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第一章
第十三話 過去の記憶
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これは七年前、初めてセノンが試練の塔に来た時の話だった。
セレンが率いていたのはギルドランキング首位の[テルル]だった。
今、そのテルルというギルドは試練の塔の第三十五階。
その階層は薄暗い洞窟だった。そこはとても薄暗い。しかし、かろうじて数十センチメートル先は見えるといった感じだった。
「ここは暗い。みんな、周囲にはいつもの何倍も気を付けるように」
セレンはテルルのリーダーとして、的確な指示を、みんなが欲しいタイミングとほぼ同時に出してくる。
「ねぇねぇ、次は誰が戦うんだっけ?」
暗い洞窟の中、しずくが滴る音以外に女性の声が響いた。
「次は俺だ!」
すると、低く、野太い声をした男が声を上げる。
これまでは一つの階層をクリアするの一人が敵を蹴散らす。そんなことを続けてきていたのだ。
「なら、この三十五層はローレンに任せてみんなは後ろについていこうか」
セレンは一番前をローレンに譲った。すると、ローレンは両手のこぶし同士をぶつけ合い気合を入れる。
そのこぶしからは少し煙のようなものが出るほどだった。
「こんな暗さなんて屁でもないわ! 出てくるモンスターのようにしてくれるわい!」
そうやってローレンが叫ぶと、あたりに響き渡った。これはローレンからモンスターに対する威嚇でもあった。
(なんだこのざわめきは……)
その時セノンは心の中でつぶやいた。
――そのときだ。
このテルルのメンバーの周りに小さな虫が集まってきた。
「これはモンスターだ!」
セレンはみんなにすぐに呼びかける。
これにはローレンも少し動揺する。
「これは俺一人で全員を守るのは難しいぞ!」
彼は自分の周りにいる小さなモンスターにぶんぶんと手を振り回し攻撃している。
しかし、その攻撃だけでは追い付かない。
十人のメンバーの周りにはさらに敵が増えていく。
しかし、この中でセノンは全く自分の持ち味を出せていない。
それは、彼は銃の使いだからだ。もしここで銃を引き抜き使てしまえば流れ弾がほかのメンバーにあたる恐れがある。
セノンは自分の靴にもしもの時に使う小型ナイフを振って攻撃をしている。
「ここはローレンだけでは次に進むことはできない! こうなったら、自分の身は自分で守れ! 今の状態を保ちつつ前に進んでいくぞ!」
セレンは長い太刀を素早く回し、周りの敵を圧倒。全く身に寄せ付けていない。
「みんな、悪い。俺の力不足だ」
ローレンは低く悲しい声を出しる。が、手は休めない。
こうして、テルルはこの三十五階層をゆっくりと進んでいっている。
しかし、彼らは数メートル先も真っ暗闇で見ることができていない。
そのため、モンスターは減ったのか、それとも増えているのか。そんなことも確認できていなかった。
しかし、この十人のメンバーは何の無駄口も叩くことなく懸命に戦っている。
「これはまずいな……」
セレンは少し、状況が不安になってきていた。
しかし、セレンがこう思うのも束の間。
小型モンスターの攻撃頻度が急激に増える。これにはさすがのテルルのんねんばーもついていけなくなる。
いくら最強ギルドのメンバーであっても攻撃するのは両手、両足しかない。たまに変わり者がおり、そいつは頭やよくわからない攻撃するものもいるが、それでも攻撃できるのは数か所だ。
それに対して、小型モンスターの数が比になっていない。そこには一人を覆うモンスターの数が約数百といった感じであった。
これにはさすがのセレンも気が付く。
「ここはもう撤退しよう」
セレンがそういうと、テルルのメンバーはその場を立ち去ろうとする。
しかし、今まで来た道には大量のモンスターの死骸。これまでは死んだモンスターは赤いエフェクトとなっていたがここでは違った。
十人のメンバーは後ろにもいる敵を軽い力で薙ぎ払いながら、どんどん後ろに撤退していく。この時、メンバーが走るたびにぐちゃぐちゃと音が鳴る。
しかし、メンバーはそんなことは気にしていない。
「もうすぐ、スタートに戻る。そうしたら、個人で一階にスタートに戻る準備を!」
セレンは走りながらコマンドメニューを開く。
「「「「「はい」」」」」
セレンの言葉に全員が反応して、全員メニューを開く。そして、ここ、三十五階層のスタート地点についた。
すると、みんなが青色の光に包まれ、一階層に戻った。
「いやー、あそこは今度しっかりと準備をしてから行きたいな」
一階層に戻ってからセレンが口にした。
「今回はすみませんでした」
セレンが笑いながら言っているのに対して、ローレンは違った。
この時、ローレン以外のメンバーだって、その場の判断でできることはあったのではないか、そう思っていた。しかし、ローレンの本気さにみんなはその場を和ませようとした。
しかし、ローレンは黙って目に涙を浮かべた。
「よし、今日は解散にしよう! また次回にはもっと上へ行けるようにがんばろう!」
これがテルルの初めての試練の塔の旅だった。この時は、いくら強くても、圧倒的数には押されるということがわかった。
この後、彼らは二度この試練の塔に来ており、二度目はこの三十五階のリベンジ。
この時は、簡単にこの三十五層をクリアし、四十三層までいっている。
三度目は、クエストの依頼だった。試練の塔には珍しい草、肉、魚がとれることでも有名である。その時は、二十九層でとれる草を取りに行った。しかし、この時は簡単でもあったため、メンバーの全員が来たというわけではなかった。
この後、テルルは試練の塔に来ることはなかった。
そして、今、セノンは初めて来たあの時の悪夢を思い出していたのであった。
セレンが率いていたのはギルドランキング首位の[テルル]だった。
今、そのテルルというギルドは試練の塔の第三十五階。
その階層は薄暗い洞窟だった。そこはとても薄暗い。しかし、かろうじて数十センチメートル先は見えるといった感じだった。
「ここは暗い。みんな、周囲にはいつもの何倍も気を付けるように」
セレンはテルルのリーダーとして、的確な指示を、みんなが欲しいタイミングとほぼ同時に出してくる。
「ねぇねぇ、次は誰が戦うんだっけ?」
暗い洞窟の中、しずくが滴る音以外に女性の声が響いた。
「次は俺だ!」
すると、低く、野太い声をした男が声を上げる。
これまでは一つの階層をクリアするの一人が敵を蹴散らす。そんなことを続けてきていたのだ。
「なら、この三十五層はローレンに任せてみんなは後ろについていこうか」
セレンは一番前をローレンに譲った。すると、ローレンは両手のこぶし同士をぶつけ合い気合を入れる。
そのこぶしからは少し煙のようなものが出るほどだった。
「こんな暗さなんて屁でもないわ! 出てくるモンスターのようにしてくれるわい!」
そうやってローレンが叫ぶと、あたりに響き渡った。これはローレンからモンスターに対する威嚇でもあった。
(なんだこのざわめきは……)
その時セノンは心の中でつぶやいた。
――そのときだ。
このテルルのメンバーの周りに小さな虫が集まってきた。
「これはモンスターだ!」
セレンはみんなにすぐに呼びかける。
これにはローレンも少し動揺する。
「これは俺一人で全員を守るのは難しいぞ!」
彼は自分の周りにいる小さなモンスターにぶんぶんと手を振り回し攻撃している。
しかし、その攻撃だけでは追い付かない。
十人のメンバーの周りにはさらに敵が増えていく。
しかし、この中でセノンは全く自分の持ち味を出せていない。
それは、彼は銃の使いだからだ。もしここで銃を引き抜き使てしまえば流れ弾がほかのメンバーにあたる恐れがある。
セノンは自分の靴にもしもの時に使う小型ナイフを振って攻撃をしている。
「ここはローレンだけでは次に進むことはできない! こうなったら、自分の身は自分で守れ! 今の状態を保ちつつ前に進んでいくぞ!」
セレンは長い太刀を素早く回し、周りの敵を圧倒。全く身に寄せ付けていない。
「みんな、悪い。俺の力不足だ」
ローレンは低く悲しい声を出しる。が、手は休めない。
こうして、テルルはこの三十五階層をゆっくりと進んでいっている。
しかし、彼らは数メートル先も真っ暗闇で見ることができていない。
そのため、モンスターは減ったのか、それとも増えているのか。そんなことも確認できていなかった。
しかし、この十人のメンバーは何の無駄口も叩くことなく懸命に戦っている。
「これはまずいな……」
セレンは少し、状況が不安になってきていた。
しかし、セレンがこう思うのも束の間。
小型モンスターの攻撃頻度が急激に増える。これにはさすがのテルルのんねんばーもついていけなくなる。
いくら最強ギルドのメンバーであっても攻撃するのは両手、両足しかない。たまに変わり者がおり、そいつは頭やよくわからない攻撃するものもいるが、それでも攻撃できるのは数か所だ。
それに対して、小型モンスターの数が比になっていない。そこには一人を覆うモンスターの数が約数百といった感じであった。
これにはさすがのセレンも気が付く。
「ここはもう撤退しよう」
セレンがそういうと、テルルのメンバーはその場を立ち去ろうとする。
しかし、今まで来た道には大量のモンスターの死骸。これまでは死んだモンスターは赤いエフェクトとなっていたがここでは違った。
十人のメンバーは後ろにもいる敵を軽い力で薙ぎ払いながら、どんどん後ろに撤退していく。この時、メンバーが走るたびにぐちゃぐちゃと音が鳴る。
しかし、メンバーはそんなことは気にしていない。
「もうすぐ、スタートに戻る。そうしたら、個人で一階にスタートに戻る準備を!」
セレンは走りながらコマンドメニューを開く。
「「「「「はい」」」」」
セレンの言葉に全員が反応して、全員メニューを開く。そして、ここ、三十五階層のスタート地点についた。
すると、みんなが青色の光に包まれ、一階層に戻った。
「いやー、あそこは今度しっかりと準備をしてから行きたいな」
一階層に戻ってからセレンが口にした。
「今回はすみませんでした」
セレンが笑いながら言っているのに対して、ローレンは違った。
この時、ローレン以外のメンバーだって、その場の判断でできることはあったのではないか、そう思っていた。しかし、ローレンの本気さにみんなはその場を和ませようとした。
しかし、ローレンは黙って目に涙を浮かべた。
「よし、今日は解散にしよう! また次回にはもっと上へ行けるようにがんばろう!」
これがテルルの初めての試練の塔の旅だった。この時は、いくら強くても、圧倒的数には押されるということがわかった。
この後、彼らは二度この試練の塔に来ており、二度目はこの三十五階のリベンジ。
この時は、簡単にこの三十五層をクリアし、四十三層までいっている。
三度目は、クエストの依頼だった。試練の塔には珍しい草、肉、魚がとれることでも有名である。その時は、二十九層でとれる草を取りに行った。しかし、この時は簡単でもあったため、メンバーの全員が来たというわけではなかった。
この後、テルルは試練の塔に来ることはなかった。
そして、今、セノンは初めて来たあの時の悪夢を思い出していたのであった。
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