深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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安い時に買って高くなったら売る。それが出来れば金持ちだ

貴族会議【王視点】

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 私は1時間前に会議室に座った。
 落ち着かず持って来た政務の仕事を片付ける。
 今日の貴族会議はインサイダーと対峙する。
 失敗は許されない。

 そこにジュン殿が入ってきた。

「早いな」
「ジュン殿も早い」
「そうだな」



 しばらく待つと貴族が入って来る。

「しかし、貴族の数もずいぶん減った」
「うむ、王都に人が流れた上、各自の領に魔物狩りを任せている。うまくいかない貴族は淘汰される」

「だがそのおかげで上の席にロングスパン領の幹部が全員座れる」
「む、1人足りないようだが?」

 幹部は全員で5人のはず。
 フィルの姿が見えない。

「それは貴族会議でのお楽しみだ」
「また何か策を準備したか」
「そんな所だ」

 ジュン殿はウサットを呼び、入場してきた貴族を見ながら何やら紙を書き込んでいた。
 これも作戦か?


「そろそろ時間のはずだ」

 インサイダーが来ない。
 インサイダー、何を考えている!

 そこにインサイダーがよろよろとした足取りで入って来る。

「どうした?インサイダー。ボロボロじゃないか」

 ジュン殿の言葉に怒りをにじませるインサイダーだがすぐに笑顔に戻る。
 まるでデーモンのように不気味だ。

 インサイダーが席についた瞬間会議の始まりを宣言した。

「これより貴族会議を始める!」

 全員が礼をする。

「さて、早速だが皆に連絡がある」
「ふん、ワシへの頼み事か?聞くだけ聞いてやろう」

「その話ではない。中に入れろ」

 文官に指示をするとグレスが入ってきた。

「ダンジョンの消滅が出来ず逃げ帰ってきたか」
「そのダンジョンについて報告します。最期の中級ダンジョンですが、内政の英雄の協力の元、無事消滅させることに成功しました」

「な!なんだと!そんなはずは!」
「ですがそれにより、大量のポーションを失いました。今後の活動に支障が出てしまいます」

 インサイダーは笑顔を取り戻す。

「そうだろうそうだろう。で?ワシに頼み事か?」
「報告は以上になります!」

「グレス、なにも無いか。まあよい。王よ、ワシに頼みがあるか?どうだ?いってみよ」
「インサイダー。安くポーションを卸してくれるのか?」

 その瞬間インサイダーはさらに笑顔になる。

「ワシの領の経営は苦しい。だが、ワシに誠心誠意謝り、今までの無礼を詫びるならわずかな値下げを考えてやろう」
「そうか、安く卸すか検討するか。よく分かった。では次に行こう」

「待て待て待て!ワシに頭を下げんのか!」
「ポーションを安く出来ないか聞き、経営が苦しいと答えが返ってきた。話は以上だ。次の議題だが、確かにポーションが無くては軍の運用は苦しくなるだろう」

「結局はワシに頭を下げるしかないだろう」
「そこで!王家のポーションの在庫を放出する!」

「王家の在庫?何を言っている?」
「言っていなかったな。内政の英雄、ジュン殿の提案で1万本のポーションをストックしておいたのだ」

「そんな事は聞いていない!!」
「幸いインサイダーが爵位と引き換えに安くポーションを卸してくれた。更に引き続き各領の魔物狩りは貴族に任せる」

「1万本のポーションは聞いていない!それに各領で魔物を倒すのは貴族の負担が大きすぎる!」

「ポーション備蓄と貴族の魔物狩りについては俺から説明しよう。まずポーション備蓄からだ。俺が元居た国では震災が多い。食料や物資を保存しておくのは当然の措置だ。それとインサイダー。お前も同じ投資家なら分かるはずだ」

「何を言っている?」

「投資する時はある程度の現金を残して行うのが一般的だ。そして安い時に買って高くなったら売るのはお前も同じだろう?」

「そうか。この世界では何かあった時に現金や物資を残しておく概念はない。私はジュン殿にそれを聞きポーションをストックした。だがインサイダーは投資家であってもよく分かっていないようだ」

 私はワザとらしくインサイダーに言った。

「騙した!ワシを騙したな!」
「インサイダー。何を騙したのだ?聞かせて欲しい」
「ワシからポーションを奪い取った」

 インサイダーは私の策をうまく非難できない。

 インサイダーは安くポーションを卸す事でポーション価格を暴落させてライバルを蹴落とし、その後にポーションを高く売る計画だった。
 だがインサイダーがその事を言えば立場が悪くなる。

 インサイダーは絶対にその事を言えない。
 
 一方で私のポーション備蓄は正当な理由があって行った。
 ポーションの枯渇は国の運営に悪影響を及ぼす。
 危機に備え備蓄する考えはいたって健全だ。

 そうなるように内政の英雄が段取りをしている。
 インサイダーは私のポーション備蓄を絶対にうまく批判できない。

 私はただ困った顔をしてインサイダーに質問をするだけだ。
 インサイダーは周りから見て狂ったものに見えるだろう。

 更にインサイダーの領地の経営は苦しくなり始めている。
 今までの悪政で領地の人が減った。
 無理してポーションを安く売りライバルを蹴落とした。
 無理してポーション工房の家賃を払い続ける事になった。

 その結果領地の経営を圧迫している。
 このタイミングでポーションのストックがあると言われたらインサイダーとしては都合が悪い。
 領地経営破綻の危機だ。
 インサイダーにはポーションしかカードが無い。
 
 ポーションのカードは強力だが、無力化されればダメージは大きい。
 今のインサイダーの狂ったような反応がそれを物語っている。

「何を言っている?インサイダー。お前がポーションを安く卸す代わりに公爵の地位を要求し、それを飲んだだけの事。何か騙すようなことがあったか?」
「ワシを騙した!」

「何を言っている?どこを騙すのだ?」
「ワシを騙してポーションを奪い取ったのだ!」
「だからどの部分の事を言っている?」




 このループが何度も続いた。
 だが効果はある。
 インサイダーが騒げば騒ぐほど落ち目である事と、狂人であるイメージを定着させられる。
 今の所ジュン殿の思惑通りだ。


「エルク王、インサイダーの言いがかりは無視して次に進もう」
「内政の英雄!お前か!お前が騙したのか!」

「インサイダー、静かにしてくれ。まず各領で魔物を討伐する件は後回しにしてポーションの話には続きがある。分かってもらうために俺のスキルの説明を行う」

「スキル?何を言っているのだ?」
「俺のスキルに【アイテム投資】というスキルがある。最大9000のアイテムをストレージに入れてアイテム投資にセットすると、毎日1%のアイテムが増える」

「それが今ポーションと何の関係がある!ワシはお前が騙した話をしている」

「俺は今9000のポーションをアイテム投資にセットしている。毎日90本のポーションが増える。俺のストレージには生活防衛資金と同じ要領でポーションをストレージに入れている。インサイダー。俺のストレージにポーションが何本あるか分かるか?」

「わ、ワシを騙してポーションを蓄えていたな!」
「答えは24546本だ!王家のポーションと合わせて十分な数になるだろう」

 インサイダーが騒ぐが明らかに元気が無くなっている。

「更にロングスパン領では人材育成に力を入れている。王都でポーション作成の職を追われた者にダンジョンでレベルを上げてもらっている。そしてロングスパン領には100名のドリアード族がいて薬草を栽培できる。今ポーションの素材である薬草を大量に貯めているんだ。今からレベルの上がった元王都の錬金術師とうさぎ族でポーションを量産する。今まで建築を行っていた者もポーションを作り始めるだろう」

 インサイダーの声がガラガラになり喉が潰れ始める。

「話をまとめると約35000のポーションを市場に流す。更に大量のポーションをロングスパン領でこれまで以上に量産する。ポーションの高騰は収まり、安い値段で安定するだろう」

 インサイダーが汗をかきながら急いでポーションを飲んで喉を治し始めた。

「さて、話は戻る。各領に魔物狩りを任せる件だが、さっき言ったようにポーションを安く流通させる。だから各自頑張って魔物を狩って欲しい。皆が力を合わせて魔物を狩らなければ国の発展を阻害するだろう。貴族の負担についてはポーション価格の安定で補えるはずだ」

 

 インサイダーはだらだらと汗をかく。
 そしてポーションで喉を癒した後全力で叫ぶ。

「許されない!ワシを騙し陥れた!そんな事は許されない!絶対にだあああああ!ゆるさああああああああああああんんんんんんんんんんんん!!」

 私は安堵した。
 この勝負、インサイダーに勝ち目はない。




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