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51. アキュリス皇子との戦い
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(シロム視点)
僕はだだっ広い草原にひとり立っていた。先ほどまでいた何だか分からない白い空間とは明らかに違う。僕の服装は寝る時に来ていたパジャマ姿で、素足で地面に立っていた。
<< シロム、そこはウィンディーネ様の心の中よ。いいこと、私が行くまでそこを動かないで。でないとシロムを見つけられなくなる。ウィンディーネ様を探すのはその後よ。>>
<< 分かった。早く来てくれ。>>
これほどチーアルが頼もしく思えたことは無い。早く来てくれと心の中で繰り返した。
だが、すぐに僕の思考はチーアルから離れた。向こうからウィンディーネ様が走って来たのだ。誰かに追いかけられている、アキュリス皇子だ。それも何人もいる。
<< チーアル、早く! >>
と念話を送るが、チーアルからの返事がない。
ウィンディーネ様は僕に全く気付かない様で、そのまま僕の傍を通り過ぎる。お顔が恐怖に固まっていた。その後を何人ものアキュリス皇子が追いかけて行く。
「逃げられはせん、諦めろ。」
「滅びるのだ。」
「自分だけ助かる気か。卑怯者め!」
「命令に従え。」
皇子達が口々に叫ぶ。ウィンディーネ様はそれを聞いて耳を塞いだまま走る。
僕は震えて動けなかった。王子の顔が怖かったのだ。まるで増悪の塊の様な顔をしている。
<< チーアル、早く。>>
もう一度呼びかけるが相変わらず返事はない。
ウィンディーネ様は必死に逃げるが、急に方向を変えこちらにやって来る。見るとウィンディーネ様が逃げていた方向からも別の皇子の一団がやって来ていた。
遂にウィンディーネ様が王子達に捕まる。そのまま地面に引き倒され、王子達に囲まれた。
「観念しろ、ここまでだ。」
「もう十分逃げ回っただろう。諦めるんだ。」
「そろそろ死んでも良いよな。」
「死ね。」
「滅びろ。」
「消えろ。」
「命令だ。」
「きゃぁぁぁぁ~~~」
悲鳴が聞こえると同時に、ウィンディーネ様の輪郭がぼやけ始める。
「ダメです! 死んではいけません。生きて下さい。滅びないで!」
いつの間にか精一杯の声で叫びながらウィンディーネ様に向かって走っていた。だが、すぐに王子達の一団が僕の前に立ち塞がった。
「だれだ?」
「邪魔だ。お前には関係ないだろう。」
「どこかへ行ってしまえ。」
「こいつは俺の物だ。」
「おれはこいつの主人だぞ。」
「ぼ、僕はウィンディーネ様の新しい契約者です。ウィンディーネ様、死なないで!」
必死に叫ぶが、それに答えたのは皇子達の嘲笑だった。
「お前がウィンディーネの主人だと? それならお前は敵だな。」
そう言って王子達は一斉に腰の剣を抜く。相手は10人以上いる、おまけに僕はパジャマ姿で武器なんか持っていない。
武器? そうだ! と思った途端、手の中に預言者の杖が出現していた。杖が使えるのなら勝てる! こいつらを眠らせれば.....。
だが、杖は何の反応もしない。杖の出現に一瞬身構えた皇子達が再び余裕を取り戻した。
「どうした。それだけか? たわいもない。」
そう言って皇子のひとりが切り掛かって来る。思わず杖で受けるが、そのまま後ろに吹き飛ばされて転ぶ。王子達が全員で転んだ僕を取り囲んだ。
「ウィンディーネ様! 今です。逃げて下さい。」
必死に叫ぶが、ウィンディーネ様はこちらを見つめたまま動かない。
「弱いな。」
「弱い。」
「心が弱い。」
「お前の心は弱い。」
「ヘタレだな。」
そう言いながら皇子達が一斉に剣を振りかざす。
助けて!
精一杯杖に願った。その瞬間杖が眩しく光り始め、皇子達が顔を背ける。その隙を突いて僕は立ち上がり、王子達の囲みを抜けてウィンディーネ様の傍まで走り寄った。王子達は杖の光を警戒したのか近づいて来ない。
「ウィンディーネ様、逃げて下さい。こいつらは僕が食い止めます。」
だけどウィンディーネ様は何も言わず僕に抱き付いて来る。全身が震えているのが分かる。ウィンディーネ様に抱き付かれた僕は動けない。
しばらく警戒して距離を取っていた王子達だが、杖の光が自分達に被害を与えていないことに気付いた様だ。
「こけおどしか?」
皇子のひとりが叫ぶ。僕もそう思う、これは只の光だ。
「こいつの心は弱い。大したことが出来るわけが無い。」
「そうだな、そうに決まっている。」
「よし、お前先に行け。」
「お前が先に行け。」
「何だと!」
意外なことに皇子達が仲間割れを始めた。今の内だと僕はウィンディーネ様を連れて少しずつ皇子達から距離をとる。
「ウィンディーネ様、走ります。いいですね。」
ウィンディーネ様がコクンと頷くのを確認して僕はウィンディーネ様と駆け出す。
だが皇子達は直ぐに気付いた。たちまち僕達を追いかけて来る。速い。必死で逃げるが、前方から別の皇子の集団が迫って来た。思わず立ち止った僕はあっと言う間に皇子達に囲まれる。
「そこまでだ。お前みたいな弱っちい奴にしては良く粘ったよ。」
「そうだな。いいか、ここは心の中だ。この中で通用するのは心の強さだけだ。お前の心は弱い、勝てるわけが無い。」
「諦めてウィンディーネを返すのだ。」
そう言われて、ウィンディーネ様がますます強く僕にしがみついて来る。助けないと....そう思うが出来ることは無い。
助けて!
もう一度杖に願うが何も起きない。それどころか杖が発していた光が徐々に弱まり遂には消えてしまった。それを見た皇子達が一斉にこちらに寄って来る。もう駄目だ....。思わず目を瞑る。
<< お待たせ! >>
チーアルの念話に目を開けると、皇子達が全員地面に出来た黒い影に下半身を沈めていた。神と精霊のデュエルでチーアルがゴリアスさんに使ったあの影だ。ゴリアスさんは走り回って避けていたが、影に踏み込んだらこうなっていたわけだ。
「助けてくれ、おれは皇子だぞ!」
「何をしている、早く引き揚げろ。」
「褒美は十分に取らすぞ。」
「出世したいだろう。」
皇子達は口々に助けを求めて来るが、助ける気には成らなかった。やがて皇子の全身が影に沈み込み見えなくなると影自体が消える。それと同時に目の前にチーアルが現われた。
「はい、お終い。私は闇の精霊だからね。心の闇への対応も得意分野よ。どう、怖くなった?」
「バカ」
そう言って僕はチーアルを抱きしめた。
僕はだだっ広い草原にひとり立っていた。先ほどまでいた何だか分からない白い空間とは明らかに違う。僕の服装は寝る時に来ていたパジャマ姿で、素足で地面に立っていた。
<< シロム、そこはウィンディーネ様の心の中よ。いいこと、私が行くまでそこを動かないで。でないとシロムを見つけられなくなる。ウィンディーネ様を探すのはその後よ。>>
<< 分かった。早く来てくれ。>>
これほどチーアルが頼もしく思えたことは無い。早く来てくれと心の中で繰り返した。
だが、すぐに僕の思考はチーアルから離れた。向こうからウィンディーネ様が走って来たのだ。誰かに追いかけられている、アキュリス皇子だ。それも何人もいる。
<< チーアル、早く! >>
と念話を送るが、チーアルからの返事がない。
ウィンディーネ様は僕に全く気付かない様で、そのまま僕の傍を通り過ぎる。お顔が恐怖に固まっていた。その後を何人ものアキュリス皇子が追いかけて行く。
「逃げられはせん、諦めろ。」
「滅びるのだ。」
「自分だけ助かる気か。卑怯者め!」
「命令に従え。」
皇子達が口々に叫ぶ。ウィンディーネ様はそれを聞いて耳を塞いだまま走る。
僕は震えて動けなかった。王子の顔が怖かったのだ。まるで増悪の塊の様な顔をしている。
<< チーアル、早く。>>
もう一度呼びかけるが相変わらず返事はない。
ウィンディーネ様は必死に逃げるが、急に方向を変えこちらにやって来る。見るとウィンディーネ様が逃げていた方向からも別の皇子の一団がやって来ていた。
遂にウィンディーネ様が王子達に捕まる。そのまま地面に引き倒され、王子達に囲まれた。
「観念しろ、ここまでだ。」
「もう十分逃げ回っただろう。諦めるんだ。」
「そろそろ死んでも良いよな。」
「死ね。」
「滅びろ。」
「消えろ。」
「命令だ。」
「きゃぁぁぁぁ~~~」
悲鳴が聞こえると同時に、ウィンディーネ様の輪郭がぼやけ始める。
「ダメです! 死んではいけません。生きて下さい。滅びないで!」
いつの間にか精一杯の声で叫びながらウィンディーネ様に向かって走っていた。だが、すぐに王子達の一団が僕の前に立ち塞がった。
「だれだ?」
「邪魔だ。お前には関係ないだろう。」
「どこかへ行ってしまえ。」
「こいつは俺の物だ。」
「おれはこいつの主人だぞ。」
「ぼ、僕はウィンディーネ様の新しい契約者です。ウィンディーネ様、死なないで!」
必死に叫ぶが、それに答えたのは皇子達の嘲笑だった。
「お前がウィンディーネの主人だと? それならお前は敵だな。」
そう言って王子達は一斉に腰の剣を抜く。相手は10人以上いる、おまけに僕はパジャマ姿で武器なんか持っていない。
武器? そうだ! と思った途端、手の中に預言者の杖が出現していた。杖が使えるのなら勝てる! こいつらを眠らせれば.....。
だが、杖は何の反応もしない。杖の出現に一瞬身構えた皇子達が再び余裕を取り戻した。
「どうした。それだけか? たわいもない。」
そう言って皇子のひとりが切り掛かって来る。思わず杖で受けるが、そのまま後ろに吹き飛ばされて転ぶ。王子達が全員で転んだ僕を取り囲んだ。
「ウィンディーネ様! 今です。逃げて下さい。」
必死に叫ぶが、ウィンディーネ様はこちらを見つめたまま動かない。
「弱いな。」
「弱い。」
「心が弱い。」
「お前の心は弱い。」
「ヘタレだな。」
そう言いながら皇子達が一斉に剣を振りかざす。
助けて!
精一杯杖に願った。その瞬間杖が眩しく光り始め、皇子達が顔を背ける。その隙を突いて僕は立ち上がり、王子達の囲みを抜けてウィンディーネ様の傍まで走り寄った。王子達は杖の光を警戒したのか近づいて来ない。
「ウィンディーネ様、逃げて下さい。こいつらは僕が食い止めます。」
だけどウィンディーネ様は何も言わず僕に抱き付いて来る。全身が震えているのが分かる。ウィンディーネ様に抱き付かれた僕は動けない。
しばらく警戒して距離を取っていた王子達だが、杖の光が自分達に被害を与えていないことに気付いた様だ。
「こけおどしか?」
皇子のひとりが叫ぶ。僕もそう思う、これは只の光だ。
「こいつの心は弱い。大したことが出来るわけが無い。」
「そうだな、そうに決まっている。」
「よし、お前先に行け。」
「お前が先に行け。」
「何だと!」
意外なことに皇子達が仲間割れを始めた。今の内だと僕はウィンディーネ様を連れて少しずつ皇子達から距離をとる。
「ウィンディーネ様、走ります。いいですね。」
ウィンディーネ様がコクンと頷くのを確認して僕はウィンディーネ様と駆け出す。
だが皇子達は直ぐに気付いた。たちまち僕達を追いかけて来る。速い。必死で逃げるが、前方から別の皇子の集団が迫って来た。思わず立ち止った僕はあっと言う間に皇子達に囲まれる。
「そこまでだ。お前みたいな弱っちい奴にしては良く粘ったよ。」
「そうだな。いいか、ここは心の中だ。この中で通用するのは心の強さだけだ。お前の心は弱い、勝てるわけが無い。」
「諦めてウィンディーネを返すのだ。」
そう言われて、ウィンディーネ様がますます強く僕にしがみついて来る。助けないと....そう思うが出来ることは無い。
助けて!
もう一度杖に願うが何も起きない。それどころか杖が発していた光が徐々に弱まり遂には消えてしまった。それを見た皇子達が一斉にこちらに寄って来る。もう駄目だ....。思わず目を瞑る。
<< お待たせ! >>
チーアルの念話に目を開けると、皇子達が全員地面に出来た黒い影に下半身を沈めていた。神と精霊のデュエルでチーアルがゴリアスさんに使ったあの影だ。ゴリアスさんは走り回って避けていたが、影に踏み込んだらこうなっていたわけだ。
「助けてくれ、おれは皇子だぞ!」
「何をしている、早く引き揚げろ。」
「褒美は十分に取らすぞ。」
「出世したいだろう。」
皇子達は口々に助けを求めて来るが、助ける気には成らなかった。やがて皇子の全身が影に沈み込み見えなくなると影自体が消える。それと同時に目の前にチーアルが現われた。
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※この作品は、『小説家になろう』様でも公開しています。
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