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第16話 それぞれの想い
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それから1か月後、ガルムヘルムの町。
酒場「ドラゴンの牙」で、ゴラムは酒を飲んでいた。
相当酔っぱらっている。
「ゴラム、飲みすぎだよ。」
キャスが窘める。
「うるさい!キャス、お前も飲め!」
「私も飲んでるわよ。それにしたってゴラムは飲みすぎ。」
キャスもお手上げだ。
「ゴラム…わらわもお前の気持ちはわかるぞ。ムニャムニャ。」
ミカはすでに酔いつぶれている。
「ミカ!起きて!あなたまでそんな風じゃ…。」
アンヌが今にも泣きそうな顔でミカを起こそうと体を揺する。
「とりあえず、ヴァルカの意識は戻ったけど、この後、どうするか…
。」
エリーゼが呟く。
「ケンタとリリアは村に帰っちゃったしな。」
デモ助がフワフワしながら言う。
「とにかく!このままじゃダメだと思うの!」
アンヌが叫ぶ。その声に驚いて、ゴラムとミカは飛び起きた。
「ゴラム!ミカ!作戦を立てましょう!」
アンヌの言葉に皆うなずく。
「作戦って言ったって、どうするんだ?」
ゴラムが赤ら顔で言う。呂律が回っていない。
「ゴラムとミカは、まず、酔いを醒ましてきて。」
アンヌが2人を睨む。
「はい……。」
ゴラムとミカはしょんぼりとしながら出て行った。
「さて、改めて、作戦を考えましょう。」
アンヌが言うと、まずエリーゼが口を開いた。
「アンヌ様、王制復活派の取りまとめは私にお任せください。」
「エリーゼ、そちらはお願いするわ。私はサウザン王子に助けを求めてみる。」
キャスが提案する。
「ミカの配下の魔物たちも味方してくれるのではないですか?」
アンヌは少し悩んで、
「ミカにも頼んでみましょう。今は味方が多いほど良いわ。」
「イストリアやウエス国、ノーザリア国にも声をかけましょう。」
キャスがさらに提案する。
「そうね。キャスにお願いしてもいいかしら?」
「王宮警護の生き残りに声を掛けます。」
「これで、うまく行けば兵力は十分ね。あとはザハークをどうするか。」
「弱点が分かれば良いんだけどね~。」
デモ助がふわふわしながら言う。
「デモ助!あなた、情報屋でしょ?ザハークについての情報を集めてよ!」
アンヌがデモ助を両手で掴んで言う。
「イテテ、わかりましたよ。ザハークの情報はおいらが集めます。」
アンヌが気合を込めた声で言う。
「それでは、それぞれに動いて、1週間後にまた会議をしましょう。」
「ミカとゴラムは、どうしますか?」
エリーゼが言うとアンヌが答えた。
「あの2人には、私が直接話をするわ。それじゃあ、みんな1週間後に。」
こうして、エルドランド王国を取り返すための作戦が動き出した。
そのころ、ミカとゴラムは、宿屋にいた。
「俺はダメな人間だ。」
「お前はゴブリンじゃろう?」
「アンヌの方が俺よりしっかりしてる。」
「わらわも魔王失格じゃな。あんな小娘に愛想尽かされるとは。」
はぁー……。ゴラムとミカは同時にため息をついた。
「あのザハークは強い。どうしたら倒せるか分からない。」
「まさか、あの男が魔神とはな。しかも精霊の力を得て、さらに強くなった。」
「こんな状況じゃ、酒飲むしかないよな?ミカ。」
「そうじゃな。ゴラム。気持ちはわかるぞ。」
ゴラムとミカの心は完全に折れていた。
そこにアンヌが現れた。
「ゴラム!ミカ!」
アンヌが勢いよく宿屋の玄関から入ってきた。
暖炉の前に座っているゴラムとミカは唖然として、そちらを見ている。
アンヌが、ゴラムとミカの前に仁王立ちになった。
「ゴラム、ミカ、酔いは冷めたかしら?」
アンヌが聞くと、2人は申し訳なさそうに答える。
「はい……。」
アンヌが続ける。
「私たちに、落ち込んでいる暇はないの!あなたたち2人には、しっかりしてもらわないと。」
「はい……。」
「わかった!!?」
「は、はい!!」
「わかればよろしい。」
すっかり立場が逆転してしまった、アンヌとゴラム、ミカは、やっと本題に入る。
「私たちは、ザハークを倒して、エルドランド王国を取り戻す。2人ともそのために頑張ってほしいの。」
「俺たちは、何をすれば良い?」
ゴラムが聞く。
「ゴラムは、キャスを手伝って、各国に援軍を頼んで。」
「わかった。」
「ミカは、部下の魔物たちに声をかけて、できるだけ多く集めて。」
「アンヌ、わかったぞ。」
「期限は、1週間。1週間後にドラゴンの牙に再集合よ。いい?」
「わかった、」「わかったぞ。」
「じゃあ、2人とも、動いて!」
ゴラムとミカは慌てて宿屋を出て行った。
エルドランド王国奪取作戦は本格的に動き出した。
それぞれに忙しく世界中を駆け回り、準備は着々と進んでいた。
そんなある日。
アンヌは、ドラゴンの牙で一人でジュースを飲んでいた。
目には涙が浮かんでいる。
「お父様……。」
そこにミカが現れた。
ゆっくりとアンヌの隣に座る。
「アンヌ、大丈夫か?」
ミカがアンヌの肩に手を置き、声をかける。
「ミカ、私、不安で仕方ないの。私に出来るのか自身がない。」
見る見るうちにアンヌの目から涙があふれる。
「アンヌ、魔王である私だって、魔神に勝てるか不安じゃ。人間であるお前は、よく頑張っておる。自信を持て。」
アンヌはミカに抱きついた。
「うん、ミカ、しばらくこうしてて良い?」
「もちろんじゃ。わらわや皆を頼れば良い。一人で背負い込むな、アンヌ。」
「ミカ、ありがとう。」
アンヌとミカはしばらくの間、そのままでいた。
すると、
すーっ、すーっ…..
アンヌが寝息を立てている。安心して寝てしまったようだ。
「仕方ない子じゃの。」
ミカは、アンヌを抱え、宿屋まで連れて行って、ベッドに寝かせた。
「ふう。わらわが魔王じゃなければ、運んでこれなかったな。」
アンヌは、気持ちよさそうに寝息を立てている。
「この子も、気が張り詰めていたんじゃろう。しばらく寝かせてやろう。」
そういうと、ミカは部屋を後にした。
酒場「ドラゴンの牙」で、ゴラムは酒を飲んでいた。
相当酔っぱらっている。
「ゴラム、飲みすぎだよ。」
キャスが窘める。
「うるさい!キャス、お前も飲め!」
「私も飲んでるわよ。それにしたってゴラムは飲みすぎ。」
キャスもお手上げだ。
「ゴラム…わらわもお前の気持ちはわかるぞ。ムニャムニャ。」
ミカはすでに酔いつぶれている。
「ミカ!起きて!あなたまでそんな風じゃ…。」
アンヌが今にも泣きそうな顔でミカを起こそうと体を揺する。
「とりあえず、ヴァルカの意識は戻ったけど、この後、どうするか…
。」
エリーゼが呟く。
「ケンタとリリアは村に帰っちゃったしな。」
デモ助がフワフワしながら言う。
「とにかく!このままじゃダメだと思うの!」
アンヌが叫ぶ。その声に驚いて、ゴラムとミカは飛び起きた。
「ゴラム!ミカ!作戦を立てましょう!」
アンヌの言葉に皆うなずく。
「作戦って言ったって、どうするんだ?」
ゴラムが赤ら顔で言う。呂律が回っていない。
「ゴラムとミカは、まず、酔いを醒ましてきて。」
アンヌが2人を睨む。
「はい……。」
ゴラムとミカはしょんぼりとしながら出て行った。
「さて、改めて、作戦を考えましょう。」
アンヌが言うと、まずエリーゼが口を開いた。
「アンヌ様、王制復活派の取りまとめは私にお任せください。」
「エリーゼ、そちらはお願いするわ。私はサウザン王子に助けを求めてみる。」
キャスが提案する。
「ミカの配下の魔物たちも味方してくれるのではないですか?」
アンヌは少し悩んで、
「ミカにも頼んでみましょう。今は味方が多いほど良いわ。」
「イストリアやウエス国、ノーザリア国にも声をかけましょう。」
キャスがさらに提案する。
「そうね。キャスにお願いしてもいいかしら?」
「王宮警護の生き残りに声を掛けます。」
「これで、うまく行けば兵力は十分ね。あとはザハークをどうするか。」
「弱点が分かれば良いんだけどね~。」
デモ助がふわふわしながら言う。
「デモ助!あなた、情報屋でしょ?ザハークについての情報を集めてよ!」
アンヌがデモ助を両手で掴んで言う。
「イテテ、わかりましたよ。ザハークの情報はおいらが集めます。」
アンヌが気合を込めた声で言う。
「それでは、それぞれに動いて、1週間後にまた会議をしましょう。」
「ミカとゴラムは、どうしますか?」
エリーゼが言うとアンヌが答えた。
「あの2人には、私が直接話をするわ。それじゃあ、みんな1週間後に。」
こうして、エルドランド王国を取り返すための作戦が動き出した。
そのころ、ミカとゴラムは、宿屋にいた。
「俺はダメな人間だ。」
「お前はゴブリンじゃろう?」
「アンヌの方が俺よりしっかりしてる。」
「わらわも魔王失格じゃな。あんな小娘に愛想尽かされるとは。」
はぁー……。ゴラムとミカは同時にため息をついた。
「あのザハークは強い。どうしたら倒せるか分からない。」
「まさか、あの男が魔神とはな。しかも精霊の力を得て、さらに強くなった。」
「こんな状況じゃ、酒飲むしかないよな?ミカ。」
「そうじゃな。ゴラム。気持ちはわかるぞ。」
ゴラムとミカの心は完全に折れていた。
そこにアンヌが現れた。
「ゴラム!ミカ!」
アンヌが勢いよく宿屋の玄関から入ってきた。
暖炉の前に座っているゴラムとミカは唖然として、そちらを見ている。
アンヌが、ゴラムとミカの前に仁王立ちになった。
「ゴラム、ミカ、酔いは冷めたかしら?」
アンヌが聞くと、2人は申し訳なさそうに答える。
「はい……。」
アンヌが続ける。
「私たちに、落ち込んでいる暇はないの!あなたたち2人には、しっかりしてもらわないと。」
「はい……。」
「わかった!!?」
「は、はい!!」
「わかればよろしい。」
すっかり立場が逆転してしまった、アンヌとゴラム、ミカは、やっと本題に入る。
「私たちは、ザハークを倒して、エルドランド王国を取り戻す。2人ともそのために頑張ってほしいの。」
「俺たちは、何をすれば良い?」
ゴラムが聞く。
「ゴラムは、キャスを手伝って、各国に援軍を頼んで。」
「わかった。」
「ミカは、部下の魔物たちに声をかけて、できるだけ多く集めて。」
「アンヌ、わかったぞ。」
「期限は、1週間。1週間後にドラゴンの牙に再集合よ。いい?」
「わかった、」「わかったぞ。」
「じゃあ、2人とも、動いて!」
ゴラムとミカは慌てて宿屋を出て行った。
エルドランド王国奪取作戦は本格的に動き出した。
それぞれに忙しく世界中を駆け回り、準備は着々と進んでいた。
そんなある日。
アンヌは、ドラゴンの牙で一人でジュースを飲んでいた。
目には涙が浮かんでいる。
「お父様……。」
そこにミカが現れた。
ゆっくりとアンヌの隣に座る。
「アンヌ、大丈夫か?」
ミカがアンヌの肩に手を置き、声をかける。
「ミカ、私、不安で仕方ないの。私に出来るのか自身がない。」
見る見るうちにアンヌの目から涙があふれる。
「アンヌ、魔王である私だって、魔神に勝てるか不安じゃ。人間であるお前は、よく頑張っておる。自信を持て。」
アンヌはミカに抱きついた。
「うん、ミカ、しばらくこうしてて良い?」
「もちろんじゃ。わらわや皆を頼れば良い。一人で背負い込むな、アンヌ。」
「ミカ、ありがとう。」
アンヌとミカはしばらくの間、そのままでいた。
すると、
すーっ、すーっ…..
アンヌが寝息を立てている。安心して寝てしまったようだ。
「仕方ない子じゃの。」
ミカは、アンヌを抱え、宿屋まで連れて行って、ベッドに寝かせた。
「ふう。わらわが魔王じゃなければ、運んでこれなかったな。」
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