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第4話 パン屋の青年リアム
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朝の光が小さな窓から差し込み、店の中を柔らかく照らしていた。粉の舞う空気が金色にきらめき、パンの香りがゆっくりと満ちていく。セシリアは捏ね台の上で生地を押しながら、ほっと息をついた。今日でここに来て三日目。まだ慣れないが、リアムの穏やかな声と、パンの焼ける匂いに救われている。
「ここの生地、少し締まりすぎてますね。こうして、優しく押してみてください。」
リアムが隣に立ち、彼女の手元を見つめながら助言をする。その指先は包み込むように柔らかく、動きには迷いがなかった。
「優しく、ですか?」
「ええ。生地って生きてるんですよ。乱暴に扱うと、ふんわり膨らんでくれません。」
「……人の心みたいですね。」
「そうかもしれませんね。」
リアムは笑うと、オーブンの火加減を見に行った。火のゆらめきが彼の横顔を照らす。その整った輪郭と、いつも穏やかに光る目が、見ているだけで不思議に安心をくれる。
セシリアはそんな彼の背中を見ながら、知らず知らずのうちに微笑んでいた。
「セシリアさん、今、いい笑顔でした。」
「えっ?」
「こねてる時の顔。すごく楽しそうだったから。」
「そ、そんなこと……」
頬が熱くなる。貴族の頃、そんなことを誰かに言われたことはなかった。笑顔など礼儀の一部であり、感情ではないと思っていた。
「笑うとね、パンも柔らかく焼けるんですよ。」
「それ、本当なんですか?」
「本当です。……たぶん。」
リアムの冗談に、セシリアは吹き出した。そして小さく「焦らない、焦げない」と自分に言い聞かせながらこね直した。
***
昼を過ぎたころ、近所の子どもたちがパンを求めてやってくる。
「リアム兄ちゃん!今日も甘いのある?」
「あるぞ。ほら、蜂蜜パンだ。」
「やったー!」
リアムは子どもたちにパンを手渡し、小銭代わりに用意したクッキーをおまけにつける。
「そんなにサービスして大丈夫なんですか?」とセシリアが問うと、リアムは笑って肩をすくめた。
「子どもの笑顔は元が取れないほど価値がありますから。」
その言葉に、思わず胸があたたかくなる。それは彼の軽い冗談のようでもあり、本心のようでもあった。
「リアムさんは……どうしてパン屋をしているんですか?」
「どうして?」リアムは少し考えてから、パン屑を払いつつ答えた。
「昔、旅の途中でね。倒れた時にパンをくれた人がいたんです。その人の焼いたパンが、信じられないくらいおいしくて。『ああ、人を幸せにできる食べ物だな』って思ったんですよ。だから俺も、そんなパンを焼けたらと思って。」
セシリアは目を見開いた。
「優しいんですね。」
「いや、打算的ですよ。お客さんが喜んでくれたら、店が潰れませんから。」
そう言いながらも、リアムの微笑みには揺らぎがなかった。
それ以上掘り下げるのはやめた。どうしてだか、彼には言葉にしない過去があるような気がした。
***
午後、少し風が強くなった。看板が揺れ、ドアの上に取り付けられた小さな鈴が鳴る。
セシリアが焼き上がったパンを並べていた時、店の扉が開いた。
「こんにちはー。噂の美人店員さんはここかしら?」
聞き慣れた、しかし二度と聞きたくなかった声だった。
セシリアの背筋が硬直する。
入ってきたのは、ローラ・リンドベル。セシリアの元婚約者セドリックの傍にいた、あの令嬢だった。
「まあ、ほんとうにいたのね。あの侯爵令嬢が、こんなところでパンを売っているなんて!」
その声音には、あからさまな嘲りが混じっていた。
リアムが眉をひそめる。
「お客様。ご用件をお伺いします。」
「ただの通りすがりよ。ねえセシリア、落ちぶれてもお綺麗でいられるのね。だけど、そのエプロン姿は少し笑えるわ。」
セシリアは唇をかみ、何も言わなかった。
「ご注文がないなら、お引き取りを。」リアムの声は静かだったが、その眼差しには鋭さが宿っている。
「まあ、怖い。パン屋のくせに随分強気じゃない。」
ローラは皮肉な笑みを浮かべ、セシリアの耳元へと身を寄せた。
「彼、あなたが捨てられたことを知っても、まだ優しくしてくれるかしら?可哀想ね。」
その瞬間、セシリアは初めて真正面から彼女の目を見た。
「あなたの言葉に、もう傷つきません。」
淡々とした声だった。
「私は、あなたみたいに“誰かの後ろ”に隠れて生きるのはもうやめました。」
ローラの表情がこわばる。リアムが静かに口を開いた。
「ここはパン屋です。言葉で他人をなじる場所ではありません。」
「……失礼しました」
吐き捨てるように言って、ローラは踵を返した。ドアの鈴が強く揺れ、外の風が店に吹き込む。
セシリアはしばらく動けなかった。胸の奥に残るざらついた痛みを、ゆっくりと飲み込むようにして。
その腕に、リアムがそっとタオルを差し出した。
「よく我慢しましたね。」
「我慢というか……やっと言えたんです。自分で。」
リアムは少し笑った。
「強くなりましたね。」
「そうでしょうか。でも、不思議なんです。パンをこねていると、悔しい気持ちも形が変わる気がして。あの人の言葉も、もうどうでもよくなって。」
「それはいい傾向です。じゃあ明日は、バニラを使って新しいパンを作りましょう。甘い香りに包まれたら、嫌な気分も完全に飛びます。」
セシリアは微笑んだ。
あんな出来事のあとに、笑える自分がいる。そのことが信じられなかった。
リアムには、思いやりというより“寄り添う力”があった。何も言葉を飾らず、ただ隣で当たり前のように励ます。その穏やかさに、心がほどけていく。
***
その夜、厨房の窓際で、セシリアは静かに焔を見つめていた。
リアムが片付けを終えると、彼女に麦わら色のマントを掛けてくれた。
「冷えますよ。」
「ありがとうございます。」
「今日は本当に頑張りましたね。」
「リアムさんがいてくれたから、です。」
彼は返事をしなかった。ただ、微笑んだまま夜空を仰ぐ。
「星、好きなんですか?」
「ええ。パンを焼く間って、火を見つめる時間が長いでしょう?そのあと、外に出て星を見るのが習慣なんです。火と星は似てるんですよ。どちらも、暗闇を照らしてくれる。」
セシリアも夜空を見上げた。小さな星が瞬く。その光は静かだったけれど、確かにあった。
――この人といると、過去が遠ざかる。
心の奥で、そんな想いが生まれた。
「リアムさん。」
「はい?」
「私、もう少しここで働いてもいいですか?」
「もちろん。むしろ、お願いしたいくらいです。」
「ありがとうございます。」
その微笑の中に、少しだけ特別なぬくもりを感じた。
炎の明かりが二人の影を壁に映し出す。
その夜、セシリアは初めて未来を恐れずに眠りについた。
パンの香りと、誰かの優しさに包まれて。
(続く)
「ここの生地、少し締まりすぎてますね。こうして、優しく押してみてください。」
リアムが隣に立ち、彼女の手元を見つめながら助言をする。その指先は包み込むように柔らかく、動きには迷いがなかった。
「優しく、ですか?」
「ええ。生地って生きてるんですよ。乱暴に扱うと、ふんわり膨らんでくれません。」
「……人の心みたいですね。」
「そうかもしれませんね。」
リアムは笑うと、オーブンの火加減を見に行った。火のゆらめきが彼の横顔を照らす。その整った輪郭と、いつも穏やかに光る目が、見ているだけで不思議に安心をくれる。
セシリアはそんな彼の背中を見ながら、知らず知らずのうちに微笑んでいた。
「セシリアさん、今、いい笑顔でした。」
「えっ?」
「こねてる時の顔。すごく楽しそうだったから。」
「そ、そんなこと……」
頬が熱くなる。貴族の頃、そんなことを誰かに言われたことはなかった。笑顔など礼儀の一部であり、感情ではないと思っていた。
「笑うとね、パンも柔らかく焼けるんですよ。」
「それ、本当なんですか?」
「本当です。……たぶん。」
リアムの冗談に、セシリアは吹き出した。そして小さく「焦らない、焦げない」と自分に言い聞かせながらこね直した。
***
昼を過ぎたころ、近所の子どもたちがパンを求めてやってくる。
「リアム兄ちゃん!今日も甘いのある?」
「あるぞ。ほら、蜂蜜パンだ。」
「やったー!」
リアムは子どもたちにパンを手渡し、小銭代わりに用意したクッキーをおまけにつける。
「そんなにサービスして大丈夫なんですか?」とセシリアが問うと、リアムは笑って肩をすくめた。
「子どもの笑顔は元が取れないほど価値がありますから。」
その言葉に、思わず胸があたたかくなる。それは彼の軽い冗談のようでもあり、本心のようでもあった。
「リアムさんは……どうしてパン屋をしているんですか?」
「どうして?」リアムは少し考えてから、パン屑を払いつつ答えた。
「昔、旅の途中でね。倒れた時にパンをくれた人がいたんです。その人の焼いたパンが、信じられないくらいおいしくて。『ああ、人を幸せにできる食べ物だな』って思ったんですよ。だから俺も、そんなパンを焼けたらと思って。」
セシリアは目を見開いた。
「優しいんですね。」
「いや、打算的ですよ。お客さんが喜んでくれたら、店が潰れませんから。」
そう言いながらも、リアムの微笑みには揺らぎがなかった。
それ以上掘り下げるのはやめた。どうしてだか、彼には言葉にしない過去があるような気がした。
***
午後、少し風が強くなった。看板が揺れ、ドアの上に取り付けられた小さな鈴が鳴る。
セシリアが焼き上がったパンを並べていた時、店の扉が開いた。
「こんにちはー。噂の美人店員さんはここかしら?」
聞き慣れた、しかし二度と聞きたくなかった声だった。
セシリアの背筋が硬直する。
入ってきたのは、ローラ・リンドベル。セシリアの元婚約者セドリックの傍にいた、あの令嬢だった。
「まあ、ほんとうにいたのね。あの侯爵令嬢が、こんなところでパンを売っているなんて!」
その声音には、あからさまな嘲りが混じっていた。
リアムが眉をひそめる。
「お客様。ご用件をお伺いします。」
「ただの通りすがりよ。ねえセシリア、落ちぶれてもお綺麗でいられるのね。だけど、そのエプロン姿は少し笑えるわ。」
セシリアは唇をかみ、何も言わなかった。
「ご注文がないなら、お引き取りを。」リアムの声は静かだったが、その眼差しには鋭さが宿っている。
「まあ、怖い。パン屋のくせに随分強気じゃない。」
ローラは皮肉な笑みを浮かべ、セシリアの耳元へと身を寄せた。
「彼、あなたが捨てられたことを知っても、まだ優しくしてくれるかしら?可哀想ね。」
その瞬間、セシリアは初めて真正面から彼女の目を見た。
「あなたの言葉に、もう傷つきません。」
淡々とした声だった。
「私は、あなたみたいに“誰かの後ろ”に隠れて生きるのはもうやめました。」
ローラの表情がこわばる。リアムが静かに口を開いた。
「ここはパン屋です。言葉で他人をなじる場所ではありません。」
「……失礼しました」
吐き捨てるように言って、ローラは踵を返した。ドアの鈴が強く揺れ、外の風が店に吹き込む。
セシリアはしばらく動けなかった。胸の奥に残るざらついた痛みを、ゆっくりと飲み込むようにして。
その腕に、リアムがそっとタオルを差し出した。
「よく我慢しましたね。」
「我慢というか……やっと言えたんです。自分で。」
リアムは少し笑った。
「強くなりましたね。」
「そうでしょうか。でも、不思議なんです。パンをこねていると、悔しい気持ちも形が変わる気がして。あの人の言葉も、もうどうでもよくなって。」
「それはいい傾向です。じゃあ明日は、バニラを使って新しいパンを作りましょう。甘い香りに包まれたら、嫌な気分も完全に飛びます。」
セシリアは微笑んだ。
あんな出来事のあとに、笑える自分がいる。そのことが信じられなかった。
リアムには、思いやりというより“寄り添う力”があった。何も言葉を飾らず、ただ隣で当たり前のように励ます。その穏やかさに、心がほどけていく。
***
その夜、厨房の窓際で、セシリアは静かに焔を見つめていた。
リアムが片付けを終えると、彼女に麦わら色のマントを掛けてくれた。
「冷えますよ。」
「ありがとうございます。」
「今日は本当に頑張りましたね。」
「リアムさんがいてくれたから、です。」
彼は返事をしなかった。ただ、微笑んだまま夜空を仰ぐ。
「星、好きなんですか?」
「ええ。パンを焼く間って、火を見つめる時間が長いでしょう?そのあと、外に出て星を見るのが習慣なんです。火と星は似てるんですよ。どちらも、暗闇を照らしてくれる。」
セシリアも夜空を見上げた。小さな星が瞬く。その光は静かだったけれど、確かにあった。
――この人といると、過去が遠ざかる。
心の奥で、そんな想いが生まれた。
「リアムさん。」
「はい?」
「私、もう少しここで働いてもいいですか?」
「もちろん。むしろ、お願いしたいくらいです。」
「ありがとうございます。」
その微笑の中に、少しだけ特別なぬくもりを感じた。
炎の明かりが二人の影を壁に映し出す。
その夜、セシリアは初めて未来を恐れずに眠りについた。
パンの香りと、誰かの優しさに包まれて。
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