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冒険者パーティーイレヴンズ
体温の高さに驚くがいい!!
しおりを挟む「よし、私は走る気は無いから歩きながらアキのスキルを検証しましょう」
息を整えながら歩くハルがそう言う。
そんな気持ちでファンタジー世界を生き残れるのか?
「ユラさん達はエメが追いついてくれるので心配はありませんよ」
早歩きで追いついてきたナナ、この人は自分の召喚鳥を可愛がっていて出遅れたんだろうな。
「後ろから見てたけど、スキルの脚力強化使ってみたんでしょ、バランス崩れてるのがよく分かったわ」
「自分でもそれは分かった。そもそも連続して使うスキルじゃないのかもしれない」
「それは慣れれば変わってくるんじゃない?単発で使うにしてもレベルを上げて使いこなせば有用なスキルだと感じるわ」
「それは同感」
正直、事前に想像してた通りの使い方ができるとは思う、ただ効果の方がそこまで高くはなかったけど、今のレベルじゃ聖女以下の脚力だったからな。
「剣術は歩きながらは試せないし、勇者剣技を見てみましょう!」
「了解」
やっぱり俺が使えるスキル少ないな、試せるのはこれだけか。
腰の剣を抜いて両手で構える、会得したスキルは使い方は分かるのでただ頭の中で念じる。
「・・・」
うっすい水が剣の周りを覆う。
「・・・」
うっすい! よく考えると剣に水を纏わせて何になるんだろう?
「これで勇者武技って名前詐欺ね」
他人事だと思ってニヤってするな、恥ずかしい。
水を飛ばすイメージで剣を振る、細い水の刃が目で余裕で追える速さで5メートルほど飛んで消えた。
何もせずとも再び水が剣を包む。
「・・・」
「ファイアーボール!」
おう、唐突にハルが魔法を使った。
「・・・」
ハルの手から放たれたテニスボールサイズの火の玉が投げるより遅いペースで飛んで15メートルくらい進んだ所で消えた。
「ま、レベル1のスキルなんてこんなモノって事でしょ。気楽に行きましょ」
おお、小さいハルさんカッコいい!ニカって笑顔素敵!
「スキルはレベルが上がらずとも使いこなす事で効果は少しずつ上がりますからね。これからですよ」
言いながらナナが腰から外した鞭を手に持った。
ビュオン、ビュン、ヒュンヒュンヒュン!
「うわっ!」
「凄いわね!」
目の前で縦横無尽に駆け巡る鞭、いや、速っ、攻撃範囲も広い。これ、反応して避けられるレベルじゃないぞ!
鞭強くない?こんなの剣じゃ戦えないぞ!?
「私の鞭術スキルはレベル4です。参考になりました?」
「なったわ!レベルを上げるのが楽しみになった! ああ、私も魔法を一つくらい高レベルにするんだったわー」
「まあまあ、レベルが上がればスキルポイントも貰えますから。」
「そうよね!そうよね!早くモンスター出て来なさい!」
なんか、ハルのテンションの上げ方がいかにも無駄遣いしそうな・・・いや、何も言うまい。
スキルのレベル4か今の俺の残ポイントなら持っているスキルを3つともそこまで上げれる。
なんなら新しいスキルをレベル6まで上げる事も出来るのか。
「ちなみに私の召喚スキルはレベル5ですよ」
「・・・」
「・・・」
ノーコメントで、
「さて、ここからが本題よ。その水って動かせるの?」
剣を覆う水を動かす?
ハルに言われて試してみると・・・動くな、ゆっくりだけど刃の周りをベルトコンベアの様に進む。
「出来るみたいね、どう、もっと速く出来そう?」
「多分、いや、出来るな」
スキルのレベルがこのままでも慣れれば速く出来そう、というか実際少しずつ速くなっていってる。
「いいわね、面白く出来そう。私はこのままスキルのレベルを上げるのを押すわ」
意味ありげに口角を上げるハル、笑顔が悪役っぽくなってるな。
俺にも何をやりたいのかは理解できた。
「水をチェンソーにするのか」
「正解、実際にはウォーターカッターを目指して欲しいんだけどね」
「ウォーターカッター・・・?」
ナナ王女は知らないか。
確か水に圧力をかけた上でもの凄い速さで噴射して何でも切れるみたいな感じの・・・
「簡単に言うと凄い速さで動かした水は何でも斬れる様になるという技よ」
「そうなんですか?そんな凄い事が出来るんですね!!」
いや、指を立ててドヤって説明してるけど色々足りないだろ!
超高速で動かすとかそんな速さで水を動かせる様になるとは到底思えない。
いや、でもウォーターカッターの完全な模倣は無理にしても、それに近い事は出来るかも、少なくともチェンソー的な事は出来そうだし、そもそもが勇者武技と名のつくスキルだ、レベルが上がれば本当にウォーターカッターみたいになる可能性も・・・
「そうだな、悪くないかも」
「でっしょー!!」
ボソッと呟いただけなのに凄い笑顔を向けられた、笑顔の種類多いなこの人。
それからも剣の水を動かしながら歩いていく、スキルの効果なのかそこまで意識しなくても水を動かし続けられるんだよな、これなら戦闘中とかでも維持は出来そう。
森に着いたら木でも試し切りしてみるかな。
その手応えを見て勇者武技と剣術のスキルのレベルを上げてみよう。
いや、違うわ。忘れてたけどもう一つスキルがある浮遊剣だ。
ハルがくれた木剣型爆弾という謎のものがあるからアイテムボックスのスキルで取り出して。
「あっ、忘れてたわ、浮遊剣のスキルだったっけ?」
同じく忘れていたらしいハルに頷き俺は木剣から手を離す。
・・・浮くな。ふわふわ浮く。
自分の意思で動かせるがゆっくりふわふわ動くので、今の段階では攻撃したり防御したりは出来なそうだな。
修練とレベルアップで変わってはいくんだろうけど。
「なんとも微妙ね」
「剣をモンスターの形にすればかわいいかと思いますが、モコモコフワフワの」
王女様それは剣じゃない!ぬいぐるみだ!
剣を動かせる範囲は多分これ俺の手の届く範囲だな、つまり見えない代わりに遅くて力もない腕が一本増える感じ、微妙だ。
「動かす剣の数は増やせない?」
「無理そうだな。感覚的に出来ないのが分かる」
「そう・・・」
思案顔のハルが浮いている木剣を優しく掴む。
「あなたが持ってる普通の剣でも試してみましょう、重さ的に木の剣が限界なら微妙すぎるわ」
それは確かに、ところで俺の剣は今も勇者武技の水を纏ったままなんだが・・・
いや、これ普通に出来そうな気がするぞ。
剣から慎重に手を離すと剣は先程の木剣と同じ様にふわふわと浮く。
しかも勇者武技のスキルは解除されないから水を纏ったまま、その水も俺の意思で動かす事も出来る。
「これ・・・スキルコンボが出来るって事ね。面白そうだわ!」
目を爛々と輝かせる横でナナ王女の瞳もキラキラしてる。
「これ、魚とか水竜の形をした剣にすればかわいいですね!」
・・・いや、だからそれ剣じゃない!
ハルの話には同感だな、勇者武技がこれから強化されていくならそれを遠距離で自由に動かせるスキルはかなり面白いかも。
それでも浮遊剣のスキルは後回しかな、勇者武技の強化があってこそだし。
「?」
一瞬ふらりとした? ステータスカードを見てみると俺のMPが1桁になってる!
慌ててスキルを解除して剣を鞘にしまう。
「MP切れだ」
「ああ、私達はまだレベル1だもんね。それを考えると燃費の悪いスキルじゃないんじゃない?水の剣なんて結構使ってたでしょ」
まー、確かに、燃費が悪いって事はないけど、ただ今のところ戦闘力上がってる感じはないな・・・。
でっかい森だな、もう視界が全て森って感じだ。
「この森の先には何があるの?」
「ダンジョンがあります。というか、奥の方は森がダンジョンになっています」
「へー、ダンジョン! 面白そうね、この世界ではダンジョンってどういう所なの?」
「そうですね。ダンジョンとは常識の通じない場所、ですかね。この森のダンジョンは迷いの森と言われています、少し歩くたびに違う場所に移動してしまっているとかで、生還率はかなり低いです、帰って来れるのは5パーセントくらいだった筈」
「怖っ!」
「俺達、これからそんな場所に行って平気なのか?」
「えっ、それは大丈夫ですよ。ダンジョンまでは森の中をかなり歩かなきゃですし、私達では1日では辿りつかないかと」
「やっぱり強いモンスターとかがいるの?」
ハルはダンジョンに興味津々なんだな、まあ、俺も興味あるけど。
ってあれ、ナナの目がえらいキラキラして
「います!!珍しくも美しい動物達がいるんです!!何を隠そう私のエメも迷いの森で冒険者が捕らえたのです!!いつか、行ってみたいんです!行きましょうね!!」
「え、ええ。行きましょうね」
勢いに負けて簡単に頷くなよ!簡単に帰れない森とか嫌だぞ!
わー、ぐりんって王女の首がこっちに向いた!俺の手が王女の両手で包まれる。
「アキさんも一緒に行ってくれますよね!!」
「あ、あああ、行くよ」
ハルが情けない奴みたいにこっちを見てくる、王女の手凄い熱いんだぞ!ホッカイロくらい熱いんだからな!逆らえないだろ!
わー、近くで見る王女のほっぺピンクに染まってる、瞳からは星が飛んでるし本当に美少女。・・・怖いから手を離してくれないかな。
「迷いの森にはエメの様に額に宝石に似た石をつけた生物が多くいるのですよ!!私はその中でもしなやかな美しさを持つ猫科の魔物を召喚獣にしたいんですよ!!背中に乗りたいんですよ!!」
「そうなの、それはちょっと楽しみね。どんな生き物がいるのかしら」
「ですよね!ですよね!ハルさんなら分かってくれると思ってました!!」
ナナが俺の手を解放してハルに飛びついていく、油断したな賢者ハル、王女の体温の高さに驚くがいい!
「あふっ!」
「・・・」
笑
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