54 / 90
第2章 惑星カーニン編
11. 誘拐
しおりを挟む
さてこの魔道具をどこに設置するかなと考えていると、兵士がひとり部屋に駆けこんできた。
「この様な文が神殿に投げ込まれました。」
と言って来る。手に握られている紙には、
"カイという子供を預かった。返して欲しければ捕えた仲間を全員解放せよ。"
と書かれている。しまった! サラちゃんだけでなくカイちゃんも連れて行くんだった! と思うがもう遅い。すぐに探査魔法でカイちゃんの魔力パターンを探るが見つからない。今は探査範囲が広くなっているから、見つからないとすると何らかの結界に閉じ込められているか、瞬間移動で遠方に連れ去られたかだ。でも攻撃があった時に感じた強い魔力は捕えた3人だけ、それから考えて結界に閉じ込められている可能性が高い。周りの人達に確認するがカイちゃんがいつ居なくなったのかはっきりしない。私が惑星ルーテシアに向かうときには居たから、1時間ちょっとくらいの間に誘拐されたということか。それにしても神殿の中で多くの人と一緒にいたというのに...。そうなると犯人はこの場にいても怪しまれない人物ということになるだろう。いや、今は犯人捜しよりカイちゃんを取り戻すことを考えないと。
ラザロさんを呼びに行ってもらい捕虜を解放したい旨を伝える。ラザロさんは悔しがっていたが女神の意向には逆らえず了承してくれた。私だって悔しいよ! でもカイちゃんの命には代えられないじゃない。でもただ解放するだけじゃないよ。私は念話でロキさんに呼びかけた。
<< ロキさん、聞こえますか? >>
近くに居るとは思うのだが、見えないし魔力も感知できないので不安だったが、直ぐに返事があった。
<< 聞こえとるよ。わしに手伝って欲しいのじゃな。>>
<< そうです。ロキさんなら相手に気付かれずに尾行が出来ますよね。捕縛した人達の中で一番偉そうな人を尾行してくれませんか。カイちゃんを助けてあげて下さい。>>
<< 了解じゃ。>>
よし、後はロキさんを信頼して待つしかない。捕縛した人達の魔力パターンを記憶して探査魔法で追跡することも考えたが、こちらの魔力を逆に感知されてカイちゃんの解放が遅れる可能性がある。
時間はじりじりと過ぎて行く。捕縛した人達を解放してから1時間が経った。サラちゃんも仲の良いカイちゃんが心配なのか泣きそうな顔をしている。私には「大丈夫だよ。」と言って頭を撫でてあげることしか出来ない。「精霊様が助けに行ってくれている。」と伝えたいがここに居る人達の中に暗殺者の仲間がいる可能性が高いから迂闊なことも言えないのだ。念話で伝えたとしても、幼いサラちゃんが口にしないとは限らないしね。2時間が経過したころいきなり部屋の中央にロキさんとカイちゃんが現れた。瞬間移動だ。すぐにサラちゃんが泣きながらカイちゃんに抱き着く。カイちゃんは疲れている様だが怪我はなさそうだ。
<< ロキさん! ありがとうございます! >>
<< なあに、運が良かっただけじゃ。>>
とロキさんは答えるが、後で聞くと精霊仲間を動員して解放した暗殺者全員を尾行してくれたらしい(仲間がいたんだ)。ロキさん、グッドジョブだ!
<< それとな、この神殿にもぐり込んでおる暗殺者の仲間じゃが、給仕をやっとるパライカという奴らしい。奴らが話しておったわい。>>
私がカルロスさんとラザロさんに念話でそのことを伝えると、パライカさんはアッという間に捕まえられた。数か月前から神殿の職員としてもぐり込んでいたらしい。恐ろしい組織である。
さて、暗殺者の組織がここまでやってくれるとなると、この神殿は安全とは言えない。暗殺の対象となっているドリスさんだけでなく、カイちゃん、サラちゃんもまた攫われる可能性がある。こうなったら3人とも我が家にお泊りだね。
「カイちゃん、サラちゃん、私の家にお泊りしない? 私の家なら怖い人達が絶対来れないからね。ドリスさんも一緒だよ。」
と私が言うと、ふたりは顔を見合わせ、
「いいですか?」
とカルロスさんに尋ねている。カルロスさんが承諾すると笑顔になった。2回も私に助けられたから私と一緒にいると安心なのか、それともドリスさんに懐いているのか分からないが、私の家に泊まるのは嬉しいらしい。そうと決まればドリスさん含む3人が着替え等の簡単な荷物を纏めるのを待って、惑星ルーテシアの私の家に瞬間移動した。
到着したのは瞬間移動用に使用している部屋。この部屋は内側からのみ鍵を解除できるので部屋に突然現れるのを誰かに見られる心配が無い。すぐに部屋から出て、3人を客室に案内する。客室はふたつあるので、ひとつをドリスさん、もうひとつをカイちゃん、サラちゃんに使ってもらう。夕食が出来たら呼びに来るからと言い置いて私は急いでキッチンに向かう。今から夕食を3人分追加してもらわないといけない。キッチンで調理をしているエリスさんにお客様のことを伝えると笑顔で了承してくれた。いや、ここは怒って良いところだよ。「ごめん、手伝うから。」と言う私に、「大丈夫ですから。」と返してくる。
エリスさんいい人過ぎだよ。それにしても、もうずいぶん長く私達に仕えてくれているけれど結婚する気は無いのだろうか。以前それとなく聞いてみたのだが、その時は「女神様にお仕えできる今の生活に満足していますから。」という返事が返ってきた。それからも何度か聞いているが同じ返事だ。ドリスさんもルーテシア様が女神だった時代の影響を受けているのかもしれない。人口抑制のために新郎又は新婦のどちらかが跡継ぎで無いと結婚できないことになっていたのだ、そのため最初から結婚をあきらめている人が沢山いた。エリスさんにその気があるならこっそり若返らせてあげるのもやぶさかではないのだが。
「この様な文が神殿に投げ込まれました。」
と言って来る。手に握られている紙には、
"カイという子供を預かった。返して欲しければ捕えた仲間を全員解放せよ。"
と書かれている。しまった! サラちゃんだけでなくカイちゃんも連れて行くんだった! と思うがもう遅い。すぐに探査魔法でカイちゃんの魔力パターンを探るが見つからない。今は探査範囲が広くなっているから、見つからないとすると何らかの結界に閉じ込められているか、瞬間移動で遠方に連れ去られたかだ。でも攻撃があった時に感じた強い魔力は捕えた3人だけ、それから考えて結界に閉じ込められている可能性が高い。周りの人達に確認するがカイちゃんがいつ居なくなったのかはっきりしない。私が惑星ルーテシアに向かうときには居たから、1時間ちょっとくらいの間に誘拐されたということか。それにしても神殿の中で多くの人と一緒にいたというのに...。そうなると犯人はこの場にいても怪しまれない人物ということになるだろう。いや、今は犯人捜しよりカイちゃんを取り戻すことを考えないと。
ラザロさんを呼びに行ってもらい捕虜を解放したい旨を伝える。ラザロさんは悔しがっていたが女神の意向には逆らえず了承してくれた。私だって悔しいよ! でもカイちゃんの命には代えられないじゃない。でもただ解放するだけじゃないよ。私は念話でロキさんに呼びかけた。
<< ロキさん、聞こえますか? >>
近くに居るとは思うのだが、見えないし魔力も感知できないので不安だったが、直ぐに返事があった。
<< 聞こえとるよ。わしに手伝って欲しいのじゃな。>>
<< そうです。ロキさんなら相手に気付かれずに尾行が出来ますよね。捕縛した人達の中で一番偉そうな人を尾行してくれませんか。カイちゃんを助けてあげて下さい。>>
<< 了解じゃ。>>
よし、後はロキさんを信頼して待つしかない。捕縛した人達の魔力パターンを記憶して探査魔法で追跡することも考えたが、こちらの魔力を逆に感知されてカイちゃんの解放が遅れる可能性がある。
時間はじりじりと過ぎて行く。捕縛した人達を解放してから1時間が経った。サラちゃんも仲の良いカイちゃんが心配なのか泣きそうな顔をしている。私には「大丈夫だよ。」と言って頭を撫でてあげることしか出来ない。「精霊様が助けに行ってくれている。」と伝えたいがここに居る人達の中に暗殺者の仲間がいる可能性が高いから迂闊なことも言えないのだ。念話で伝えたとしても、幼いサラちゃんが口にしないとは限らないしね。2時間が経過したころいきなり部屋の中央にロキさんとカイちゃんが現れた。瞬間移動だ。すぐにサラちゃんが泣きながらカイちゃんに抱き着く。カイちゃんは疲れている様だが怪我はなさそうだ。
<< ロキさん! ありがとうございます! >>
<< なあに、運が良かっただけじゃ。>>
とロキさんは答えるが、後で聞くと精霊仲間を動員して解放した暗殺者全員を尾行してくれたらしい(仲間がいたんだ)。ロキさん、グッドジョブだ!
<< それとな、この神殿にもぐり込んでおる暗殺者の仲間じゃが、給仕をやっとるパライカという奴らしい。奴らが話しておったわい。>>
私がカルロスさんとラザロさんに念話でそのことを伝えると、パライカさんはアッという間に捕まえられた。数か月前から神殿の職員としてもぐり込んでいたらしい。恐ろしい組織である。
さて、暗殺者の組織がここまでやってくれるとなると、この神殿は安全とは言えない。暗殺の対象となっているドリスさんだけでなく、カイちゃん、サラちゃんもまた攫われる可能性がある。こうなったら3人とも我が家にお泊りだね。
「カイちゃん、サラちゃん、私の家にお泊りしない? 私の家なら怖い人達が絶対来れないからね。ドリスさんも一緒だよ。」
と私が言うと、ふたりは顔を見合わせ、
「いいですか?」
とカルロスさんに尋ねている。カルロスさんが承諾すると笑顔になった。2回も私に助けられたから私と一緒にいると安心なのか、それともドリスさんに懐いているのか分からないが、私の家に泊まるのは嬉しいらしい。そうと決まればドリスさん含む3人が着替え等の簡単な荷物を纏めるのを待って、惑星ルーテシアの私の家に瞬間移動した。
到着したのは瞬間移動用に使用している部屋。この部屋は内側からのみ鍵を解除できるので部屋に突然現れるのを誰かに見られる心配が無い。すぐに部屋から出て、3人を客室に案内する。客室はふたつあるので、ひとつをドリスさん、もうひとつをカイちゃん、サラちゃんに使ってもらう。夕食が出来たら呼びに来るからと言い置いて私は急いでキッチンに向かう。今から夕食を3人分追加してもらわないといけない。キッチンで調理をしているエリスさんにお客様のことを伝えると笑顔で了承してくれた。いや、ここは怒って良いところだよ。「ごめん、手伝うから。」と言う私に、「大丈夫ですから。」と返してくる。
エリスさんいい人過ぎだよ。それにしても、もうずいぶん長く私達に仕えてくれているけれど結婚する気は無いのだろうか。以前それとなく聞いてみたのだが、その時は「女神様にお仕えできる今の生活に満足していますから。」という返事が返ってきた。それからも何度か聞いているが同じ返事だ。ドリスさんもルーテシア様が女神だった時代の影響を受けているのかもしれない。人口抑制のために新郎又は新婦のどちらかが跡継ぎで無いと結婚できないことになっていたのだ、そのため最初から結婚をあきらめている人が沢山いた。エリスさんにその気があるならこっそり若返らせてあげるのもやぶさかではないのだが。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる