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40. ラナさんの求婚 - 3
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それから皆でカマルさんの話を聞いた。最近、大草原に点在するオアシスの町を根城とする盗賊たちが、内戦の混乱に乗じてひと稼ぎしようとトワール王国に向かっているらしい。トワール王国へのルートは大草原を通ることになる。そのためカマルさんの行商もやりにくくなっており、盗賊の通りそうなところを避けながら遠回りで行商をしていたが、今日はついに盗賊に見つかってしまい、追いつかれそうになったので荷馬車を捨て、ラクダルに乗って逃げていたところに私達に助けられたと言うことらしい。今年カマルさんが私達の居住地に来るのが遅かったのはそういう理由だった様だ。それにしても、盗賊も機を見るに敏と言うか、情報収集能力に長けていると言うか、ある意味感心してしまう。もっとも人の災難に付け込む様なやり方は許せないが。
その後、男達が盗賊への対処法について議論を始めたので、私は一足早く家族の元へ帰らせてもらった。戻って母さんにカマルさんが無事だったことを伝える。兄さんが無事なのは、さっき私を呼びに来たから分かっているはずだ。しばらく待っていると兄さんが帰ってきて、盗賊を討伐に行くことになったと皆に伝える。今度こそ戦闘になる。皆の顔に緊張が走る。盗賊がこのまま逃げてくれれば良いが、もし襲ってきたら私達はヤギルを守りながら戦わねばならず不利になる。それならばこちらから先に攻撃した方が良いと決まったとの事。緊張した面持ちのラナさんの頬にキスをして、兄さんは再び出かけて行った。
「大丈夫。カマルさんの話では盗賊の数は20人くらいで、兄さん達と同じくらいよ。同じ数なら兄さん達が負けるわけがないわ。」
とラナさんを安心させるために言う。確かに負けないだろうけど、負けないのと犠牲者が出ないのは別だ。誰かが敵の矢に当たる可能性は否定できない。母さんも心配そうだ。私が一緒に行けば皆を守れるという私の提案は、兄さんからも母さんからも否認された。子供を戦いの場に連れて行く訳には行かないと言われる。でも正直、私だって心配なのだ。
じりじりしながら兄さん達の帰りを待つ。その時遠くから ドォーン、ドォーンという爆発音が連続して聞こえた。私とラナさんは顔を見合わせた。もしかして火魔法での攻撃音?
「母さん、私行って来る。」
と真剣な表情で母さんを見ると、何かあると伝わった様で。「気を付けるのよ」と言ってくれた。
「イル様、待って下さい、私も行きます。連れて行ってください。」
とラナさんが切羽詰った表情で言って来る。きっと兄さんが心配なんだろうと思い了承する。その間に、母さんが毛布を我家の荷物に被せた。
「ふたりとも毛布の陰に隠れて、そこなら姿が消えても見られないわ。」
と言う。母さんのアイディアに感謝して、ラナさんと毛布の陰に潜り込んでから瞬間移動した。
「キャ~~~~~!」
とラナさんの悲鳴が響き渡る。私が転移したのは戦闘が行われている地点の100メートル上空だ。まさか空中に移動するとは思ってなかったのだろう、ラナさんにはショックが大きかったようだ。空を飛ぶのも初めてだろうしね。
「静かに! 敵に気付かれる。」
と私が言うと、あわてて口を手で押さえた。気持ちを切り替えた様で、
「申し訳ありませんでした。」
と謝って来る。それに頷き、私は周りを俯瞰しながら状況の把握に躍起になっていた。とにかく、先ほどの音の正体を見つけ出さなければならない。
まず、一族の男達が盗賊の一団に追いかけられている、騎馬での戦いでこの状況は絶対的に不利だ。追いかける側は正面に向かって矢を射ることが出来るのに対し、逃げる側は後方に矢を射らねばならず命中精度が極端に下がる。当然一族の男達はそんなこと百も承知だろうから、そうせざるを得ない理由があったのだろう。幸い盗賊達の弓の腕は大したことが無い様で、見当違いの方向に飛んで行く矢が続出している。馬上から弓を射るのは難しいのだ。だがそれでもこの状況が不利なのには違い無い。
そこまで考えて漸く気付いた。男達の数が足りない! 既に負傷した人が居る! 血の気が引く思いで男達が逃げているのと逆方向に目を向けると、地面が大きくえぐれている場所が2カ所ある。強力な火魔法での攻撃の跡だ! そしてその傍に横たわる人がふたり。すぐに回復魔法を掛けないとまずい。そちらに向かおうとした私にラナさんが声を掛けた。
「イル様、私をヤラン様の所へ連れて行って下さい。盗賊達の追撃を防ぎます。」
そうだ、幸いヤラン兄さんの無事な姿が男達の一団の中にあることは確認している。だが、この状況ではいつ矢に当たるか分からない。両方を同時に助けるには二手に分かれるのは良い考えかもしれない。
「分かった。そっちは任せるね。」
と言うとラナさんが頷く。私はヤラン兄さんに念話を飛ばしながら近づいた。
<< 兄さん、ラナさんを受け取って! >>
と念話を送って、兄さんの返事も待たず、重力魔法でラナさんを馬に乗って走る兄さんの前に放り投げると、兄さんはラナさんを両手でしっかりキャッチしてくれた。それを確認した私は、倒れている人達の傍に瞬間移動する。転移が終わるのと同時に防護結界を張る。予想通り、待つ間もなくファイヤーボールが飛んで来て結界に当たって弾けた。ファイヤーボールは何度も飛んで来るが、威力は地竜の炎のブレスに比べれば大したことは無い。結界で十分に防ぐことが出来る。倒れているのはトマさんと、ランさんだ。あれ? 怪我はしているが火傷はない、服も焦げていない。ふたりともファイヤーボールの直撃は受けていない様だ。地面が爆発したときに吹き飛ばされて地面に叩きつけられたと言うところか? 骨くらい幾つか折れているかもしれないが。
「イルちゃん! 何故ここに?」
とランさんがかすれ声で聞いてくる。
「話は後です。とにかく治療します。」
と言ってから、回復魔法を発動すると、直ぐにふたりとも起き上がった。
「敵の攻撃を結界で防いでいますので、私から離れないで下さいね。」
「しかし...」
結界で防いでいるとはいえ、ファイヤーボールが目の前で弾けるのはかなりの迫力だ。逃げ出したい気持ちは分かる。
「絶対に大丈夫ですから! それに、今から反撃します。」
と出来る限りの大声で叫ぶ。結界の外に出たら本当に危ないのだ。直撃を受けたら即死だろう。
その後、男達が盗賊への対処法について議論を始めたので、私は一足早く家族の元へ帰らせてもらった。戻って母さんにカマルさんが無事だったことを伝える。兄さんが無事なのは、さっき私を呼びに来たから分かっているはずだ。しばらく待っていると兄さんが帰ってきて、盗賊を討伐に行くことになったと皆に伝える。今度こそ戦闘になる。皆の顔に緊張が走る。盗賊がこのまま逃げてくれれば良いが、もし襲ってきたら私達はヤギルを守りながら戦わねばならず不利になる。それならばこちらから先に攻撃した方が良いと決まったとの事。緊張した面持ちのラナさんの頬にキスをして、兄さんは再び出かけて行った。
「大丈夫。カマルさんの話では盗賊の数は20人くらいで、兄さん達と同じくらいよ。同じ数なら兄さん達が負けるわけがないわ。」
とラナさんを安心させるために言う。確かに負けないだろうけど、負けないのと犠牲者が出ないのは別だ。誰かが敵の矢に当たる可能性は否定できない。母さんも心配そうだ。私が一緒に行けば皆を守れるという私の提案は、兄さんからも母さんからも否認された。子供を戦いの場に連れて行く訳には行かないと言われる。でも正直、私だって心配なのだ。
じりじりしながら兄さん達の帰りを待つ。その時遠くから ドォーン、ドォーンという爆発音が連続して聞こえた。私とラナさんは顔を見合わせた。もしかして火魔法での攻撃音?
「母さん、私行って来る。」
と真剣な表情で母さんを見ると、何かあると伝わった様で。「気を付けるのよ」と言ってくれた。
「イル様、待って下さい、私も行きます。連れて行ってください。」
とラナさんが切羽詰った表情で言って来る。きっと兄さんが心配なんだろうと思い了承する。その間に、母さんが毛布を我家の荷物に被せた。
「ふたりとも毛布の陰に隠れて、そこなら姿が消えても見られないわ。」
と言う。母さんのアイディアに感謝して、ラナさんと毛布の陰に潜り込んでから瞬間移動した。
「キャ~~~~~!」
とラナさんの悲鳴が響き渡る。私が転移したのは戦闘が行われている地点の100メートル上空だ。まさか空中に移動するとは思ってなかったのだろう、ラナさんにはショックが大きかったようだ。空を飛ぶのも初めてだろうしね。
「静かに! 敵に気付かれる。」
と私が言うと、あわてて口を手で押さえた。気持ちを切り替えた様で、
「申し訳ありませんでした。」
と謝って来る。それに頷き、私は周りを俯瞰しながら状況の把握に躍起になっていた。とにかく、先ほどの音の正体を見つけ出さなければならない。
まず、一族の男達が盗賊の一団に追いかけられている、騎馬での戦いでこの状況は絶対的に不利だ。追いかける側は正面に向かって矢を射ることが出来るのに対し、逃げる側は後方に矢を射らねばならず命中精度が極端に下がる。当然一族の男達はそんなこと百も承知だろうから、そうせざるを得ない理由があったのだろう。幸い盗賊達の弓の腕は大したことが無い様で、見当違いの方向に飛んで行く矢が続出している。馬上から弓を射るのは難しいのだ。だがそれでもこの状況が不利なのには違い無い。
そこまで考えて漸く気付いた。男達の数が足りない! 既に負傷した人が居る! 血の気が引く思いで男達が逃げているのと逆方向に目を向けると、地面が大きくえぐれている場所が2カ所ある。強力な火魔法での攻撃の跡だ! そしてその傍に横たわる人がふたり。すぐに回復魔法を掛けないとまずい。そちらに向かおうとした私にラナさんが声を掛けた。
「イル様、私をヤラン様の所へ連れて行って下さい。盗賊達の追撃を防ぎます。」
そうだ、幸いヤラン兄さんの無事な姿が男達の一団の中にあることは確認している。だが、この状況ではいつ矢に当たるか分からない。両方を同時に助けるには二手に分かれるのは良い考えかもしれない。
「分かった。そっちは任せるね。」
と言うとラナさんが頷く。私はヤラン兄さんに念話を飛ばしながら近づいた。
<< 兄さん、ラナさんを受け取って! >>
と念話を送って、兄さんの返事も待たず、重力魔法でラナさんを馬に乗って走る兄さんの前に放り投げると、兄さんはラナさんを両手でしっかりキャッチしてくれた。それを確認した私は、倒れている人達の傍に瞬間移動する。転移が終わるのと同時に防護結界を張る。予想通り、待つ間もなくファイヤーボールが飛んで来て結界に当たって弾けた。ファイヤーボールは何度も飛んで来るが、威力は地竜の炎のブレスに比べれば大したことは無い。結界で十分に防ぐことが出来る。倒れているのはトマさんと、ランさんだ。あれ? 怪我はしているが火傷はない、服も焦げていない。ふたりともファイヤーボールの直撃は受けていない様だ。地面が爆発したときに吹き飛ばされて地面に叩きつけられたと言うところか? 骨くらい幾つか折れているかもしれないが。
「イルちゃん! 何故ここに?」
とランさんがかすれ声で聞いてくる。
「話は後です。とにかく治療します。」
と言ってから、回復魔法を発動すると、直ぐにふたりとも起き上がった。
「敵の攻撃を結界で防いでいますので、私から離れないで下さいね。」
「しかし...」
結界で防いでいるとはいえ、ファイヤーボールが目の前で弾けるのはかなりの迫力だ。逃げ出したい気持ちは分かる。
「絶対に大丈夫ですから! それに、今から反撃します。」
と出来る限りの大声で叫ぶ。結界の外に出たら本当に危ないのだ。直撃を受けたら即死だろう。
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