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第1話 婚約破棄の日、雨が降っていた
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――空はまるで彼女の心を映したように、重く沈んでいた。
灰色の雲が宮殿の屋根を覆い、石畳を叩く雨粒が、音もなく静かに落ち続けている。
セシリア・アルベリーヌ侯爵令嬢は、広間の中央に立ち尽くしていた。
その周囲では、絢爛な装飾に包まれた貴族たちが、冷ややかな視線を彼女に向けている。
今日この日、彼女の人生は大きく変わる――そんな予感を、朝から拭えなかった。
玉座の下に立つ青年――いや、青年と呼ぶにはあまりに威圧感のあるその男。
公爵家の嫡男、セドリック・グランヴァル。彼が、セシリアの婚約者であった。
彼の金の髪はいつも完璧に整えられ、背筋は真っすぐで、どんな時でも冷静沈着だった。
けれど、その整然とした瞳が向けられた先が、今はもう彼女ではない。
「セシリア・アルベリーヌ。君との婚約を、破棄する。」
その言葉は、雨音すら止まったかのような静けさの中に放たれた。
人々のざわめきが、一拍遅れて広がる。
セシリアの胸がじわりと痛んだ。いや、痛みというより、空洞だった。
「……何かの、冗談ですか?」
掠れた声で尋ねると、セドリックは眉一つ動かさず彼女を見下ろした。
「冗談ではない。理由は、君の非礼と欺瞞だ。」
「……非礼? 欺瞞?」
「そうだ。この場にいる者なら誰もが知っているだろう。君が、私の婚約者という立場を笠に着て、ローラ嬢を侮辱したことを。」
ローラ――その名を聞いて、セシリアの眉がぴくりと動いた。
その少女は、つい数ヶ月前まで社交界に姿を見せたことのない子爵令嬢だった。
しかし、どこかでセドリックと知り合って以来、いつしか彼の隣に立つようになった。
気立てがよく、儚げで、男の庇護欲をかき立てる少女。
一方で、彼女はセシリアの目の前で堂々と嘘を重ねてきた。
「侮辱などしていません。私はただ、彼女が使用人を叱責するのを注意しただけです」
「それを“侮辱”と言うんだ」
セドリックの冷ややかな声が、容赦なく突き刺さる。
「彼女は泣いていた。君のせいでな」
「それは……っ」
自らを弁護したくても、誰一人として彼女の言葉に耳を貸そうとしなかった。
友人だと思っていた令嬢たちも、同僚だった騎士の妻たちも、みな口を噤み、視線をそらしている。
貴族社会とは、波風の立たない方へとすぐ傾く世界だ。セシリアもよく知っている。けれど、これほどまでに早く見捨てられるとは思っていなかった。
「私の婚約者にふさわしいのは、優しく、慈悲を持つ心のある女性だ。ローラこそがそれに値する」
そう言って、セドリックは隣に立つ少女の手を取り、誇らしげに微笑んだ。
「彼女に罪なき侮辱を与えた君を、妻に迎えるわけにはいかない」
「……では、私は、あなたにとってもう不要なのですね」
セシリアの声は、驚くほど静かだった。涙は出なかった。
ああ、この人はもう私を見ていない。ただそれだけのことだ。
「サインをすれば正式な破棄となる」
差し出された書類に視線を落とす。
その瞬間、婚約時に贈られた銀の指輪が、少しだけ光った。
母が大切に磨いてくれた指輪。これが、すべて終わる印になるのか。
「……はい」
一筆書き終えた時、広間の外で雷鳴が轟いた。
そして、セシリアの人生は崩れ去った。
***
その夜、侯爵家の屋敷を去ることになった。
父は遠征中で不在、母は病床に伏している。
屋敷の使用人たちは口には出さないが、彼女に対してどこか冷めた目を向けていた。
婚約破棄された令嬢など、もう価値がないと判断したのだろう。
「……ご令嬢、お身体にお気をつけて」
唯一、年老いたメイドのマーサが見送りに来てくれた。
「ありがとう、マーサ。あなたには、もう十分お世話になりました」
たった一つの小さな鞄を手に、門を出る。
冷たい雨が再び降り始めた。
セシリアはどこへ行く宛てがあるわけでもなかった。
友人たちの屋敷を訪ねることなどできない。貴族社会から転落した令嬢は格好の噂の種になるだけだ。
傘もなく街を歩き、泥にまみれながら、ただ心の痛みが鈍く続いていた。
「……どうして、こんなことに」
呟いても、答えてくれる者はいない。
雨で裾が重くなり、足元がおぼつかなくなったそのときだった。
「おっと、大丈夫ですか、お嬢さん!」
声がして、背後から肩を支えられる。
見上げると、青年が心配そうに覗き込んでいた。
深い茶色の髪に、灰青の瞳。穏やかそうな顔立ちで、質素なシャツの袖をまくり上げている。
背中には、パンを焼くための粉袋らしき白い粉が付いていた。
「……パン屋さん?」
「ええ、近くの店で働いてます。ずいぶん濡れちゃって……早く屋根のあるところへ」
彼はそう言うと、自分の上着を脱ぎ、彼女の肩にかけてくれた。
初対面の青年にそうされたのは初めてで、セシリアは言葉を失った。
「そんな……見ず知らずの私に」
「困ってる人を放っておけない性分なんです。名前、聞いてもいいですか?」
「セシリア……です」
「セシリアさん。リアムです」
青年――リアムは微笑んだ。その笑顔はどこまでも柔らかく、温かかった。
「少し休んでいきませんか?パン屋の奥に、暖炉があります」
「……ご迷惑をおかけします」
そう答えた瞬間、頬を伝った雨水が、いつのまにか涙に変わっていた。
***
小さな店に入ると、香ばしい香りが迎えてくれた。
温かい空気が肌を包み込み、泥で冷えた足がじんわりと解けていく。
リアムは湯気の立つカップを差し出した。
「蜂蜜入りのミルクです。風邪ひかないように」
「ありがとうございます」
受け取った手がかすかに震えた。あたたかい。
失ったものの分だけ、心を閉じていたせいかもしれない。
けれど、彼の優しさが少しずつ、その扉を叩いていた。
「……リアムさん、どうして私を助けてくれたんですか?」
「助けた、って言うほどのことでも。誰かが困ってたら手を出す、それだけです」
「でも、あなたは私の事情を知らない。私は――」
「事情なんて関係ありません」リアムは穏やかに首を横に振った。
「寒そうな人がいた。その人を助けたい。理由は、それで十分でしょう?」
その言葉が胸の奥で深く響いた。
誰も私を信じてくれなかった今日という日に、そんな言葉をかけてくれる人がいる。
それだけで、少しだけ涙がこぼれた。
リアムは慌ててタオルを差し出した。
「泣かないで。……きっと、すぐにいいことがありますよ」
「いいこと、ですか?」
「ええ。人生、悪いことばかり続かないもんです」
セシリアはその言葉をどう返せばいいのか分からず、ただカップを握りしめた。
けれど胸の奥に、ほんの小さな灯がともるのを感じた。
――婚約破棄の日、雨が降っていた。
けれど、あの日こそが本当の始まりなのかもしれない。
(続く)
灰色の雲が宮殿の屋根を覆い、石畳を叩く雨粒が、音もなく静かに落ち続けている。
セシリア・アルベリーヌ侯爵令嬢は、広間の中央に立ち尽くしていた。
その周囲では、絢爛な装飾に包まれた貴族たちが、冷ややかな視線を彼女に向けている。
今日この日、彼女の人生は大きく変わる――そんな予感を、朝から拭えなかった。
玉座の下に立つ青年――いや、青年と呼ぶにはあまりに威圧感のあるその男。
公爵家の嫡男、セドリック・グランヴァル。彼が、セシリアの婚約者であった。
彼の金の髪はいつも完璧に整えられ、背筋は真っすぐで、どんな時でも冷静沈着だった。
けれど、その整然とした瞳が向けられた先が、今はもう彼女ではない。
「セシリア・アルベリーヌ。君との婚約を、破棄する。」
その言葉は、雨音すら止まったかのような静けさの中に放たれた。
人々のざわめきが、一拍遅れて広がる。
セシリアの胸がじわりと痛んだ。いや、痛みというより、空洞だった。
「……何かの、冗談ですか?」
掠れた声で尋ねると、セドリックは眉一つ動かさず彼女を見下ろした。
「冗談ではない。理由は、君の非礼と欺瞞だ。」
「……非礼? 欺瞞?」
「そうだ。この場にいる者なら誰もが知っているだろう。君が、私の婚約者という立場を笠に着て、ローラ嬢を侮辱したことを。」
ローラ――その名を聞いて、セシリアの眉がぴくりと動いた。
その少女は、つい数ヶ月前まで社交界に姿を見せたことのない子爵令嬢だった。
しかし、どこかでセドリックと知り合って以来、いつしか彼の隣に立つようになった。
気立てがよく、儚げで、男の庇護欲をかき立てる少女。
一方で、彼女はセシリアの目の前で堂々と嘘を重ねてきた。
「侮辱などしていません。私はただ、彼女が使用人を叱責するのを注意しただけです」
「それを“侮辱”と言うんだ」
セドリックの冷ややかな声が、容赦なく突き刺さる。
「彼女は泣いていた。君のせいでな」
「それは……っ」
自らを弁護したくても、誰一人として彼女の言葉に耳を貸そうとしなかった。
友人だと思っていた令嬢たちも、同僚だった騎士の妻たちも、みな口を噤み、視線をそらしている。
貴族社会とは、波風の立たない方へとすぐ傾く世界だ。セシリアもよく知っている。けれど、これほどまでに早く見捨てられるとは思っていなかった。
「私の婚約者にふさわしいのは、優しく、慈悲を持つ心のある女性だ。ローラこそがそれに値する」
そう言って、セドリックは隣に立つ少女の手を取り、誇らしげに微笑んだ。
「彼女に罪なき侮辱を与えた君を、妻に迎えるわけにはいかない」
「……では、私は、あなたにとってもう不要なのですね」
セシリアの声は、驚くほど静かだった。涙は出なかった。
ああ、この人はもう私を見ていない。ただそれだけのことだ。
「サインをすれば正式な破棄となる」
差し出された書類に視線を落とす。
その瞬間、婚約時に贈られた銀の指輪が、少しだけ光った。
母が大切に磨いてくれた指輪。これが、すべて終わる印になるのか。
「……はい」
一筆書き終えた時、広間の外で雷鳴が轟いた。
そして、セシリアの人生は崩れ去った。
***
その夜、侯爵家の屋敷を去ることになった。
父は遠征中で不在、母は病床に伏している。
屋敷の使用人たちは口には出さないが、彼女に対してどこか冷めた目を向けていた。
婚約破棄された令嬢など、もう価値がないと判断したのだろう。
「……ご令嬢、お身体にお気をつけて」
唯一、年老いたメイドのマーサが見送りに来てくれた。
「ありがとう、マーサ。あなたには、もう十分お世話になりました」
たった一つの小さな鞄を手に、門を出る。
冷たい雨が再び降り始めた。
セシリアはどこへ行く宛てがあるわけでもなかった。
友人たちの屋敷を訪ねることなどできない。貴族社会から転落した令嬢は格好の噂の種になるだけだ。
傘もなく街を歩き、泥にまみれながら、ただ心の痛みが鈍く続いていた。
「……どうして、こんなことに」
呟いても、答えてくれる者はいない。
雨で裾が重くなり、足元がおぼつかなくなったそのときだった。
「おっと、大丈夫ですか、お嬢さん!」
声がして、背後から肩を支えられる。
見上げると、青年が心配そうに覗き込んでいた。
深い茶色の髪に、灰青の瞳。穏やかそうな顔立ちで、質素なシャツの袖をまくり上げている。
背中には、パンを焼くための粉袋らしき白い粉が付いていた。
「……パン屋さん?」
「ええ、近くの店で働いてます。ずいぶん濡れちゃって……早く屋根のあるところへ」
彼はそう言うと、自分の上着を脱ぎ、彼女の肩にかけてくれた。
初対面の青年にそうされたのは初めてで、セシリアは言葉を失った。
「そんな……見ず知らずの私に」
「困ってる人を放っておけない性分なんです。名前、聞いてもいいですか?」
「セシリア……です」
「セシリアさん。リアムです」
青年――リアムは微笑んだ。その笑顔はどこまでも柔らかく、温かかった。
「少し休んでいきませんか?パン屋の奥に、暖炉があります」
「……ご迷惑をおかけします」
そう答えた瞬間、頬を伝った雨水が、いつのまにか涙に変わっていた。
***
小さな店に入ると、香ばしい香りが迎えてくれた。
温かい空気が肌を包み込み、泥で冷えた足がじんわりと解けていく。
リアムは湯気の立つカップを差し出した。
「蜂蜜入りのミルクです。風邪ひかないように」
「ありがとうございます」
受け取った手がかすかに震えた。あたたかい。
失ったものの分だけ、心を閉じていたせいかもしれない。
けれど、彼の優しさが少しずつ、その扉を叩いていた。
「……リアムさん、どうして私を助けてくれたんですか?」
「助けた、って言うほどのことでも。誰かが困ってたら手を出す、それだけです」
「でも、あなたは私の事情を知らない。私は――」
「事情なんて関係ありません」リアムは穏やかに首を横に振った。
「寒そうな人がいた。その人を助けたい。理由は、それで十分でしょう?」
その言葉が胸の奥で深く響いた。
誰も私を信じてくれなかった今日という日に、そんな言葉をかけてくれる人がいる。
それだけで、少しだけ涙がこぼれた。
リアムは慌ててタオルを差し出した。
「泣かないで。……きっと、すぐにいいことがありますよ」
「いいこと、ですか?」
「ええ。人生、悪いことばかり続かないもんです」
セシリアはその言葉をどう返せばいいのか分からず、ただカップを握りしめた。
けれど胸の奥に、ほんの小さな灯がともるのを感じた。
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(続く)
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