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愛は変態を助長させる

52: 特別な部屋?

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 道の駅で沢山遊んだ後、
僕たちはまた車に乗って
ホテルへと向かった。

僕はホテルなんて初めてで
車が地下駐車場に入った時は
ドキドキして隣に座る
真翔さんの腕を掴んでしまった。

車が止まったので、
車から下りようとしたら
ドアが勝手に開いて、
またビックリしてしまう。

ホテルの人が
ドアを開けてくれたみたいだ。

僕たちが荷物を下ろすと、
先輩さんは、ホテルの人に
車のカギを渡して
「行こう」とホテルの中に入っていく。

え?
車はそのまま放置なの?

「悠子、行くわよ」

「は、はい」

綾子さんに声を掛けられて
慌てて後を追いかけようとしたら
綾子さんも先輩さんも手ぶらだった。

に、荷物!

と焦ったら、
真翔さんに手を握られた。

「大丈夫。
行こう」

何が?
何が大丈夫なの?

僕が足もとにあったはずの
鞄を見ると、
何故か鞄がない。

え?
と思ったら、
ホテルの人が大きな
カートみたいなものに
僕たちの荷物を乗せて
運んでくれている。

任せてもいいの?

たったこれだけのことなのに
僕はもう、いっぱいいっぱいだ。

エレベーターに乗って
ホテルのフロントまで行くと
すでに先輩さんが
綾子さんと一緒に
何やらもめていた。

どうしたんだろう。

僕たちが近づくと、
綾子さんが僕を見る。

「悠子、あなた、
会員用の部屋でいいの?

嫌なら私と一緒に、
スィートルームに
泊まればいいわ」

僕は、意味が分からない。

「えっと、ぼく…私は
どこでも構わない、です」

スィートルームって
あの、凄い値段がする
部屋だよね?

綾子さんはそこに泊まるんだ。

僕は……絶対に無理だ。

粗相しないか心配で、
緊張しすぎて
眠れる自信がない。

それに会員の部屋って
きっと安い部屋のこと
なんだと思う。

だって会社から出た
ホテルのサービス券で
無料で泊まらせてくれるんでしょ?

贅沢なんて言えないし、
僕は真翔さんと一緒だったら
どんなとこでも楽しい。

「真翔さんと一緒なら」

って付け加えたら、
真翔さんと繋いでいた手が
ぎゅって握られて。

真翔さんが、
お心づかいありがとうございます。
って僕の代わりに
返事をしてくれた。

部屋はどこでもいいし、
むしろ、僕たちは
連れて来てもらったので、
文句を言える立場じゃないと
そう真翔さんが言ってくれたので

綾子さんは
「仕方ないわね」
と諦めたように言う。

「まぁ、いいわ。
じゃあ、悠子。
あとで待ち合わせをしましょう。

集合場所はこの場所よ。
エステの予約を入れたら
連絡するから、
必ず来なさい」

「はい」

僕は素直に返事をする。

「じゃあ、柊たちの
部屋の鍵はこれ」

先輩さんが、真翔さんに
カードキーが入った
袋を渡す。

「俺は……下僕用の
部屋に寝るから、
気にしないでくれ」

下僕用って!

「そうそう。
俺たちの部屋は
ホテルの最上階だけど、
このフロントの真上だから。

柊たちは、
この本館の隣の別館な。

本館と別館の間の渡り廊下は
このカードキーが無いと
ドアが開かないように
なってるから、気を付けて」

セキュリティがしっかりしている
ホテルなんだろうか。

「ちょっと面倒だけど
部屋はきっと気に入ると思うぜ」

先輩さんはそう言って
軽くウインクをする。

真翔さんは部屋の鍵をもち、
そばに居たホテルの人に
僕と真翔さんの
鞄をカートから下ろしてもらった。

残りの荷物は、
綾子さんたちの部屋に
届けてもらうようにお願いをする。

「行こうか」

真翔さんと手を繋いだまま
僕たちは別館へと向かう。

僕はカードキーなんて
使ったことが無いから
真翔さんの様子を
じっと見つめた。

真翔さんは本館と
別館の間の自動扉の横にある
小さな四角い穴?
みたいなところに、
カードキーをかざした。

すると、
扉がひゅん、って開く。

凄い!

別館に入ると、
廊下は高級そうな絨毯が敷いてある。

廊下を歩くと広い場所に出た。

天井からシャンデリアが下がっていて
ラウンジっぽく、沢山の
ソファーやテーブルがあったけれど
誰もいなくて、静かな場所だった。

「まだ早い時間だから
誰もチェックイン
していないのかもしれないね」

真翔さんはそう言って
エレベーターのボタンを押す。

エレベーターはこの1階と、
10階にしか止まらないみたいで
僕たちの部屋は10階だった。

それ以外の階の部屋って
どうなってるんだろう?

不思議だ。

でも、ここは会員専用の
部屋が集まってる場所みたいだし、
もしかしたら、エレベーターの
止まる階数を少なくして、
電気代を節約してるのかも?

わかんないけど。

少なくとも僕が
10階まで階段で登る
必要が無いのは、純粋に嬉しい。

エレベーターは乗ったら、
鏡だった!

前も横も、鏡になっていて、
天井の照明はキラキラだ。

真翔さんも驚いていたようだけど
何も言わなかった。

エレベーターを降りても
真翔さんは何も話さない。

もしかして、真翔さんも
高級そうなホテルに
緊張しているのかも?

僕と同じだ。

僕も、心臓がどきどきだもんね。

僕たちの部屋は
10階の一番奥の角部屋だった。

真翔さんは部屋の鍵を開けて
「ちょっと待って」と
何故か僕が部屋に入るのを止める。

真翔さんは先にドアを開けて
部屋の中を覗き込んだ。

どうしたんだろう?

「いや、大丈夫だった。
ごめん」

何が大丈夫?

また僕は首を傾げてしまう。

真翔さんは、大丈夫、大丈夫、
って言いながら身体をずらして
僕を部屋に入れてくれた。

「わーっ!」

部屋は物凄く広かった。

ソファーセットがあって、
飾り棚?
みたいなのがあって。

その中にはお酒の瓶や
グラスが飾ってある。

こんなの初めてだ。

まるでお城!

そう、ベルサイユ宮殿の
部屋みたい。

それにテーブル!

テーブルの足は、
なんとなんと、ネコ足だった!

僕は大興奮だ。

「ぼ、僕、
部屋を見て歩いても
いいですか?

く、靴は脱ぎますか?」

真翔さんを見ると、
真翔さんは少し笑ったような
顔をして頷いてくれた。

「靴は脱いでもいいし、
履き替えてもいいよ」

「履き替える?」

何に?
と思ったら、
室内用のスリッパみたいなのがあった。

使い捨ての物らしい。

凄い!
使い捨てって、もったいない。

僕は靴を脱いで、
そのまま近くの扉を開けた。

すると、そこはクローゼットだった。

なんだ、残念。

その隣を開けると、
トイレだ。

別の扉を開けたら、
シャワールームだ。

でも、シャワーしかない。

その奥に透明なドアがあって
それを開けたら
大きなお風呂が出て来た。

もちろん、シャワーも付いている。

え?
シャワーだけの部屋があって、
お風呂もあるの?

なんで?

でも、凄く広いお風呂だ。
部屋が角部屋だからか、
扇形の広いお風呂になっていて
きっとテレビも見れるんだと思う。

いろんなボタンが付いていて
テレビの画面みたいなのが
壁に埋め込まれている。

すごい!

僕はお風呂場を出て、
次はベランダに向かう。

白いカーテンの隙間から
海と空が見えていたのだ。

「わーっ」

ベランダに出ると、
風が気持ち良い。

それに遠くに海が見える。

「あれ?
どこかに繋がってる?」

ベランダは長く伸びていて、
隣の部屋にまでつながってるみたい。

隣の部屋?
まさかね。

僕はおそるおそる
ベランダを移動する。

すると!

ベランダの先には
大きな露天風呂があった。

屋根が付いていて、
周囲に柵はしてあった。

それから大きなベンチ?
寝そべることができる
大きな木のチェアーもある。

すごい、すごい!

大興奮で露天風呂に近づくと、
そばに、またベランダみたいな
扉があった。

僕はその扉を開けてみた。

「あれ、真翔さん」

何故か、真翔さんがいた。

よく見ると、
そこは寝室っぽくて。

大きな、漫画でしか
見たことが無い天蓋付きの
ベットがあった。

ホテルの部屋なのに
寝室とリビング?
みたいな部屋と二部屋も
使えるの?

それに
ベットルームから
露天風呂に行けるの?

不思議な間取りだと
思ったけれど、

お風呂に入ってすぐに寝れるし、
それはそれでいかも。

それに部屋に
露天風呂が付いてるなんて!

僕はおおはしゃぎで
真翔さんに駆け寄った。




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