バッドエンド確定の悪役令嬢に転生したので、周りに感謝から始めます

百合谷百合花と申します

文字の大きさ
6 / 17
『悪役令嬢』と『感謝の公爵令嬢』

『イースト村』1

しおりを挟む
 ガララララ…

「ゴホンッ…ディア、今から訪れる視察場所は『ベルンルック領』内で農業をメインにしているイースト村という場所だ」
「農業と申しますと小麦ですね!!」
「ああ、パンの材料はもちろん、様々な用途がある。私達は公爵家だから広大な土地を所有している。だから、力を入れている産業の1つなんだ」

 農業をする上でアドバンテージになるのが土地の広さは言うまでもない。だから、ディブロお父様の言葉へ縦にこくりと頷く。

 それにしても、『ベルンルック』公爵家の領地運営なんて、『セブン⭐︎プリンセス』のゲーム内の攻略情報に載っていなかった。だから、ある意味、あたしは貴重な経験を積む事ができている。

「ちなみにディブロお父様の管理している村はイースト村以外にございますの?」
「村ならば、ウェスト村とノース村とサウス村があるな。ウェスト村は水産に力を入れている。ノース村は繊維業、サウス村はワイナリー業だ」
「ちなみにディアお嬢様、私達が住んでる屋敷が『セントラル地区』と呼ばれている場所にあります。つまり、『セントラル地区』は、それぞれの村から見て中央にある場所ですからね」 

 シンリーとディブロお父様の話を整理すると、『ベルンルック公爵家』は『セントラル地区』を中心に4つの村に加えて4つの名産を持っていることとなる。同時に、『公爵家』だから成せる盤石な経営基盤だと思った。

 そして、あたし達が今から訪れるのは『イースト村』と呼ばれる場所らしい。

 あたしが『セブンス学園』で失敗したら、家族だけでなく、関係のない領民まで巻き込むかもしれない、そう考えると怖気付いてしまう。

「いつもより馬車の揺れが少ないな…。それに護衛の兵士もやる気満々だ」
「旦那様、もしかしてですが、ディアお嬢様のおかげかもしれませんね。ディアお嬢様は馬にも感謝を伝えてましたからね」
「感謝………か」
「シンリー、もう大袈裟だよー!!」

 その後も『イースト村』へ出発する馬車内で軽く雑談に華を咲かせていると、いつの間にかイースト村の門の入り口へ到着していたらしい。

「これはこれはベルンルック公爵様、ささ、何もない村ですが、中へお入りくだされ…」
「そうさせてもらおうか」

 イースト村へ到着すると、あたし達の前に周囲を若い男達に護衛されながら、白髪の髭が、今にも地面へ届きそうになるくらい伸びきったおじいちゃんの一向が現れた。

「……それでベルンルック公爵様、その娘は?」
「イースト村の村長、お初にお目にかかります。あたしはベルンルック公爵家長女、ディア•ベルンルックです。以後お見知り置きを」
「わしの名前はゾルと申しまして、この村の村長ですじゃ。それにしても、噂の『理不尽の権化』とは随分異なる佇まいで、驚きましたのじゃ」
「………色々ありましてな」

 あたしの悪名はイースト村にまで届いてるんだと気付き肩を落とし、挙げ句の果てにディブロお父様が否定しなかったことに傷つき、地面にドレスがつかないよう、小さく座った。

「ディアお嬢様、私は大好きです」
「本当!?シンリー、ありがとう!!」

 ディブロお父様達の言葉にいじけていたら、シンリーがあたしの耳元で魔法の言葉を囁き、それを聞いた瞬間、先程まで傷ついて悩んでいたことが一気にバカらしく思えた。

 その結果、再び、あたしはシンリーのおかげで地面へ立つことができた。

 そうすると、不思議な事にディブロお父様へ腹が立ったので、彼の腰をつねることにした。

「いだだだ」
「ディブロお父様のおたんこなすですわ!!」
「いやぁ、気にしていたとはすまなかったね」

 ディブロお父様の表情を見ると、すぐに、わざと言った事に気付いた。それを知りつつも、怒ってみたら、彼に笑顔で謝られてしまった。

「皆様の仲が大変よろしゅうようで何よりですじや。それでベルンルック公爵様、本日はいかなる用件でこの村へ参られましたのかな?」
「私はいつもの要件だが、ついでに娘のディアが見学したいそうで、小麦の栽培の様子を見せてやってくれないだろうか?」

 ディブロお父様が娘のあたしが『民へ感謝を伝えにきた』と言えば、変になるだろう。だから見学といえば、あたしの年齢を考えれば『勉強の一環』で済むことを見越して誤魔化してくれた。

「お安い御用ですじゃ。ロン、アース、頼めるじゃろうか?」
「ゾル村長が言うなら仕方ねぇ…」
「あははは!!ロン、仕方ないよねー…」

 村長を護衛していた5人の中の内の2人、『ロン』と『アース』と呼ばれた若めの青年達が嫌そうな顔であたし達を先導することとなった。

 そのため、この場でディブロお父様と率いる護衛兵達と別れることとなった。

ーーーー

「なんで俺達が貴族様のおままごとに時間を割かなければならないんだよっ!!」
「あははは!!ロン、気持ちはわかるけど、ベルンルック公爵様にチクられたら面倒だよー」

 あの後、ディブロお父様達と別れることとなり、『ロン』と『アース』とあたしとシンリーで行動することとなった。

 それにしても、彼等が聞こえる範囲であたし達への不満を言ってくるが、ディブロお父様から事前に忠告されていた内容だった。

 だから、あたしは気にしない事にした。

 それに彼等の煽りはあたし達が騒動を起こして何かを狙っている物ではなく、彼等のは単にあたし達の都合で振り回されてる事への苛立ちだ。

 特に青年の頃は起こりやすい反抗期だと思うのであたしは気にならないが、隣を見るとシンリーが不満そうな表情をしていた。

「シンリー、せっかく可愛い顔してるんだから怒っちゃだーめ!!」
「しかし、ディアお嬢様、あの2人、わざと…」
「うん。間違いなくわざとだね」

 シンリーもそのことに気づいてあたしのために怒ってくれている。しかし、『ロン』と『アース』の言動に反応したら『これだから貴族は』と嫌悪感を超えて、反感を買うかもしれない。

 だから、シンリーの腕を組んで微笑みかけて、できるだけ彼女が暴走しないように努めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...