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復讐するのは悪い人?
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涙でぬれた顔をあげて咲良を見上げる瑠伽は、咲良の言葉の意味を理解しようとしているようだ。
「今なら『森羅万象』もついて必ず成功する特典もついてお得ですよ~。復讐の大安売りです」
「そんな物騒なものを売るな! 咲良、お前なにを……」
「神楽は黙っててください~。私は大事なお話し中です」
「ふくしゅう?」
「そうです。兄弟を殺した人に後悔してもらう活動ですよ~」
「痛い痛い? 苦しい?」
「そうしたいならそうすればいいです。世の中にはい~っぱい拷問方法や処刑方法があるんですよ~。普通は手に入れられませんがぁ。具現化魔法を使えば速達です~」
こいつ世の中の事に興味がない癖にどうしてそういう物騒なことばかり知ってるんだと思いつつ、シャレになっていないと焦る。
他人に手を差し伸べるようになってほしいとは思ったが復讐に手を貸すことは望んでいない。
咲良は健気に見上げてくる瑠伽を軽く抱き寄せて、いつものように言う。だが、その目は優しくて斜め下な咲良の善意であることがわかる。
「それは、悪い、こと?」
「当然の報いですね」
「痛いの、嫌なのにいいこと、なの?」
「ん~。私や神楽が痛いのは悪い事ですけど~。ヴィンズが苦しむのは当然ってことです~」
「曲解したことを教えるな馬鹿!」
「神楽はこの天才を馬鹿馬鹿って言いすぎじゃないですか? こ~んなに素晴らしい天才後にも先にも私だけですよ?」
「何度も言ってるだろう。お前は! 馬鹿と! 天才は紙一重の典型、だと!」
そう言っている間に、瑠伽は咲良の言ったことの意味を考えているようだった。自分の気持ちを確認していたのかもしれない。
しばらく黙っていた瑠伽が、咲良の袖をひっぱった。
「痛いのは、嫌なこと。だからやらなくて、いい」
「むぅ。瑠伽も咲斗みたいなお人好しさんでしたか。残念です」
はっきりと拒否した瑠伽に神楽はホッと胸をなでおろす。優しい子でよかった。
本当に残念そうに言った咲良は、意外なほどあっさり引き下がった。元々無理強いはしないつもりだったのだろう。強行したら神楽が起こるとわかっているからかもしれないが。
「私のお気に入りってどうしてみーんなお人好しなんでしょうか」
やれやれ、と首を振る咲良は、いつの間にか瑠伽のことをお気に入り認定したらしい。
「咲良、お前は……」
「あーんもう。そんなに怒らないでくださいよー」
「怒られることをした自覚はあるんだな」
「まあまあ、いいじゃないですか~」
「よくない! お前瑠伽が望んだら何をするつもりだった」
「想像はついてるんじゃないですか? 多分その通りですよ~」
「っ……」
呆れ交じりのそれとは違う、剣呑な色を帯びて色の違う両の目で濃紫の瞳を睨む。いつもと違う棘のある目線に、咲良は瞳の色と光を消して口だけで笑う。
一歩進んだと思えば一歩、時にそれ以上下がる。もはやわざとではないかと思える行動に、咲良の必死の線引きを、牽制を感じていた。まるでこうあらないといけない。こう思ってはいけないと。あるいはこの狂気を、怒りを、恨みを忘れたくないと。
慈悲を踏みじみられ、心も体も傷つかれれてなお愚かな人を憎めず、手を差し伸べようとする片割れのようにはならないと。
決して許してなるものかと、片割れの代わりに、片割れの分まで。
咲良はいつも咲斗が優しすぎると、短所であるかのように語る。それも咲良の線引きの手段の一つなのだろうか。
神楽は双子ではない。それどころか兄妹すらいない。閉鎖的な所で両親二人と育った。
咲良と比較すればまともなだけで、神楽もまた特殊すぎる環境で育まれた。それを自覚しているからこそ、神楽は一考してからでしか咲良に物事を諭せない。
けれど、それでも、咲良が大事な人の叫びに狂い強大すぎる力を奮えば戻ることはできないと、漠然と確信していた。
「咲良様、お兄ちゃんと喧嘩、してるの?」
「……喧嘩なんてしてないですよ~。神楽の頭がす~っごく固いだけです~」
「咲良、今回ばかりははぐらかされてやらない。それだけは……」
「……もう。神楽も咲斗も瑠伽も、優しければそんな思考になるんですかねぇ。本当に。ええ、本当に……」
本当に、の後に続く言葉が神楽の耳に届くことは無かった。
強固に張ったはずの結界に、感じてはいけない衝撃が上空からぶつけられた。
—―本当に、気持ち悪い。
咲良の心の奥底にある本音を聞き洩らしたのは偶然か、はたまた何かの悪戯か。
それを考えることすらできないまま、神楽は結界を壊そうとする何かに向けて結界の強度を上げた。
「今なら『森羅万象』もついて必ず成功する特典もついてお得ですよ~。復讐の大安売りです」
「そんな物騒なものを売るな! 咲良、お前なにを……」
「神楽は黙っててください~。私は大事なお話し中です」
「ふくしゅう?」
「そうです。兄弟を殺した人に後悔してもらう活動ですよ~」
「痛い痛い? 苦しい?」
「そうしたいならそうすればいいです。世の中にはい~っぱい拷問方法や処刑方法があるんですよ~。普通は手に入れられませんがぁ。具現化魔法を使えば速達です~」
こいつ世の中の事に興味がない癖にどうしてそういう物騒なことばかり知ってるんだと思いつつ、シャレになっていないと焦る。
他人に手を差し伸べるようになってほしいとは思ったが復讐に手を貸すことは望んでいない。
咲良は健気に見上げてくる瑠伽を軽く抱き寄せて、いつものように言う。だが、その目は優しくて斜め下な咲良の善意であることがわかる。
「それは、悪い、こと?」
「当然の報いですね」
「痛いの、嫌なのにいいこと、なの?」
「ん~。私や神楽が痛いのは悪い事ですけど~。ヴィンズが苦しむのは当然ってことです~」
「曲解したことを教えるな馬鹿!」
「神楽はこの天才を馬鹿馬鹿って言いすぎじゃないですか? こ~んなに素晴らしい天才後にも先にも私だけですよ?」
「何度も言ってるだろう。お前は! 馬鹿と! 天才は紙一重の典型、だと!」
そう言っている間に、瑠伽は咲良の言ったことの意味を考えているようだった。自分の気持ちを確認していたのかもしれない。
しばらく黙っていた瑠伽が、咲良の袖をひっぱった。
「痛いのは、嫌なこと。だからやらなくて、いい」
「むぅ。瑠伽も咲斗みたいなお人好しさんでしたか。残念です」
はっきりと拒否した瑠伽に神楽はホッと胸をなでおろす。優しい子でよかった。
本当に残念そうに言った咲良は、意外なほどあっさり引き下がった。元々無理強いはしないつもりだったのだろう。強行したら神楽が起こるとわかっているからかもしれないが。
「私のお気に入りってどうしてみーんなお人好しなんでしょうか」
やれやれ、と首を振る咲良は、いつの間にか瑠伽のことをお気に入り認定したらしい。
「咲良、お前は……」
「あーんもう。そんなに怒らないでくださいよー」
「怒られることをした自覚はあるんだな」
「まあまあ、いいじゃないですか~」
「よくない! お前瑠伽が望んだら何をするつもりだった」
「想像はついてるんじゃないですか? 多分その通りですよ~」
「っ……」
呆れ交じりのそれとは違う、剣呑な色を帯びて色の違う両の目で濃紫の瞳を睨む。いつもと違う棘のある目線に、咲良は瞳の色と光を消して口だけで笑う。
一歩進んだと思えば一歩、時にそれ以上下がる。もはやわざとではないかと思える行動に、咲良の必死の線引きを、牽制を感じていた。まるでこうあらないといけない。こう思ってはいけないと。あるいはこの狂気を、怒りを、恨みを忘れたくないと。
慈悲を踏みじみられ、心も体も傷つかれれてなお愚かな人を憎めず、手を差し伸べようとする片割れのようにはならないと。
決して許してなるものかと、片割れの代わりに、片割れの分まで。
咲良はいつも咲斗が優しすぎると、短所であるかのように語る。それも咲良の線引きの手段の一つなのだろうか。
神楽は双子ではない。それどころか兄妹すらいない。閉鎖的な所で両親二人と育った。
咲良と比較すればまともなだけで、神楽もまた特殊すぎる環境で育まれた。それを自覚しているからこそ、神楽は一考してからでしか咲良に物事を諭せない。
けれど、それでも、咲良が大事な人の叫びに狂い強大すぎる力を奮えば戻ることはできないと、漠然と確信していた。
「咲良様、お兄ちゃんと喧嘩、してるの?」
「……喧嘩なんてしてないですよ~。神楽の頭がす~っごく固いだけです~」
「咲良、今回ばかりははぐらかされてやらない。それだけは……」
「……もう。神楽も咲斗も瑠伽も、優しければそんな思考になるんですかねぇ。本当に。ええ、本当に……」
本当に、の後に続く言葉が神楽の耳に届くことは無かった。
強固に張ったはずの結界に、感じてはいけない衝撃が上空からぶつけられた。
—―本当に、気持ち悪い。
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