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86. ジャニスの調査
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(シロム視点)
ジャニス皇女に急かされて急いで宮殿に戻ると、ジャニス皇女は自分の館には戻らず宮殿の一角にある建物へ入っていった。入り口には皇都行政部と書かれているから何かの役所なのだろう。
中にはいるとジャニス皇女は真っ直ぐにひとつの受付カウンターに進み出た。カウンターに居た女性がジャニス皇女を認識したのか驚いた顔のまま起立する。
「ジャニスよ、直ぐにここの責任者を呼んで頂戴。これは命令よ、大至急でお願い。」
「か、畏まりました。」
女性がバタバタとカウンターの奥に消えて暫くすると、ジャニス皇女が呼んだ責任者と 思われる男性が部下数名を引き連れて急ぎ足でやって来た。
「ジャニス様、ようこそお越しくださいました。皇都行政部住民課の責任者を仰せつかっておりますポトルと申します。私共に出来る事でしたら何なりとお申し付け下さい。」
「感謝するわ。ポトル....確かポトル・シザーラス男爵だったわね。部屋をひとつ用意して欲しいのと、その部屋に今から言う資料を取り揃えて欲しいの。悪いけど大至急でお願い。」
今更ながらだが10歳の少女とは思えない物言いだ。それにひょっとしたら全貴族の家名を記憶しているのだろうか。確かにこの子が皇帝になったらと期待させる物がある。それに先ほどの受付の女性も、ポトルさんも皇女が突然来庁したことに驚きこそすれ嫌がってはいない様だ。
「はっ、畏まりました。こちらへどうぞ、部屋にご案内いたします。」
周りの注目を浴びてポトルさんの後を歩きながらそんなことを考えていた。部屋に到着しジャニス皇女の求めに応じて山の様な書類が運び込まれると、皇女は一心不乱に書類を繰り始める。手伝おうにも資料には数字が際限なく記録されているのみで、僕には理解不能だ。
僕にはジャニス皇女が調べ終った書類を元の木箱に収めるくらいしかやることがない。手持無沙汰のまま時が過ぎて行く。辛うじて書類のタイトルからジャニス皇女が調べているのが奴隷商人からの報告書であることは分かった。それも5年くらい前からの物で目を通すだけで大変そうだ。
連絡を受けたジーナさんが運び込んでくれた昼食、さらに夕食も挟んでジャニス皇女の調査は進む。そして夜中になって遂にジャニス皇女は資料の調査を終えた。
「シロムさん、直ぐに御子様と連絡を取って。戦略を練り直さないと....。」
「わ、分かりました。」
(アーシャ視点)
シロムさんから緊急連絡が入った。ジャニスの調査で人工レイスが作られていたのは病院だけでは無いことが分かったと言う。奴隷商会や孤児院でも行われていたらしい。しかも病院では病気や怪我で亡くなった人を対象にしていたが、こちらは殺人まで犯している。行方が分からなくなっても問題視されにくに奴隷や孤児を対象に騒ぎにならない程度の人数を殺して魂の力を奪っているわけだ。聞いていて気分が悪くなった。
これを書類上の数字の変化だけから導きだしたジャニスは流石だ。各奴隷商会が提出した奴隷の購入数と販売数それに病気や怪我での死亡数の推移から、特定の商会で商会に滞在している間に死亡する奴隷が急激に増えていること、別の商会では購入数が販売数を常に上回っており、計算上では商会で収容出来る収容数を遥かに超えていることなどからはじき出したらしい。孤児院についても同様だ。
ジャニスの試算によると教祖コトラルがカリトラス大神の元からいなくなった2年前から今までに少なくとも300人、最大で600人の人間がレイスにされて魂の力を奪われているとのことだ。これは人工レイスが作られているのが病院だけと考えていた時に予想した100人程度とはかなりの差がある。
これだけの人間の魂の力を奪ったとなると相手の力を侮ることはできない。迂闊に戦えば周りへの被害は計り知れないだろう。周りに沢山の人がいる街中や宮殿では迂闊に手を出すわけにいかなくなった。
もっとも今のところコトラルの手掛かりはゼロだ。人工レイスを作っているという病院を見張っていたのだが全く動きがないのだ。ひょっとしたらジャニス皇女が聖なる山の神の御子を連れて帰還したと聞いて用心して動きを止めているのかもしれない。まあ....敵に動きがないということは犠牲者も出ていないということでもあるのだが。
それにしてもコトラルはどこに隠れているのだろう。私だけでなくカルミさん達魔族姉妹の千里眼でも見つからない。精霊王様配下の精霊達も総出で探してくれているがそれでも見つからないのだ。私達の動きに気付いて皇都から逃げ出したのだろうか? このまま雲隠れされるのは最悪の事態だ。どこか他の場所で同じことを繰り返すおそれが高い。今は皇都の近くの町や村を順に回ってコトラルを捜索しているところだ。
ちなみにカミルさん達姉妹はレイスを狩っていたことへの罰として父さまの眷属になった。眷属と言えば聞こえは良いが契約に縛られて父さまの命令には逆らえなくなったと言う事だ。父さまの命令は2つ、1つ目は今後レイスを狩らないこと、その代わりレイスの魂に代えて父さまが神気を与えることになっている。2つ目はコトラルの捜査に協力すること。もっともこれはカミルさん達の望みでもある。自分達を騙し巫女長のカニアールさんを殺害したコトラルを放っておくつもりは無いらしい。
コトラルを拘束した後カミルさん達は故郷に戻って良い事になっている。元通りカリトラス大神を名乗って人々に加護を与えることも許された。エリアルさんら巫女達は既に解放され故郷に向かっているはずだ。
今頃シロムさんは何をしているのだろうか? せっかく結婚したと言うのにあれからバタバタして2人切りで過ごしたことはほとんどない。好きな人と一緒になれたら甘い甘い新婚生活が待っていると期待していたから残念だけど、今がその時で無いことは分かる。魔族を放って置くわけにいかないからね。新婚気分に浸るのはこの件が済んでからよと自分に言い聞かせる。
ジャニス皇女に急かされて急いで宮殿に戻ると、ジャニス皇女は自分の館には戻らず宮殿の一角にある建物へ入っていった。入り口には皇都行政部と書かれているから何かの役所なのだろう。
中にはいるとジャニス皇女は真っ直ぐにひとつの受付カウンターに進み出た。カウンターに居た女性がジャニス皇女を認識したのか驚いた顔のまま起立する。
「ジャニスよ、直ぐにここの責任者を呼んで頂戴。これは命令よ、大至急でお願い。」
「か、畏まりました。」
女性がバタバタとカウンターの奥に消えて暫くすると、ジャニス皇女が呼んだ責任者と 思われる男性が部下数名を引き連れて急ぎ足でやって来た。
「ジャニス様、ようこそお越しくださいました。皇都行政部住民課の責任者を仰せつかっておりますポトルと申します。私共に出来る事でしたら何なりとお申し付け下さい。」
「感謝するわ。ポトル....確かポトル・シザーラス男爵だったわね。部屋をひとつ用意して欲しいのと、その部屋に今から言う資料を取り揃えて欲しいの。悪いけど大至急でお願い。」
今更ながらだが10歳の少女とは思えない物言いだ。それにひょっとしたら全貴族の家名を記憶しているのだろうか。確かにこの子が皇帝になったらと期待させる物がある。それに先ほどの受付の女性も、ポトルさんも皇女が突然来庁したことに驚きこそすれ嫌がってはいない様だ。
「はっ、畏まりました。こちらへどうぞ、部屋にご案内いたします。」
周りの注目を浴びてポトルさんの後を歩きながらそんなことを考えていた。部屋に到着しジャニス皇女の求めに応じて山の様な書類が運び込まれると、皇女は一心不乱に書類を繰り始める。手伝おうにも資料には数字が際限なく記録されているのみで、僕には理解不能だ。
僕にはジャニス皇女が調べ終った書類を元の木箱に収めるくらいしかやることがない。手持無沙汰のまま時が過ぎて行く。辛うじて書類のタイトルからジャニス皇女が調べているのが奴隷商人からの報告書であることは分かった。それも5年くらい前からの物で目を通すだけで大変そうだ。
連絡を受けたジーナさんが運び込んでくれた昼食、さらに夕食も挟んでジャニス皇女の調査は進む。そして夜中になって遂にジャニス皇女は資料の調査を終えた。
「シロムさん、直ぐに御子様と連絡を取って。戦略を練り直さないと....。」
「わ、分かりました。」
(アーシャ視点)
シロムさんから緊急連絡が入った。ジャニスの調査で人工レイスが作られていたのは病院だけでは無いことが分かったと言う。奴隷商会や孤児院でも行われていたらしい。しかも病院では病気や怪我で亡くなった人を対象にしていたが、こちらは殺人まで犯している。行方が分からなくなっても問題視されにくに奴隷や孤児を対象に騒ぎにならない程度の人数を殺して魂の力を奪っているわけだ。聞いていて気分が悪くなった。
これを書類上の数字の変化だけから導きだしたジャニスは流石だ。各奴隷商会が提出した奴隷の購入数と販売数それに病気や怪我での死亡数の推移から、特定の商会で商会に滞在している間に死亡する奴隷が急激に増えていること、別の商会では購入数が販売数を常に上回っており、計算上では商会で収容出来る収容数を遥かに超えていることなどからはじき出したらしい。孤児院についても同様だ。
ジャニスの試算によると教祖コトラルがカリトラス大神の元からいなくなった2年前から今までに少なくとも300人、最大で600人の人間がレイスにされて魂の力を奪われているとのことだ。これは人工レイスが作られているのが病院だけと考えていた時に予想した100人程度とはかなりの差がある。
これだけの人間の魂の力を奪ったとなると相手の力を侮ることはできない。迂闊に戦えば周りへの被害は計り知れないだろう。周りに沢山の人がいる街中や宮殿では迂闊に手を出すわけにいかなくなった。
もっとも今のところコトラルの手掛かりはゼロだ。人工レイスを作っているという病院を見張っていたのだが全く動きがないのだ。ひょっとしたらジャニス皇女が聖なる山の神の御子を連れて帰還したと聞いて用心して動きを止めているのかもしれない。まあ....敵に動きがないということは犠牲者も出ていないということでもあるのだが。
それにしてもコトラルはどこに隠れているのだろう。私だけでなくカルミさん達魔族姉妹の千里眼でも見つからない。精霊王様配下の精霊達も総出で探してくれているがそれでも見つからないのだ。私達の動きに気付いて皇都から逃げ出したのだろうか? このまま雲隠れされるのは最悪の事態だ。どこか他の場所で同じことを繰り返すおそれが高い。今は皇都の近くの町や村を順に回ってコトラルを捜索しているところだ。
ちなみにカミルさん達姉妹はレイスを狩っていたことへの罰として父さまの眷属になった。眷属と言えば聞こえは良いが契約に縛られて父さまの命令には逆らえなくなったと言う事だ。父さまの命令は2つ、1つ目は今後レイスを狩らないこと、その代わりレイスの魂に代えて父さまが神気を与えることになっている。2つ目はコトラルの捜査に協力すること。もっともこれはカミルさん達の望みでもある。自分達を騙し巫女長のカニアールさんを殺害したコトラルを放っておくつもりは無いらしい。
コトラルを拘束した後カミルさん達は故郷に戻って良い事になっている。元通りカリトラス大神を名乗って人々に加護を与えることも許された。エリアルさんら巫女達は既に解放され故郷に向かっているはずだ。
今頃シロムさんは何をしているのだろうか? せっかく結婚したと言うのにあれからバタバタして2人切りで過ごしたことはほとんどない。好きな人と一緒になれたら甘い甘い新婚生活が待っていると期待していたから残念だけど、今がその時で無いことは分かる。魔族を放って置くわけにいかないからね。新婚気分に浸るのはこの件が済んでからよと自分に言い聞かせる。
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