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第43話
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【王都】
俺は王の前で跪いた。
主人公のファインが子爵になり、主人公の儀式が終わると俺の儀式が始まる。
「フィール!レディパールの英雄にして妖精使役者!更に娘と息子3人の運命の相手を占った功績により、爵位を子爵に引き上げる!」
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」
俺とファインは王都を一周回るパレードに参加する。
「ファイン様!素敵です!」
「フィール様!結婚してえええ!」
「あれが妖精か!コロシアムに行けなかったから始めて見たぜ」
「妖精様、なんと神々しいお姿!」
俺とファインは賞賛され、後ろには婚約者も続く。
アイラと目が合うと、笑顔でほほ笑んだ。
リンカと目が合うと、すっと目を逸らした。
ラブハウス以降こんな感じだ。
チンカウバインは無意味に空を舞っている。
「空気が温かくなって来たね!もうすぐ春だよ」
珍買う場員を見ると、春になってしゃしゃり出てくる虫のように見える。
パレードが終わり、王城に戻ると王が言った。
「これで2人とも貴族として生きる事になった」
男爵から子爵になると扱いが変わる。
男爵=騎士のちょっと上的なポジションで上の貴族からバカにされる事がある
子爵以上=ここから国を動かす重要な役割を与えられる
そうか、王は、俺とファインに役目を与えたかったのか。
「ファインには後で役目を与える。フィールは残れ」
俺だけが残る。
「レイ・カースセイバー、ここへ!」
「は!」
音声変換されたような声が発せられる。
呪われた黒いフルアーマーを装着した騎士がきびきびと歩いてくる。
あ、サブクエストであったな。
呪い装備を解除するために魔力を供給するイベントだ。
結局レイの呪いを完全に解除する前にイベントが終わって、最後にレイが男性ではなく女性であることが分かるけど素顔を見せないままクリアになる。
「見ての通り、この者は呪いの装備を着用しており装備を外せん。大量の魔力を供給する事で完全に呪いを打ち消す事が出来る。以前は他の者が魔力を供給して一時的に装備を解除して何とか生活する事が出来たが、その者が高齢で倒れた。そこでフィールには魔力の供給係と命ずる」
レイは一定時間ごとに魔力を供給して呪い装備を一時解除しないとトイレや食事、水分補給や水浴びが出来ず死ぬ。
本来このサブクエは主人公が受けるが、俺になったか。
命令を出された以上受けるしかない。
「はい!全力で呪い解除を行います!」
「所で、近いうちにゴレムズをどう処罰するか貴族会議が行われる。ゴレムズは優秀な錬金術師ではあるが、1度学園を襲っている」
「……はい」
「助けたいか?」
「迷って、います」
「うむ、もし、殺さない判断をした場合、誰が面倒を見るかで揉めるだろう。恐らく、押し付け合いになる。犯罪者を世話するとなれば危険を伴う。殺されないとしても逃亡されれば責任を負う事になる。誰も受け入れないとなれば、ゴレムズは処刑されるかもしれん。数日、ゆっくりと自分の考えをまとめておくのだ。下がれ」
「……はい」
どうすれば良いか、その場で答える事が出来なかった。
心が落ち着かない。
城を出るとレイが後ろをついてくる。
「緊張しなくていい。ゆっくりしよう」
「いえ、魔力供給を受ける以上あなたの騎士として」
「いいって、普通に話してくれないと疲れてしまう」
「分かったよ。僕はレイ・カースセイバー。よろしくね」
「よろしく」
「あ、いたわね!」
「リンカか」
「パパとアイラも一緒よ」
「フィール、まだリンカと最後までいっていないようだね」
「え?結婚の話?」
「うんうん、そういう感じだよ」
リンカパパがリンカの頭を撫でた。
俺は、あそこまでいっておいて、リンカを最後まで抱いていない。
躊躇してしまった。
「私との結婚式もまだだよ。出来ればウエディングドレスと父さんと母さんに見て欲しいなあ」
「ああ、そうか、そうだ、そうだな」
そうか、俺はこの世界をどこかゲームのように考えていた。
ステータスをカンストさせるように、すべてをカンストさせるように考えていた。
でもここは現実だ。
完璧なんてない。
ゲームの世界だって、裏では救いきれなかった人がいた。
主人公と違う俺の視点で見る事でその事が分かる。
ゴレムズは間違った。
でも、人間は間違う。
アイラやリンカと結婚したら次は子供が生まれるかもしれない。
次は子育て、それが終わればまた関係は変化する。
ずっと死ぬまで終わらない。
現実だ、ゲームじゃない。
「フィール、どうしたのよ?」
「フィール?」
「フィールはリンカを最後まで抱かなかったから後悔してるね。私には分かるよ」
「あんたは黙りなさいよ!」
「キスと1つになるのは駄目とかありえないよ。むしろそここそが愛の中心だと言えるよ」
「いいから黙りなさい!」
「リンカ、君は本当はフィールに女にして欲しくてたまらなかったんだよね?でも、恥ずかしくてそれが出来なかった。リンカはもっと素直になるべきだよ」
「いい加減に燃やすわよ!」
「リンカ、大好きなケーキが目の前に置かれて食べていいと言われたら食べるかな?」
「なに?食べるに決まってるじゃない」
「君がラブハウスでやった事は大好きなお菓子を食べていいと言われて食べさせなかった、それと同じだよ」
ボウ!ボウ!ボウ!ボウ!ボウ!ボウ!
リンカがチンカウバインに向かって炎を放つが、チンカウバインはすべて躱した。
「よ、避けるんじゃないわよ!」
「リンカ、顔が赤いよ。冷静に狙って撃たないと当たらないよ」
「すまない、王様と話をしてくる」
王と会えなくてもいい!
それでもできる事はしたい。
ゴレムズの世話は俺が引き受けよう。
俺が動いても、何も変わらないかもしれない。
うまくいかないかもしれない。
世話を引き受ける事すら出来ないかもしれない。
どうなるか分からない。
俺は、ステータスをカンストさせても、どんなに勉強しても、何かが足りない。
そう、俺は不完全なただの人間だ。
それでもいい。
俺は王城に向かって走った。
風を纏って王城まで飛ぶ。
その姿を王都に住む民は見ていた。
「あれは、妖精契約をしたフィール様!」
「間違いない!後ろに妖精が飛んでいる!」
「なんと凛々しいお姿だ!」
「まるで肖像画に描かれる英雄のようだ」
「私達とは違う高貴で才能あふれる方なのね」
「俺は、逆立ちしてもああなれないだろう」
見上げる民がフィールに歓声を送った。
俺は王城の前で風の魔力を消した。
衛兵がびっくりして近寄って来た。
「ど、どうされましたか?な、何か事件が!」
「いえ、王に、王に尋ねられた答えを決めて来ました」
「王はただいま忙しく、多忙です」
「そう、ですか。後で手紙を書いて、王に送ります」
「その必要はない!」
「「王様!」」
「風の魔力をまとったフィールが王城に向かって来たと聞いてな。訪ねてくると思っていた」
「ゴレムズの面倒を、僕が見たいです!」
「うむ、フィールよ」
「はい」
「ますます、いい顔になったな」
「いえ、これでいいのか、うまくいくのか分かりません。途中で考えが変わるかもしれません。それでも、それでもこれが一番いいと思えたのです」
「私も一緒だ。王政で何を進めるか決断する。だがその決断は他の事をしないと決める事でもある。いつも多く助けられると思える方を選び、小さき者を踏みつけて進む。その繰り返しだ」
「分かります」
「だが、お前のような貴族が増えれば、巨人に踏まれた弱き者をもっと救えると、そう思えるのだ。はっはっは、固くなるな。やってみるのだ。私が命令する。フィール、ゴレムズをうまく使え」
「はい!」
俺は暗い牢に向かって歩いた。
でも、少しだけ心が温かい。
終わり
あとがき
打ち切りです。
この作品は昔流行った感じのある意味古い作風です。
フォロワーは、ちょっと期待していましたが伸びませんでした。
今のトレンドで書いた方が伸びるかなーと思いましたが書いてみたかったので書いた感じです。
最後まで読んでくださった皆様、本当に、ありがとうございます。
次は魔物ペットの作品とか書いてみたいですね。
あと、キャラ描写の解像度を上げた作品も書きたいです。
ではまた!
俺は王の前で跪いた。
主人公のファインが子爵になり、主人公の儀式が終わると俺の儀式が始まる。
「フィール!レディパールの英雄にして妖精使役者!更に娘と息子3人の運命の相手を占った功績により、爵位を子爵に引き上げる!」
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」
俺とファインは王都を一周回るパレードに参加する。
「ファイン様!素敵です!」
「フィール様!結婚してえええ!」
「あれが妖精か!コロシアムに行けなかったから始めて見たぜ」
「妖精様、なんと神々しいお姿!」
俺とファインは賞賛され、後ろには婚約者も続く。
アイラと目が合うと、笑顔でほほ笑んだ。
リンカと目が合うと、すっと目を逸らした。
ラブハウス以降こんな感じだ。
チンカウバインは無意味に空を舞っている。
「空気が温かくなって来たね!もうすぐ春だよ」
珍買う場員を見ると、春になってしゃしゃり出てくる虫のように見える。
パレードが終わり、王城に戻ると王が言った。
「これで2人とも貴族として生きる事になった」
男爵から子爵になると扱いが変わる。
男爵=騎士のちょっと上的なポジションで上の貴族からバカにされる事がある
子爵以上=ここから国を動かす重要な役割を与えられる
そうか、王は、俺とファインに役目を与えたかったのか。
「ファインには後で役目を与える。フィールは残れ」
俺だけが残る。
「レイ・カースセイバー、ここへ!」
「は!」
音声変換されたような声が発せられる。
呪われた黒いフルアーマーを装着した騎士がきびきびと歩いてくる。
あ、サブクエストであったな。
呪い装備を解除するために魔力を供給するイベントだ。
結局レイの呪いを完全に解除する前にイベントが終わって、最後にレイが男性ではなく女性であることが分かるけど素顔を見せないままクリアになる。
「見ての通り、この者は呪いの装備を着用しており装備を外せん。大量の魔力を供給する事で完全に呪いを打ち消す事が出来る。以前は他の者が魔力を供給して一時的に装備を解除して何とか生活する事が出来たが、その者が高齢で倒れた。そこでフィールには魔力の供給係と命ずる」
レイは一定時間ごとに魔力を供給して呪い装備を一時解除しないとトイレや食事、水分補給や水浴びが出来ず死ぬ。
本来このサブクエは主人公が受けるが、俺になったか。
命令を出された以上受けるしかない。
「はい!全力で呪い解除を行います!」
「所で、近いうちにゴレムズをどう処罰するか貴族会議が行われる。ゴレムズは優秀な錬金術師ではあるが、1度学園を襲っている」
「……はい」
「助けたいか?」
「迷って、います」
「うむ、もし、殺さない判断をした場合、誰が面倒を見るかで揉めるだろう。恐らく、押し付け合いになる。犯罪者を世話するとなれば危険を伴う。殺されないとしても逃亡されれば責任を負う事になる。誰も受け入れないとなれば、ゴレムズは処刑されるかもしれん。数日、ゆっくりと自分の考えをまとめておくのだ。下がれ」
「……はい」
どうすれば良いか、その場で答える事が出来なかった。
心が落ち着かない。
城を出るとレイが後ろをついてくる。
「緊張しなくていい。ゆっくりしよう」
「いえ、魔力供給を受ける以上あなたの騎士として」
「いいって、普通に話してくれないと疲れてしまう」
「分かったよ。僕はレイ・カースセイバー。よろしくね」
「よろしく」
「あ、いたわね!」
「リンカか」
「パパとアイラも一緒よ」
「フィール、まだリンカと最後までいっていないようだね」
「え?結婚の話?」
「うんうん、そういう感じだよ」
リンカパパがリンカの頭を撫でた。
俺は、あそこまでいっておいて、リンカを最後まで抱いていない。
躊躇してしまった。
「私との結婚式もまだだよ。出来ればウエディングドレスと父さんと母さんに見て欲しいなあ」
「ああ、そうか、そうだ、そうだな」
そうか、俺はこの世界をどこかゲームのように考えていた。
ステータスをカンストさせるように、すべてをカンストさせるように考えていた。
でもここは現実だ。
完璧なんてない。
ゲームの世界だって、裏では救いきれなかった人がいた。
主人公と違う俺の視点で見る事でその事が分かる。
ゴレムズは間違った。
でも、人間は間違う。
アイラやリンカと結婚したら次は子供が生まれるかもしれない。
次は子育て、それが終わればまた関係は変化する。
ずっと死ぬまで終わらない。
現実だ、ゲームじゃない。
「フィール、どうしたのよ?」
「フィール?」
「フィールはリンカを最後まで抱かなかったから後悔してるね。私には分かるよ」
「あんたは黙りなさいよ!」
「キスと1つになるのは駄目とかありえないよ。むしろそここそが愛の中心だと言えるよ」
「いいから黙りなさい!」
「リンカ、君は本当はフィールに女にして欲しくてたまらなかったんだよね?でも、恥ずかしくてそれが出来なかった。リンカはもっと素直になるべきだよ」
「いい加減に燃やすわよ!」
「リンカ、大好きなケーキが目の前に置かれて食べていいと言われたら食べるかな?」
「なに?食べるに決まってるじゃない」
「君がラブハウスでやった事は大好きなお菓子を食べていいと言われて食べさせなかった、それと同じだよ」
ボウ!ボウ!ボウ!ボウ!ボウ!ボウ!
リンカがチンカウバインに向かって炎を放つが、チンカウバインはすべて躱した。
「よ、避けるんじゃないわよ!」
「リンカ、顔が赤いよ。冷静に狙って撃たないと当たらないよ」
「すまない、王様と話をしてくる」
王と会えなくてもいい!
それでもできる事はしたい。
ゴレムズの世話は俺が引き受けよう。
俺が動いても、何も変わらないかもしれない。
うまくいかないかもしれない。
世話を引き受ける事すら出来ないかもしれない。
どうなるか分からない。
俺は、ステータスをカンストさせても、どんなに勉強しても、何かが足りない。
そう、俺は不完全なただの人間だ。
それでもいい。
俺は王城に向かって走った。
風を纏って王城まで飛ぶ。
その姿を王都に住む民は見ていた。
「あれは、妖精契約をしたフィール様!」
「間違いない!後ろに妖精が飛んでいる!」
「なんと凛々しいお姿だ!」
「まるで肖像画に描かれる英雄のようだ」
「私達とは違う高貴で才能あふれる方なのね」
「俺は、逆立ちしてもああなれないだろう」
見上げる民がフィールに歓声を送った。
俺は王城の前で風の魔力を消した。
衛兵がびっくりして近寄って来た。
「ど、どうされましたか?な、何か事件が!」
「いえ、王に、王に尋ねられた答えを決めて来ました」
「王はただいま忙しく、多忙です」
「そう、ですか。後で手紙を書いて、王に送ります」
「その必要はない!」
「「王様!」」
「風の魔力をまとったフィールが王城に向かって来たと聞いてな。訪ねてくると思っていた」
「ゴレムズの面倒を、僕が見たいです!」
「うむ、フィールよ」
「はい」
「ますます、いい顔になったな」
「いえ、これでいいのか、うまくいくのか分かりません。途中で考えが変わるかもしれません。それでも、それでもこれが一番いいと思えたのです」
「私も一緒だ。王政で何を進めるか決断する。だがその決断は他の事をしないと決める事でもある。いつも多く助けられると思える方を選び、小さき者を踏みつけて進む。その繰り返しだ」
「分かります」
「だが、お前のような貴族が増えれば、巨人に踏まれた弱き者をもっと救えると、そう思えるのだ。はっはっは、固くなるな。やってみるのだ。私が命令する。フィール、ゴレムズをうまく使え」
「はい!」
俺は暗い牢に向かって歩いた。
でも、少しだけ心が温かい。
終わり
あとがき
打ち切りです。
この作品は昔流行った感じのある意味古い作風です。
フォロワーは、ちょっと期待していましたが伸びませんでした。
今のトレンドで書いた方が伸びるかなーと思いましたが書いてみたかったので書いた感じです。
最後まで読んでくださった皆様、本当に、ありがとうございます。
次は魔物ペットの作品とか書いてみたいですね。
あと、キャラ描写の解像度を上げた作品も書きたいです。
ではまた!
応援ありがとうございます!
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