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信じられない
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清美が、突然鳥羽の歓迎会を開くと言い出したので……私はものスゴく残念な気持ちになった。
そこまで心酔していたとは……知らなかった。
「あ。じゃ、私抜きで」
「なんだ、菊池さん来ないの?」
ゼミ終わりにニヤニヤしながらやって来た鳥羽が小憎らしい。
とりあえず、昨日の傘を突っ返す。
「昨日はどうも」
「あぁ、別に研究室に渡しに来てくれたら良かったのに」
誰が行くかっ。
「いいなぁ。春樹、相当鳥羽教授に気に入られてるじゃん」
全然嬉しくない。
「菊池さんはあの研究室の住人みたいなものだったからね。僕も堂本教授みたいに仲良くなりたいんだよ」
「えーっ! それって『恋』って事ですかぁ?!」
わざとらしい清美の声にげんなりする。
「あ……。いや、そういう意味じゃ、ないんだけどさ」
私は、初めて鳥羽が困惑して、苦笑いする姿を見た。
ちょっと、ビックリした。
そんな話を私たちがしている間にも、呑むのが好きな男子どもは既に居酒屋の予約の話をしている。
みんな、進級論文の事は覚えているのだろうか? と思う。
「とにかく、歓迎会には行きません。進級論文書いて唸らしてやるんで」
「でも一日ぐらい、いいじゃないか」
なんで誘われているのかが分からない。
なのに、
「いいなー、春樹! 鳥羽教授直々に誘ってもらえて!」
唯一の友はこれときたもんだ。できる事なら立場を変わって欲しい……。
「あのね、『鳥羽助教授様』! 自分を唸らすぐらいの論文を書いて来いって言ったのはアナタです!」
「あ。僕、教授だった」
開いた口が塞がらなくなった。
「はい?」
「いや、こちらに派遣された時点で教授になっていた事すっかり忘れてて……紹介の時、思わず『助教授』って言ってしまったんだよね」
「ほら、おじいちゃん先生が突然亡くなられてから、急きょ寄附講座から派遣されたから──」
「あ。あぁ……」
「だから昇級祝いも兼ねてる訳よ!」
あまりに間抜けな昇級祝いである。尚更行きたくない。
「行こうよ、菊池さん」
「行こうよ、春樹!」
二人に迫られても、私の決意は揺るがない──というか、なんでわざわざ憎たらしく思っている奴を祝ってやらなきゃいけないのだろう。
「おいでよ。堂本教授の話、君とゆっくりしたいんだ。渡したいものもあるし」
渡したい、もの?
私が不審がってる間にも、清美は、これぞ渡りに船! と言わんばかりに私に「行こう行こう!」と連呼してきた。
仕方なく、私は渋々承諾する事になってしまった。
飲み会は明後日らしい。なんと気の早い事で……。
清美が、突然鳥羽の歓迎会を開くと言い出したので……私はものスゴく残念な気持ちになった。
そこまで心酔していたとは……知らなかった。
「あ。じゃ、私抜きで」
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とりあえず、昨日の傘を突っ返す。
「昨日はどうも」
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全然嬉しくない。
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「えーっ! それって『恋』って事ですかぁ?!」
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ちょっと、ビックリした。
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なのに、
「いいなー、春樹! 鳥羽教授直々に誘ってもらえて!」
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「あのね、『鳥羽助教授様』! 自分を唸らすぐらいの論文を書いて来いって言ったのはアナタです!」
「あ。僕、教授だった」
開いた口が塞がらなくなった。
「はい?」
「いや、こちらに派遣された時点で教授になっていた事すっかり忘れてて……紹介の時、思わず『助教授』って言ってしまったんだよね」
「ほら、おじいちゃん先生が突然亡くなられてから、急きょ寄附講座から派遣されたから──」
「あ。あぁ……」
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