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「ルベライト、紙とペンを持ってきて頂戴!」
「はあ」
赤口瑠璃の記憶を取り戻した日から、ルビーは机に齧りついて、ゲームの知識を思いつく限り書き出した。
乙女ゲーム『純白の少女と烈火の令嬢』の世界観。
シナリオと起こり得るイベント。
中でも、最も注意して書いたのが、悪役令嬢ルビー・スカーレットを破滅に導く、主人公と四人の攻略対象のことである。
主人公、ダイヤモンド・レグホーン。
白色のショートヘアを持つ、小柄な少女。
魔力を持つ唯一の平民で、貴族だらけの魔法学院へ通うことになる。
どことなく薄幸そうな笑顔が印象的だ。
最難関攻略対象にして皇太子、オニキス・アイボリー。
黒い短髪と瞳を持つ、中肉中背の少年。
皇太子という立場に群がる有象無象を近寄らせないため、常に他人を品定めするような鋭い眼光を向ける癖がある。
そして、王家から直接領地を賜った六大公爵に属する、三人の攻略対象。
パンプキン公爵家の次期当主、トパーズ・パンプキン。
橙色の短髪を持つ、筋肉質な大柄の少年。
ゲームでは、ルビーの元婚約者として存在する。
クロッカス公爵家の次期当主、アメシスト・クロッカス。
腰まで伸びた紫色の長髪を持つ、高貴さあふれる長身の少年。
オランジュ公爵家の次期当主、シトリン・オランジュ。
黄色い短髪を持ち、自身でシトリン商会を運営する商才に長けた少年。
「よし!」
記憶の限りを書き切ったルビーは、満足げに紙を眺める。
ルビーが破滅を迎えないためには、主人公ダイヤモンドとその他の攻略対象からの好感度を、いかに下げないようにするかが重要となる。
そのためには、いつ、どこで、何が起こるか、そして登場人物の性格の情報こそが生命線だ。
逆を言えば、これらの情報が揃った今、破滅を回避するのは攻略本を見ながらゲームを進めるような物。
ルビーは、『純白の少女と烈火の令嬢』をやりこんでいた前世に感謝していた。
もちろん、この世界が本当にゲームと同じように進むのか、それとも世界観が共通なだけでまったく違う動きをするのか、現時点のルビーにはわからない。
しかし、オニキスが婚約者と死別した事実と、前世の記憶を取り戻す前のルビーがトパーズとの婚約破棄に動いた事実から、ルビーは世界が概ねゲーム通りに動くだろうと推測していた。
同時に、トパーズとの婚約破棄を回避できたように、ゲームとは違う展開に持って行くことが可能なことも。
ルビーがトパーズと婚約破棄する前に前世の記憶を取り戻すことができたのは、ルビーにとって幸運だ。
ゲームにおいて、婚約解消はルビーとトパーズの関係を悪化させる大きなイベントであり、それを回避できたことはルビーが破滅から一歩遠ざかったことに等しかった。
なにより、トパーズはルビーの推しだった。
破滅を回避できるうえに推しキャラと結婚できる、ルビーにとっては夢のような展開だ。
「この調子で、ガンガン破滅フラグを回避するわよ! えい、えい、おー!」
「……お嬢様」
そんなルビーを、ルベライトは婚約破棄を回避できた喜びと、本当に今のルビーをトパーズの元へ嫁がせて大丈夫なのかという不安の入り混じった、複雑な表情を浮かべていた。
ルビーとトパーズは、定期的に交流している。
交流する場所は、ルビーの屋敷とトパーズの屋敷を交互に。
本人同士の仲を深める目的もあるが、互いの身内と屋敷の人間への顔見せの意味もある。
結婚は、家同士で行う儀式。
人間関係を事前に構築しておくことは、結婚をスムーズに受け入れてもらうには重要だ。
また、定期的な交流を対外的に見せることで、家と家との強固な繋がりを周囲にアピールする目的もある。
今日の交流場所は、ルビーの屋敷。
屋敷の庭に用意した椅子に座りながら、二人は入れたての紅茶と焼きたてのクッキーを楽しんでいた。
筋肉のついた太い腕のトパーズがティーカップを持てば、まるで子供用のカップに見えてしまう。
紅茶を豪快に飲み干したトパーズは、いつも通りにルビーへ話しかける。
「そろそろ、魔法学院の入学式だな」
「そうですねー」
「アメシストやシトリンとも、久々に会える。楽しみだ」
「そうですねー」
ゲームで攻略対象として登場するアメシストとシトリンも公爵家の貴族であり、ルビーやトパーズとも面識がある。
話しかけられたルビーはと言えば、赤口瑠璃の記憶に引きずられ、実在するトパーズを前に緊張と興奮で意識がすっかりふにゃふにゃになっていた。
投げかけられた言葉も声も、全てがルビーにとって目の前のクッキーよりも甘く、ひたすら咀嚼をし続けていた。
「ルビー? なんか、雰囲気変わったか?」
「そうで……え!? いえ、そんなことはないです……じゃなかった。そんなことないわ! いつも通りよ!」
「そうか……? なら、いいんだけど」
そんなルビーを怪訝に思ったトパーズが話しかけると、ルビーは我に返り、慌てて取り繕った。
赤口瑠璃だった口調を、急いでルビー・スカーレットへの口調へと変える。
元々、ルビーは苛烈な性格と言われており、自分で決めたことを絶対の真実と思い込み、誰に対しても我を通そうとするところがある。
その性格ゆえか、王族を除き誰に対しても媚びず、時に高圧的という見られ方をする。
間違っても、トパーズの言葉に「そうですねー」などと気の抜けた同意を返したりはしない。
ルビーは自身の両頬を二回叩いて気合を入れ直す。
「魔法学院と言えば、一人平民が入学してくるらしいわね」
「ああ、俺もその話は聞いた。平民ながら、公爵家に匹敵する魔力の持ち主らしい。今回の入学も、異例中の異例らしいな」
「どう思う?」
「どうって、それが国の決まりなんだし、別にいいんじゃねえか?」
話を自身から逸らすため、そして現時点でトパーズが主人公にどの程度の関心を抱いているかを確認するため、ルビーはダイヤモンドの話題をあえて出した。
返答はルビーの想像通り、無関心。
つまりは、主人公に好意を示すか否か、どちらにも傾き得る状況。
ルビーからの婚約破棄こそ回避したが、トパーズが主人公に興味を持った結果、トパーズから婚約破棄を言い出されて無理やりゲームのルートに戻される懸念を、ルビー持ち続けている。
俗な言い方をすれば、不思議な力というやつだ。
「そんな質問をするってことは、ルビーこそ、その平民に対して思うところがあるんじゃないのか?」
ルビーの話題に乗っかり、トパーズも問い返す。
「別にいいんじゃない」
「へ?」
「貴族だろうと平民だろうと、優秀な人間は評価され、国として取り立てるべきよ。それこそ、国のあるべき姿よ」
ルビーの返答はトパーズの想定外だったらしく、トパーズは目を丸くした。
ルビーが我を通す性格であれば、トパーズは正義を通す性格である。
どちらも、自身の意思を決して曲げない強い性格に惹かれ、同時に決して曲げない強い性格がゆえ口論になることもあった。
特に、ルビーは実力を平等に見る一方で、身分さえも実力に含め、結果として選民思想を持っていた。
対しトパーズは、法の下に貴族と平民を平等に見ていた。
ルビーの選民思想はトパーズにとって相容れないものであり、嫌いな性格の一つではあった。
だからこそ、ルビーが平民と貴族を同じテーブルに乗せた発言に驚いたのだ。
「やっぱ、雰囲気変わったよ」
「そう?」
「ああ。俺は、今のルビーの方が好きだな」
「……ありがと」
ルビーは口に付けているティーカップで顔を隠し、にやけた口元を見られないようにした。
悪役令嬢ルビー・スカーレットに、にやけ顔は似合わないから。
そして迎える魔法学院の入学式。
ルビーは、トパーズと共に魔法学院の敷地を歩いていた。
入学式といいつつも、その実態は貴族たちの社交パーティだ。
普段着のように真紅のドレスを着こなしたルビーと、その横を歩くトパーズ。
絵画のように美しい光景に、周囲の生徒たちがホウッと息を零す。
入学式が開かれる建物に到着すると、大きな扉が開かれる。
「よっし、行くわよ!」
ルビーは大きく息を吸い込んで、気合を入れ直す。
「何の話?」
「こっちの話よ!」
入学式。
それは、主人公ダイヤモンド・レグホーンが攻略対象四人と顔を合わせる最初のイベント。
そして、悪役令嬢ルビー・スカーレットとの敵対関係が始まる起点。
乙女ゲーム『純白の少女と烈火の令嬢』のシナリオは、全てルビーの頭に入っている。
入学式でどう立ち回るべきかを、ルビーは頭の中で何度も何度も練習した。
ルビーは、この日のために最善を尽くした。
開いた扉から溢れる光がルビーを照らし、乙女ゲーム『純白の少女と烈火の令嬢』の本編が始まった。
光の中から現れたのは、二人の少女。
「これはルビー様、ごきげんよう」
「こんにちはー、ルビー様ー。ごきげんよー」
「…………え?」
入学式にいるはずのない存在を前に、ルビーは硬直する。
否、正確に言うならば、乙女ゲーム『純白の少女と烈火の令嬢』の入学式にいるはずのない存在、だ。
復習をしよう。
乙女ゲーム『純白の少女と烈火の令嬢』は、複数本買わなければ全てのエンディングを見ることができないという仕様で、悪い意味で知名度を上げる結果となった。
具体的に言うと、同時発売された、同一の世界観で悪役令嬢が異なる、いわば平行世界の乙女ゲーム『純白の少女と静水の令嬢』と『純白の少女と暴緑の令嬢』を買わなければ、全てのエンディングを見ることができないという仕様だ。
そして、ルビー目の前に立つ二人の少女は、『純白の少女と静水の令嬢』と『純白の少女と暴緑の令嬢』、それぞれの悪役令嬢だ。
ルビーは察した。
この世界は、『純白の少女と烈火の令嬢』の世界などではないことを。
俗に『純白の少女』シリーズと呼ばれる三作品、『純白の少女と烈火の令嬢』と『純白の少女と静水の令嬢』と『純白の少女と暴緑の令嬢』の世界を混ぜ合わせた、まったく別の世界であると。
「ええええええええええ!?」
「はあ」
赤口瑠璃の記憶を取り戻した日から、ルビーは机に齧りついて、ゲームの知識を思いつく限り書き出した。
乙女ゲーム『純白の少女と烈火の令嬢』の世界観。
シナリオと起こり得るイベント。
中でも、最も注意して書いたのが、悪役令嬢ルビー・スカーレットを破滅に導く、主人公と四人の攻略対象のことである。
主人公、ダイヤモンド・レグホーン。
白色のショートヘアを持つ、小柄な少女。
魔力を持つ唯一の平民で、貴族だらけの魔法学院へ通うことになる。
どことなく薄幸そうな笑顔が印象的だ。
最難関攻略対象にして皇太子、オニキス・アイボリー。
黒い短髪と瞳を持つ、中肉中背の少年。
皇太子という立場に群がる有象無象を近寄らせないため、常に他人を品定めするような鋭い眼光を向ける癖がある。
そして、王家から直接領地を賜った六大公爵に属する、三人の攻略対象。
パンプキン公爵家の次期当主、トパーズ・パンプキン。
橙色の短髪を持つ、筋肉質な大柄の少年。
ゲームでは、ルビーの元婚約者として存在する。
クロッカス公爵家の次期当主、アメシスト・クロッカス。
腰まで伸びた紫色の長髪を持つ、高貴さあふれる長身の少年。
オランジュ公爵家の次期当主、シトリン・オランジュ。
黄色い短髪を持ち、自身でシトリン商会を運営する商才に長けた少年。
「よし!」
記憶の限りを書き切ったルビーは、満足げに紙を眺める。
ルビーが破滅を迎えないためには、主人公ダイヤモンドとその他の攻略対象からの好感度を、いかに下げないようにするかが重要となる。
そのためには、いつ、どこで、何が起こるか、そして登場人物の性格の情報こそが生命線だ。
逆を言えば、これらの情報が揃った今、破滅を回避するのは攻略本を見ながらゲームを進めるような物。
ルビーは、『純白の少女と烈火の令嬢』をやりこんでいた前世に感謝していた。
もちろん、この世界が本当にゲームと同じように進むのか、それとも世界観が共通なだけでまったく違う動きをするのか、現時点のルビーにはわからない。
しかし、オニキスが婚約者と死別した事実と、前世の記憶を取り戻す前のルビーがトパーズとの婚約破棄に動いた事実から、ルビーは世界が概ねゲーム通りに動くだろうと推測していた。
同時に、トパーズとの婚約破棄を回避できたように、ゲームとは違う展開に持って行くことが可能なことも。
ルビーがトパーズと婚約破棄する前に前世の記憶を取り戻すことができたのは、ルビーにとって幸運だ。
ゲームにおいて、婚約解消はルビーとトパーズの関係を悪化させる大きなイベントであり、それを回避できたことはルビーが破滅から一歩遠ざかったことに等しかった。
なにより、トパーズはルビーの推しだった。
破滅を回避できるうえに推しキャラと結婚できる、ルビーにとっては夢のような展開だ。
「この調子で、ガンガン破滅フラグを回避するわよ! えい、えい、おー!」
「……お嬢様」
そんなルビーを、ルベライトは婚約破棄を回避できた喜びと、本当に今のルビーをトパーズの元へ嫁がせて大丈夫なのかという不安の入り混じった、複雑な表情を浮かべていた。
ルビーとトパーズは、定期的に交流している。
交流する場所は、ルビーの屋敷とトパーズの屋敷を交互に。
本人同士の仲を深める目的もあるが、互いの身内と屋敷の人間への顔見せの意味もある。
結婚は、家同士で行う儀式。
人間関係を事前に構築しておくことは、結婚をスムーズに受け入れてもらうには重要だ。
また、定期的な交流を対外的に見せることで、家と家との強固な繋がりを周囲にアピールする目的もある。
今日の交流場所は、ルビーの屋敷。
屋敷の庭に用意した椅子に座りながら、二人は入れたての紅茶と焼きたてのクッキーを楽しんでいた。
筋肉のついた太い腕のトパーズがティーカップを持てば、まるで子供用のカップに見えてしまう。
紅茶を豪快に飲み干したトパーズは、いつも通りにルビーへ話しかける。
「そろそろ、魔法学院の入学式だな」
「そうですねー」
「アメシストやシトリンとも、久々に会える。楽しみだ」
「そうですねー」
ゲームで攻略対象として登場するアメシストとシトリンも公爵家の貴族であり、ルビーやトパーズとも面識がある。
話しかけられたルビーはと言えば、赤口瑠璃の記憶に引きずられ、実在するトパーズを前に緊張と興奮で意識がすっかりふにゃふにゃになっていた。
投げかけられた言葉も声も、全てがルビーにとって目の前のクッキーよりも甘く、ひたすら咀嚼をし続けていた。
「ルビー? なんか、雰囲気変わったか?」
「そうで……え!? いえ、そんなことはないです……じゃなかった。そんなことないわ! いつも通りよ!」
「そうか……? なら、いいんだけど」
そんなルビーを怪訝に思ったトパーズが話しかけると、ルビーは我に返り、慌てて取り繕った。
赤口瑠璃だった口調を、急いでルビー・スカーレットへの口調へと変える。
元々、ルビーは苛烈な性格と言われており、自分で決めたことを絶対の真実と思い込み、誰に対しても我を通そうとするところがある。
その性格ゆえか、王族を除き誰に対しても媚びず、時に高圧的という見られ方をする。
間違っても、トパーズの言葉に「そうですねー」などと気の抜けた同意を返したりはしない。
ルビーは自身の両頬を二回叩いて気合を入れ直す。
「魔法学院と言えば、一人平民が入学してくるらしいわね」
「ああ、俺もその話は聞いた。平民ながら、公爵家に匹敵する魔力の持ち主らしい。今回の入学も、異例中の異例らしいな」
「どう思う?」
「どうって、それが国の決まりなんだし、別にいいんじゃねえか?」
話を自身から逸らすため、そして現時点でトパーズが主人公にどの程度の関心を抱いているかを確認するため、ルビーはダイヤモンドの話題をあえて出した。
返答はルビーの想像通り、無関心。
つまりは、主人公に好意を示すか否か、どちらにも傾き得る状況。
ルビーからの婚約破棄こそ回避したが、トパーズが主人公に興味を持った結果、トパーズから婚約破棄を言い出されて無理やりゲームのルートに戻される懸念を、ルビー持ち続けている。
俗な言い方をすれば、不思議な力というやつだ。
「そんな質問をするってことは、ルビーこそ、その平民に対して思うところがあるんじゃないのか?」
ルビーの話題に乗っかり、トパーズも問い返す。
「別にいいんじゃない」
「へ?」
「貴族だろうと平民だろうと、優秀な人間は評価され、国として取り立てるべきよ。それこそ、国のあるべき姿よ」
ルビーの返答はトパーズの想定外だったらしく、トパーズは目を丸くした。
ルビーが我を通す性格であれば、トパーズは正義を通す性格である。
どちらも、自身の意思を決して曲げない強い性格に惹かれ、同時に決して曲げない強い性格がゆえ口論になることもあった。
特に、ルビーは実力を平等に見る一方で、身分さえも実力に含め、結果として選民思想を持っていた。
対しトパーズは、法の下に貴族と平民を平等に見ていた。
ルビーの選民思想はトパーズにとって相容れないものであり、嫌いな性格の一つではあった。
だからこそ、ルビーが平民と貴族を同じテーブルに乗せた発言に驚いたのだ。
「やっぱ、雰囲気変わったよ」
「そう?」
「ああ。俺は、今のルビーの方が好きだな」
「……ありがと」
ルビーは口に付けているティーカップで顔を隠し、にやけた口元を見られないようにした。
悪役令嬢ルビー・スカーレットに、にやけ顔は似合わないから。
そして迎える魔法学院の入学式。
ルビーは、トパーズと共に魔法学院の敷地を歩いていた。
入学式といいつつも、その実態は貴族たちの社交パーティだ。
普段着のように真紅のドレスを着こなしたルビーと、その横を歩くトパーズ。
絵画のように美しい光景に、周囲の生徒たちがホウッと息を零す。
入学式が開かれる建物に到着すると、大きな扉が開かれる。
「よっし、行くわよ!」
ルビーは大きく息を吸い込んで、気合を入れ直す。
「何の話?」
「こっちの話よ!」
入学式。
それは、主人公ダイヤモンド・レグホーンが攻略対象四人と顔を合わせる最初のイベント。
そして、悪役令嬢ルビー・スカーレットとの敵対関係が始まる起点。
乙女ゲーム『純白の少女と烈火の令嬢』のシナリオは、全てルビーの頭に入っている。
入学式でどう立ち回るべきかを、ルビーは頭の中で何度も何度も練習した。
ルビーは、この日のために最善を尽くした。
開いた扉から溢れる光がルビーを照らし、乙女ゲーム『純白の少女と烈火の令嬢』の本編が始まった。
光の中から現れたのは、二人の少女。
「これはルビー様、ごきげんよう」
「こんにちはー、ルビー様ー。ごきげんよー」
「…………え?」
入学式にいるはずのない存在を前に、ルビーは硬直する。
否、正確に言うならば、乙女ゲーム『純白の少女と烈火の令嬢』の入学式にいるはずのない存在、だ。
復習をしよう。
乙女ゲーム『純白の少女と烈火の令嬢』は、複数本買わなければ全てのエンディングを見ることができないという仕様で、悪い意味で知名度を上げる結果となった。
具体的に言うと、同時発売された、同一の世界観で悪役令嬢が異なる、いわば平行世界の乙女ゲーム『純白の少女と静水の令嬢』と『純白の少女と暴緑の令嬢』を買わなければ、全てのエンディングを見ることができないという仕様だ。
そして、ルビー目の前に立つ二人の少女は、『純白の少女と静水の令嬢』と『純白の少女と暴緑の令嬢』、それぞれの悪役令嬢だ。
ルビーは察した。
この世界は、『純白の少女と烈火の令嬢』の世界などではないことを。
俗に『純白の少女』シリーズと呼ばれる三作品、『純白の少女と烈火の令嬢』と『純白の少女と静水の令嬢』と『純白の少女と暴緑の令嬢』の世界を混ぜ合わせた、まったく別の世界であると。
「ええええええええええ!?」
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