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50. ウィンディーネ様の心の中へ
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(シロム視点)
飛び起きた僕は、分けも分からず精霊王様に頭を下げた。
「も、申し訳ありません。」
「人の顔を見て悲鳴を上げるとは無礼な奴じゃな。まあ良い、こちらも寝ている所を急に呼び出したわけだしな勘弁してやろう。」
「あ、ありがとうございます。」
「お主....確かシロムだったな。お主を呼び出したのは他でもない、ウィンディーネを助けるのに力を貸して欲しいのだ。まさか嫌とは言うまいな?」
「ウィンディーネ様を?」
そして僕の視線は精霊王様の横で横たわるウィンディーネ様のお姿に釘付けになった。前回お見かけしたときより明らかに小さくなっている。それになんだか輪郭がぼやけている様な.....。
「そうだ。全力を尽くしたがこの通りだ。少しずつ、だが確実に消滅に向かっている。ウィンディーネと契約していたあの人間が掛けた呪縛を解除できん。」
「そんな.....何か助ける方法はないのですか?」
「あるぞ。だからお主に来てもらった。人間の助けを借りるなど心外も良い所だが、ウィンディーネの為であれば否とは言えん。シロム、お主には今からウィンディーネと契約してもらう。」
「で、出来ません。」
精霊にとって人間との契約がどれほどの意味を持つか理解した今、契約なんて出来っこない。ウィンディーネ様がこの様なことになったのは、アキュリス皇子と契約したからだ。漸く皇子が亡くなって自由になったウィンディーネ様をもう一度契約させるなど出来るはずがない。
「ほう、私の命令が聞けぬと言うか? それだけの覚悟があるのだろうな。」
<< シロム、精霊王様に謝って! 早く! >>
横からチーアルがあせって念話を送って来る。怖くて身動きできない。
「も、申し訳ありません。で、でも、漸く自由になられたウィンディーネ様をもう一度束縛するなど僕には出来ません。」
言ってしまった。これは殺されるかもと冷や汗が流れる。
「良い覚悟だな。安心しろ、契約といっても仮のものだ。見ての通りウィンディーネには意識がない。本人の同意なしで本当の契約が出来るわけが無い。今から行うのは私の力によるまやかしの契約だ。ウィンディーネが目を覚ませば自動的に解除される。」
「そ、そうなのですね....。」
少しホッとした。
「聞け、ウィンディーネが復活出来ないのは、契約を結んでいた人間の命令が残っているからだ。あの人間は、自分が死んだらウィンディーネも消滅しろと命じていた。その命令は人間が死んだ後もウィンディーネの心を縛り上げ、着実に消滅に向かわせておる。そこで、毒を持って毒を制することにした。シロムよ、今からお前はウィンディーネと契約して主人となり、ウィンディーネに「消滅せず生きろ」と命ずるのだ。お主の命令とウィンディーネの意思が前の人間の命令に打ち勝てばウィンディーネは蘇る。」
「ぼ、僕がウィンディーネ様に命令するのですか?」
「そうだ。人間がウィンディーネに命令するなど許せぬが、今回だけは目を瞑ってやる。ありがたく思え。」
「そうすれば、ウィンディーネ様は復活なされるのですね.....。」
「さっきも言った通り条件付きだ。だが方法はこれしかない。やるな?」
「やります。やらせてください。」
考える前に口が勝手に動いていた。
<< 恋は盲目ってね。ヘタレのシロムもウィンディーネ様のこととなると別人よね。いいわ、私も手伝ってあげる。>>
<< ありがとう、チーアル。>>
これ程チーアルの存在をありがたいと思ったことは無い。
「良い返事だ。それではウィンディーネの傍で横になるが良い。契約が住めばお主の心はウィンディーネの心と繋がる。心が繋がったらウィンディーネに「生きろ」と命ずるのだ。」
言われるままに立ち上がりウィンディーネ様の傍に進む。以前お見かけした時は背の高いアキュリス皇子と同じくらいの背丈だったウィンディーネ様が、今は僕より小さくなっていた。ウィンディーネ様とならんで横たわると、精霊王が「目を瞑れ」と声を掛けてくる。目を瞑った途端周りの景色が一変した。
飛び起きた僕は、分けも分からず精霊王様に頭を下げた。
「も、申し訳ありません。」
「人の顔を見て悲鳴を上げるとは無礼な奴じゃな。まあ良い、こちらも寝ている所を急に呼び出したわけだしな勘弁してやろう。」
「あ、ありがとうございます。」
「お主....確かシロムだったな。お主を呼び出したのは他でもない、ウィンディーネを助けるのに力を貸して欲しいのだ。まさか嫌とは言うまいな?」
「ウィンディーネ様を?」
そして僕の視線は精霊王様の横で横たわるウィンディーネ様のお姿に釘付けになった。前回お見かけしたときより明らかに小さくなっている。それになんだか輪郭がぼやけている様な.....。
「そうだ。全力を尽くしたがこの通りだ。少しずつ、だが確実に消滅に向かっている。ウィンディーネと契約していたあの人間が掛けた呪縛を解除できん。」
「そんな.....何か助ける方法はないのですか?」
「あるぞ。だからお主に来てもらった。人間の助けを借りるなど心外も良い所だが、ウィンディーネの為であれば否とは言えん。シロム、お主には今からウィンディーネと契約してもらう。」
「で、出来ません。」
精霊にとって人間との契約がどれほどの意味を持つか理解した今、契約なんて出来っこない。ウィンディーネ様がこの様なことになったのは、アキュリス皇子と契約したからだ。漸く皇子が亡くなって自由になったウィンディーネ様をもう一度契約させるなど出来るはずがない。
「ほう、私の命令が聞けぬと言うか? それだけの覚悟があるのだろうな。」
<< シロム、精霊王様に謝って! 早く! >>
横からチーアルがあせって念話を送って来る。怖くて身動きできない。
「も、申し訳ありません。で、でも、漸く自由になられたウィンディーネ様をもう一度束縛するなど僕には出来ません。」
言ってしまった。これは殺されるかもと冷や汗が流れる。
「良い覚悟だな。安心しろ、契約といっても仮のものだ。見ての通りウィンディーネには意識がない。本人の同意なしで本当の契約が出来るわけが無い。今から行うのは私の力によるまやかしの契約だ。ウィンディーネが目を覚ませば自動的に解除される。」
「そ、そうなのですね....。」
少しホッとした。
「聞け、ウィンディーネが復活出来ないのは、契約を結んでいた人間の命令が残っているからだ。あの人間は、自分が死んだらウィンディーネも消滅しろと命じていた。その命令は人間が死んだ後もウィンディーネの心を縛り上げ、着実に消滅に向かわせておる。そこで、毒を持って毒を制することにした。シロムよ、今からお前はウィンディーネと契約して主人となり、ウィンディーネに「消滅せず生きろ」と命ずるのだ。お主の命令とウィンディーネの意思が前の人間の命令に打ち勝てばウィンディーネは蘇る。」
「ぼ、僕がウィンディーネ様に命令するのですか?」
「そうだ。人間がウィンディーネに命令するなど許せぬが、今回だけは目を瞑ってやる。ありがたく思え。」
「そうすれば、ウィンディーネ様は復活なされるのですね.....。」
「さっきも言った通り条件付きだ。だが方法はこれしかない。やるな?」
「やります。やらせてください。」
考える前に口が勝手に動いていた。
<< 恋は盲目ってね。ヘタレのシロムもウィンディーネ様のこととなると別人よね。いいわ、私も手伝ってあげる。>>
<< ありがとう、チーアル。>>
これ程チーアルの存在をありがたいと思ったことは無い。
「良い返事だ。それではウィンディーネの傍で横になるが良い。契約が住めばお主の心はウィンディーネの心と繋がる。心が繋がったらウィンディーネに「生きろ」と命ずるのだ。」
言われるままに立ち上がりウィンディーネ様の傍に進む。以前お見かけした時は背の高いアキュリス皇子と同じくらいの背丈だったウィンディーネ様が、今は僕より小さくなっていた。ウィンディーネ様とならんで横たわると、精霊王が「目を瞑れ」と声を掛けてくる。目を瞑った途端周りの景色が一変した。
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