魔物の森のソフィア ~ある引きこもり少女の物語 - 彼女が世界を救うまで~

広野香盃

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25. 護衛を引き受けるソフィア達

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(農民達のリーダー視点)

 何とか軍からの依頼を受注して報酬の前払いをさせることにも成功したが、条件として軍の兵士が付いて来ることになった。国の役人や兵士なんて信用できる奴に会った試しがない。そんな条件は断りたかったがこちらの立場は弱い。冒険者カードを持っている俺がいなければ依頼を受注することすら難しかったのだから。

 治安を守る立場の兵士を疑わなければならないのは悲しいが、大金を持って人気のない道を一緒に歩きたくない相手だ。せっかく村を救う金を手に入れたのに、奴等に奪われるのは何としても避けなければならない。兵士達からすれば、人気のない道で俺達を皆殺しにして金を奪うのは簡単だろう、俺達は元Fクラス冒険者の俺の他は戦闘経験がない、おまけに碌に武器すら持っていないのだ。俺達を殺して魔族の国に行ったきり帰って来なかったことにすれば良い。

 一緒に魔族の国に行く仲間たちも同じ気持ちだ。5人で知恵を絞るが妙案は浮かばない。だが村に土産として持っていく食糧を買いに来た市場で、カイルが突然前方を指さして叫んだ。

「あいつらに護衛を頼もう。」

カイルの指さす方向を見ると冒険者と思われる男ふたり女ふたりの4人組が買い物をしているところだった。困惑する俺達にカイルが続けて言う。

「あいつらは強い。それは俺が保証する。頼めばきっと兵士達から俺達を守ってくれる。」

カイルはそう言うが、どう見ても軍の兵士と遣り合えるほど強い様には見えない。俺が首を振ると、カイルは皆の顔を交互に眺めていたが、意を決したように「こっちに来てくれ」と言って、俺達を人気のない路地に連れ込んだ。

 そこで聞かされたのが、カイル達が山賊としてあの4人の冒険者を襲ったという経緯だ。カイルの村では山賊稼業にまで手を出していたのかと驚いたが、同時に無理もないという同情の念も沸く。それを告白したと言う事は、俺達に通報されることも覚悟の上だろう。カイルが言うには10人で弓矢を持って夜襲を掛けたにも関わらず、まるで歯が立たなかったらしい。だがそれ以上に驚いたのは、その冒険者達がカイルの命を取らなかったどころか、何らかの方法で治療してくれたということだ。まあ、カイルの話をそのまま信じるならばだが...。胸に深々と矢が刺さったのにも関わらず、気が付いたら傷ひとつ無かったなんて信じられない。

「信じてくれ、傷はなかったが着ていた服は血だらけだったんだ。矢が刺さったのは間違いない。」

「それで、カイルはその冒険者達が信用できると言うんだな。」

「そうだ、実はあいつらにはギルドでも会ったんだ。俺達が軍の依頼を受けたことも知っている。俺が必死で頼んだら、二度としないなら山賊をしていたことを黙ってくれると約束してくれた。通報したら報奨金が貰えるのにだ。きっと俺達に同情してくれたんだ、悪い奴等じゃない!」

 皆で話し合った結果、護衛を雇うなら金貨10枚まで出しても良いとなった。この手の依頼としては妥当な金額だ。出費は痛いが兵士達に全部取られてしまうよりましだ。護衛を雇うとするなら、信用できるかどうか分からない初対面の奴等より、カイルと面識のある奴等の方が良いに決まっている。だが、問題は奴等がそんな依頼を受けてくれるかどうかだ。ギルドを通す時間はないから直接の依頼になる。直接の依頼の場合、今度は向こうにとって俺達が信用できるかどうかが問題になる。依頼を達成しても金がもらえるかどうか不安だという理由で断られるかもしれない。

 悩んでいても仕方がない、とにかく頼んでみようと言う事になり市場に戻ったが、肝心の冒険者達が見当たらない。まずい、相談に時間を掛け過ぎた。手分けして探し、市場から出て行こうとしている彼らをなんとか見つけることが出来た。

「済まない、頼みがあるんだ。少し時間を貰えないか。」

 焦っていたので挨拶もなしに声を掛けてしまった。4人が俺の方を振り向く。体格の良い男がふたりと背の高い女性がふたり。ひとりは金髪、もう一人は赤毛だ。どちらもスレンダーだが、金髪の方は豊かな胸部が魅力的な美人だ。こんな美人が冒険者なんて危険な仕事をしているのかと驚いたが、その女性はすぐに茶髪の男性の陰に隠れてしまった。

赤毛の女性がカイルに気付いた様で、「あら、あなたは...」と口にする。カイルのことを認識してくれているのなら話が早い。

「俺達は軍の依頼を受けた者だ。俺はリーダーのマルクという。頼みと言うのは俺達の護衛を引き受けて欲しいんだ。魔族の国の入り口まででいい。頼む。報酬は金貨10枚を前払いで渡す。」

「あら、でもあなた達には軍の兵士が一緒に行ってくれるって聞いたけど。」

「だから不安なんだ。」

と俺が小声で言うと、「なるほどね。詳しい話を聞かせてくれるかしら。」

と返ってきた。良かった、少なくとも速攻で断られることは無い様だ。

 それから人気のないところまで移動し、村の状況も含め事情を説明すると4人で相談を始めた。黒髪の男性がなにやら反論していたが、赤毛の女性が押し切った様だ。どうやらこの赤毛の女性がリーダーらしい。

「了解よ。でも、ひとつだけお願いがあるの。」

「お願いとは?」

「簡単よ、私達は以前開拓村に居てね。村長にはお世話になったの。だから村長に贈り物を渡したいのよ。向こうで会えたら渡してくれない。」

「そんなことで良いのか? 分かった引き受けよう。」

「決まりね、それじゃ報酬は金貨10枚、出発前に前金で貰うので良いわね。私はこのチームのリーダーのケイトよ。よろしくね。」

「ありがとう。こちらこそよろしく頼む。だが頼んでおいて言うのもなんだが、大丈夫なのか、相手は兵士だぞ。」

「ああ、その事ね。大丈夫なんとかなるわ。私のチームの優秀な魔法使いが大丈夫と言っているの、任せておきなさい。」

と自信ありげに言う。その後は彼女と明日落ち合う場所と時間を決めて渡れた。
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