完結・転生したら前世の弟が義兄になり恋愛フラグをバキバキに折っています

たたら

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愛される世界?

20:やりすぎた

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 メイドが捕まって、俺とティスは
とりあえずは別の場所に案内された。

けれど、ティスは王子教育があるからと
すぐに部屋を出て行ってしまう。

俺と言えば、どうやって
メイドが怪しいと気が付いたのかを
説明して欲しいと言われ、
何やら会議室のような場所に連れて来られた。

大人たちに囲まれて緊張したが、
仕方がない。

俺はメイドの動きが
何故不自然に思ったのか。

何が違和感だったのかを説明する。

慣れているからこそ見落としやすいが、
最初はお茶の入れ方の順番が
違っていた。

結果だけ見れば同じかもしれないが
手順というのは個人的には
かなり重要だと思っている。

お茶一つであっても
過去の先人たちが何通りも繰り返し
美味しいお茶を淹れることができる
手順を生みだしたのだ。

その順番通りに淹れるからこそ
美味しいお茶が生まれる。

その手順を違えるメイドが
王宮にいるなど。

しかも王子にお茶を淹れるメイドに
そのような者がいるなど
おかしいと思わないはずがない。

また、魔法を使えるものは優遇され、
必要な箇所に配置されていることを知っていれば、
そのことに気がつけば、怪しいとすぐにわかる。

俺の好きな、原因と結果と、未来の予測だ。

「僕の考えでは、あのメイドは
王宮ではお茶などを淹れる際に
魔法を使う者がいないことを知らなかった者。
つまり、この国の者ではないと思います。

殿下の命を狙ったと言うよりは
他国の間者のたぐいかと。

他国での女性の出生率や
紫の瞳の者の数などは把握していませんが、
もしかしたら……僕のことを
探るための者だったのかもしれません。

もしくは、僕と殿下との仲を調べるつもりだったか。

ただ、殿下が出入りする図書室にまで
潜り込むのですから
手引きをした者がいるはずです。

その者はおそらくはこの国の者でしょう」

「何故、そう思うのかね?」

一番前に座っていた男性が言う。

使
これが当たり前の人物だからですよ。

その者は、当たり前だったから、
わざわざ、あのメイドに言わなかった。

けれど、メイドは知らずに魔法を使った。
理由はそれだけです」

俺が言い切ると、
大人たちはしーん、と静まり返った。

あれ?
やりすぎたか?

俺みたいな子どもが
何を偉そうに、とか思われたかもしれない。

だが意見を求めたのは、そっちだろう。

憮然として俺は周囲を見た。
誰も何も言わない。

まだ話を続けてもいいのだろうか。

よし。
次は未来予測だな。

「これから話すのはあくまでも予測です。
証拠も何もないので、
子どもが話すたわごととして聞いてください」

俺は屋敷の図書室で読み続けた
歴史書や公爵家の記録。
王宮でティスと共に学んだ
時事などを思い出しながら
仮説を積み立てていく。

この国と隣国の状況。
ここ数年の食料収穫量の推移。

この国の魅力と他の国が欲しがる物。

そしてこの国の高位貴族と
他国とのつながり。

どれか一つを決めつける真似はしない。
視野が狭まるからだ。

だからいくつもの起こりうる未来を予測する。

それが起こりうる原因……要因を上げ
それを調べて行き、
証拠が出れば、それがあたりだ。

俺の理論を必死で書いていく大人がいる。

ヤベえ。
楽しい。

俺、自分が構築した理論を話すの、
大好きだったんだよな。

プログラマーってパソコンの前で
地道に作業するイメージが
あるかもしれないけれど、
俺は違った。

プログラムを構築するのも好きだったが
こうして、その成果を披露し、
俺の考えを認めてもらうのが好きだったのだ。

だから俺はいつもプレゼンの場に立っていた。
会社の同僚も先輩も、人前で話すのが
苦手だと俺に押し付けてきたしな。

俺が嬉々として話をしていると
突然、扉がバン!と開いた。

「アキ! 大丈夫か?
あぁ、よしよし、怖かっただろう」

父が飛び込んできた。

そして嬉々として語っていた俺を抱き上げ
「怖い思いをしたねー」とぎゅうぎゅう抱きしめ
背中を撫でてくれる。

「こんな怖いおじさんたちに囲まれて
可哀そうに。

事情聴取だって?
保護者も同席させずに、
俺に対するいやがらせか?」

ぶわっと殺気みたいなものが父から沸き起こった。

え?
父、怖い。

大人たちは焦って、バタバタ手を振り
違う、違う、と慌てている。

「父さま、怖くないです。
誰も僕を虐めなかったですし、
話を聞いてくれていただけです」

父の腕の中でそう言うと、
父は本当か? と俺の瞳を覗き込んだ。

はい、と頷くと、父は安心したように
頭を撫でてくれる。

「そうか、それならいい。
話は終わったのか?」

俺は頷きかけて……もう少しだけ、
と、一番前で俺の話を
真剣に聞いてくれた人を見た。

と言っても、
父抱っこなので、見下ろしてしまったが。

「あの、あくまでの僕がそう思っただけのことで、
今までの話は、何の証拠もないです」

あくまでも可能性のことだからね。

「こんな子どもの話すことに、
耳を傾けて下さり、ありがとうございました」

しょせんは子どものたわごとだよ。
責任はもたないからね。

証拠を見つけるのは俺の仕事じゃないからね。

「あと、もしも、の可能性で
僕が狙われているとの確証がでれば、
父さまに話をお願いします」

ぺこり、と頭を下げた。

だが、誰も何も言わない。

なんだ、ここにいる大人たちは。
もしかして父が怖くて声が出ないのか?

「父さま。
話すことは終わったので、行きましょう。
ティスの様子は?」

俺がそう言うと父は
俺を抱きなおして、よし、行こうという。

そして近くにいた人に声を掛けて
俺を抱っこして部屋の外に出た。

ティスはすでに勉強を始めていて
動揺もないらしい。

さすが王子様だな。
子どもだが、肝が据わっている。

まぁ、俺も子どもだが。

「今日はもう帰ろう、疲れただろう」

「うん。父さま」

確かに疲れた。

楽しすぎて、はしゃいで俺の自論を
だらだらと話してしまった。

しゃべるのって、結構体力がいるからな。
それに大勢の前で話をするのも
それなりに疲れる。

だがそれも心地よい疲れだ。

俺は父の腕の中で眠くなってきた。

抱っこして歩かれると、
心地よい揺れに眠くなるのだ。

そういえば、前世で夜泣きする赤ちゃんを
抱っこして散歩するママを見たことがある。

残業の帰り
道端で、抱っこ紐に赤ちゃんを入れて
歩く女性を見かけて、こんな夜にどうしたのかと
思わず声を掛けたことがあるのだ。

だがその母親は
「この子はこうしないと寝ないんです」と笑い、
あぁ、母は強い、と俺の母を思い浮かべた。

そんなことを思い出しつつ
俺は父の腕の中で眠りに落ちていく。

父。
父親。

俺を守ってくれる存在。

安心できる場所。

俺がずっと欲しかったもの。

神様……だろうか。
あの声の主に言いたい。

愛される世界に送り出してくれて
ありがとう、と。




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