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24. ヤギルの毛刈り - 2
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私はそれを聞いて思わず咽た。母さんが背中をさすってくれる。兄さんが素早くフォローを入れる。
「魔導士ってノワール王国に居るんじゃないのか?」
「ヤランは知らないのか、まあ今までは、俺達遊牧の民には関係の無い話だったからな。今まで魔導士は3人居たんだよ、ノワール王国に居るのが東の魔導士、ハルマン王国の女王が西の魔導士、最初は世界に魔導士はこのふたりだけだったんだ。それが5年くらい前に南の魔導士っていうが現れたらしい。もっとも、それでも俺達には関係なかったんだが、今度は草原の魔導士だ。この草原のどこかに居るらしい。ひょっとしたら俺達と同じ遊牧の民かもしれないからな、関係ないとは言えなくなった。」
「それで、草原の魔導士ってどんな奴なんだ?」
とヤラン兄さんが驚きを顔に出さず、ソラさんに話を振る。
「太陽神ギル様の神託にあった北の砂漠の脅威を除いてくれたのが草原の魔導士らしい。何百という地竜を退治してくれたらしいよ。しかも、女だとさ。どうだ興味はないか? ひょっとしたらこの近くに住んでいるのかもしれないんだぞ。絶世の美女と言うこともあり得る。ひょっとしたらヤランの嫁さんになってくれるかもしれないぞ。」
それは無理です。ヤラン兄さんは実の兄ですから。それにしてもララさん! 何というお騒がせな宣言をするんですか! せめて本人に断ってからにして下さい。地竜退治が私ひとりの手柄になっているし、心臓に悪いです。
ソラさんは、草原の魔導士が目の前に居るとは夢にも思わず話を続ける。
「実は、3~4ヶ月前にトワール王国の魔法使い達が草原の中央からとんでもない大きさの魔力が発せられるのを感知したらしい。東の魔導士が高齢を理由に参謀の職を引退して、王の命令で後任を探している所だったから色めき立ったらしいよ。必死で魔力の持ち主を探していたところにハルマン王国の女王の宣告があった訳だ。たぶん草原で大きな魔力を発したのも草原の魔導士だろうと言うことに成った。女王の宣言は草原の魔導士は自分の国の物だと宣言した様な物だから、後手に回ったトワール王国の魔法使い達は悔しがっているらしい。下手に草原の魔導士を自分達の国に勧誘したら、大国ハルマン王国の魔導士を奪ったとして戦争になりかねないからな。」
ゲッ、私はトワール王国に探されていた訳か。魔力を感知されたのは、姉さんの結婚式に北の部族が攻めて来た時のことだろうな。あの時は後先考えずに、魔力遮断結界も解除して全力の魔力を放った。ひょっとしたら、ララさんの宣言は私をトワール王国から守るため? そう考えるとララさんが急いで宣言を出したのにも納得がいく。夕食後すぐにララ王女に念話を飛ばしてみるが、予想通り繋がらない。私の念話の距離は100キロメートルが限度、ハルマン王国は遠すぎるのだ。
その夜、夕食の片付けをしている時に姉さんが私の耳元で囁いた。
「母さんから聞いたわ、イルが草原の魔導士なんですって。それで父さんの仇も取ってくれたってね。ありがとうね。私もイルを誇りに思う。」
母さんが言っちゃったか。まあ、姉さんになら大丈夫だ。
「ありがとう。でも、魔導士なんてララ女王が勝手に言っているだけ。私はトルク—ド族の娘で、ラナイ父さんとマイラ母さんの子供で、アイラ姉さんとヤラン兄さんの妹。それが私なの。」
と私が言うと、アイラ姉さんはしばらく私の言葉の意味を考えていた様だが、一瞬の後、笑顔になって言ってくれた。
「そう... そうか。分かった。それでこそ私の大好きなイルだわ。これからも母さんと兄さんのことをよろしくね。もちろん、魔導士のことはソラにも秘密にしておくから安心してね。」
「うん、ありがとう。」
と私はお礼を言う。姉さんは分かってくれた。魔導士なんて呼ばれても少しも嬉しくない。そんなことより家族と一緒に居られる方が100倍も大切なんだ。
翌朝の朝食後からヤギルの毛刈りを皆で行う。毛刈りはふたり一組で行い、ひとりがヤギルの角を持って動かない様に押え付け、もう一人が専用のバリカンで毛を刈って行く。アイラ姉さんとソラさん、マイラ母さんとヤラン兄さんがペアになって作業する。ヤギルはおとなしい動物だが、さすがに毛を刈られるのは嫌がるから中々大変な作業だ。毛を刈られたヤギルは一回りも二回りも小さくなった感じで、恥ずかしそうにしている様に見える。きっと恥ずかしいから嫌がるのだろう。それでも4人とも慣れたもので、所要時間は1頭当たり30分くらいだ。うちのヤギルは112頭、このうち生まれたてのヤギルは対象外だとしても100頭くらいは刈らないといけない。1時間に4頭として25時間かかる計算だ。もちろん休憩も入れないといけないし、毛刈り以外にも仕事がある。毛刈りの作業が終わるには5 ~ 6日かかるだろう。私は毛を刈り終わったヤギルを囲いに戻し、次のヤギルを連れて来るのが役目だ。ヤギルは今日毛を刈る予定の分だけ囲いに残して、残りは放牧に出している。結構暇なのだが、私の小さな身体では他にお手伝いが出来そうにない。毛を刈り終わったヤギルを連れて囲いに戻った時に念話が届いた。
<< やあ、イルちゃん元気かな。>>
「魔導士ってノワール王国に居るんじゃないのか?」
「ヤランは知らないのか、まあ今までは、俺達遊牧の民には関係の無い話だったからな。今まで魔導士は3人居たんだよ、ノワール王国に居るのが東の魔導士、ハルマン王国の女王が西の魔導士、最初は世界に魔導士はこのふたりだけだったんだ。それが5年くらい前に南の魔導士っていうが現れたらしい。もっとも、それでも俺達には関係なかったんだが、今度は草原の魔導士だ。この草原のどこかに居るらしい。ひょっとしたら俺達と同じ遊牧の民かもしれないからな、関係ないとは言えなくなった。」
「それで、草原の魔導士ってどんな奴なんだ?」
とヤラン兄さんが驚きを顔に出さず、ソラさんに話を振る。
「太陽神ギル様の神託にあった北の砂漠の脅威を除いてくれたのが草原の魔導士らしい。何百という地竜を退治してくれたらしいよ。しかも、女だとさ。どうだ興味はないか? ひょっとしたらこの近くに住んでいるのかもしれないんだぞ。絶世の美女と言うこともあり得る。ひょっとしたらヤランの嫁さんになってくれるかもしれないぞ。」
それは無理です。ヤラン兄さんは実の兄ですから。それにしてもララさん! 何というお騒がせな宣言をするんですか! せめて本人に断ってからにして下さい。地竜退治が私ひとりの手柄になっているし、心臓に悪いです。
ソラさんは、草原の魔導士が目の前に居るとは夢にも思わず話を続ける。
「実は、3~4ヶ月前にトワール王国の魔法使い達が草原の中央からとんでもない大きさの魔力が発せられるのを感知したらしい。東の魔導士が高齢を理由に参謀の職を引退して、王の命令で後任を探している所だったから色めき立ったらしいよ。必死で魔力の持ち主を探していたところにハルマン王国の女王の宣告があった訳だ。たぶん草原で大きな魔力を発したのも草原の魔導士だろうと言うことに成った。女王の宣言は草原の魔導士は自分の国の物だと宣言した様な物だから、後手に回ったトワール王国の魔法使い達は悔しがっているらしい。下手に草原の魔導士を自分達の国に勧誘したら、大国ハルマン王国の魔導士を奪ったとして戦争になりかねないからな。」
ゲッ、私はトワール王国に探されていた訳か。魔力を感知されたのは、姉さんの結婚式に北の部族が攻めて来た時のことだろうな。あの時は後先考えずに、魔力遮断結界も解除して全力の魔力を放った。ひょっとしたら、ララさんの宣言は私をトワール王国から守るため? そう考えるとララさんが急いで宣言を出したのにも納得がいく。夕食後すぐにララ王女に念話を飛ばしてみるが、予想通り繋がらない。私の念話の距離は100キロメートルが限度、ハルマン王国は遠すぎるのだ。
その夜、夕食の片付けをしている時に姉さんが私の耳元で囁いた。
「母さんから聞いたわ、イルが草原の魔導士なんですって。それで父さんの仇も取ってくれたってね。ありがとうね。私もイルを誇りに思う。」
母さんが言っちゃったか。まあ、姉さんになら大丈夫だ。
「ありがとう。でも、魔導士なんてララ女王が勝手に言っているだけ。私はトルク—ド族の娘で、ラナイ父さんとマイラ母さんの子供で、アイラ姉さんとヤラン兄さんの妹。それが私なの。」
と私が言うと、アイラ姉さんはしばらく私の言葉の意味を考えていた様だが、一瞬の後、笑顔になって言ってくれた。
「そう... そうか。分かった。それでこそ私の大好きなイルだわ。これからも母さんと兄さんのことをよろしくね。もちろん、魔導士のことはソラにも秘密にしておくから安心してね。」
「うん、ありがとう。」
と私はお礼を言う。姉さんは分かってくれた。魔導士なんて呼ばれても少しも嬉しくない。そんなことより家族と一緒に居られる方が100倍も大切なんだ。
翌朝の朝食後からヤギルの毛刈りを皆で行う。毛刈りはふたり一組で行い、ひとりがヤギルの角を持って動かない様に押え付け、もう一人が専用のバリカンで毛を刈って行く。アイラ姉さんとソラさん、マイラ母さんとヤラン兄さんがペアになって作業する。ヤギルはおとなしい動物だが、さすがに毛を刈られるのは嫌がるから中々大変な作業だ。毛を刈られたヤギルは一回りも二回りも小さくなった感じで、恥ずかしそうにしている様に見える。きっと恥ずかしいから嫌がるのだろう。それでも4人とも慣れたもので、所要時間は1頭当たり30分くらいだ。うちのヤギルは112頭、このうち生まれたてのヤギルは対象外だとしても100頭くらいは刈らないといけない。1時間に4頭として25時間かかる計算だ。もちろん休憩も入れないといけないし、毛刈り以外にも仕事がある。毛刈りの作業が終わるには5 ~ 6日かかるだろう。私は毛を刈り終わったヤギルを囲いに戻し、次のヤギルを連れて来るのが役目だ。ヤギルは今日毛を刈る予定の分だけ囲いに残して、残りは放牧に出している。結構暇なのだが、私の小さな身体では他にお手伝いが出来そうにない。毛を刈り終わったヤギルを連れて囲いに戻った時に念話が届いた。
<< やあ、イルちゃん元気かな。>>
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