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33. 初商いをするソフィア達
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(ケイト視点)
村を出て兵士達から見えない場所まで来ると私達は馬車から降り、町に向かうマルク達と別れて開拓村に戻る。今回の報酬を貰うのは、今度私達がマルクの村を訪ねた時で良いと言っておいた。町には今後も行くことがあるだろうから、マルクの村にはその途中で立ち寄れば良い。
村に戻ると薬草の採取と加工が待っている。マルク達は魔族の国から薬草を始めとするさまざまな製品のサンプルを持って帰ってくれた。となれば、私達はいつお客様が来ても良いように準備をしておかなければならない。幸いにして、食糧は家の食糧庫に沢山あるし、お金も村の護衛の報酬やマルク達が魔族の国に行く往路での護衛の報酬、更にギルドでソフィアの薬草を売ったお金と潤沢だ。しばらく村に定住して販売する薬草を準備しておく余裕はある。
とりあえず準備する薬草は、この近くの森で採取出来る物だけに限定した。本当は遠くに出かけて色々な種類の薬草も採取したいが、まずは商売を始められる様に準備することが大事だ、焦っちゃいけない。マルクに渡したサンプルもこの近くで取れる薬草だけだから、やって来た客に種類が少ないとガッカリされることはあっても、嘘をついたと文句を言われることは無いだろう。
薬草の採取と並行して、私達はソフィアから魔族の言葉を習うことにした。魔族の国で暮らすなら言葉の習得は必須だろう。とりあえず、村の護衛のオーガに「今日は」と挨拶したら笑顔で挨拶を返してくれた。オーガって意外に気の良い人たちなのかもしれない。もっともソフィアが一緒というのもあるだろう。なにせ精霊王の養女なのだ。ソフィアが精霊王の養女だと知れ渡ってからは、トクスまでソフィアに対して緊張しているのが分かる。ソフィアがいないときにオーガキングと精霊王の関係を聞いてみた。それぞれ魔族の王、精霊の王として対等の同盟関係なのか、それとも精霊王はオーガキングに仕えているのかを尋ねてみたが、トクスは「とんでもない」という。精霊王の方がオーガキングより上だと言うのだ。それって魔物の森の真の支配者ってことだよね。
しかも精霊王がソフィアのことを気に掛けているのは確かだ。村に帰って数日したとき、村の護衛のオーガが精霊王からの贈り物だと言って大きな箱を我家まで持ってきた。中身はリクルの実を始めとする、森の深奥と呼ばれる場所でしか採取できない貴重な薬草類だった。そして薬草類と一緒に魔道具らしきものがひとつと精霊王からのメッセージが入っていた。ソフィアが読んでくれた精霊王からのメッセージによると、これは念話増幅の魔道具で、これを使えばソフィアの弱い念話でも遠くにいる精霊と話ができるらしい。これを使っていつでも連絡を取って良いと書かれている。すなわち精霊王とのホットラインだ。
村長に話したら、おそらく精霊王とのホットラインがある家なんて我家ぐらいのものだと言われた。村長は魔族の国の独立宣言に同行する際、オーガキングだけでなく精霊王にもお会いしたそうだ。オーガキングだけでなく他の魔族達も精霊王をまるで神の様に敬っていたという。
村に帰って一月くらい経った時、遂に私達が待ち望んでいた人達がやって来た。人間の国から魔族の国に物品の買い付けにやって来た商人達だ。10人くらいの団体で、冒険者の護衛も含めると20人くらいいる。村長の話では、薬師もひとり混じっており薬草の買い付けを望んでいる様だ。
私達の家を訪ねて来たその薬師はライルと名乗った。魔物の森の薬草をあるだけ購入したいと言う。
「この開拓村を訪れた農民達に託されたサンプルを見せていただきました。薬草も加工の精度も最高級でした。いま人間の国では魔物の森の薬草が不足しています。どのような薬草であろうと需要があります。是非お譲りください。」
とライルは言う。でも今回は薬草の加工にソフィアの魔法は使っていない。日に干したり、鉄板の上で火に焙ったり、油に漬けたりしたのは私達がソフィアの指導の元行った。ソフィアは普段はおとなしいのに、薬草のこととなると厳しく何度もダメ出しされた。そのソフィアから合格をもらった薬草だから大丈夫とは思うが、まずはライルに現物を見てもらう。この辺りの森で採取出来る薬草8種類だ。
薬草を見たライルは満足そうな顔で価格を聞いて来た。私は薬草全部で金貨100枚と思い切った高額を提示した。もちろんライルは値下げを要求してくるだろうから、価格交渉の末、半額の金貨50枚くらいで折り合えれば良いだろうと考えていたのだが、ライルはあっさりと私の提示した金貨100枚で購入を決めてしまった。しまったと後悔したがもう遅い、もっと高い価格を提示すればよかったのだ。私は得したような、損したような複雑な心境で初商いを終えたのだった。
今人間の国では魔物の森の薬草が相当不足しているのだろう。当面は言い値で取引が成功しそうな雰囲気だ。
「ところで、ちょっと教えていただきたいんですが、ソランディーヌ様のお子様、ソフィリアーヌ姫様がどこにおられるかご存知ありませんか?」
商談が終わってホッとしている時にライルが尋ねて来た。ソフィリアーヌ? ソフィアと名前が似ているな。それに、ソランディーヌって誰だったっけ?
「さあ、私は聞いたことが無いですね。」
「そうですか...。実は私達が魔族の国に出向くと知った国の中枢の役人から、ソフィリアーヌ姫様を探し出す様に強く命令されているのです。15年前にソランディーヌ様と一緒に魔物の森に向かわれたと言われています。居場所を見つけただけで金貨300枚、もし連れ帰ることができたら金貨1000枚を出すらしいんですが、そんなことを言われてもこの広い魔族の国でどうやって探し出せば良いのか、雲をつかむ様な話ですよ。」
「そうなんですね。分け前を貰えるなら私も協力しますよ。それでソフィリアーヌ姫様と言うのはどんな容姿なんですか?」
「それが金髪で15歳としか分からないんですよ。」
15歳! ソフィアと同じ年齢だ。ソフィアは赤ん坊の時に精霊王に森で拾われたと言っていた。ひょっとして...という考えが浮かぶ。
「分かりました。何か耳に挟んだらお知らせします。うまく行ったらたっぷりとお礼を期待していますからね。」
と言ってライルを送り出した。もちろんソフィアのことを知らせるつもりはない。
あの様に言ったのは話を合わせただけだ。幸いソフィアは15歳には見えない。開拓村の人達にはソフィアの年齢まで話していないから、もっと年上だと思っているはずだ。容姿も分からないのであれば商人達が村人からソフィアという名前の女性がここに居ると聞いて尋ねて来ても、名前が似ているだけの別人だと突っぱねることも可能だろう。
ライルがいなくなると私達は目を見合わせた。人間の国の中枢の役人が高額の懸賞金を出して探しているとなるとただ事ではない。
「ソフィア、ソフィアって名前を付けてくれたのは精霊王様だよな?」
とカラシンがソフィアに尋ねる。
「ソフィアのなまえ、おかあさんがつけてくれた。」
と嬉しそうに言うソフィア。まあ、そう言うとは思ったけどね。そういえばソランディーヌはどうなったんだ。そんな人見たことがない。皆、噂に踊らされているだけという可能性もあるぞ。
「ソランディーヌって誰か知ってる?」
と私が口にすると、マイケルが答えた。
「確かオーガキングが独立宣言をしたとき、ソランディーヌ様が一緒にいたとの噂があったっス。」
「思い出した。宿の給仕の女が話してくれたんだ。ソランディーヌ様は確か先王の妃だ! ということは、ソフィリアーヌはソランディーヌの子供だから先王の娘ってことか!」
とカラシンが叫ぶ。
それから、カラシンは考え深げに続けた。
「恐らく、ソランディーヌっていうのは精霊王様のお姿を勘違いしたのじゃないか。村長が独立宣言の時は精霊王様も同行されていたと言っていたんだろう。 精霊王様はソフィアによく似た人間の姿だったじゃないか。精霊王さまが先王の妃だったはずがないから、そこは何かの勘違いだろう。」
「なんだ、ソランディーヌ様がオーガキングと一緒に居たという噂が勘違いなら、ソフィリアーヌ様がこの国にいらっしゃるというのも根拠のないはなしっスよ。危うくソフィアちゃんがソフィリアーヌ様かと思ってしまうところだったっスよ。」
マイケルのその言葉で一応の結論が出た。まったくその通りだ。もともとが根拠のない噂から出た話なのだ。気にすることも無いだろう。
村を出て兵士達から見えない場所まで来ると私達は馬車から降り、町に向かうマルク達と別れて開拓村に戻る。今回の報酬を貰うのは、今度私達がマルクの村を訪ねた時で良いと言っておいた。町には今後も行くことがあるだろうから、マルクの村にはその途中で立ち寄れば良い。
村に戻ると薬草の採取と加工が待っている。マルク達は魔族の国から薬草を始めとするさまざまな製品のサンプルを持って帰ってくれた。となれば、私達はいつお客様が来ても良いように準備をしておかなければならない。幸いにして、食糧は家の食糧庫に沢山あるし、お金も村の護衛の報酬やマルク達が魔族の国に行く往路での護衛の報酬、更にギルドでソフィアの薬草を売ったお金と潤沢だ。しばらく村に定住して販売する薬草を準備しておく余裕はある。
とりあえず準備する薬草は、この近くの森で採取出来る物だけに限定した。本当は遠くに出かけて色々な種類の薬草も採取したいが、まずは商売を始められる様に準備することが大事だ、焦っちゃいけない。マルクに渡したサンプルもこの近くで取れる薬草だけだから、やって来た客に種類が少ないとガッカリされることはあっても、嘘をついたと文句を言われることは無いだろう。
薬草の採取と並行して、私達はソフィアから魔族の言葉を習うことにした。魔族の国で暮らすなら言葉の習得は必須だろう。とりあえず、村の護衛のオーガに「今日は」と挨拶したら笑顔で挨拶を返してくれた。オーガって意外に気の良い人たちなのかもしれない。もっともソフィアが一緒というのもあるだろう。なにせ精霊王の養女なのだ。ソフィアが精霊王の養女だと知れ渡ってからは、トクスまでソフィアに対して緊張しているのが分かる。ソフィアがいないときにオーガキングと精霊王の関係を聞いてみた。それぞれ魔族の王、精霊の王として対等の同盟関係なのか、それとも精霊王はオーガキングに仕えているのかを尋ねてみたが、トクスは「とんでもない」という。精霊王の方がオーガキングより上だと言うのだ。それって魔物の森の真の支配者ってことだよね。
しかも精霊王がソフィアのことを気に掛けているのは確かだ。村に帰って数日したとき、村の護衛のオーガが精霊王からの贈り物だと言って大きな箱を我家まで持ってきた。中身はリクルの実を始めとする、森の深奥と呼ばれる場所でしか採取できない貴重な薬草類だった。そして薬草類と一緒に魔道具らしきものがひとつと精霊王からのメッセージが入っていた。ソフィアが読んでくれた精霊王からのメッセージによると、これは念話増幅の魔道具で、これを使えばソフィアの弱い念話でも遠くにいる精霊と話ができるらしい。これを使っていつでも連絡を取って良いと書かれている。すなわち精霊王とのホットラインだ。
村長に話したら、おそらく精霊王とのホットラインがある家なんて我家ぐらいのものだと言われた。村長は魔族の国の独立宣言に同行する際、オーガキングだけでなく精霊王にもお会いしたそうだ。オーガキングだけでなく他の魔族達も精霊王をまるで神の様に敬っていたという。
村に帰って一月くらい経った時、遂に私達が待ち望んでいた人達がやって来た。人間の国から魔族の国に物品の買い付けにやって来た商人達だ。10人くらいの団体で、冒険者の護衛も含めると20人くらいいる。村長の話では、薬師もひとり混じっており薬草の買い付けを望んでいる様だ。
私達の家を訪ねて来たその薬師はライルと名乗った。魔物の森の薬草をあるだけ購入したいと言う。
「この開拓村を訪れた農民達に託されたサンプルを見せていただきました。薬草も加工の精度も最高級でした。いま人間の国では魔物の森の薬草が不足しています。どのような薬草であろうと需要があります。是非お譲りください。」
とライルは言う。でも今回は薬草の加工にソフィアの魔法は使っていない。日に干したり、鉄板の上で火に焙ったり、油に漬けたりしたのは私達がソフィアの指導の元行った。ソフィアは普段はおとなしいのに、薬草のこととなると厳しく何度もダメ出しされた。そのソフィアから合格をもらった薬草だから大丈夫とは思うが、まずはライルに現物を見てもらう。この辺りの森で採取出来る薬草8種類だ。
薬草を見たライルは満足そうな顔で価格を聞いて来た。私は薬草全部で金貨100枚と思い切った高額を提示した。もちろんライルは値下げを要求してくるだろうから、価格交渉の末、半額の金貨50枚くらいで折り合えれば良いだろうと考えていたのだが、ライルはあっさりと私の提示した金貨100枚で購入を決めてしまった。しまったと後悔したがもう遅い、もっと高い価格を提示すればよかったのだ。私は得したような、損したような複雑な心境で初商いを終えたのだった。
今人間の国では魔物の森の薬草が相当不足しているのだろう。当面は言い値で取引が成功しそうな雰囲気だ。
「ところで、ちょっと教えていただきたいんですが、ソランディーヌ様のお子様、ソフィリアーヌ姫様がどこにおられるかご存知ありませんか?」
商談が終わってホッとしている時にライルが尋ねて来た。ソフィリアーヌ? ソフィアと名前が似ているな。それに、ソランディーヌって誰だったっけ?
「さあ、私は聞いたことが無いですね。」
「そうですか...。実は私達が魔族の国に出向くと知った国の中枢の役人から、ソフィリアーヌ姫様を探し出す様に強く命令されているのです。15年前にソランディーヌ様と一緒に魔物の森に向かわれたと言われています。居場所を見つけただけで金貨300枚、もし連れ帰ることができたら金貨1000枚を出すらしいんですが、そんなことを言われてもこの広い魔族の国でどうやって探し出せば良いのか、雲をつかむ様な話ですよ。」
「そうなんですね。分け前を貰えるなら私も協力しますよ。それでソフィリアーヌ姫様と言うのはどんな容姿なんですか?」
「それが金髪で15歳としか分からないんですよ。」
15歳! ソフィアと同じ年齢だ。ソフィアは赤ん坊の時に精霊王に森で拾われたと言っていた。ひょっとして...という考えが浮かぶ。
「分かりました。何か耳に挟んだらお知らせします。うまく行ったらたっぷりとお礼を期待していますからね。」
と言ってライルを送り出した。もちろんソフィアのことを知らせるつもりはない。
あの様に言ったのは話を合わせただけだ。幸いソフィアは15歳には見えない。開拓村の人達にはソフィアの年齢まで話していないから、もっと年上だと思っているはずだ。容姿も分からないのであれば商人達が村人からソフィアという名前の女性がここに居ると聞いて尋ねて来ても、名前が似ているだけの別人だと突っぱねることも可能だろう。
ライルがいなくなると私達は目を見合わせた。人間の国の中枢の役人が高額の懸賞金を出して探しているとなるとただ事ではない。
「ソフィア、ソフィアって名前を付けてくれたのは精霊王様だよな?」
とカラシンがソフィアに尋ねる。
「ソフィアのなまえ、おかあさんがつけてくれた。」
と嬉しそうに言うソフィア。まあ、そう言うとは思ったけどね。そういえばソランディーヌはどうなったんだ。そんな人見たことがない。皆、噂に踊らされているだけという可能性もあるぞ。
「ソランディーヌって誰か知ってる?」
と私が口にすると、マイケルが答えた。
「確かオーガキングが独立宣言をしたとき、ソランディーヌ様が一緒にいたとの噂があったっス。」
「思い出した。宿の給仕の女が話してくれたんだ。ソランディーヌ様は確か先王の妃だ! ということは、ソフィリアーヌはソランディーヌの子供だから先王の娘ってことか!」
とカラシンが叫ぶ。
それから、カラシンは考え深げに続けた。
「恐らく、ソランディーヌっていうのは精霊王様のお姿を勘違いしたのじゃないか。村長が独立宣言の時は精霊王様も同行されていたと言っていたんだろう。 精霊王様はソフィアによく似た人間の姿だったじゃないか。精霊王さまが先王の妃だったはずがないから、そこは何かの勘違いだろう。」
「なんだ、ソランディーヌ様がオーガキングと一緒に居たという噂が勘違いなら、ソフィリアーヌ様がこの国にいらっしゃるというのも根拠のないはなしっスよ。危うくソフィアちゃんがソフィリアーヌ様かと思ってしまうところだったっスよ。」
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