守りください」 
 
 そしてオシェムを追うドローンは、パャドの結界によって防がれた。
 どれだけ粘着性が高かろうと、結界と言う物質ではない物はからめとれない。
 ドローンは何度も結界と衝突し、しばらくすると翔太の元へと戻っていった。
 翔太は戻ってきたドローンから剣を引っこ抜いた後、空間に開けた穴に剣を放り込んだ。
 
「なかなかの業物、とでも言えばよかったか? あいにく、俺たちの世界じゃ剣が身近じゃねえから、この剣がどうすげえのかわかんねえんだ」
 
 剣とは、オシェムの魂である。
 魂を雑に扱われたことに、オシェムは翔太を睨みつける。
 
「貴様……!」
 
「ははっ。剣を失って、何ができんだ?」
 
 オシェムは高ぶる怒りを抱えながらも、自身の役割を最重要の目的とし、ユイットの方へ振り向く。
 
「ユイット! 解除は?」
 
 オシェムからの問いかけに、ユイットは泣きそうな表情をしながら首を左右へと振った。
 
「ごめんなさい! まだです! 以前の魔法より、複雑化していて」
 
「まあ、だろうな。構わねえ! 続けろ、ユイット! 魔法を解除するまで、俺がいくらでも時間を稼いでやる!」
 
 オシェムは振り向いた顔を翔太の方へと戻し、剣の代わりに拳を握る。
 自身の持つ炎の魔力を両手に集めると、その拳は発火し、手を赤く染めた。
 
 翔太は感心したように、オシェムの両手を見る。
 
「へえ。そんなこともできんのか」
 
「その小さな石ごと、燃やし尽くしてやる!」
 
「なら、こっちだ」
 
 駆け出したオシェムを前に、翔太は飛ばすドローンを変える。
 耐衝撃と耐火に優れた消防用ドローン。
 
「おおおお!」
 
 オシェムの強力な一撃は、ドローン一機によって容易に防がれた。
 
「……馬鹿な」
 
「おらよ」
 
 消防用ドローン。
 耐衝撃と耐火以外にも、もう一つできることがある。
 消火である。
 
 ドローンから噴き出した水の塊がオシェムの腹部にぶつかり、その体を後ろへ後ろへと押し返した。
 
「ぐう……がああああ!?」
 
 まるで、鉄球を腹部に喰らったような大きな衝撃。
 ユイットとパャドの間を一直線に、オシェムの体が通過する。
 
「オシェム様!」
 
「オシェム!」
 
 飛んでいくオシェムを見ながら、パャドが二つの結界を展開する。
 一つはオシェムの前方で、オシェムにぶつかる水を防ぐ。
 もう一つはオシェムの後方で、後ろに下がり続けるオシェムの体を食い止める。
 
「ぐふぅ……!」
 
 結界に背を預けたオシェムは、苦しそうに息をし続ける。
 
 ユイットはそんなオシェムの姿を見た後、さらに焦り、時間停止の解除に勤しむ。
 近づいてくる翔太の足音を聞きながらも、ひたすらに時間停止の解除に没頭する。
 自分の周囲の時間を進めようと没頭する。
 
 ユイットはヒロイン。
 どんな困難だってクリアする。
 故に時間さえあれば、時間停止の解除ができるなど当然だ。
 
 大きな魔力のうねりを前に、ユイットは笑顔を見せた。
 
「やった! 解除でき」
 
 そして固まった。
 
「ユイット?」
 
 異変に気付いたパャドの言葉に、ユイットは反応しない。
 反応できない。
 ユイットの体は、時間停止に巻き込まれていた。
 
「ユイット! くっ! いったい何故! 我々は、時間停止を回避したはず!」
 
 焦るパャドに、遠くから夢美が微笑んだ。
 
「時間停止の解除を防ぐ方法なんて、とっくにノウハウを貯め終えているんですよ。前任者は、コストをケチって使わなかったようですが」
 
「何を、言って?」
 
「ユイットさんは、ちゃんと時間停止を解除させて元の時間へ戻りましたよ。現在停止している、正常な時間の世界へ」
 
 いつの間にか、パャドも固まっていた。
 ユイットの時間停止解除に巻き込まれ、パャドもユイットと共に正常な時間の世界へと戻された。
 次に意識が戻るのは、翔太たちが時間停止を解除した後。
 
「で、最後に言い残すことは?」
 
 後片付けでもするように、翔太はオシェムの前に立った。
 あばら骨が砕かれたオシェムは地面に座ったまま、翔太を見上げて睨みつける。
 
「エイジは……俺が……守」
 
「あっそ」
 
 が、抵抗一つできずに、翔太の銃一発で魂を奪われた。
 
「任務完了っと」
 
「ですね」
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