12 / 26
第一章
第十二話 前表
しおりを挟む
「セノンさん、今から話すことはわかっていますよね?」
セノンとユリカは宿[BUFFALO]で二人で話した場所と同じ場所にいた。
しかし、初めて二人が会話した時とは空気の重さが格段に違った。
「はい。わかっています」
セノンは試練の塔の時とは打って変わり、ユリカに対して震えを覚えていた。
「なんで、今日の朝私の翼を触ったか詳しく聞きますね? これから」
「――は、はい」
セノンは顔を下に向けたまま語り始める。
「今日の朝、ユリカさんの翼にとても驚かされました。それで、それで初めて見てこの翼はアニメだとよくあんなことやこんなことがあって……、だから、このセカルドではそうなんだろうと思い触れてしまいました」
「……なるほどね。わかった。なら、これからたくさんいいことでもしますか?」
セノンにはユリカの目の奥に何かが潜んでいる、そんな気がした。ユリカが何を企んでいるかセノンには全く分からないが二つの選択肢があり、どっちに転んでもまずい、そんな気がしてならない。
「け、結構です」
「あーあ。せっかく面白いことができると思ったのに……」
「すみませんでした」
セノンは申し訳なさそうな表情を見せるとまた俯く。
「まぁ、今日は之で見逃してあげる。でも、今度、こういうことをしたらわかるよね?」
ユリカの目の奥にいた何かは咆哮したような気がした。セノンは心の中で強く決心をした。
「わ、わかりました。今日はありがとうございました」
セノンは言葉を間違えるのそ入れに気づかずその場を去った。
そしてこの時後ろではユリカがニコニコと手を振っていた。
セノンにはこのあとやることがあった。
セノンはいま、個人のランキングが六位まで下がっていた。それに焦りを感じ、一人で試練の塔を登ろうとしていたのだ。
セノンは宿[BUFFALO]を出た後はどこも寄り道することなく、試練の塔に行った。
「あら、さっきはギルド、エンジェル・ハーツに所属していた方ですね? 先ほどの担当させていただきました、一ノ瀬と申します。夜は何か用がございましたか?」
セノンはまさか自分のことを覚えているとは思わず、驚くも目つきを変えずに言う。
「一ノ瀬さんですか。よろしくお願いしますね。僕は、セノンといいます。これからの時間は自分の限界でも挑戦してこようかと思っています。何回まで行けますかね?」
セノンが自分の名前を言うと一ノ瀬は少し固まった。
「……セノンさんでしたか。テルルのメンバーがここに初めて来たときも私が案内したんですよ? 懐かしいですよね」
セノンは心の中で世の中が狭いものだと思った。そして、少し運命的なものも感じた。
「そうだったんですか? それは奇遇ですね」
「そうですね。そういえばさっきテルルのメンバーがギルドのリーダーになって試練の塔の言っていましたよ。はじめは一階からスタートですよって何度も言ったんですが、頑固な方で……貫禄もあって……注意を聞かず三十階まで行ってしまいました。ギルドのメンバーが死んでなければいいんですけどね……」
セノンは一ノ瀬の言いぶりでなんとなくだれか悟った。しかし、確信はなかった。それは、元テルルのメンバーはみな強く自分でこう決めたらなかなか意見を変えない。
「それは大変でしたね。何なら、僕が様子でも見てきましょうか?」
「本当ですか? それはとても助かります」
「なら、何階に行ったかだけ教えていただけますか? あ、あとフレンドにもなっていただけますか? チャットを送れると楽なので」
「わかりました。その方は、三十五階に行っています。それで、フレンドの件なんですけど、本当に私なんかフレンドになっていただいていいんですか?」
「大丈夫ですよ」
セノンのフレンド欄は今、十一人しかおらずとてもさみしさのあるリストとなっていたのだ。
「わかりました」
一ノ瀬は少し、うれしそうな表情をし、受付のお姉さんとは違い素の一ノ瀬が出ていた。
「ありがとうございます」
こうして、セノンと一ノ瀬はフレンドとなった。
「会話って楽しいですよね。こうしているうちに準備が終わりました。それでは気を付けて行ってらっしゃいませ」
「こちらこそ、とても楽しめました。それでは。また連絡は入れますね」
一ノ瀬はセノンに深く一礼した。そして、セノンはその一例を見ることなく試練の塔に向かった。
試練の塔は今まで自分が行ったことのある階層の休憩地帯にはループできるシステムがある。セノンはそのシステムのことを知っていた。そのため、コマンドメニューを開き地図を出す。
するとセノンは四十回を超えるあたりまでの階層に行ったことがあることがわかった。セノンはその中から三十五階の文字をタッチする。
セノンはまぶしい光に包まれる。
セノンは一瞬目を閉じるが、すぐに開ける。
「ここは――――」
セノンは小さくつぶやいた。そこにはもちろんセノンの来たことがあった。そこはセノンもまだ鮮明に映像として流れることができるところだった。
セノンの前に広がった世界は目の前の攻勢すら見ることのできない洞窟。そう、どんなに目がいいプレイヤーでどんなに暗闇に慣れても前を見ることができない。そのうえ塔の一階とは比べ物にならないくらいモンスターが強い。
セノンが鮮明に覚えているのには理由があった。
それは――――
セノンとユリカは宿[BUFFALO]で二人で話した場所と同じ場所にいた。
しかし、初めて二人が会話した時とは空気の重さが格段に違った。
「はい。わかっています」
セノンは試練の塔の時とは打って変わり、ユリカに対して震えを覚えていた。
「なんで、今日の朝私の翼を触ったか詳しく聞きますね? これから」
「――は、はい」
セノンは顔を下に向けたまま語り始める。
「今日の朝、ユリカさんの翼にとても驚かされました。それで、それで初めて見てこの翼はアニメだとよくあんなことやこんなことがあって……、だから、このセカルドではそうなんだろうと思い触れてしまいました」
「……なるほどね。わかった。なら、これからたくさんいいことでもしますか?」
セノンにはユリカの目の奥に何かが潜んでいる、そんな気がした。ユリカが何を企んでいるかセノンには全く分からないが二つの選択肢があり、どっちに転んでもまずい、そんな気がしてならない。
「け、結構です」
「あーあ。せっかく面白いことができると思ったのに……」
「すみませんでした」
セノンは申し訳なさそうな表情を見せるとまた俯く。
「まぁ、今日は之で見逃してあげる。でも、今度、こういうことをしたらわかるよね?」
ユリカの目の奥にいた何かは咆哮したような気がした。セノンは心の中で強く決心をした。
「わ、わかりました。今日はありがとうございました」
セノンは言葉を間違えるのそ入れに気づかずその場を去った。
そしてこの時後ろではユリカがニコニコと手を振っていた。
セノンにはこのあとやることがあった。
セノンはいま、個人のランキングが六位まで下がっていた。それに焦りを感じ、一人で試練の塔を登ろうとしていたのだ。
セノンは宿[BUFFALO]を出た後はどこも寄り道することなく、試練の塔に行った。
「あら、さっきはギルド、エンジェル・ハーツに所属していた方ですね? 先ほどの担当させていただきました、一ノ瀬と申します。夜は何か用がございましたか?」
セノンはまさか自分のことを覚えているとは思わず、驚くも目つきを変えずに言う。
「一ノ瀬さんですか。よろしくお願いしますね。僕は、セノンといいます。これからの時間は自分の限界でも挑戦してこようかと思っています。何回まで行けますかね?」
セノンが自分の名前を言うと一ノ瀬は少し固まった。
「……セノンさんでしたか。テルルのメンバーがここに初めて来たときも私が案内したんですよ? 懐かしいですよね」
セノンは心の中で世の中が狭いものだと思った。そして、少し運命的なものも感じた。
「そうだったんですか? それは奇遇ですね」
「そうですね。そういえばさっきテルルのメンバーがギルドのリーダーになって試練の塔の言っていましたよ。はじめは一階からスタートですよって何度も言ったんですが、頑固な方で……貫禄もあって……注意を聞かず三十階まで行ってしまいました。ギルドのメンバーが死んでなければいいんですけどね……」
セノンは一ノ瀬の言いぶりでなんとなくだれか悟った。しかし、確信はなかった。それは、元テルルのメンバーはみな強く自分でこう決めたらなかなか意見を変えない。
「それは大変でしたね。何なら、僕が様子でも見てきましょうか?」
「本当ですか? それはとても助かります」
「なら、何階に行ったかだけ教えていただけますか? あ、あとフレンドにもなっていただけますか? チャットを送れると楽なので」
「わかりました。その方は、三十五階に行っています。それで、フレンドの件なんですけど、本当に私なんかフレンドになっていただいていいんですか?」
「大丈夫ですよ」
セノンのフレンド欄は今、十一人しかおらずとてもさみしさのあるリストとなっていたのだ。
「わかりました」
一ノ瀬は少し、うれしそうな表情をし、受付のお姉さんとは違い素の一ノ瀬が出ていた。
「ありがとうございます」
こうして、セノンと一ノ瀬はフレンドとなった。
「会話って楽しいですよね。こうしているうちに準備が終わりました。それでは気を付けて行ってらっしゃいませ」
「こちらこそ、とても楽しめました。それでは。また連絡は入れますね」
一ノ瀬はセノンに深く一礼した。そして、セノンはその一例を見ることなく試練の塔に向かった。
試練の塔は今まで自分が行ったことのある階層の休憩地帯にはループできるシステムがある。セノンはそのシステムのことを知っていた。そのため、コマンドメニューを開き地図を出す。
するとセノンは四十回を超えるあたりまでの階層に行ったことがあることがわかった。セノンはその中から三十五階の文字をタッチする。
セノンはまぶしい光に包まれる。
セノンは一瞬目を閉じるが、すぐに開ける。
「ここは――――」
セノンは小さくつぶやいた。そこにはもちろんセノンの来たことがあった。そこはセノンもまだ鮮明に映像として流れることができるところだった。
セノンの前に広がった世界は目の前の攻勢すら見ることのできない洞窟。そう、どんなに目がいいプレイヤーでどんなに暗闇に慣れても前を見ることができない。そのうえ塔の一階とは比べ物にならないくらいモンスターが強い。
セノンが鮮明に覚えているのには理由があった。
それは――――
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】
繭
恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。
果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる