完結・転生したら前世の弟が義兄になり恋愛フラグをバキバキに折っています

たたら

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高等部に進級しました

204:愛し子の恩恵

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 俺たちは落ちたが、
今度は尻もちをつくことも無く、
素直に床に降り立った。

頭の上から押された感じで
落ちたので、ちゃんと床に
足が付いたのだ。

よしよし、よくわからんが
成長してるぞ?

それにこの場所は
さっき俺がいたスクライド国の
部屋に違いない。

「愛し子殿!」

怒鳴り声に顔を向けると
デアーグが怒りの顔で俺を見ている。

俺は瞬時にガクブルになって
クマをぎゅっと抱きしめる。

大丈夫だ、俺にはクマがいる。

と思ったら、俺を庇う様に
義兄が俺の前に出た。

兄よ~っ。

と感激したら、
その義兄の前にルイが出て
俺たちを庇ってくれた。

「俺はブリジット国のルティクラウンだ」

ルイの言葉にデアーグも
ゲリーも驚く顔をする。

「俺はあの国王に疎まれててな、
今はキングナイト王国にいる。
もちろん、アキルティアの親友だ」

最後の一言は必要だったか?
俺は首を傾げたが、
ルイの後ろから義兄も二人に
挨拶をした。

「私の可愛い弟が先ぶれも無く
押しかけたようでお詫びいたします。
私はジェルロイド・アッシュフォード。

可愛い弟の頼みとあり、
こちらに参りました」

これもまた、不必要な情報が
入ってるよな?

なんだよ、可愛い弟って。
初対面の、しかも国のトップに
対して言う言葉か?

俺はクマを盾におろおろするが
デアーグはたいして
気にしていない様子で
そばにいたゲリーと共に
短い挨拶を交わした。

そして俺たちはソファーに座り
これからの話をする。

義兄はすでに資料を
いくつか持っていて、
スクライド国にどのような
支援ができるのかの話をした。

デアーグの目がどんどん
光を帯びていく。

よかった。
さっきの怒鳴り声は
怒ってたんじゃなくて
俺が戻らなかったら
どうなるのかという不安の
表れだったようだ。

ルイも自分が魔法に
長けていることを伝えて、
元国王のやらかしを
なんとか帳消しにする方法を
探りたいと言うと、
ゲリーも目を輝かせて喜んだ。

ほんとに、良かった。
やれやれだ。

こうやって徐々に
実務レベルの話をまとめて
最終的に国レベルでの
条約合意へと持って行ければいい。

デアーグたちも
キングナイト王国からの
支援が本物だと理解できたようで
協力的だった。

大まかな話をして
俺たちは一旦、帰ることにする。

まだ夜だったし、
俺は寝間着のままだしな。

俺は来た時と同じように
ルイと義兄を連れて
光の筒に入る。

足を入れる時に身構えたが
今度は落ちなかった。

落ちなかったが、
着いた先は、
あの映像だらけの場所だった。

「なんだ? ここ」

ルイが目を見開く。

「ここ、兄貴がさっき言ってた
未来を見た場所か?」

義兄が驚きすぎて弟に戻った。

「そう、でも、待って」

俺は映像を見た。

「未来が変わってる」

スクライド国の飢えて
道端で横になっていた人が
消えていた。

瓦礫のような家屋はそのままだが
イモのようなものを
食べている人もいる。

「食べ物……食べてる。
良かった、支援が決まったから」

「アキラ、こっち」

ルイに言われて別の映像に
目を向けると、
枯れ果てた大地が
何故か紫の光を帯びている。

「この光の下、なんか
芽が出てないか?」

言われてみると、
確かにそのようにも見える。

「兄貴が農地を蘇らせるってことか?」

義兄の言葉に、俺はそうかと頷く。

「俺さ、カミサマの力を使って
スクライド国に似合った土地の
作物を植えて、その成長を
促そうと思ったんだ。

なんというか、
種を植えたらすぐに芽が出て
実が成るとか。

でも新しい作物を
わざわざ植えなくても、
今ある農地に植物が
枯れたままで残っているのなら
それを蘇らせても良いのか」

「今、さらっと言ったが、
それ、凄いことだぞ?」

ルイが言う。

「うん、でもできそうな気がする。
だってほら。
紫の魔力はチートっぽいし」

俺が笑うと、ルイも義兄も苦笑した。

「俺さ、母様にも言ったんだけど
紫の魔力って『常識じゃない』ことなら
なんだってできると思うんだ。

この世界の常識でないことが
なんでもできるなら
それはもう、チート能力だろ?」

「常識じゃないこと、か。
なるほど。
人間には思いつかないこと、という
定義を、常識では考えられないこと、と
捉えたのか」

ルイがぶつぶつ何やら言い始める。

「それで、兄貴の身体に負担は?」

「今のところ、大丈夫。
負担はクマが請け負ってくれてるし。

というか、まぁ、確かに
疲れてきてるし、
無理やり入れられた力の分だけ
慣れるまでは制御が大変そうだけど。

魔力を入れる器?みたいなのも
合わせて広がったから
以前と比べてもプラスマイナスゼロ
ってとこかな」

いや、負担はまだ大きいか?
でも俺が成長して体力が付いたら
大丈夫な範囲だと思う。

それに力を使えば
不調は無くなるわけだし。

使い道を見つけた以上、
ガンガン使ってやるぜ。

俺は思わず拳を握ると
義兄は苦笑した。

「とにかく無理せずに。
ここの映像は興味深いけど
ここに映るものがすべて
正しいわけじゃないんだろ?

未来は変わる。
なら、あまり見ない方が
振り回されなくて良いと俺は思う」

……俺の義兄は立派過ぎる。

「こんなに立派に賢く育って……」

俺が思わず呟くと、
義兄は俺の頭をぐりぐり撫でた。

「今は俺が兄だから」

ルイがそんな俺たちのやり取りに気が付いて笑った。

「じゃあ、早く戻ろう。
ティス殿下が心配しすぎて
倒れるぞ」

確かに!

俺たちはすぐに光の筒を通って
王宮に戻ったが。

戻った途端、
俺は父に抱きしめられ、
結局ティスとは落ち着いて
会話もできないまま
タウンハウスに戻ることになる。

俺はティスの寂しそうな顔が
俺は目に残ってしまい、
心残りのまま
自室に戻ってきたのだが。

そういや俺、ティスに
プロポーズされてたんだった!

と改めて自室で思いだし、
クマを抱きしめたまま
ベットの上をゴロゴロ転がってしまった。

あまりにも転がりすぎたせいか
俺がまた突然消えたと
心配していたキールとサリーが
慌てた様子で俺の部屋に飛び込んできて。

俺は顔を真っ赤にして
寝相が悪くてごめんなさい、と
深々と頭を下げることとなった。

二人の安心したような
苦笑したような。

何とも言えない顔が心苦しかった。

ほんと、すまん。

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