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第1章 惑星ルーテシア編
31. お義父様
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夕方になりそろそろ終了なかと考えていると、教会の方から次の患者さんで最後ですとの連絡があった。待っていると中年の男性が入室してくる。驚いたことに人間族の男性だ。朝には待合室にいなかったから、後から到着したのだろう。男性は部屋に入るなり私の前に跪き、
「やっと会えました。惑星ルーテシアの新しい女神様ですね?」
と尋ねてきた。
私は驚きのあまり、即座に椅子から立ち上がり、杖を構えていつでも魔法が発動できる体制を取った。この男性が只者でないのは明白だ。だって惑星ルーテシアと言ったのだ。この星の人達は、自分達の世界が球形であることすら知らない。まして自分達の星が恒星の周りを回る複数の惑星のひとつであるなんて、アレフさんでも気付いているかどうかである。
「あなたは、何者ですか?」
と私は尋ねる。少し声が震えていたかもしれない。私は行方不明になっている上級神だ。神界は私を探しているはずなのだ、だけど見つかったらこの星に居られなくなる可能性は高い。心の底ではいつも不安に思っていた。アレフさんに女神に過度に依存しない世界を希望したのも、その不安が心にあったからかもしれない。
「安心してください。私は味方です。あなたにお伝えしたいことがあって参りました。」
そこまで言ってから、男性はとまどった様な表情でつぶやいた。
「...ハルトか?」
どうやら私の後で立っているハルちゃんに向けての言葉の様だ。
「父さん??? でも父さんは死んだって...。」
「やはりハルトか。面影がある。」
「なぜ....」
「私が死んだことになっているのは、ルーテシアと相談した結果だ。私の事は極力秘密にする必要があったからな。」
「母さんも知ってたの。」
「ああ、すまなかった。だが、大げさではなくこの銀河の命運が掛かっているんだ。」
え~~~、である。ハルちゃんのお父様???
感激の対面になるかと思いきや、久々に会ったであろう男性ふたりは何かぎこちない。 ここでは話もできないからと、あわてて神父さんにお別れの挨拶をし。夕食のお誘いを振り切って私達は交易都市ギネスにある私とハルちゃんの自宅へ瞬間移動した。
「おかえりなさいませ。」
家ではエリスさんが出迎えてくれた。彼女は神殿から一緒に来てくれたんだ。私達が留守の間も現地で雇用した人達のリーダーとして、家の面倒を見てくれている。
エリスさんにお茶を頼み客室に入る。お茶を持ってきてくれたエリスさんが退出すると、私はおもむろにお義父様に向き直った。
「それではお話を伺ってもよろしいですか。」
と切り出す。お義父様は頷いた。
「どこから話しましょうか...。トモミ様は神界と魂の輪廻の事をどこまでご存じですか?」
「えっと、あまり詳しくは知りません。神様には下級神、中級神、上級神と3階級の神様がいらして、この宇宙に生命と高度な文化が育まれる様働かれていること。魂は身体が死んでも滅びることなく、別の身体で生まれ変わること。また、それを繰り返すことで魂が進化し、別のより高度な生物の魂になれること。たとえば微生物の魂も転生輪廻を繰り返すことにより、より高度な生物の魂となれること。くらいでしょうか。」
「そうですね。トモミ様のおっしゃられたことは間違いではありません。基本的に下級神は惑星ひとつを管理し、中級神はひとつの銀河系を100分の1に分けたそれぞれの部分を担当し、担当区域内にいる下級神の管理監督を行います。上級神はひとつの銀河の中級神全員の管理監督を行い、また担当の銀河系全体についての責任者でもあります。すなわち、ひとつの銀河系にはひとりの上級神、100人の中級神、生命の発生している惑星の数だけの下級神がいることになります。」
「そうすると銀河の数だけ上級神が居るんですね。」
そうか、上級神様はアンドロメダ星雲とか、M何ちゃら星雲とかの銀河毎にひとりずついらっしゃるんだ。
「その通りです。だが、上級神の更に上に超越者と呼ばれる神が居られるのはあまり知られていません。超越者はすべての上級神を管理監督されています。」
こうして説明を聞いてみると、神様の世界って階級社会だな。ハルちゃんが以前言っていた通りだ。
「ここまでは単なる説明です。問題は、1,000年ほど前ある上級神から超越者について驚くべき情報が発信されたことに端を発します。その上級神によれば、超越者はこの次元の神ではなく、私達より高次の世界から来ていると。それだけでなく、私達の世界の成長した魂を収穫し、何らかの目的に利用するために自らの世界に送っているとのこと、収穫したことにより足りなくなった魂の数を誤魔化すために、魂の種をばらまいていることが発信されました。 魂の種とは一番下級の魂にすらなっていない、まさにこれから魂になる種といっても良いものです。」
「いったい何のために魂を送っているのですか?」
「そこまでの情報は発信されませんでした。」
「ただ、この情報を発信した上級神は、この後すぐ行方が分からなくなりました。また、この発信を受け超越者について調べようと行動を起こした神達も同様に行方不明になりました。」
なんと、行方不明者続出か。超越者って何か怖いな。
「そのため、神々の間での超越者についての噂は立ち消えになりましたが、一部の神達は超越者に隠れて秘密裡に調査を続けました。そして、行方不明になった上級神の発信した情報は間違いないと確信したのです。超越者は私達の世界に魂の種を播き、成長した魂を刈り取っているのではないか。神々は超越者の畑仕事を補佐する農奴、あるいは牧畜に例えれば、超越者は牧場主、神々は彼の使う牧羊犬に過ぎないのではないかと推測されました。神々は超越者に利用させるために魂を育てているのだと。」
「たいへんじゃないですか!」
驚いた、刈り取り収穫された魂がどうなるのか分からないが、なんとなく屠殺場にドナドナされる子牛の映像が頭に浮かぶ。」
「それでどうするんですか、超越者と戦うんですか?」
「やっと会えました。惑星ルーテシアの新しい女神様ですね?」
と尋ねてきた。
私は驚きのあまり、即座に椅子から立ち上がり、杖を構えていつでも魔法が発動できる体制を取った。この男性が只者でないのは明白だ。だって惑星ルーテシアと言ったのだ。この星の人達は、自分達の世界が球形であることすら知らない。まして自分達の星が恒星の周りを回る複数の惑星のひとつであるなんて、アレフさんでも気付いているかどうかである。
「あなたは、何者ですか?」
と私は尋ねる。少し声が震えていたかもしれない。私は行方不明になっている上級神だ。神界は私を探しているはずなのだ、だけど見つかったらこの星に居られなくなる可能性は高い。心の底ではいつも不安に思っていた。アレフさんに女神に過度に依存しない世界を希望したのも、その不安が心にあったからかもしれない。
「安心してください。私は味方です。あなたにお伝えしたいことがあって参りました。」
そこまで言ってから、男性はとまどった様な表情でつぶやいた。
「...ハルトか?」
どうやら私の後で立っているハルちゃんに向けての言葉の様だ。
「父さん??? でも父さんは死んだって...。」
「やはりハルトか。面影がある。」
「なぜ....」
「私が死んだことになっているのは、ルーテシアと相談した結果だ。私の事は極力秘密にする必要があったからな。」
「母さんも知ってたの。」
「ああ、すまなかった。だが、大げさではなくこの銀河の命運が掛かっているんだ。」
え~~~、である。ハルちゃんのお父様???
感激の対面になるかと思いきや、久々に会ったであろう男性ふたりは何かぎこちない。 ここでは話もできないからと、あわてて神父さんにお別れの挨拶をし。夕食のお誘いを振り切って私達は交易都市ギネスにある私とハルちゃんの自宅へ瞬間移動した。
「おかえりなさいませ。」
家ではエリスさんが出迎えてくれた。彼女は神殿から一緒に来てくれたんだ。私達が留守の間も現地で雇用した人達のリーダーとして、家の面倒を見てくれている。
エリスさんにお茶を頼み客室に入る。お茶を持ってきてくれたエリスさんが退出すると、私はおもむろにお義父様に向き直った。
「それではお話を伺ってもよろしいですか。」
と切り出す。お義父様は頷いた。
「どこから話しましょうか...。トモミ様は神界と魂の輪廻の事をどこまでご存じですか?」
「えっと、あまり詳しくは知りません。神様には下級神、中級神、上級神と3階級の神様がいらして、この宇宙に生命と高度な文化が育まれる様働かれていること。魂は身体が死んでも滅びることなく、別の身体で生まれ変わること。また、それを繰り返すことで魂が進化し、別のより高度な生物の魂になれること。たとえば微生物の魂も転生輪廻を繰り返すことにより、より高度な生物の魂となれること。くらいでしょうか。」
「そうですね。トモミ様のおっしゃられたことは間違いではありません。基本的に下級神は惑星ひとつを管理し、中級神はひとつの銀河系を100分の1に分けたそれぞれの部分を担当し、担当区域内にいる下級神の管理監督を行います。上級神はひとつの銀河の中級神全員の管理監督を行い、また担当の銀河系全体についての責任者でもあります。すなわち、ひとつの銀河系にはひとりの上級神、100人の中級神、生命の発生している惑星の数だけの下級神がいることになります。」
「そうすると銀河の数だけ上級神が居るんですね。」
そうか、上級神様はアンドロメダ星雲とか、M何ちゃら星雲とかの銀河毎にひとりずついらっしゃるんだ。
「その通りです。だが、上級神の更に上に超越者と呼ばれる神が居られるのはあまり知られていません。超越者はすべての上級神を管理監督されています。」
こうして説明を聞いてみると、神様の世界って階級社会だな。ハルちゃんが以前言っていた通りだ。
「ここまでは単なる説明です。問題は、1,000年ほど前ある上級神から超越者について驚くべき情報が発信されたことに端を発します。その上級神によれば、超越者はこの次元の神ではなく、私達より高次の世界から来ていると。それだけでなく、私達の世界の成長した魂を収穫し、何らかの目的に利用するために自らの世界に送っているとのこと、収穫したことにより足りなくなった魂の数を誤魔化すために、魂の種をばらまいていることが発信されました。 魂の種とは一番下級の魂にすらなっていない、まさにこれから魂になる種といっても良いものです。」
「いったい何のために魂を送っているのですか?」
「そこまでの情報は発信されませんでした。」
「ただ、この情報を発信した上級神は、この後すぐ行方が分からなくなりました。また、この発信を受け超越者について調べようと行動を起こした神達も同様に行方不明になりました。」
なんと、行方不明者続出か。超越者って何か怖いな。
「そのため、神々の間での超越者についての噂は立ち消えになりましたが、一部の神達は超越者に隠れて秘密裡に調査を続けました。そして、行方不明になった上級神の発信した情報は間違いないと確信したのです。超越者は私達の世界に魂の種を播き、成長した魂を刈り取っているのではないか。神々は超越者の畑仕事を補佐する農奴、あるいは牧畜に例えれば、超越者は牧場主、神々は彼の使う牧羊犬に過ぎないのではないかと推測されました。神々は超越者に利用させるために魂を育てているのだと。」
「たいへんじゃないですか!」
驚いた、刈り取り収穫された魂がどうなるのか分からないが、なんとなく屠殺場にドナドナされる子牛の映像が頭に浮かぶ。」
「それでどうするんですか、超越者と戦うんですか?」
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