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世界の均衡
128:義兄と昼寝
しおりを挟むタウンハウスに戻った俺は
キリアスを筆頭に、
使用人たちに無事でよかったと
涙を流す勢いで迎えられた。
時刻はまだ昼前で、
父は王宮に戻るという。
俺がいなくなったと連絡が
王宮に来たので、父は
慌ててタウンハウスに
戻ってきたらしい。
幸い、領地の母には
まだ連絡をしていなかったようで
母の心配は必要なさそうだ。
父は今回のことを
陛下に伝えると言って、
俺を馬車から下した後、
すぐに馬に乗って王宮へ向かってしまった。
俺はサリーやキールに構われて
自室に戻り、もう一度着替えさせられる。
まぁ、土もついていたし、
森を彷徨ったしな。
サリーはもう一度お茶を
淹れてくれたのだが
さすがにもうお腹がいっぱいだ。
なんたって、ずっと食べてたからな。
俺はお茶を淹れてくれたサリーに
お礼を言いつつ、
クマを着替えさせる。
クマも頑張ったからな。
「あの、アキルティア様」
俺がクマの腕に、
寝間着の袖を通していると
キールがおずおずと声を掛けて来た。
「神に連れ攫われたというのは
本当なのでしょうか」
キールが言うには
俺が部屋からいなくなったことには
誰も気が付かなかったらしい。
俺の部屋のドアの外で
キールはずっと待機していたから
部屋に誰も来なかったことは
明らかだし、俺が外に出た気配も無い。
サリーが俺の様子を見に
部屋に来た際に、俺がいないことが
発覚したが、部屋の窓は閉まっていて
鍵もしまっていたし、
まさに俺は煙のように
忽然と姿を消した状態だったようだ。
まぁ、そうだよな。
俺はキールとサリーに
ベットで寝ていたら、
急にベットの底が抜けたような
感覚がして、気が付いたら
神様と話ができるような場所に
いたのだ、とそんな話をした。
その際に、神様とは直接
会うことは無くて、
頭の中に声が響いてきただけだとも
伝えておく。
だって、神様がどんな存在だったかとか
聞かれてもわからないし。
それにクマを通して話をしたと
言っても、信じてもらえそうにないし。
そして俺は神様との話が終わったら、
気が付いたらあの神殿の近くの森に
立っていたのだと話をすると
サリーは何やら深く頷いた。
「アキルティア様は
創造神でさえ、
ご寵愛をしてしまう
素晴らしいお方なのですわ」
なにやら物凄く曲解されたような
気がしたが、俺は何も言わなかった。
ここで「そんなことはない」とか
一言でも言ったならば、
サリーは怒涛の勢いで
俺への賛辞を言い続けるからだ。
だからこういう時の
正しい行動は何も言わないか、
お礼を言うか、だ。
ちらりとキールを見ると、
キールも頷いている。
俺と同意見らしい。
不意にドアを叩く音がした。
キールがドアを開けると
義兄が入ってくる。
「兄様、どうしたの?」
「アキルティアと一緒に
昼寝でもしようと思ってね」
なんだ?
その怪しいセリフは。
「まぁ、さようでございますか。
では、私どもは失礼致します。
アキルティア様、
何があればお呼び下さい」
義兄の言葉にサリーは
何故かテンションを上げて
キールの背中を押す。
義兄はそんなサリーに礼を言い、
二人の姿がドアの外に出るのを待って
俺のベットに座った。
「それで兄貴、
何がどうして、どうなったんだ?」
義兄は疲れた顔で、
けれども、俺を追求するような
鋭い視線で俺を見る。
「いや、だからさ……」
俺は何度目かの説明をする。
何度話をしても、
説明する内容は同じだ。
嘘はついてないからな。
だけれど。
カミサマとどんな話をしたかまでは
今まで誰にも話をしていない。
これを話すことができるのは
義兄とルイだけだ。
どうする?
今、話をするべきか。
それともルイと3人揃った時に
話をする方が良いか。
俺が考えていると、
義兄は「はぁ」と息を吐いた。
「どうした?」
「兄貴はいつも何かやらかすから、
気が休まらない」
「え?俺?
今回は俺のせいじゃないと思うけど」
「……自覚が無いから
なおさら、タチが悪い」
なんだよ、それ。
俺が椅子から立ち上がって
義兄のそばにいくと、
義兄は何故か座ったまま
俺の腰をぎゅーっと抱きしめて来た。
「もうなんでもいい、
兄貴、一緒に寝よう」
そんなに心配をかけたのだろうか。
義兄が物凄く甘えたモードになっていて
前世の幼い弟に戻ったようだ。
俺は義兄をよしよしと撫でる。
と、義兄に手をひっぱられた。
義兄がめちゃくちゃ
うなだれていて、
可愛いぐらい幼くなっている。
俺が手を引かれたまま
ベットに潜り込むと
義兄もすぐに隣にきて
俺の背中に手を回してきた。
「ごめんな、心配かけたな」
俺がそう言うと、義兄は
俺を抱き込んで、うん、という。
「俺、兄貴のために
この世界にきたのに
兄貴がいなくなったら
どうしていいかわからない」
その考え方をいつか
改めて欲しいのだが
今はそれを言うべき時じゃないよな。
「今回は、びっくりした。
状況が状況だったし」
「……そうだな」
まさかカミサマが俺の体ごと
知らない場所に移動させるなど
思ったことも無いしな。
「それに兄貴の友達は
チョーヤバいし」
うん?
ルイのことか?
「俺、もう疲れた」
よくわからんが
俺は義兄の背中をゆっくり撫でる。
「頑張ってるもんな。
兄様はえらい、えらい。
俺のためにいつもありがとな」
俺がそう言うと、
義兄は嬉しそうな顔をする。
「俺、兄貴の役に立ってる?」
「当たり前だろ。
俺、兄様がいないと
ちゃんと生活できないと思う」
公爵家の跡継ぎなんて
絶対に無理だし。
「そっか。良かった。
兄貴はずっと俺が支えるから
俺のそばにいて」
……その考え方、
父と同じだぞ?
心配かけすぎて
父の考え方に同調してしまったのか?
ヤバイ、やばい。
大丈夫か?
今回はさすがに想定外のことだったから、
余計に心配をかけたんだろうな。
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