補欠勇者のわくわくパーティー

D−con

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冒険者パーティーイレヴンズ

賢者さんが自爆した?

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 昨日はあの後も少し話をしてから解散になった訳だけど、色々考えてしまって眠れなかったな。

 殺される事はなかったとしても、うちのパーティーメンバーは見た目が整った女子達だ、魔王の5人目の嫁にとかいう展開になる事だってあるだろうし・・・。
 なんか、そうなった時、それぞれがそれぞれの理由で即断で魔王城に永住を決める顔が簡単にイメージできるんだよな・・・いや、別に個人の自由なんだけど、なんか嫌な気持ちになるというか、モヤっとする。

 結局、いざという時に魔王と戦えるというか対等でいられるような力は必要なわけで・・・でも、そんな都合のいいスキルは無いわけで・・・。

 そんな事ばかり考えてたら寝るタイミングを逃しちゃったんだよな、少しは寝れたけどさ。

 ・・・本当、なんなんだろ。うちのパーティーは、むしろ魔王に誘われたりしなくても勝手に魔王城に永住してしまいそうな雰囲気すらある・・・。
 そりゃ聖女と賢者らしからぬ性格とか言われるよな。

 テンションの上がらぬままに食堂に向かえば既に女性陣は揃っていた。
 朝から華やかだな・・・いや、またうちの賢者の目の下に深い隈が!!

「おはよー、アキ君よく寝れた?」

「・・・」

 お、おう。うちの聖女さんは朝から後光が刺すような笑顔を見せてくれているが、賢者の隈を目にしてしまえば眠れなかったなんて言える訳もない。

「おはようございます、アキさん」

 朝から癒しのオーラを放つ王女様には会釈を返し、無言で頭を下げるメイドにも会釈する。

「大丈夫よ、アキ。今日は宿の備品には手をつけてないわ」

 ぼんやりした目で手を振るハルの姿に口元が歪んでしまう、そんな心配するのは忘れてたが何の被害も出ていないなら良かった。
 うん、本当良かった。

「それに私のポーションは昨日手に入れた薬草を加える事で一段進化したから、期待して!」

 あっ、ポーション進化したんだ。その結果がその隈、原材料がシャンプーだった今までの物がそもそもポーションなのか怪しかったけどな。

「そして、見なさい!」

 早速ハルが取り出したのはハル自作のポーション瓶に入った、黒い液体。
 まー、どう考えても新作のポーションなんだろうけど。

「私が今日も睡眠不足になる事は分かっていたわ。そこで昨日のうちに用意してもらったコーヒーをベースに作り上げた眠気覚ましポーションよ!」

「・・・」

 いや、そんなテンション高く言われてもさ。俺の中のポーションってそういうんじゃないんだけど、なんだコーヒーをベースにって?

「私の回復魔法を込めることによって恐らくこのブラックコーヒーのカフェインは数倍に跳ね上がるわ!名付けて合法カフェインポーション!」

 いや、回復魔法でカフェインが跳ね上がるとかいう謎理論なに?
 なんで昨日からこの人達は合法って言葉が気に入ってるの!?

 と、うちの賢者さんが蓋を開けて飲み始めるぞ!わざわざ立ち上がった。

「ほら見てなさい!目が・・・めが・・・にがーーー」

「・・・」

 俺達の目の前で合法の黒い液体が全部ハルの口から零れ落ちたんだけど、ダラーって・・・。
 賢者さんが自爆した?

「・・・」

 白目を剥いたうちの賢者さんがカクッと意識を失う、おっと、ユラがナイスキャッチで受け止めた。だらんと重力に引かれるハルの死体感凄い・・・。

「ハルちゃん、紅茶派なのにいきなりブラックのコーヒーなんて飲むから、大丈夫寝てるだけ・・・はあっ!!ハルちゃんおっぱい小さいのに凄い柔らか!!」

 やめろ!余計な情報を大声で叫ぶな!

「ユラ様、ラズにも味見を、いえ、ラズがハルさんを部屋までお連れします」

「・・・」

 手をワキワキさせるメイド、どうなってるんだよ。俺が余計な感想を思う隙間すらないじゃないか。

「大丈夫、僕がハルちゃんを連れて行くから」

 うん、そうしてくれ。そのメイドには任せられない。
 おー、自然な動きでお姫様抱っこの態勢に、聖騎士風のユラだから凄い絵になる!
 あっ、近くで見てしまったメイドが立ちくらみを・・・。
 絵になるかと思ったけど意識を失ったハルの顔なかなかだな・・・、と俺の横を通るユラと目が合う。

「アキ君、ハルちゃんのおっぱいに僕の神の手(肉)のスキルを使ったらどうなるのかな?」

「やめろーーっ!!」

「冗談冗談」

 にひひと笑いながら足早に去っていくユラ、人1人抱えても余裕だな。
 と、いまだに手をワキワキさせてるメイドをよそに王女様がハルの口から流れ出したコーヒーを拭いている。

「ハルさんは研究熱心ですね。今日は予定変更になってしまいますが、ハルさんには休んでいただいて別行動ですかね。・・・誰かがハルさんに付き添うとしたら・・・わたくしがいいかもしれませんね」

 穏やかな顔でそう言う王女様は出来たお人だ。
 確かに誰か1人が付き添うなら消去法でナナしかいないんだよな、男の俺は論外だし、問題が何か起こった時を思えばこの世界の住人であるナナとラズのどちらかはいて欲しい。
 そして意識のないハルと謎のメイドは一緒にしておきたくない。

 信頼のないメイドってどうなんだろ・・・。


 戻ってきたユラと4人で朝食をとる。
 俺はたまごサンドにコンソメスープ、朝のコンソメスープうまー、1日の始まりがほっこりあったかくなるな。

「別行動だね。僕もそれでいいと思うよ」

 ハムエッグと分厚いベーコンと特大サラダとクロワッサンと戦う聖女さんが頷く。

「ただ残念なことにエメは今日1日私と過ごしますので、皆さんは迷わない様にしてくださいね。一応夜になっても戻らない時はエメに向かえに行ってもらいますので」

「・・・?」

 果物の入ったヨーグルトを食べているナナの言葉に俺は首を傾げる。

「どういう事だ?例えば俺達が森の中にいたとしてエメは俺達を見つけられるのか?」

「ええ、エメは賢い子ですから。ハスハス、一度認識した相手は忘れません、そしてその相手がどこにいるのかも分かるのです。賢い子ですから、ハスハス」

「・・・」

 スプーン片手に変な鼻息をやめて欲しい。
 地味に凄い能力持ってたんだなエメは、種族特性みたいなものか?
 そういえばダンジョンになってる迷いの森にいるモンスターだって昨日言ってたよな、もしかしてエメが一緒なら迷わないで済むとかあるんじゃないだろうか?
 試してみる事になったら怖いから口には出さないでおこう。

「ほーん、エメちゃん凄いんだね!」

「そうなんですよ、エメは素晴らしいんです。ハスハス」

「・・・」

 ちなみにラズはベーコンとチーズとトマトの入ったホットサンドを食べてる、美味しそうだな。

「よし、じゃあ僕達は今日も森でお肉狩りだね!実は昨日の反省を踏まえてスキルを取ったんだよ」

 どんどんスキルとるな、この子。
 見せるように出されたステータスカードを覗けば追加されたスキルは魔物感知、離れた所にいる魔物を見つけるスキルか、これは確かに有用なスキルだと思う、パーティーに1人持ってくれてる人がいれば助かるだろう。
 それが一気にレベル4になってる、昨日のゴブリン倒したレベルアップで手に入れたポイント全部使ってる・・・うちの聖女さんいまだに戦闘用のスキルが1つも無いけど怖く無いのか?

「魔物感知ですか!!いいスキルを!いいスキルを選びましたね!ハスハスハスハ!素敵なモンスターを見つけたら生捕りでお願いします!」

「うーん、それはどうかな?」

「・・・」

 うちの聖女さん食べる気満々の顔してる。
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