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39. シロム、パパとなる???
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(シロム視点)
アーシャ様が戻って来られたのは夜が明けてからだった。町の中の虫はとっくにいなくなっていたのだが、鉱山の方で何かされていたらしい。
アーシャ様が戻られて安心した途端、何故か身体に力が入らなくなり、僕はその場に崩れ落ちた。
目が覚めるとベッドに寝かされていた。ベッドの傍の椅子にはアルムさんが心配そうな顔で座っている。
「アルムさん....」
そう声を掛けるとアルムさんが嬉しそうに微笑んだ。
「シロム様! 良かったです。アーシャ様は『精神的な疲れだから寝かしておくしかない』と仰ったのですが、いつまで経っても目をお覚ましにならないので、私心配で.....。」
アルムさんに話を聞くと、ここはマーブルさんの屋敷で、僕は倒れてから丸1日寝ていたらしく、今は翌日の朝だという。
「町の人達から伺いました。虫達から町の人達を助けるのに大変なご活躍をされたそうですね。町の人達が何人もお見舞いに来られました。皆シロム様に感謝されていましたよ。」
虫と聞いた途端、恐怖が蘇った。もう虫は懲り懲りだ、考えるだけで悪寒が背中を走る。
「シロム様、お食事はいかがですか。いつお目覚めになっても良いように準備してあります。」
そう言われるとお腹が減って来た。ベッドから起き上がると、自分がパジャマを着ているのに気付く。誰かが着替えさせてくれた様だ。
「あ、あの、着替えるので先に食堂に行っていてもらえますか?」
「私はシロム様の従者でございます。お着替えをお手伝いさせてください。」
「そのことですが、アーシャ様が見つかったので.....」
「嫌です!!!」
アルムさんが僕の従者なのはアーシャ様が見つかるまでの約束だと言いかけたのだが、途中で珍しく強い口調で中断された。さっきまで笑顔だったのに、今にも泣きそうだ。
「嫌です......私、シロム様とお別れしたくありません。どうか私もお連れ下さい。決して婚約者様とのお邪魔は致しません。それに隠し子のことも口外しません。」
隠し子???
「パ~パ、背中に虫が付いているわよ。」
突然耳元で囁かれた。虫!!!!
「ギャ~~~~ッ」
気が付くと悲鳴を上げて、目の前にいたアルムさんに抱き付いていた。アルムさんの顔が真っ赤になる。
「ご、御免なさい。」
「う、嬉しいです。シロム様に抱擁して頂けるなんて一生の思い出です。」
し、しまった! これは既成事実ってやつか!? 振り向くとチーアルが僕の後にフワフワと浮かんでいた。
「パ~パ、娘の前ではしたないことをしちゃだめよ。今回だけは特別に誰にも言わないであげる。」
「何がパパだよ。僕は人間だぞ。チーアルの父親のわけ無いじゃないか。」
「パパ、その言い訳は通用しないよ。パパが神様だって言うのはもう皆にバレてるからね。」
「な....僕が神様???」
「シロム様、申し訳ありません。否定しようとしたのですが、一昨日のシロム様のご活躍を見た人達を誤魔化し様もなく、すでにこの町の人達全員が知っております。」
<< チーアル、どういうことだよ? >>
<< あら、私は何も言ってないわよ。>>
<< だ~か~ら、チーアルから"僕はチーアルの力を借りていただけ"と説明してくれればよかったじゃないか! >>
<< あら、そうだったの? 今度から気を付けるわね。>>
絶対わざとだ。事態をややこしくして面白がっているに違いない.....性格が悪い。
**************
その日の昼過ぎ、僕達はドラゴニウスさんに乗り込み、町の人達総出の見送りを受けて旅立った。アーシャ様は聖なる山の神様を安心させるために一足先に戻られたらしい。
それから、アーシャ様が連れて来た女の子はなんとガニマール帝国の皇女ジャニスだそうだ。僕と同様しばらく眠ったら元気になった様だが、アーシャ様と空を飛ぶのに拒否反応を示したので、僕達と同行することになったとのことだ。たとえ一時的にしろ、こんな子供がアーシャ様を窮地に追いやったなど信じられない。天才というのは恐ろしいものだ。
「パ~パ、これからどこへ行くの?」
と僕に抱き付いた幼女が言う。
「もちろんカルロ教国に戻るんだ。それと、パパじゃない、シロムだ。」
「だって私を作ったのだからパパよ。ねー、アルムさん。」
「そうですね。シロム様、自分のお子様を認めないなんてダメですよ。大丈夫です、婚約者様には隠し子のことは告げ口しませんから。」
アルムさんが僕の背中に抱き付きながら窘めてくる。
チーアルはどうやったのかアルムさんを完全に味方に付けた様だ。アルムさんの中ではチーアルは僕の隠し子で、僕は我が子に久々に出会ったのに、婚約者を気にして自分の子と認めない酷い父親と言う事になっているらしい。チーアルが僕の娘だとすれば、僕が10~11歳の時に出来た子供と言う事になるのだが、僕が神のひとりだと信じているアルムさんにはそれすらも「神ですから」で納得されてしまっている。何でも信じる素直な性格と言うのも考え物だ.........胃が痛い。
アルムさんを説得してジーラさんの元に戻すという難問が残っているが、マークとも相談してとりあえず一旦戻ることにした。両親やクラスメート達が心配しているだろうし、カルロ教国にはシンシアさんとマリアさんも到着しているはずだ。マリアさんなら喜んでアルムさんの説得に協力してくれるだろう。
<< カルロ教国って、アルガを封印した聖なる山の神を信仰しているんだったよね。そんなところに私がいくの? >>
<< はい、お願いします。僕はチーアルのご主人様なんだよね~。>>
<< くそ! こんなはずでは......。>>
<<嫌なら帰ってもらっても良いですけど。>>
チーアルが返ってくれれば胃痛の原因がひとつ減る。どうやらチーアルは虫と戦った時に僕がチーアルの記憶を覗き見たのが気に食わなかったらしい。あれからなんとなく態度がトゲトゲしい。
<< 一旦契約した以上は出来ないのよ。>>
<< なら契約を解除しようよ。>>
<< それも出来ない。あの契約はどちらかが死ぬまで解約出来ないの。>>
さらりと恐ろしいことを言うチーアル。
<< そもそも、契約の内容が分からないんだけど。契約をしていても帰れるんじゃないの? チーアルは空を飛べるし。>>
<< 分かってないわね。私達は一定距離以上離れることは出来ないの。町の中くらいなら離れても大丈夫だけど、私だけあの町に帰るなど問題外よ。離れるとあらゆる力が使えなくなる。元々力を持っていないシロムは問題ないけど、私は妖精に分解してしまうわ。 >>
<< だったらどうしてそんな契約を結んだんだ? >>
ここは是非確認したい。
<< アルガが言っていたでしょう。恩を受けたら必ず返すのが精霊の矜持よ。特に自分より弱い者に助けてもらった場合はね。それを破ったら他の精霊に顔向けが出来なくなる。>>
<< そんな勝手な.... >>
<< そう言わないでよ、普通は精霊と契約出来た人間は大喜びするわよ。人間を越えた力が使えるからね。シロムが変わり者なの....まあ預言者の杖があるから分からなくもないけど。>>
神力を使い果たしていた預言者の杖だが、僕が眠っている間にアーシャ様が再び神力を込めてくれたらしく今は元通りだ。もっともカルロ教国に戻ったら無用の長物になる気がする。帰ったら神様にお返ししようと思う。
ちなみにジャニスと言う名の皇女様だが、ドラゴニウスさんの背中に腹ばいになってしがみついている。顔面蒼白だ。どうもアーシャ様に連れられて空を飛んだ経験がトラウマになったらしい。重度の高所恐怖症だ。休憩で地面に降りた時以外は口も利けない。それでもドラゴニウスさんに乗っての旅はアーシャ様と一緒に空を飛んだ時より100倍ましだと言う。
「いくら急ぐからっていっても一旦大気圏外に出ての弾道飛行なんてするんだもの。正気の沙汰とは思えなかったわよ。」
というのがジャニス皇女の言だ。意味は分からないが大変だったのだろう。僕の虫嫌いも悪化したし、精神にダメージを受けた者同士親近感が湧く。彼女だけはカルロの町に留まらず、ドラゴニウスさんに神域に連れて行かれることになっている。まあ、アーシャ様を誘拐した犯人だ、罰を受けても当然ではあるのだが.....。
アーシャ様が戻って来られたのは夜が明けてからだった。町の中の虫はとっくにいなくなっていたのだが、鉱山の方で何かされていたらしい。
アーシャ様が戻られて安心した途端、何故か身体に力が入らなくなり、僕はその場に崩れ落ちた。
目が覚めるとベッドに寝かされていた。ベッドの傍の椅子にはアルムさんが心配そうな顔で座っている。
「アルムさん....」
そう声を掛けるとアルムさんが嬉しそうに微笑んだ。
「シロム様! 良かったです。アーシャ様は『精神的な疲れだから寝かしておくしかない』と仰ったのですが、いつまで経っても目をお覚ましにならないので、私心配で.....。」
アルムさんに話を聞くと、ここはマーブルさんの屋敷で、僕は倒れてから丸1日寝ていたらしく、今は翌日の朝だという。
「町の人達から伺いました。虫達から町の人達を助けるのに大変なご活躍をされたそうですね。町の人達が何人もお見舞いに来られました。皆シロム様に感謝されていましたよ。」
虫と聞いた途端、恐怖が蘇った。もう虫は懲り懲りだ、考えるだけで悪寒が背中を走る。
「シロム様、お食事はいかがですか。いつお目覚めになっても良いように準備してあります。」
そう言われるとお腹が減って来た。ベッドから起き上がると、自分がパジャマを着ているのに気付く。誰かが着替えさせてくれた様だ。
「あ、あの、着替えるので先に食堂に行っていてもらえますか?」
「私はシロム様の従者でございます。お着替えをお手伝いさせてください。」
「そのことですが、アーシャ様が見つかったので.....」
「嫌です!!!」
アルムさんが僕の従者なのはアーシャ様が見つかるまでの約束だと言いかけたのだが、途中で珍しく強い口調で中断された。さっきまで笑顔だったのに、今にも泣きそうだ。
「嫌です......私、シロム様とお別れしたくありません。どうか私もお連れ下さい。決して婚約者様とのお邪魔は致しません。それに隠し子のことも口外しません。」
隠し子???
「パ~パ、背中に虫が付いているわよ。」
突然耳元で囁かれた。虫!!!!
「ギャ~~~~ッ」
気が付くと悲鳴を上げて、目の前にいたアルムさんに抱き付いていた。アルムさんの顔が真っ赤になる。
「ご、御免なさい。」
「う、嬉しいです。シロム様に抱擁して頂けるなんて一生の思い出です。」
し、しまった! これは既成事実ってやつか!? 振り向くとチーアルが僕の後にフワフワと浮かんでいた。
「パ~パ、娘の前ではしたないことをしちゃだめよ。今回だけは特別に誰にも言わないであげる。」
「何がパパだよ。僕は人間だぞ。チーアルの父親のわけ無いじゃないか。」
「パパ、その言い訳は通用しないよ。パパが神様だって言うのはもう皆にバレてるからね。」
「な....僕が神様???」
「シロム様、申し訳ありません。否定しようとしたのですが、一昨日のシロム様のご活躍を見た人達を誤魔化し様もなく、すでにこの町の人達全員が知っております。」
<< チーアル、どういうことだよ? >>
<< あら、私は何も言ってないわよ。>>
<< だ~か~ら、チーアルから"僕はチーアルの力を借りていただけ"と説明してくれればよかったじゃないか! >>
<< あら、そうだったの? 今度から気を付けるわね。>>
絶対わざとだ。事態をややこしくして面白がっているに違いない.....性格が悪い。
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それから、アーシャ様が連れて来た女の子はなんとガニマール帝国の皇女ジャニスだそうだ。僕と同様しばらく眠ったら元気になった様だが、アーシャ様と空を飛ぶのに拒否反応を示したので、僕達と同行することになったとのことだ。たとえ一時的にしろ、こんな子供がアーシャ様を窮地に追いやったなど信じられない。天才というのは恐ろしいものだ。
「パ~パ、これからどこへ行くの?」
と僕に抱き付いた幼女が言う。
「もちろんカルロ教国に戻るんだ。それと、パパじゃない、シロムだ。」
「だって私を作ったのだからパパよ。ねー、アルムさん。」
「そうですね。シロム様、自分のお子様を認めないなんてダメですよ。大丈夫です、婚約者様には隠し子のことは告げ口しませんから。」
アルムさんが僕の背中に抱き付きながら窘めてくる。
チーアルはどうやったのかアルムさんを完全に味方に付けた様だ。アルムさんの中ではチーアルは僕の隠し子で、僕は我が子に久々に出会ったのに、婚約者を気にして自分の子と認めない酷い父親と言う事になっているらしい。チーアルが僕の娘だとすれば、僕が10~11歳の時に出来た子供と言う事になるのだが、僕が神のひとりだと信じているアルムさんにはそれすらも「神ですから」で納得されてしまっている。何でも信じる素直な性格と言うのも考え物だ.........胃が痛い。
アルムさんを説得してジーラさんの元に戻すという難問が残っているが、マークとも相談してとりあえず一旦戻ることにした。両親やクラスメート達が心配しているだろうし、カルロ教国にはシンシアさんとマリアさんも到着しているはずだ。マリアさんなら喜んでアルムさんの説得に協力してくれるだろう。
<< カルロ教国って、アルガを封印した聖なる山の神を信仰しているんだったよね。そんなところに私がいくの? >>
<< はい、お願いします。僕はチーアルのご主人様なんだよね~。>>
<< くそ! こんなはずでは......。>>
<<嫌なら帰ってもらっても良いですけど。>>
チーアルが返ってくれれば胃痛の原因がひとつ減る。どうやらチーアルは虫と戦った時に僕がチーアルの記憶を覗き見たのが気に食わなかったらしい。あれからなんとなく態度がトゲトゲしい。
<< 一旦契約した以上は出来ないのよ。>>
<< なら契約を解除しようよ。>>
<< それも出来ない。あの契約はどちらかが死ぬまで解約出来ないの。>>
さらりと恐ろしいことを言うチーアル。
<< そもそも、契約の内容が分からないんだけど。契約をしていても帰れるんじゃないの? チーアルは空を飛べるし。>>
<< 分かってないわね。私達は一定距離以上離れることは出来ないの。町の中くらいなら離れても大丈夫だけど、私だけあの町に帰るなど問題外よ。離れるとあらゆる力が使えなくなる。元々力を持っていないシロムは問題ないけど、私は妖精に分解してしまうわ。 >>
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ここは是非確認したい。
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<< そんな勝手な.... >>
<< そう言わないでよ、普通は精霊と契約出来た人間は大喜びするわよ。人間を越えた力が使えるからね。シロムが変わり者なの....まあ預言者の杖があるから分からなくもないけど。>>
神力を使い果たしていた預言者の杖だが、僕が眠っている間にアーシャ様が再び神力を込めてくれたらしく今は元通りだ。もっともカルロ教国に戻ったら無用の長物になる気がする。帰ったら神様にお返ししようと思う。
ちなみにジャニスと言う名の皇女様だが、ドラゴニウスさんの背中に腹ばいになってしがみついている。顔面蒼白だ。どうもアーシャ様に連れられて空を飛んだ経験がトラウマになったらしい。重度の高所恐怖症だ。休憩で地面に降りた時以外は口も利けない。それでもドラゴニウスさんに乗っての旅はアーシャ様と一緒に空を飛んだ時より100倍ましだと言う。
「いくら急ぐからっていっても一旦大気圏外に出ての弾道飛行なんてするんだもの。正気の沙汰とは思えなかったわよ。」
というのがジャニス皇女の言だ。意味は分からないが大変だったのだろう。僕の虫嫌いも悪化したし、精神にダメージを受けた者同士親近感が湧く。彼女だけはカルロの町に留まらず、ドラゴニウスさんに神域に連れて行かれることになっている。まあ、アーシャ様を誘拐した犯人だ、罰を受けても当然ではあるのだが.....。
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