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第一章
第十四話 悪夢再来
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セノンは恐る恐る一歩前進していた。そして、その右手には小さな小刀を持っていた。
これはあの時と同じ光景だった。
この三十五層はあの時と同じ水が滴る音が鳴っているのが聞こえる。
セノンはここにきているのはローレンだと思っていた。
なぜ、ローレンがここにきているかは知らないが、彼はここでさらに強くなることができる、そう思っているような気がした。
――キュルルルルル
と、そんなことを考えているうちにセノンの周りには小型モンスターが湧いてきた。
そして、その大量の小型モンスター、コウノモリはセノンに目掛け飛び掛かってくる。
そのコウノモリはセノンの背後、その後は、その後ろといったように死角を突いて攻撃を繰り返してくる。
セノンは小さな刀を逆手に持ち、足も使い、自分の体を回転させるように攻撃する。
そして、そんな攻撃をしているとき、セノンはコマンドメニューを開く。そして、その中から松明を手に取る。
松明にはもともと火がついており、その日の灯りが真っ暗な洞窟を少しだけ明るくする。
明るくなった洞窟の周りの壁を見ると、そこは黒色の礫岩でできていた。しかし、そこには水分の多く存在し、水分はその礫岩に白い塊となってくっついている。
そして、その灯りは、洞窟の中だけでなく、モンスターも照らすこととなっていた。
モンスターはまるでコウモリのようであった。真っ黒に染まった身体、体に対して大きな翼、そして、大きな牙を持った口元がある。しかし、この[コウノドリ]にはコウモリとは大きく異なるところがあった。それは、普通どんな動物にもある目がないのだ。コウノドリはコウモリと同じように超音波を使って生活している。その超音波は仲間とのコミュニケーションだけでなく、自分が今どの位置に存在しているのかも壁からの反射を使うことなど、様々なことに役立てている。
コウノモリはセノンに攻撃をしようとするがセノンの素早い攻防によりセノンの身体に触れることさえもできていない。
セノンはぐるぐると回りながら移動を始める。
コウノモリはセノンの足や松明、小刀によって、切られ、叩かれ、叩きつけられ、だんだん数を減らしていく。
そして、ゆっくりではあるがセノンは三十五層の深層部分まで足を進める。
すると、遠くの方で光があることがセノンの視界に入り込む。
セノンはコウノモリと戦いながら少しその光の方へ行く。
その光とセノンの間の距離が残り五十メートルぐらいになった頃……
セノンの耳には残響のようなものが聞こえてくる。
――うわぁぁぁぁぁぁ
それは、まだ若い男性の声のように聞こえた。
セノンは自分の周りにいたコウノモリも置き去るスピードで走り始める。
そして、明るくなったところについた。――はずだった。
セノンの周りには灯りというものは全くない。それどころか手にしていたはずの松明の火の光も消えている。
セノンは慌てて周りを見渡す。しかし、灯りのない真っ暗な洞窟の中、目の前に手を運んでももちろん見えない。
こうした中で、彼はもう一度、松明を手に取ろうとコマンドメニューを開こうとしたそのとき。
セノンの左足を地面から生えた手により掴まれる。
(なんだこれは……?)
セノンは右足で真上に跳躍しようとするが、手の力に負け少しも浮くことすらできない。
セノンは反射的に腰の銃を手に取り真下に銃弾を放つ。
「そうやって、暴力はいけませんよ?」
美しい女性の声だ。その声は透き通っている。セノンはその声に包まれるような気がした。
「誰だ?」
セノンは短い言葉を吐く。
「そんなにも暴力的だから、人間はいつまでたっても人間なんですよ? そろそろ気づいてはいかかです?」
また聞こえた。しかし、ここは暗闇。試練の塔の三十五層。こんなところで人間の声がすることなどあり得るはずもなかった。
セノンはこういったことで、この声はモンスターだと知る。そう、モンスターに知能がないと言い切れる根拠はなかったのだ。
「誰だ?」
セノンは同じ質問を問う。そして、耳を澄ませる。
「それは失礼しました。私の名前は――」
セノンはこんなこと聞くまでもない。なぜならこの声は自分の真下から聞こえてきているからだ。
自分の真下は地面となっている。しかし、セノンにはどういったつくりかはわからないが、地面から生えてくるように腕があり、それに掴まれているのだ。
セノンは手に持った銃でもう一度、引き金を引く。
その銃弾は容赦なく女性の声のする方に向かって撃つ。
「今回はこれで退散しますわ。自己紹介はまだ終わっていませんでしたが、仕方ないですね」
この言葉を言い終えた女性はセノンの足を放す。
セノンはこれにより一気に足が軽くなる。セノンは心の中でほっとした気持ちと同時にいやな予感もした。
セノンは気づくと周りにいたはずのコウノモリはいなくなっており、この会のボス部屋の前に立っていた。
ボス部屋は締まっていた。中では大きな雄たけびが聞こえる。この声はセノンも聞いたことがあるため三十五階のボスであることがわかった。
と、そのとき、地面が大きく揺れた。これによりセノンは悟った。中にローレンがいると。
これはあの時と同じ光景だった。
この三十五層はあの時と同じ水が滴る音が鳴っているのが聞こえる。
セノンはここにきているのはローレンだと思っていた。
なぜ、ローレンがここにきているかは知らないが、彼はここでさらに強くなることができる、そう思っているような気がした。
――キュルルルルル
と、そんなことを考えているうちにセノンの周りには小型モンスターが湧いてきた。
そして、その大量の小型モンスター、コウノモリはセノンに目掛け飛び掛かってくる。
そのコウノモリはセノンの背後、その後は、その後ろといったように死角を突いて攻撃を繰り返してくる。
セノンは小さな刀を逆手に持ち、足も使い、自分の体を回転させるように攻撃する。
そして、そんな攻撃をしているとき、セノンはコマンドメニューを開く。そして、その中から松明を手に取る。
松明にはもともと火がついており、その日の灯りが真っ暗な洞窟を少しだけ明るくする。
明るくなった洞窟の周りの壁を見ると、そこは黒色の礫岩でできていた。しかし、そこには水分の多く存在し、水分はその礫岩に白い塊となってくっついている。
そして、その灯りは、洞窟の中だけでなく、モンスターも照らすこととなっていた。
モンスターはまるでコウモリのようであった。真っ黒に染まった身体、体に対して大きな翼、そして、大きな牙を持った口元がある。しかし、この[コウノドリ]にはコウモリとは大きく異なるところがあった。それは、普通どんな動物にもある目がないのだ。コウノドリはコウモリと同じように超音波を使って生活している。その超音波は仲間とのコミュニケーションだけでなく、自分が今どの位置に存在しているのかも壁からの反射を使うことなど、様々なことに役立てている。
コウノモリはセノンに攻撃をしようとするがセノンの素早い攻防によりセノンの身体に触れることさえもできていない。
セノンはぐるぐると回りながら移動を始める。
コウノモリはセノンの足や松明、小刀によって、切られ、叩かれ、叩きつけられ、だんだん数を減らしていく。
そして、ゆっくりではあるがセノンは三十五層の深層部分まで足を進める。
すると、遠くの方で光があることがセノンの視界に入り込む。
セノンはコウノモリと戦いながら少しその光の方へ行く。
その光とセノンの間の距離が残り五十メートルぐらいになった頃……
セノンの耳には残響のようなものが聞こえてくる。
――うわぁぁぁぁぁぁ
それは、まだ若い男性の声のように聞こえた。
セノンは自分の周りにいたコウノモリも置き去るスピードで走り始める。
そして、明るくなったところについた。――はずだった。
セノンの周りには灯りというものは全くない。それどころか手にしていたはずの松明の火の光も消えている。
セノンは慌てて周りを見渡す。しかし、灯りのない真っ暗な洞窟の中、目の前に手を運んでももちろん見えない。
こうした中で、彼はもう一度、松明を手に取ろうとコマンドメニューを開こうとしたそのとき。
セノンの左足を地面から生えた手により掴まれる。
(なんだこれは……?)
セノンは右足で真上に跳躍しようとするが、手の力に負け少しも浮くことすらできない。
セノンは反射的に腰の銃を手に取り真下に銃弾を放つ。
「そうやって、暴力はいけませんよ?」
美しい女性の声だ。その声は透き通っている。セノンはその声に包まれるような気がした。
「誰だ?」
セノンは短い言葉を吐く。
「そんなにも暴力的だから、人間はいつまでたっても人間なんですよ? そろそろ気づいてはいかかです?」
また聞こえた。しかし、ここは暗闇。試練の塔の三十五層。こんなところで人間の声がすることなどあり得るはずもなかった。
セノンはこういったことで、この声はモンスターだと知る。そう、モンスターに知能がないと言い切れる根拠はなかったのだ。
「誰だ?」
セノンは同じ質問を問う。そして、耳を澄ませる。
「それは失礼しました。私の名前は――」
セノンはこんなこと聞くまでもない。なぜならこの声は自分の真下から聞こえてきているからだ。
自分の真下は地面となっている。しかし、セノンにはどういったつくりかはわからないが、地面から生えてくるように腕があり、それに掴まれているのだ。
セノンは手に持った銃でもう一度、引き金を引く。
その銃弾は容赦なく女性の声のする方に向かって撃つ。
「今回はこれで退散しますわ。自己紹介はまだ終わっていませんでしたが、仕方ないですね」
この言葉を言い終えた女性はセノンの足を放す。
セノンはこれにより一気に足が軽くなる。セノンは心の中でほっとした気持ちと同時にいやな予感もした。
セノンは気づくと周りにいたはずのコウノモリはいなくなっており、この会のボス部屋の前に立っていた。
ボス部屋は締まっていた。中では大きな雄たけびが聞こえる。この声はセノンも聞いたことがあるため三十五階のボスであることがわかった。
と、そのとき、地面が大きく揺れた。これによりセノンは悟った。中にローレンがいると。
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