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66. ラナさんのお母さん救出作戦 - 15
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そんなことを考えながら歩いていると、後から「イル様~」と呼ぶ声が聞こえた。ラナさんだ。振り向くと、ラナさんとドリアさん、それにドレークさんの3人がこちらに向かって歩いて来る。私も手を振ってラナさん達の到着を待つ。3人とも笑顔だから、ドリアさんの引渡は問題なく終わったのだろう。待っているとドリアさんが最初に走り寄ってきて深々と頭を下げた。
「イル様、私を買い戻すためにドレークさんにお金を貸していただいたそうでありがとうございました。感謝いたします。それにあの農園をドレークさんが購入するお金も貸して頂けるとお聞きしました。あの農園がドレークさんの物に成るなんて、私達奴隷にとっては夢の様な話でございます。」
「気にしないで下さい。私達遊牧民には大金を持っていても使い道がありません。役に立つ使い方が出来るなら私も嬉しいです。」
そこまで話をしたとき、少し遅れて到着したラナさんが私の耳元で囁いた。
「イル様、お母さんの左手をご覧ください。」
そう言われてドリアさんの左手を見ると、小指に指輪が光っている。
「ドレークさんが母に指輪を贈ったんです。」
とラナさんが言う。それはドレークさんがドリアさんに結婚を申し込んだと言うこと。そしてドリアさんがその指輪を身に着けていると言うことは、ドレークさんの求婚を受け入れたということだ。
「わぁ! ドレークさん、ドリアさんおめでとうございます。」
嬉しくなって大きな声でそう言うと、ドリアさんが満面の笑みを浮かべて「ありがとうございます」と言うのに対し、ドレークさんは恥ずかしそうな顔で「まあな...」と言った。
「イル様、あの指輪は、本当はドレークさんが軍隊時代に貰った勲章の紐を通す部分を引きちぎった物なんです。『今は指輪を買う金がないから』と言って目の前で大切にしていた勲章から輪っかをちぎってくれたんです。」
とラナさんが追加すると、ドレークさんがますます恥ずかしそうな顔になる。本物の指輪じゃないから小指にしか入らなかったんだな。ドレークさんはドリアさんを買い取るのに持ち金を全部使ってしまったもんね。でも大切にしていた勲章なら、どこかの店で買った指輪より嬉しいかもしれない。
幸せそうなふたりを見ているとこちらまで楽しくなるが、ドレークさんとドリアさんは農園に帰ると言うので途中で別れる。ちなみに、ドレークさんは農園が新しい持ち主の物になるまでは奴隷監督を続けることになっているので、まだ奴隷監督の小屋に滞在できるらしい。「金が無いから寝る所があるのはありがたいよ。まだ今月分の給与ももらってないしな。」とドレークさんが言っていた。さらにトスカさんが「書類の準備もあるし、知り合いの家に泊めてもらうよ。また連絡するね。」と言って瞬間移動で去って行った。どうせ若くて美人の知り合いの所に止めてもらうのだろう。私とラナさんは宿に向かう。少なくとも農園の購入は明日以降に成りそうだから、もう少しこの町に留まる必要がある。
宿の前まで戻ると、人だかりがしている。何だろう? と思いながら近づく。宿の入り口の前に兵士がふたり、まるでとおせんぼうをする様に立っている。入り口の周りに居るのはこの宿の宿泊客の様だ。宿の主人が彼らにしきりに頭を下げているのが見える。
「おい! 前金を払っているのに何で追い出されなければならないんだ!」
「申し訳ありません。先ほどから説明しております様に、この宿は王妃様の宿泊所に指定されましたので、宿泊客の皆様には速やかにご退出願うようにとのお達しなのです。もちろん前払いして頂いた料金はお返しいたします。それに加えて王妃様より、ご迷惑をお掛けする宿泊客の皆様に慰謝料をお渡しする様に承っております。」
「急にそんなことを言われても困るじゃないか。わずかな慰謝料なんて貰っても、これから別の宿を探さないといけないことを考えると割が合わんぞ。」
「それが、王妃様のご好意で、お一人当たり金貨1枚をお渡しする様にと...。」
「金貨1枚だって!? 間違いじゃないよな?」
「間違いではございません。誠に気前の良いお方の様でして。」
「分かった。そういうことなら文句は無い。むしろ儲かり過ぎて悪いくらいだよ。」
「ご理解頂きありがとうございます。これに懲りずに、今後とも当宿をよろしくお願い申し上げます。」
「おう、そうするよ。」
この国の偉い人がこの宿に宿泊するから、他の宿泊客は出て行けと言うことらしい。慰謝料として金貨1枚を出すらしいが、少々横暴だな。もっとも、宿泊客はお金を貰えるので喜んでいる人が多いようだが。
しばらく様子を見ていると、宿の主人が私とラナさんに気付いた様だ。
「お客様方、大変申し訳ありません。この宿は王妃様の宿泊所に指定されました。つきましては前金の残りと、慰謝料をお支払させていただきますので、退室をお願いできませんでしょうか。部屋にありましたお客様の荷物はこちらでお預かりさせていただいております。」
「分かりました。それで結構です。ところで王妃様はどうしてこの町に来られたのですか?」
と尋ねてみた。宿の対応からみて急にこの宿に泊まることに成ったに違いない。
「それが、昨日顕現されました女神様をお探しに来られた様でして...。」
なんと! 目的は私だった! 急いでラナさんに宿の主人からの返金を受け取ってもらい、その場を後にした。
「ラナさんどうしよう? ラナさんが良ければこのまま居住地に帰って良いかな? もちろんドレークさんに農園を買い取るお金を渡してからだけど。」
本当はドレークさんが農園を買い取るまで見届けたかったが、国が動き出したとなると、うかうかして居られない。見つかったら困ったことになるのが目に見えるようだ。
「分かりました、ただ、お母さんに別れの挨拶をして良いですか?」
「もちろんよ、ドレークさんに農園を買い取るお金を渡さないといけないしね。」
その後は農園に向かっているドレークさんとドリアさんに瞬間移動で追いつき、農園を買い取るお金を渡した、大金貨20枚だ。「これで足りるはずです。余った分は農園の運営費用にして下さい。それでも余ったら1年後に利益の半分と合わせて返してもらえば良いですから。」と言っておいた。トスカさんに念話で確認した農園の買い取り金額は大金貨17枚と金貨50枚なので十分なはずだ。農園を買い取った後でも何をするにも経費は掛かる、利益は生産した作物を売却するまで得られないのだからお金は合った方が良いだろう。
私がドレークさんと話をしている間にラナさんとドリアさんの別れの挨拶も終わった様だ。私は改めてドレークさんとドリアさんに「また来ますね」と挨拶して居住地に向かって瞬間移動した。ふたりが幸せになります様にと祈る。今度はヤラン兄さんも連れて挨拶に行こう。簡単だ、なにせ帰りは1回の瞬間移動で居住地まで戻れたのだから。
「イル様、私を買い戻すためにドレークさんにお金を貸していただいたそうでありがとうございました。感謝いたします。それにあの農園をドレークさんが購入するお金も貸して頂けるとお聞きしました。あの農園がドレークさんの物に成るなんて、私達奴隷にとっては夢の様な話でございます。」
「気にしないで下さい。私達遊牧民には大金を持っていても使い道がありません。役に立つ使い方が出来るなら私も嬉しいです。」
そこまで話をしたとき、少し遅れて到着したラナさんが私の耳元で囁いた。
「イル様、お母さんの左手をご覧ください。」
そう言われてドリアさんの左手を見ると、小指に指輪が光っている。
「ドレークさんが母に指輪を贈ったんです。」
とラナさんが言う。それはドレークさんがドリアさんに結婚を申し込んだと言うこと。そしてドリアさんがその指輪を身に着けていると言うことは、ドレークさんの求婚を受け入れたということだ。
「わぁ! ドレークさん、ドリアさんおめでとうございます。」
嬉しくなって大きな声でそう言うと、ドリアさんが満面の笑みを浮かべて「ありがとうございます」と言うのに対し、ドレークさんは恥ずかしそうな顔で「まあな...」と言った。
「イル様、あの指輪は、本当はドレークさんが軍隊時代に貰った勲章の紐を通す部分を引きちぎった物なんです。『今は指輪を買う金がないから』と言って目の前で大切にしていた勲章から輪っかをちぎってくれたんです。」
とラナさんが追加すると、ドレークさんがますます恥ずかしそうな顔になる。本物の指輪じゃないから小指にしか入らなかったんだな。ドレークさんはドリアさんを買い取るのに持ち金を全部使ってしまったもんね。でも大切にしていた勲章なら、どこかの店で買った指輪より嬉しいかもしれない。
幸せそうなふたりを見ているとこちらまで楽しくなるが、ドレークさんとドリアさんは農園に帰ると言うので途中で別れる。ちなみに、ドレークさんは農園が新しい持ち主の物になるまでは奴隷監督を続けることになっているので、まだ奴隷監督の小屋に滞在できるらしい。「金が無いから寝る所があるのはありがたいよ。まだ今月分の給与ももらってないしな。」とドレークさんが言っていた。さらにトスカさんが「書類の準備もあるし、知り合いの家に泊めてもらうよ。また連絡するね。」と言って瞬間移動で去って行った。どうせ若くて美人の知り合いの所に止めてもらうのだろう。私とラナさんは宿に向かう。少なくとも農園の購入は明日以降に成りそうだから、もう少しこの町に留まる必要がある。
宿の前まで戻ると、人だかりがしている。何だろう? と思いながら近づく。宿の入り口の前に兵士がふたり、まるでとおせんぼうをする様に立っている。入り口の周りに居るのはこの宿の宿泊客の様だ。宿の主人が彼らにしきりに頭を下げているのが見える。
「おい! 前金を払っているのに何で追い出されなければならないんだ!」
「申し訳ありません。先ほどから説明しております様に、この宿は王妃様の宿泊所に指定されましたので、宿泊客の皆様には速やかにご退出願うようにとのお達しなのです。もちろん前払いして頂いた料金はお返しいたします。それに加えて王妃様より、ご迷惑をお掛けする宿泊客の皆様に慰謝料をお渡しする様に承っております。」
「急にそんなことを言われても困るじゃないか。わずかな慰謝料なんて貰っても、これから別の宿を探さないといけないことを考えると割が合わんぞ。」
「それが、王妃様のご好意で、お一人当たり金貨1枚をお渡しする様にと...。」
「金貨1枚だって!? 間違いじゃないよな?」
「間違いではございません。誠に気前の良いお方の様でして。」
「分かった。そういうことなら文句は無い。むしろ儲かり過ぎて悪いくらいだよ。」
「ご理解頂きありがとうございます。これに懲りずに、今後とも当宿をよろしくお願い申し上げます。」
「おう、そうするよ。」
この国の偉い人がこの宿に宿泊するから、他の宿泊客は出て行けと言うことらしい。慰謝料として金貨1枚を出すらしいが、少々横暴だな。もっとも、宿泊客はお金を貰えるので喜んでいる人が多いようだが。
しばらく様子を見ていると、宿の主人が私とラナさんに気付いた様だ。
「お客様方、大変申し訳ありません。この宿は王妃様の宿泊所に指定されました。つきましては前金の残りと、慰謝料をお支払させていただきますので、退室をお願いできませんでしょうか。部屋にありましたお客様の荷物はこちらでお預かりさせていただいております。」
「分かりました。それで結構です。ところで王妃様はどうしてこの町に来られたのですか?」
と尋ねてみた。宿の対応からみて急にこの宿に泊まることに成ったに違いない。
「それが、昨日顕現されました女神様をお探しに来られた様でして...。」
なんと! 目的は私だった! 急いでラナさんに宿の主人からの返金を受け取ってもらい、その場を後にした。
「ラナさんどうしよう? ラナさんが良ければこのまま居住地に帰って良いかな? もちろんドレークさんに農園を買い取るお金を渡してからだけど。」
本当はドレークさんが農園を買い取るまで見届けたかったが、国が動き出したとなると、うかうかして居られない。見つかったら困ったことになるのが目に見えるようだ。
「分かりました、ただ、お母さんに別れの挨拶をして良いですか?」
「もちろんよ、ドレークさんに農園を買い取るお金を渡さないといけないしね。」
その後は農園に向かっているドレークさんとドリアさんに瞬間移動で追いつき、農園を買い取るお金を渡した、大金貨20枚だ。「これで足りるはずです。余った分は農園の運営費用にして下さい。それでも余ったら1年後に利益の半分と合わせて返してもらえば良いですから。」と言っておいた。トスカさんに念話で確認した農園の買い取り金額は大金貨17枚と金貨50枚なので十分なはずだ。農園を買い取った後でも何をするにも経費は掛かる、利益は生産した作物を売却するまで得られないのだからお金は合った方が良いだろう。
私がドレークさんと話をしている間にラナさんとドリアさんの別れの挨拶も終わった様だ。私は改めてドレークさんとドリアさんに「また来ますね」と挨拶して居住地に向かって瞬間移動した。ふたりが幸せになります様にと祈る。今度はヤラン兄さんも連れて挨拶に行こう。簡単だ、なにせ帰りは1回の瞬間移動で居住地まで戻れたのだから。
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