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29. オーガに敬礼されるソフィア
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(ソフィア視点)
農民さん達と別れ自分達の家に入る。自分達の家と言っても、出発前に見学しただけで実際に使うのはこれが初めてだ。埃がたまっているので、まずは洗浄の魔法をすべての部屋にかけて回った。家中が綺麗になって行くのを見たケイトさんが感極まった様に褒めてくれる。それから全員で食事を作る。食材は食糧庫に入っている野菜や干し肉だ。時間が無いのでパンは発酵させないで焼くと言う。種なしパンと言うらしい。
料理が出来上がると、4人で食事をしながら黒死病の薬について話し合う。あこがれていた4人だけの食事だ。このメンバーだと緊張することが無いので、私も会話に加わることができる。
「明日は、夜明けと同時に薬草を採取しに森に向かうので良いわね。ソフィア、黒死病の薬に必要な薬草はこの近くの森にあるかしら?」
「このまえ、さいしゅしたとき、テプランそうみつけた。でも、ストッキそうはなかった。」
「そうなのね、まあもう一度探してみましょう。薬草はその2種類だけで良いの。」
「すぐにつかうなら、ふたつだけでよい。つかわないなら、もっとひつよう。」
そう答えたが、理解してもらえなかった様だ。まだまだ語彙力が不足していると実感した。黒死病に薬効があるのはリクルの実とテプラン草とストッキ草だけだ。だけど通常はあと3種類の薬草を加える。でもそれは、薬の腐敗を防いだり安定化させたりして作った薬を長持ちさせるためなので、作ってすぐに患者に投与するのなら必要ないと言いたかったのだ。
明日は早いので、食事が終わったら早めに寝ることになった。寝室はひとり一部屋だ。ひとりの部屋はガランとしていて、やはり寂しい。森に居た時はお母さんと同じ部屋で寝ていたし、森を出てからもひとりで寝たことは無かった。ベッドに入って何度も寝がえりを打ちながら、私ってこんなに寂しがり屋だったっけと疑問に思う。
カラシンさんの子供が出来たらこんな寂しい思いはしないだろうか。でもケイトさんに子供の作り方は教えてもらったけれど、子供を作るのは生まれて来る子供をちゃんと育てられる状況になってからでないとダメと言われた。親の責任というものらしい。「冒険者みたいにあちこち移り住まないといけない生活だと難しいわ。生まれたての赤ん坊に旅なんてさせられないもの。」とケイトさんは言う。薬草の商売がうまく行けば冒険者を止めてこの村に定住できるから、そうなったら大丈夫らしい。良く分からないけど、だったら何としても商売を成功させなくては...。
その時とんでもないことに気付いた。私、カラシンさんと番になる約束をしていない。そんなの当然だと勝手に思い込んでいたけれど、カラシンさんの気持ちを確かめてないよ...。どうしよう....すぐにも確かめたいけど断られるのが怖い...。
悶々としている内に朝になっていた。余り寝ていない様な気がするが、そんなことは言っていられない。身支度をして部屋から出ると他の3人は既に起きていた。私が「おはよう」と言うと皆が挨拶を返してくれる。それだけで何だか嬉しくなる。
昨日の夕食の残り物で簡単に朝食を済ませ、急いで魔物の森に向かう。途中で村の護衛のオーガさん達に薬草を取りに森に行く旨を伝える。今日もトクスさんは留守の様だ。居たのはこの前薬草を採取に行った時に会ったのと同じオーガさんだ。確か名前はガイモさんだった。ガイモさんは私達を見つけると、
「おお、無事に帰った様だな。人間の国は危ないところだと言うからな、気を付けるんだぞ。」
と言ってくれる。私達が人間の国に薬草を売りに出かけたのを知っている様だ。薬草の採取に行く旨を伝えてから森を目指す。森に入るとテプラン草はすぐに見つかった。前回来た時も見つけていたのだが、長期保存するには油に漬けて置かねばならないので採取しなかったのだ。
テプラン草の球根を必要量採取して、次にストッキ草を探すが見つからない。皆で話し合ったが、やはり別の場所を探す必要があるだろうと言う事になった。以前トクスさんが、魔族の中には人間を憎んでいる者がいるから、村から出るなら事前に相談して欲しいと言っていた。トクスさんはいないけど、守衛のオーガさん達には断ってからの方が良いだろう。ひょっとしたらストッキ草の生えている場所についての情報も貰えるかもしれない。
ガイモさんの元に戻って、ストッキ草を探しに森の奥に行きたい旨とストッキ草の生えている場所に心当たりがないか尋ねる。ガイモさんは仲間のオーガさん達と相談していたが、
「残念ながら俺達は薬草には詳しく無くてな、通信の魔道具で聞いてやるからちょっと待ってくれ。」
と言って、台の上に置かれた魔道具を操作し始めた。しばらくの間誰かと魔道具を通じて話をしていたが、その内に私を振り返って、
「その薬草は何に使うんだ?」
と聞いて来た。人間の国の村で黒死病が発生したので治療薬を作ると説明すると、驚いた顔をする。
「黒死病の治療薬だと! それって精霊様しか作れない薬じゃないか...。待てよ、名前はソフィアだったよな。お前、いや、あなた様はひょっとして精霊王様が育てておられる人間の子供ですか!?」
私が肯定すると、急に真剣な顔になって通信の魔道具に向き直った。他のオーガさん達まで顔色が変わっている。
「おい、良く聞け、さっき言った薬草を探しておられるのはソフィア様だ、最優先で隊長に伝えるんだ。いや、もっと上に伝えろ。何? ソフィア様だよ、知っているだろう、精霊王様が育てておられる人間のお子様だ。」
その後、ガイモさんは少しの間相手とやり取りしていたが、私の方を向き直り、
「申し訳ありませんが、少し待っていただけますか?」
と言ってきた。何か慌てている様だ。何故だろう。ストッキ草の生えている場所を聞いただけなのだが...。そう言えば、ガイモさんの態度が変わったのは、私が黒死病の治療薬を作ると言ってからだ。黒死病の治療薬って精霊しか作れないのだろうか? そういえば、魔族の人達がお母さんに依頼する薬は黒死病の治療薬が多かった。それだけ魔族にも恐れられている病気なのだろう。
その後、結構長い間待たされた。ガイモさんもイライラしている様だ。もう自分達でストッキ草を探しに行った方が良いかなとカラシンさん達と相談し始めた時、通信の魔道具から声が聞こえて来た。私の位置からは何を言っているか聞こえないが、それを聞いたガイモさんの口が大きく開いた。よほど驚く内容だった様だ。ガイモさんが私を振り返り言葉を発する。
「ソフィア様、ストッキ草は精霊王様が自ら運んで行くので、自宅でお待ちになる様にとのことです。それと必要量はどれだけかと精霊王様がお尋ねになっておられます。」
なんとお母さんがストッキ草を持ってきてくれると言う。お母さんがわざわざ薬草を運んでくれると言うのにも驚いたが、こんな短時間にお母さんに連絡が行くなんてどういう事だろう?
「ひょっとしてお母さんはオーガキングさんと一緒に居るのですか?」
「はっ、精霊王様は、わが国が安定するまで我らが王の傍で力を貸していただけると聞いております。」
やっぱりその様だ。森の深奥に住んでいるお母さんにこんな短時間に連絡が行くなんておかしいと思った。お母さんはオーガキングさんに味方しているんだ。よほどオーガキングさんが気に入ったんだな。
その後はガイモさんにストッキ草の必要量を伝え、護衛のオーガさん達にお礼を言ってからその場を後にした。オーガさん達は私に向かって敬礼している。偉いのはお母さんで、私じゃないから私に丁寧に接する必要はないと言ったのだが聞いてもらえなかった。カラシンさん達は急に村の護衛のオーガさん達の態度が変わったので驚いている様だ。魔族の言葉で話していたから、会話の内容も分からなかっただろうしね。
農民さん達と別れ自分達の家に入る。自分達の家と言っても、出発前に見学しただけで実際に使うのはこれが初めてだ。埃がたまっているので、まずは洗浄の魔法をすべての部屋にかけて回った。家中が綺麗になって行くのを見たケイトさんが感極まった様に褒めてくれる。それから全員で食事を作る。食材は食糧庫に入っている野菜や干し肉だ。時間が無いのでパンは発酵させないで焼くと言う。種なしパンと言うらしい。
料理が出来上がると、4人で食事をしながら黒死病の薬について話し合う。あこがれていた4人だけの食事だ。このメンバーだと緊張することが無いので、私も会話に加わることができる。
「明日は、夜明けと同時に薬草を採取しに森に向かうので良いわね。ソフィア、黒死病の薬に必要な薬草はこの近くの森にあるかしら?」
「このまえ、さいしゅしたとき、テプランそうみつけた。でも、ストッキそうはなかった。」
「そうなのね、まあもう一度探してみましょう。薬草はその2種類だけで良いの。」
「すぐにつかうなら、ふたつだけでよい。つかわないなら、もっとひつよう。」
そう答えたが、理解してもらえなかった様だ。まだまだ語彙力が不足していると実感した。黒死病に薬効があるのはリクルの実とテプラン草とストッキ草だけだ。だけど通常はあと3種類の薬草を加える。でもそれは、薬の腐敗を防いだり安定化させたりして作った薬を長持ちさせるためなので、作ってすぐに患者に投与するのなら必要ないと言いたかったのだ。
明日は早いので、食事が終わったら早めに寝ることになった。寝室はひとり一部屋だ。ひとりの部屋はガランとしていて、やはり寂しい。森に居た時はお母さんと同じ部屋で寝ていたし、森を出てからもひとりで寝たことは無かった。ベッドに入って何度も寝がえりを打ちながら、私ってこんなに寂しがり屋だったっけと疑問に思う。
カラシンさんの子供が出来たらこんな寂しい思いはしないだろうか。でもケイトさんに子供の作り方は教えてもらったけれど、子供を作るのは生まれて来る子供をちゃんと育てられる状況になってからでないとダメと言われた。親の責任というものらしい。「冒険者みたいにあちこち移り住まないといけない生活だと難しいわ。生まれたての赤ん坊に旅なんてさせられないもの。」とケイトさんは言う。薬草の商売がうまく行けば冒険者を止めてこの村に定住できるから、そうなったら大丈夫らしい。良く分からないけど、だったら何としても商売を成功させなくては...。
その時とんでもないことに気付いた。私、カラシンさんと番になる約束をしていない。そんなの当然だと勝手に思い込んでいたけれど、カラシンさんの気持ちを確かめてないよ...。どうしよう....すぐにも確かめたいけど断られるのが怖い...。
悶々としている内に朝になっていた。余り寝ていない様な気がするが、そんなことは言っていられない。身支度をして部屋から出ると他の3人は既に起きていた。私が「おはよう」と言うと皆が挨拶を返してくれる。それだけで何だか嬉しくなる。
昨日の夕食の残り物で簡単に朝食を済ませ、急いで魔物の森に向かう。途中で村の護衛のオーガさん達に薬草を取りに森に行く旨を伝える。今日もトクスさんは留守の様だ。居たのはこの前薬草を採取に行った時に会ったのと同じオーガさんだ。確か名前はガイモさんだった。ガイモさんは私達を見つけると、
「おお、無事に帰った様だな。人間の国は危ないところだと言うからな、気を付けるんだぞ。」
と言ってくれる。私達が人間の国に薬草を売りに出かけたのを知っている様だ。薬草の採取に行く旨を伝えてから森を目指す。森に入るとテプラン草はすぐに見つかった。前回来た時も見つけていたのだが、長期保存するには油に漬けて置かねばならないので採取しなかったのだ。
テプラン草の球根を必要量採取して、次にストッキ草を探すが見つからない。皆で話し合ったが、やはり別の場所を探す必要があるだろうと言う事になった。以前トクスさんが、魔族の中には人間を憎んでいる者がいるから、村から出るなら事前に相談して欲しいと言っていた。トクスさんはいないけど、守衛のオーガさん達には断ってからの方が良いだろう。ひょっとしたらストッキ草の生えている場所についての情報も貰えるかもしれない。
ガイモさんの元に戻って、ストッキ草を探しに森の奥に行きたい旨とストッキ草の生えている場所に心当たりがないか尋ねる。ガイモさんは仲間のオーガさん達と相談していたが、
「残念ながら俺達は薬草には詳しく無くてな、通信の魔道具で聞いてやるからちょっと待ってくれ。」
と言って、台の上に置かれた魔道具を操作し始めた。しばらくの間誰かと魔道具を通じて話をしていたが、その内に私を振り返って、
「その薬草は何に使うんだ?」
と聞いて来た。人間の国の村で黒死病が発生したので治療薬を作ると説明すると、驚いた顔をする。
「黒死病の治療薬だと! それって精霊様しか作れない薬じゃないか...。待てよ、名前はソフィアだったよな。お前、いや、あなた様はひょっとして精霊王様が育てておられる人間の子供ですか!?」
私が肯定すると、急に真剣な顔になって通信の魔道具に向き直った。他のオーガさん達まで顔色が変わっている。
「おい、良く聞け、さっき言った薬草を探しておられるのはソフィア様だ、最優先で隊長に伝えるんだ。いや、もっと上に伝えろ。何? ソフィア様だよ、知っているだろう、精霊王様が育てておられる人間のお子様だ。」
その後、ガイモさんは少しの間相手とやり取りしていたが、私の方を向き直り、
「申し訳ありませんが、少し待っていただけますか?」
と言ってきた。何か慌てている様だ。何故だろう。ストッキ草の生えている場所を聞いただけなのだが...。そう言えば、ガイモさんの態度が変わったのは、私が黒死病の治療薬を作ると言ってからだ。黒死病の治療薬って精霊しか作れないのだろうか? そういえば、魔族の人達がお母さんに依頼する薬は黒死病の治療薬が多かった。それだけ魔族にも恐れられている病気なのだろう。
その後、結構長い間待たされた。ガイモさんもイライラしている様だ。もう自分達でストッキ草を探しに行った方が良いかなとカラシンさん達と相談し始めた時、通信の魔道具から声が聞こえて来た。私の位置からは何を言っているか聞こえないが、それを聞いたガイモさんの口が大きく開いた。よほど驚く内容だった様だ。ガイモさんが私を振り返り言葉を発する。
「ソフィア様、ストッキ草は精霊王様が自ら運んで行くので、自宅でお待ちになる様にとのことです。それと必要量はどれだけかと精霊王様がお尋ねになっておられます。」
なんとお母さんがストッキ草を持ってきてくれると言う。お母さんがわざわざ薬草を運んでくれると言うのにも驚いたが、こんな短時間にお母さんに連絡が行くなんてどういう事だろう?
「ひょっとしてお母さんはオーガキングさんと一緒に居るのですか?」
「はっ、精霊王様は、わが国が安定するまで我らが王の傍で力を貸していただけると聞いております。」
やっぱりその様だ。森の深奥に住んでいるお母さんにこんな短時間に連絡が行くなんておかしいと思った。お母さんはオーガキングさんに味方しているんだ。よほどオーガキングさんが気に入ったんだな。
その後はガイモさんにストッキ草の必要量を伝え、護衛のオーガさん達にお礼を言ってからその場を後にした。オーガさん達は私に向かって敬礼している。偉いのはお母さんで、私じゃないから私に丁寧に接する必要はないと言ったのだが聞いてもらえなかった。カラシンさん達は急に村の護衛のオーガさん達の態度が変わったので驚いている様だ。魔族の言葉で話していたから、会話の内容も分からなかっただろうしね。
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