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第14話 再び樹海へ
しおりを挟む馬車を走らせること2週間。再びミルド村にやってきた。
ケンタの家の前に馬車を停め、ゴラムたちは馬車を下りた。
ゴラムが玄関をノックする。
トントン。
「はーい!」
「リリア、ゴラムだ。開けてくれ。」
カチャ。
ドアが開くと、リリアは驚いた表情で出迎えた。
「どうしたの?また大勢で。」
「リリア、大事な話があるんだ。ケンタも一緒が良い。」
「わかった、呼んでくるから、中に入って。」
ゴラムたちは、家の中に入って席に着いた。
リリアに呼ばれたケンタが2階から降りてくる。
「ゴラム、大事な話ってなんだ?」
ゴラムが話し出す。
「大事な話の前に、この女性はエリーゼ。ヴェールの影の王制復活派のリーダーだ。」
「初めまして。噂は聞いています。」
エリーゼが挨拶した。
「この銀髪の男性は、ヴァルカ。元ゴブリン王の近衛兵長で、俺の命の恩人だ。」
「よろしく。」
「このちっちゃくてフワフワしてるのは、デモ助。ミニデーモンで、ミカの部下だ。」
「以後お見知りおきを。」
一通り紹介が終わり、本題に入る。
「単刀直入に言う。魔神がまだ生きている。」
「あの魔神が!?教祖リュウが、その命と引き換えに倒したはずだけど。」
ケンタが驚きの声を上げる。
「実は、あの魔神は分身だったらしい。もう片方は人間に紛れて生き残った。」
ゴラムが静かに告げる。
「確かに、魔神は人間に紛れ込んでいるとは聞いたことがあるけど……。」
「ヴェールの影の転覆派のリーダー・ザハークが、魔神をエルドランドの国王にしようと画策しているようなんだ。」
「ザハーク。その男は厄介そうだね。」
ケンタがうなずく。
「俺たちは魔人が国王になることだけは阻止したい。そこで、魔人の居場所を知るために、深淵の鍵が必要になる。」
「深淵の鍵……..。でも、あれは、リリアにしか使えないよ。」
「そうなんだ。だから、リリアの助けが欲しい。これがお願いだ。」
ケンタは考え込んでしまった。
「リリアを危険な目には合わせたくない。わかるだろ?ゴラム。」
「それは重々承知の上だ。頼む。」
その時、横で聞いていたリリアが決意したように言った。
「ゴラム。私、あなたを助けるわ。だって、友達だもの。」
「リリア!?良いのかい?とても危険なんだよ。」
ケンタが心配そうに言う。
「ケンタ、私は、困っている友達を見捨てたりしない。あなたもそうでしょ?」
「・・・・・・そうだね。わかった。ゴラムを助けよう。」
「ケンタ、ありがとう。」
「その代わり、僕も同行する。」
「ケンタ……。」
リリアが涙目になっている。
「よし!話は決まりだ。ここからは、ケンタとリリアも一緒に行動する。」
ゴラムが言った。
「深淵の鍵は、ここにある。」
ケンタが、木箱を持ってきた。蓋を開けると、人の掌ほどの大きさの古めかしい鍵が出てきた。
「じゃあ、早速、やってみるね。」
リリアは、そう言って、深淵の鍵を手に取った。
すると、鍵全体が輝き、先の方から一筋の光が真っ直ぐに伸びていった。
光の線は、壁に当たって、その先にも伸びているようだ。
ゴラムたちは、家の外に出て、光の方向を確認する。
「この方向は・・・。」
ゴラムたちは息を飲んだ。
「エルドランド樹海!」
アンヌが叫ぶ。
「よし。エルドランド樹海に向かうぞ。」
ゴラムの掛け声で全員が動き出した。
ケンタとリリアを加えた一行は、魔神を追い、エルドランド樹海に向かった。
馬車は一路北へ向かう。
「おいら、腹が減ってきたぞ!」
デモ助が暇を持て余している。
「ちび助、うるさいぞ。黙ってろ。」
ゴラムがイライラしながら言う。
「すいません、親分。」
デモ助が大人しくなった。
「親分は止めてくれ。」
「分かりました。お……、ゴラムさん。」
「俺のことはゴラムで良いよ。」
「ありがとうございます!ゴラム親分!」
「……本当に分かってるのか?」
ゴラムが呆れて言う。
馬車は順調に進んでいる。数日後、エルドランド樹海が見えてきた。
「いよいよだな。」
ゴラムが呟く。
リリアが持っている深淵の鍵から伸びている光は、真っ直ぐに樹海の中を指している。
「魔神は樹海の中にいるみたいね。」
リリアが言う。
重苦しい空気の中、馬車はゆっくりと樹海の中に入っていった。
「みんな!待ち伏せされてる。気を付けて!」
アンヌが叫ぶ。ケンタも何かを感じたようだ。
「恐らく、ザハークの一派だ。戦闘に備えろ!」
その声に反応して、キャス、ヴォルカ、エリーゼが飛び出す。
「おいらが上から見てやるよ!」
デモ助が小さな羽を羽ばたかせて樹海の上に上がっていく。
「防御せよ!バリア!」
ミカが防御魔法を唱える。
すると、無数の空気を切り裂くような音がした。
シューッ!!
ビシッ、ビシッ、ビシッ!!!
樹海の木の間から矢の雨が降ってきた。
「キャス!ヴォルカ!エリーゼ!大丈夫か!」
ゴラムが叫ぶと、あちこちでキンッ!キンッ!と矢を剣で弾く音がする。
「こっちは気にするな!」
ヴォルカの声だ。
ザンッ!キンッ!ウワーッ!
敵の断末魔の声が森に響く。
すると、馬車の左右から黒いヴェールの集団が襲ってきた。
「炎よ、出でよ!ファイア!」
ミカの呪文が炸裂する。
ウワーッ!
炎を避けて敵が切りかかってくる。
「このっ!」
ゴラムが剣を抜き、押し返す。
「こいつめ!」
ケンタも手持ちの短剣で応戦する。
アンヌが何かを思いついたように立ち上がって叫んだ。
【ドリアードさん!聞こえますか!どうか私たちに手を貸してください!】
その声に応えるかのように、地響きが起こり、樹海の木が生き物のように動き出した。
「ウワー!木が動いたぞ!逃げろ!」
ヴェールの軍団が混乱している。木の枝や葉が容赦なく襲い掛かる。
「撤退だ!逃げろ!」
ヴェールの軍団は、逃げて行った。
「アンヌ、よくやった!」
ケンタがアンヌの頭を撫でる。
「ケンタ、私はもう大人なのよ。」
アンヌが顔を赤らめて言う。
馬車を離れていた仲間たちも戻ってきた。
「おいらの活躍であいつら逃げて行ったな。」
デモ助が得意げに言うと、ミカが突っ込んだ。
「お前は、何もしてないだろう。」
「よし、先に進もう。」
ゴラムはそういうと鞭を入れた。
馬車は樹海のさらに奥に向かう。
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