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第76話

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 ダッシュドラゴン部隊が帰って来ると、俺はグラディウスにポンと肩を叩かれた。
 このパターンはロクな事がない。

「どうしたんだ何の用だ?」
「戦略の再編成をしたいんだよねえ。まず王様を王都に返して出た魔物を退治してアーチェリーに元気になって貰いたいんだ。変態仙人とマッチョは冒険者や兵士を育成するために帰還させたい」

「やる事が多いな」
「いや、やる事は単純だよ」

 グラディウスは俺に紙を渡した。



 ①ダッシュドラゴン部隊を率いて王を王都に送り届ける。
 ②アーチェリーにモグドラゴンをテイムをさせる任務を手伝う。
 


「簡単だろ?ダッシュドラゴン部隊と王を王都まで送りさえすればダッシュドラゴン部隊がある程度魔物を倒してくれる。その後にアーチェリーを奈落のダンジョンに連れて行けばいいだけだよ。変態仙人とマッチョは護衛の必要すらないから食事さえ与えれば問題無いよ」

 モグドラゴンのテイムは魔石採掘を効率化させる為だ。

「まあ、それなら、何とかなるか」

 こうして俺は皆と一緒に旅に出た。


 ◇



「騙された。グラディウスに騙された」

 王とダッシュドラゴン部隊を王都まで送るのは楽だった。
 時間はかかるがそれだけだ。
 ついでにマッチョと変態仙人をウォーアップの街に送り届けるのも楽だった。
 あの2人に護衛なんていらないし!

 でもその後が問題だった。

 俺はプリン・チョコ・アーチェリーと一緒に奈落のダンジョンまでやって来るがアーチェリーがとにかくテイムを嫌がった。

「私はバハムート以外テイムしたくないのよ。私にはバハムートしかいないかったのよ」

 まるでペットロスになったご主人様のようだ。

「まあまあ、テイムして魔石の洞窟まで運んだら終わりですから、ね?」
「そうよ、少しの間だけは我慢して」

 チョコとプリンがいなかったら心が折れていただろう。

「とりあえず、下に下がろう。俺の空歩で一気に降りるぞ」

 そして、プリンを肩車し、チョコが後ろから抱き着き、アーチェリーをお姫様抱っこしながら降りる事になった。

「2回に分けないか?」
「一気に行きましょう!」
「そうよ。一気に行きましょう」

「この状態で攻撃を受けたらまずいぞ」
「その時は飛び降りるわ」
「大丈夫です、下は湖ですよ!」

「わ、分かった。空歩!」

 俺は一気に下に降りた。



 下に降りるとすぐにモグドラゴンのいる迷路を進む。

「いた!いたぞ!テイムだ」
「……この子は違う気がするわ」

 俺はモグドラゴンを倒した。

「……アーチェリー、どういうのがいいんだ」
「あの子はきっと乱暴な子よ」
「……そうなのか?」
「そうなのよ」

「アキ君、アーチェリーの言う事は案外合ってますよ。信じましょう」
「おっし、モグドラゴンの100本ノックだ!」

 俺はモグドラゴンをアーチェリーの前におびき寄せ続けた。

「どうだ?」
「違う」

「こいつは?」
「違うわね」

「こいつでどうだ!」
「ダメね」



 ◇



「次!99体目!」
「違うわね」

 終わらない。
 何日かかるんだ?
 アーチェリーはペットロスで乗り気になれないだけじゃないのか?
 俺の中で疑念がふくらんでいく。

 俺はモグドラゴンを倒してストレージに入れた。

「次でダメだったらまた休憩にしようか」
「そう、ですね」
「ゆっくり行こう」

 そう、のんびり行こう。
 急いでいるのは俺だけだった。
 だからイライラするんだ。

 100体目を見つけると何故か逃げられた。
 いつもならすぐに攻撃をして来るんだが。

 俺はモグドラゴンを攻撃して気絶させる。
 そしてアーチェリーの元に運んだ。

「これはどうだ?」
「……」
「アーチェリー?」
「いいわね。きっといい子よ。テイム」

 モグドラゴンが光り輝いて目を覚ました。

「きゅう!」

 モグドラゴンはアーチェリーにすりすりした。

「ふふ、いい子ね。あなたは今日からモグリンよ」

 名前まで決めている!

「ケガをしているのね。アキ、治して欲しいのよ」
「ハイヒール!」

「おなかが空いているの?アキ、お肉を出して」

 俺はストレージから肉を出した。
 
「さっきは攻撃して悪かったな」
「なに、うん、うん、大丈夫だそうよ」
「そうか、良かった。さあ、帰ろう」

「今日はここで泊っていきましょう」
「きゅう~」
「モグリンもそうしたいそうよ」

「分かった分かった」

 俺はその日泉で野営した。



 ◇



 目が覚めるとアーチェリーはモグリンをベッドにして眠っていた。

「気持ちよさそうに寝ている」
「今までバハムートがいなくてさみしかったんですよ」
「やっと相棒が出来たわね」

「今まで元気が無かったよな」
「ううん、おはよう。もう出発なのかしら?」

「モグリンは大丈夫か?」
「まだ眠いみたいね」

「寝ている内に食事にしようか」



 モグリンは肉を焼いた瞬間に目を覚ました。
 モグリンはこういうタイプか。
 お母さんの包丁と朝ごはんの匂いでお腹が空いて起きてくる子供だ。

 素直で分かりやすい。

「モグリンも食べるよな」
「きゅう!」

 モグリンを見ていると可愛く感じてくる。
 アーチェリーの言っていた事は正解だった。
 そう思える。

「よしよし、そろそろ外に出ましょうね」
「俺が前に出て魔物を倒そうか?」
「待って、モグリンはもっと強くなりたいのよ私とモグリンが前に出るわ」

「……う、うん、そうか。じゃ、出発しようか」

 時間がかかりそうだな。
 いかんいかん、今俺は仕事に追われた社会人のようになってしまっている。
 ゆっくり行こう。

「その前にモグリンのレベルっていくつだ?」
「25よ」

 モグドラゴンにしては小さい。
 まだ子供なのかもしれない。

「深層は魔物のレベルが高い。少し上がるまで強い魔物は俺が倒したい」
「そう、分かったわ」

 俺はゴブリンキングだけを倒しつつ上に進んでいった。

「モグリン、土魔法よ!」
「きゅう!」

 モグリンは土魔法でゴブリンを倒していく。

「偉いわ!次は爪攻撃よ!」
「きゅう!」

 こうやってゆっくりとモグリンのレベルを上げながら地上を目指した。



 ◇



 地上に出るとチョコ・プリン・アーチェリーがモグリンに乗った。
 モグリンのレベルは30に上がったらしい。

「アキも乗りましょう」
「3人乗りが丁度良さそうだ。ウォーアップに行こう」

 俺達がモグリンを連れてウォーアップに入ると全員がモグリンを見る。
 モグリンの上に美女3人がまたがる。
 そしてモグドラゴンは珍しい。
 更にモグリンの顔には愛嬌があった。

 モグリンを屋根の下で休ませる為倉庫を借りて休む。

 俺達は25日間奈落のダンジョンで過ごしていた。
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