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第14話 悪役令嬢フィリー・ティック2
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「天馬さん、私が!」
三姫は、咄嗟に銃を構えて、照準をフィリーへとあわせた。
弥太郎が調達を完了できる状態ではないと判断した三姫は、速やかにその役割を自身が引き継いだ。
が、処刑台は三姫の立つ場所より少し高い位置にある。
三姫が銃を構えるも、フィリーに確実に当てるには角度が悪く、処刑台そのものが遮蔽物となっていた。
「おっと」
おまけに、三姫のやりたいことに気づいた翔太は、三姫に背を向けたまま射線上へと移動した。
「ぐっ」
三姫はしばらく銃口を左右に動かしてフィリーに当てる方法を探したが、翔太の体が完全にブラインドとなっていることがわかると、銃を下ろした。
転移中であっても、殺人という行為は法律によって禁止されている。
もしも三姫が発砲し、銃弾が翔太へと当たった場合、三姫は転移を終えて戻った後、業務上過失傷害あるいは業務上過失致死の罪状で裁かれることになる。
故に、翔太に当たる可能性がある状況下で、三姫は軽々と銃を使うことができない。
「自分を壁にするなんて、相変わらず危険な戦い方だな」
「何言ってんだ? 射線に立つだけで一人封じられるんだ。めちゃくちゃ効率いいだろう?」
弥太郎と翔太の剣が衝突する。
金属音を何度も鳴らし、ぶつかり合う。
とはいえ、互いの剣に殺意は籠っていない。
互いに異世界の人間ではないため、剣に触れても魂が抜き取られることはないが、鋭利な刃物で斬られた程度の怪我はする。
そして、怪我をさせてしまえば、させた側が犯罪者コース一直線だ。
故に、弥太郎と翔太の戦いは、いかに相手を傷つけず、いかに相手を無力化するかに焦点が当たる。
「効率にかまけて、剣術をサボってたわけじゃなさそうだな」
「当たり前だろ? 基礎あっての効率だ。そしてお前は、相変わらず基礎止まりだな!」
翔太が剣に力を入れ、互いの剣を弾き飛ばす様に弥太郎の剣を押す。
弥太郎は剣を落とさないように柄を強く握り、翔太を押し返す。
弥太郎と翔太、互いの体がはじかれ、互いに後退する。
距離が空いたその隙に、翔太はボタンを取り出した。
「基礎止まりのやつが、俺に勝てるわけねえだろ!」
翔太がボタンを押すと、処刑台の周囲に配置されていたドローンが飛翔を始める。
ドローンは二種類。
一つは、拳銃の形状をしたドローン。
異世界の人間を検知し、自動的に発砲をする。
もう一つは、球体の形をしたドローン。
四台が規則正しく動き、それぞれ網の四方を持って、網を広げている。
異世界以外の人間を検知し、自動的に捕獲へ向かう。
拳銃型のドローンは、時間停止によって固まっている処刑台周りの民衆に、無差別に発砲を始めた。
銃弾は民衆に当たるが、時間停止されていることで魂をとられることもなく、体に傷がつくこともなく、銃弾だけが虚しく地面へと落ちた。
網を持ったドローンは弥太郎を補足すると、弥太郎を捕獲するために近づいてきた。
弥太郎は処刑台から飛び降りて、網から逃げるように走る。
「これがお前のやり方か!」
叫ぶ弥太郎を眺めながら、翔太は笑う。
「そうだよ! 魂を奪う相手に敬意を持てだの、正々堂々戦えだの、くだらねえ! 必要なのは成果! そして利益! 使えるモンは全部使うのが、正しい調達の在り方だ!」
翔太は、処刑台から遠ざかった弥太郎から、拳銃型のドローンへと視線を移す。
拳銃型のドローンは、相変わらずフィリーを狙うことなく、時間停止された人々を狙い続けている。
「ポンコツめ」
拳銃型のドローンは、時間停止されていない人間を検知することはできない。
よって、フリーだろうが時間停止中の平民だろうが、構わず撃つ。
翔太にとっての理想は、一発でフィリーを撃ち抜いてくれることだったが、残念ながら希望はかなわず、最新の拳銃型ドローンはフィリーから離れた方向へと移動しながら発砲を続けていた。
「ま、いいか。殺せりゃ、俺の勝ちだ」
翔太は再び剣を握りしめ、発砲音響く処刑台の上で、フィリーに向かって剣を振り上げた。
無抵抗のフィリーは、ギリギリと歯ぎしりをしながら翔太を睨みつけた。
「させません!」
が、そこへ介入してきたのが三姫だ。
処刑台に上って来た三姫は、翔太に向かって銃を突きつけた。
「うおっ!?」
撃たれないことはわかりつつも、自分に向けられた銃口を前に、翔太は一瞬ひるむ。
その隙をついて、三姫は銃をフィリーへと向けた。
「させるか!」
我に返った翔太は、三姫が引き金を引くより先に、銃を蹴り上げた。
「きゃあっ!?」
「こいつは俺の獲物だ!」
その後、翔太はフィリーに向かって剣を振り下ろす。
が、振り下ろした翔太の剣は、三姫の短剣によって止められた。
三姫の短剣の表面が弥太郎の剣を止め、短剣の裏面がフィリーの首にピタリと触れた。
三姫が短剣を九十度回転させれば、刃がフィリーの首に触れ、フィリーの首を容易に斬り落とすことができる位置。
が、翔太もそれを理解しているのだろう、一切の力を緩めず、短剣の回転を許さない。
「んぐぐぐぐぐ」
「その剣を、どきやがれ!」
翔太は、力づくで三姫の短剣ごとフィリーの首に刃を押し込もうとする。
三姫は、必死にそれを食い止める。
力が均衡する中、弥太郎は蹴り上げた上空から落ちてきた三姫の銃を掴み、フィリーに向かって銃を構えた。
「あ!」
「残念だったな!」
とれる。
そう確信を持った翔太が引き金を引く。
「翔太!」
「あん?」
が、そんな翔太の視界を、一発の銃弾が駆け抜けた。
銃弾は正確無比に翔太の持つ剣を撃つ。
「いでぇ!?」
銃弾が衝突する衝撃の大きさに、翔太の手から剣が飛んでいく。
同時に、銃を持っていた手からも力が抜け、銃口があらぬ方向へと向いてしまった。
翔太の剣圧という重さから解放された三姫は、即座に短剣を回転させ、フィリーの首へ刃を沈めた。
「あ、てめぇ!」
血が噴き出す。
怒りと屈辱にまみれるフィリーの瞳からは完全に光がなくなり、全身の力が抜けて動かなくなった。
「やりました、天馬さん!」
「おお。……あ」
「あ」
笑顔を向けて喜びを表す三姫に見守られながら、同じく喜ぶ弥太郎の体は、未だ動き続ける捕獲用ドローンの網にからめとられた。
「おあああああああああ!?」
捕獲用のドローンは、目的を達したと言わんばかりに旋回を始め、ドローンの持ち主である翔太の近くにまで戻って来た。
網に引っかかった弥太郎は、体の上下がひっくり返ったまま、翔太へと話しかける。
「おーい、勝負はついただろ。これ、はずしてくれよ」
「……っ!」
翔太は一瞬我を忘れて拳を握りしめ振り上げるが、すぐに冷静さを取り戻した。
既に、弥太郎と翔太の対決は、弥太郎たちの勝利という形で決着がついた。
一発殴ったところで勝敗が変わることはなく、現代に戻った後に暴行罪という罪を背負うだけだ。
翔太はリモコンを乱暴に操作して、ドローンを上下に動かす。
網が乱暴に上下に振られ、弥太郎の体が処刑台の上に落とされる。
「いって」
「おら、はずしたぞ」
「もう少し丁寧にして欲しかったな」
弥太郎は処刑台の上に座ったまま、ぶつけた頭を手でさする。
「天馬さん! 大丈夫ですか?」
三姫はすかさず弥太郎の元へと駆け寄り、弥太郎の体に傷や流血がないことを確認してほっと一息こぼし、翔太を睨みつける。
「なんだよ?」
「……最低男」
「あめえんだよ。だからてめえらは、業界トップになれねんだよ」
翔太は捨て台詞を吐いた後、ポケットからミニチュアの扉を取り出し、その場で上下に振った。
扉は二メートルの高さまで巨大化した後、無音で開いた。
開いた扉の先には真っ暗な闇が広がっており、翔太はポケットに手を突っ込んで扉の中に入っていく。
「今回のことは、協会に報告しておくぞ」
「ご自由に。協会からの小言なんざ、いつものことだよ」
弥太郎の言葉にも反応を示すことなく、翔太は歩き、闇が翔太の全身を包んだ。
瞬間、扉は閉まり、地面へと沈んで消えた。
弥太郎と三姫。
二人っきりの処刑台。
弥太郎は、一人で悪役令嬢の調達を成功させた三姫を労い、肩に手を置いた。
「助かった」
肩に置かれた掌の意味を理解した三姫は、今までの努力が報われたように晴れ晴れとした気分となり、思わず目に涙をためる。
「……天馬さん」
「なんだ?」
「これ、セクハラです」
「褒めたのに!?」
現代。
転生の機械が開き、翔太は機械の外へと出る。
「お疲れ様でした」
機械の前には一人の女性が待ち構えており、手に持っていた鞄を翔太へ押し付けた。
翔太は無言で鞄を受け取り、無言のまま出口へと向かった。
女性もまた翔太の横に並び、歩幅を合わせて歩き始める。
「先輩の仕事っぷり、拝見させていただきました。さすが、俺一人で十分だって大口叩いていただけのことはありますね。見事な失敗でした。きゃー、かっこいいー」
「お前」
「冗談です。悪役令嬢転生株式会社、良い社員が育っているようですね。まあ、うちには及びませんが」
楽々転生サービス株式会社のスカウト担当、麒麟夢美は、表情を崩さずに翔太へ言葉を投げかける。
つり目に赤い眼鏡は、気の強そうな雰囲気を隠す気がなく、抑揚のない一言一言には高圧的な強さが含まれている。
「貴方は私がスカウトしたんです。しっかりしてくれないと困ります。私が」
「わかってんだよ」
翔太と夢美はその後一言も言葉を交わすこともなく、出口へ向かって歩いて行った。
三姫は、咄嗟に銃を構えて、照準をフィリーへとあわせた。
弥太郎が調達を完了できる状態ではないと判断した三姫は、速やかにその役割を自身が引き継いだ。
が、処刑台は三姫の立つ場所より少し高い位置にある。
三姫が銃を構えるも、フィリーに確実に当てるには角度が悪く、処刑台そのものが遮蔽物となっていた。
「おっと」
おまけに、三姫のやりたいことに気づいた翔太は、三姫に背を向けたまま射線上へと移動した。
「ぐっ」
三姫はしばらく銃口を左右に動かしてフィリーに当てる方法を探したが、翔太の体が完全にブラインドとなっていることがわかると、銃を下ろした。
転移中であっても、殺人という行為は法律によって禁止されている。
もしも三姫が発砲し、銃弾が翔太へと当たった場合、三姫は転移を終えて戻った後、業務上過失傷害あるいは業務上過失致死の罪状で裁かれることになる。
故に、翔太に当たる可能性がある状況下で、三姫は軽々と銃を使うことができない。
「自分を壁にするなんて、相変わらず危険な戦い方だな」
「何言ってんだ? 射線に立つだけで一人封じられるんだ。めちゃくちゃ効率いいだろう?」
弥太郎と翔太の剣が衝突する。
金属音を何度も鳴らし、ぶつかり合う。
とはいえ、互いの剣に殺意は籠っていない。
互いに異世界の人間ではないため、剣に触れても魂が抜き取られることはないが、鋭利な刃物で斬られた程度の怪我はする。
そして、怪我をさせてしまえば、させた側が犯罪者コース一直線だ。
故に、弥太郎と翔太の戦いは、いかに相手を傷つけず、いかに相手を無力化するかに焦点が当たる。
「効率にかまけて、剣術をサボってたわけじゃなさそうだな」
「当たり前だろ? 基礎あっての効率だ。そしてお前は、相変わらず基礎止まりだな!」
翔太が剣に力を入れ、互いの剣を弾き飛ばす様に弥太郎の剣を押す。
弥太郎は剣を落とさないように柄を強く握り、翔太を押し返す。
弥太郎と翔太、互いの体がはじかれ、互いに後退する。
距離が空いたその隙に、翔太はボタンを取り出した。
「基礎止まりのやつが、俺に勝てるわけねえだろ!」
翔太がボタンを押すと、処刑台の周囲に配置されていたドローンが飛翔を始める。
ドローンは二種類。
一つは、拳銃の形状をしたドローン。
異世界の人間を検知し、自動的に発砲をする。
もう一つは、球体の形をしたドローン。
四台が規則正しく動き、それぞれ網の四方を持って、網を広げている。
異世界以外の人間を検知し、自動的に捕獲へ向かう。
拳銃型のドローンは、時間停止によって固まっている処刑台周りの民衆に、無差別に発砲を始めた。
銃弾は民衆に当たるが、時間停止されていることで魂をとられることもなく、体に傷がつくこともなく、銃弾だけが虚しく地面へと落ちた。
網を持ったドローンは弥太郎を補足すると、弥太郎を捕獲するために近づいてきた。
弥太郎は処刑台から飛び降りて、網から逃げるように走る。
「これがお前のやり方か!」
叫ぶ弥太郎を眺めながら、翔太は笑う。
「そうだよ! 魂を奪う相手に敬意を持てだの、正々堂々戦えだの、くだらねえ! 必要なのは成果! そして利益! 使えるモンは全部使うのが、正しい調達の在り方だ!」
翔太は、処刑台から遠ざかった弥太郎から、拳銃型のドローンへと視線を移す。
拳銃型のドローンは、相変わらずフィリーを狙うことなく、時間停止された人々を狙い続けている。
「ポンコツめ」
拳銃型のドローンは、時間停止されていない人間を検知することはできない。
よって、フリーだろうが時間停止中の平民だろうが、構わず撃つ。
翔太にとっての理想は、一発でフィリーを撃ち抜いてくれることだったが、残念ながら希望はかなわず、最新の拳銃型ドローンはフィリーから離れた方向へと移動しながら発砲を続けていた。
「ま、いいか。殺せりゃ、俺の勝ちだ」
翔太は再び剣を握りしめ、発砲音響く処刑台の上で、フィリーに向かって剣を振り上げた。
無抵抗のフィリーは、ギリギリと歯ぎしりをしながら翔太を睨みつけた。
「させません!」
が、そこへ介入してきたのが三姫だ。
処刑台に上って来た三姫は、翔太に向かって銃を突きつけた。
「うおっ!?」
撃たれないことはわかりつつも、自分に向けられた銃口を前に、翔太は一瞬ひるむ。
その隙をついて、三姫は銃をフィリーへと向けた。
「させるか!」
我に返った翔太は、三姫が引き金を引くより先に、銃を蹴り上げた。
「きゃあっ!?」
「こいつは俺の獲物だ!」
その後、翔太はフィリーに向かって剣を振り下ろす。
が、振り下ろした翔太の剣は、三姫の短剣によって止められた。
三姫の短剣の表面が弥太郎の剣を止め、短剣の裏面がフィリーの首にピタリと触れた。
三姫が短剣を九十度回転させれば、刃がフィリーの首に触れ、フィリーの首を容易に斬り落とすことができる位置。
が、翔太もそれを理解しているのだろう、一切の力を緩めず、短剣の回転を許さない。
「んぐぐぐぐぐ」
「その剣を、どきやがれ!」
翔太は、力づくで三姫の短剣ごとフィリーの首に刃を押し込もうとする。
三姫は、必死にそれを食い止める。
力が均衡する中、弥太郎は蹴り上げた上空から落ちてきた三姫の銃を掴み、フィリーに向かって銃を構えた。
「あ!」
「残念だったな!」
とれる。
そう確信を持った翔太が引き金を引く。
「翔太!」
「あん?」
が、そんな翔太の視界を、一発の銃弾が駆け抜けた。
銃弾は正確無比に翔太の持つ剣を撃つ。
「いでぇ!?」
銃弾が衝突する衝撃の大きさに、翔太の手から剣が飛んでいく。
同時に、銃を持っていた手からも力が抜け、銃口があらぬ方向へと向いてしまった。
翔太の剣圧という重さから解放された三姫は、即座に短剣を回転させ、フィリーの首へ刃を沈めた。
「あ、てめぇ!」
血が噴き出す。
怒りと屈辱にまみれるフィリーの瞳からは完全に光がなくなり、全身の力が抜けて動かなくなった。
「やりました、天馬さん!」
「おお。……あ」
「あ」
笑顔を向けて喜びを表す三姫に見守られながら、同じく喜ぶ弥太郎の体は、未だ動き続ける捕獲用ドローンの網にからめとられた。
「おあああああああああ!?」
捕獲用のドローンは、目的を達したと言わんばかりに旋回を始め、ドローンの持ち主である翔太の近くにまで戻って来た。
網に引っかかった弥太郎は、体の上下がひっくり返ったまま、翔太へと話しかける。
「おーい、勝負はついただろ。これ、はずしてくれよ」
「……っ!」
翔太は一瞬我を忘れて拳を握りしめ振り上げるが、すぐに冷静さを取り戻した。
既に、弥太郎と翔太の対決は、弥太郎たちの勝利という形で決着がついた。
一発殴ったところで勝敗が変わることはなく、現代に戻った後に暴行罪という罪を背負うだけだ。
翔太はリモコンを乱暴に操作して、ドローンを上下に動かす。
網が乱暴に上下に振られ、弥太郎の体が処刑台の上に落とされる。
「いって」
「おら、はずしたぞ」
「もう少し丁寧にして欲しかったな」
弥太郎は処刑台の上に座ったまま、ぶつけた頭を手でさする。
「天馬さん! 大丈夫ですか?」
三姫はすかさず弥太郎の元へと駆け寄り、弥太郎の体に傷や流血がないことを確認してほっと一息こぼし、翔太を睨みつける。
「なんだよ?」
「……最低男」
「あめえんだよ。だからてめえらは、業界トップになれねんだよ」
翔太は捨て台詞を吐いた後、ポケットからミニチュアの扉を取り出し、その場で上下に振った。
扉は二メートルの高さまで巨大化した後、無音で開いた。
開いた扉の先には真っ暗な闇が広がっており、翔太はポケットに手を突っ込んで扉の中に入っていく。
「今回のことは、協会に報告しておくぞ」
「ご自由に。協会からの小言なんざ、いつものことだよ」
弥太郎の言葉にも反応を示すことなく、翔太は歩き、闇が翔太の全身を包んだ。
瞬間、扉は閉まり、地面へと沈んで消えた。
弥太郎と三姫。
二人っきりの処刑台。
弥太郎は、一人で悪役令嬢の調達を成功させた三姫を労い、肩に手を置いた。
「助かった」
肩に置かれた掌の意味を理解した三姫は、今までの努力が報われたように晴れ晴れとした気分となり、思わず目に涙をためる。
「……天馬さん」
「なんだ?」
「これ、セクハラです」
「褒めたのに!?」
現代。
転生の機械が開き、翔太は機械の外へと出る。
「お疲れ様でした」
機械の前には一人の女性が待ち構えており、手に持っていた鞄を翔太へ押し付けた。
翔太は無言で鞄を受け取り、無言のまま出口へと向かった。
女性もまた翔太の横に並び、歩幅を合わせて歩き始める。
「先輩の仕事っぷり、拝見させていただきました。さすが、俺一人で十分だって大口叩いていただけのことはありますね。見事な失敗でした。きゃー、かっこいいー」
「お前」
「冗談です。悪役令嬢転生株式会社、良い社員が育っているようですね。まあ、うちには及びませんが」
楽々転生サービス株式会社のスカウト担当、麒麟夢美は、表情を崩さずに翔太へ言葉を投げかける。
つり目に赤い眼鏡は、気の強そうな雰囲気を隠す気がなく、抑揚のない一言一言には高圧的な強さが含まれている。
「貴方は私がスカウトしたんです。しっかりしてくれないと困ります。私が」
「わかってんだよ」
翔太と夢美はその後一言も言葉を交わすこともなく、出口へ向かって歩いて行った。
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