神の娘は上機嫌 ~ ヘタレ預言者は静かに暮らしたい - 付き合わされるこちらの身にもなって下さい ~

広野香盃

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43. 神と精霊のデュエル

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(アーシャ視点)

<< あら、お言葉だこと。今日は私の可愛いウィンディーネから頼まれてやって来たの。もっとも元はウィンディーネの契約者、そこにいる人間からの願いなのだけどね。ボルステルス、貴方にカルロ教国とかいう小国に手を貸すのをやめて欲しいの。>>

<< 嫌だと言ったら? >>

<< そう言うだろうとは思ったけどね。その場合は精霊と神のデュエルを申し込むことになるわね。>>

<< その様な太古の遺物を持ち出すのか? 受けるわけ無かろう。>>

<< あら、良いの? その場合は貴方と私が直接戦うことになる。私は構わないけど、この世界が只では済まないわよ。>>

<< お前自ら戦うと言うのか!? どうしてそこまでその人間に肩入れする。お前らしくもない。>>

<< まあね。人間の言いなりになるのは癪だけど、ウィンディーネがとんでもない人間と契約してしまってね。命令に従わないと存在を消されそうなのよ。>>

<< 酷い言われ方ですね。初めまして聖なる山の神よ。私はガニマール帝国第二皇子アキュリスと申します。私はささやかな願いを持っているだけです。それを契約精霊のウィンディーネに話したら、快く精霊王様に伝えてくれたのです。>>

<< 良く言うな....念話が使えることを良い事に、私の可愛いウィンディーネを騙して契約した上で散々脅しよって、このままで済むと思うなよ。>>

<< おお怖い。人間の寿命なんてしれているのですから、少々の我儘は笑って許して下さいよ。私が死んだ後はこの魂をどのようにされようが文句は言いません。>>

<< お主、精霊が人間の魂に手を出せないことを承知で申しておるであろう。>>

<< なんとそうでしたか。それは助かりました。>>

 ぬけぬけと言い放つアキュリス。話を聞いている内に腹が立って来た。要するにアートウィキさんもここに来たのは本意ではない。すべてはジャニスの兄アキュリスの企てということだ。それにしても精霊が人間と契約するというのは精霊にとって弱みを握られるのと同意義なのか? そんなのよほど信頼できる相手としか出来ない。信頼させた上でウィンディーネさんを裏切ったということか?

<< ボルステルスよ、そう言う訳でな、不本意ながら神と精霊のデュエルを申し込みに来たわけだ。申し訳ないが受けてくれぬか。もちろん今すぐとは言わん。誰に戦わせるか決めるのに時間が必要だろう。3日待とう。>>

 神と精霊のデュエル。太古の昔に神と精霊が戦い、世界を滅ぼしかけたことの反省に立って定められた法だ。神や精霊自身が戦う代わりに、それぞれ人間をひとり選び代わりに戦わせる。デュエルに参加する神や精霊とその関係者は戦う人間に力を与えてはならないから、預言者の杖の様な神に与えられた物を使うと反則負けになる。だから如何に強い人間を代理に出来るかで勝敗が決まる。人選に時間を掛けるのは当然だ。

<< 聖なる山の神様、シロムです。只今帰還いたしました。>>

 間の悪いタイミングでシロムさんの念話が届く。

<< シロムさん、御免なさい。とうさまは今ちょっと取り込み中で.....。そうだ! とうさま、シロムさんよ。シロムさんに来てもらいましょう。>>

<< シロムか? 精霊も一緒だな? 済まんがちょっと手伝ってくれ。>>

 とうさまも私と同じことを考えた様だ。シロムさんは闇の精霊と契約している。闇の精霊はとうさまの関係者ではないから、シロムさんが闇の精霊の力を使ってもルール違反にならない。それなら相手がどれほど強くても敵ではない。

 とうさまの神力でシロムさんが私達がいる広場に現れた。

「シロムさん、びっくりしたでしょう、御免なさい。ちょっと厄介なお客さんがやって来てね。」

そう言ってから状況を簡単に説明した。

「そう言うわけなの、突然で驚いたでしょうけどゆっくり考えてもらって良いわ。精霊王はこちら側の戦士を選ぶのに3日待ってくれるらしいの。」

 私がそう言うと横からジャニスが口を挟む。

「ダメよ。戦うなら今しかない。すでにシロムさんの顔を見られてしまったのよ。アキュリス兄さんに時間を与えたらどんな卑怯なことをしてくるか分からない。デュエルの前にシロムさんを暗殺しようとするかもしれないし、シロムさんの家族を人質に取ってわざと負ける様に脅迫してくるかもしれない。だからまともに戦えるのは今だけと思ったほうがいい。兄さんに時間を与えてはダメ!」

「実の兄さんをそこまで疑うの?」

「疑っているのじゃない、確信しているのよ。アキュリス兄さんなら絶対やる。」

 怖い兄妹だな、今まで足の引っ張り合いばかりしてきたと言っていたけれど.....。でも命がけの戦いに出るかどうかを即決しろだなんて、シロムさんでなくても酷だよ。案の定シロムさんの顔が蒼白だ。そりゃ怖いよね。

「なあ、チーアル。精霊が人間と契約するって、相手に弱みを握られるのを承知でする程大切な事なんだな? そんなこと一言も言ってなかったじゃないか。」

「言ったら契約してくれなかったでしょう?」

「当り前だ! あのアキュリスって皇子はそれを承知の上で契約して、ウィンデーネさんを裏切ったと言う事だよな。」

 あれ? シロムさん珍しく腹を立てている。

「アーシャ様、僕で良ければ戦います。あいつの思い通りにさせたくありません。」

「待った! なに感情的になっているのよ! さっき言ったでしょう、ここは私にとって神気が強すぎるの。実力の10分の1も出せないわよ。」

「それでも人間よりは強いだろう?」

「それはそうだけど....。」

「だったら協力してくれないか? チーアルなしで僕が勝てるわけが無い。」

「もう.....腰抜けのシロムがそこまで言うとはね。分かった、やってあげるわよ。」

「ありがとうチーアル。感謝するよ。」

 いつものオドオドしたシロムさんじゃない。よっぽどウィンディーネさんのことが腹に据えかねたのかな?
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